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全司法新聞
 
離婚後共同親権、来年4月に施行
家裁調査官の要求と課題
 
 離婚後共同親権の導入などを含む改正民法の施行日が2026年4月1日と定められました。施行まで半年を切る時期に実施した地連調査官
 担当者会議と上京団交渉の様子、あわせて、10月24日に家裁調査官を対象に実施された説明会について、調査官担当中執に報告していただきます。

地連調査官担当者会議+上京団交渉

家裁調査官が声をあげることの重要性を感じた上京団交渉

調査官上京団交渉の様子
 10月26日〜27日、2025年度地連調査官担当者会議と調査官上京団交渉を行い、全国の家裁調査官の声を最高裁当局に届けました。

少年事件も増加し、負担が深刻に

 担当者会議では、全国から寄せられた職場実態に関する事前調査の結果をもとに、人員、労働条件、調査官制度、出張、庁舎設備、職員の健康管理、少年法の運用、研修、育成新施策の各課題について、情報を共有し、意見交換をしました。
 特に、人員については、昨年9月に長期の病休取得者が初めて200人(※全職種の人数)を超えた中、家事係は改正家族法の施行準備に追われ、少年係も前年を上回るペースで受理する事件の処理で繁忙な状況にあり、各家裁調査官の負担が深刻であることを確認しました。そうした状況下にもかかわらず、各地で管理職の事件分配を減らす見直しが一方的に行われ、ヒラの負担は一層大きなものとなっていることが明らかとなりました。
 出張時のタクシーの柔軟利用は進められているものの、直帰時の利用等になお課題が残る点や、家裁調査官未配置支部の児童室の設備が不十分である点、家裁調査官補の実務修習の超勤が過度に抑制されている点といった問題についても、認識を共有しました。

調査官が声をあげにくい立場に置かれている

 上京団交渉では、家裁調査官の職場実態について、交渉参加者の主張を受ける形で率直な意見交換が行われるなど、職制を通じては伝わらない職場の実情について最高裁当局に伝えることができる貴重な機会となりました。あわせて、各地連から集約した「異動要求者名簿」および「昇格該当者名簿」を提出し、早期の実現を求めました。
 d松総務課長は、交渉の結果を関係局に伝えると述べて、人員や改正家族法にかかわる部分を中心に職場実態の把握に努める姿勢を示しました。一方で、交渉でのやりとりを通した参加者の感触として、それぞれの地連・支部でも声をあげることの重要性を感じるとともに、一人一人の家裁調査官が声をあげにくい立場に置かれている現状について、職場内で理解を得ていく必要があると感じました。
 また、追及点のほとんどについて、従前どおりの回答であり、家裁調査官補が総研に入寮するにあたって荷物の送料が自己負担になっている点は、旅費法上の出張と位置付けられているためだとの説明は、到底納得のいくものではありません。


改正家族法施行後の調査官関与の在り方

見通しが不透明なままで、ツールの作成等は丸投げ

 10月24日に家庭局が行った改正家族法施行後の家裁調査官関与の在り方についての説明会では、家裁調査官がどの事件にどのようにかかわることになるのかの見通しが不透明なままで、調査に用いるツールの作成等は各庁に検討を丸投げされる形となりました。
 子の意向・心情調査の実施という説明が繰り返されていたことから、子の意向で解決を図ろうとする風潮が強まることや、親調査を通じた事案の解決が軽視されるのではないかとの懸念が残ります。
 また、離婚後共同親権の適否を見極めるにあたって、DV事案を適切に除外していくことが必要であるところ、現時点でこうした点について特段の研修は予定されておらず、家庭裁判所が必ずしも証拠のないDV事案の見極めが適切に行えるのか疑問です。

家裁調査官が健康に働き続けられる職場の実現を

 家庭裁判所が今回の家族法改正で国民から負託された期待に応えるためには、家裁調査官が専門性や役割機能を発揮する必要があると考えますが、現在の人員状況では、その期待に応えることは難しいと考えます。当局は、病休や中途退職増加の原因は一様ではなく、対策を講じることは簡単ではないとしていますが、繁忙で余裕のない職場環境や、地方の家裁調査官補が不合理な経済負担を負うような状況に、原因の一端があることは明らかではないでしょうか。
 今後も、全司法の主張に対する当局の動きを注視して、人的・物的体制の充実を求め、家裁調査官が役割機能を発揮しつつ、健康に働き続けられる職場を実現していく必要があります。
(全司法本部・調査官担当)

 
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改正民法・改正民訴法施行に向けた検討状況等を示すよう追及
2025年秋季年末闘争期・第2回人事局総務課長交渉
 

 全司法本部は11月4日、秋季年末闘争におけるd松人事局総務課長との第2回交渉を実施しました。

国民のための裁判所」実現について

「子と父母の関係性や子の意向等を確認のする必要がある局面」で調査官が関与

 改正民法(家族法)及び改正民事訴訟法、改正刑事訴訟法に適切に対応するために裁判所の人的・物的充実を求めたことに対しては「これまでも、事件動向を踏まえて、適正迅速な裁判を行っていくために必要な態勢整備や予算確保を図ってきた」としたうえで「裁判所に期待される役割を適切に果たせるよう、引き続き、必要な人的・物的態勢の整備を検討していきたい」との回答にとどまりました。
 閲覧複写等用端末やスキャナの整備に関しては「当事者が、法廷等において電子化された訴訟記録を閲覧するための端末として、高裁、地裁及び地裁本庁併置簡裁の各庁並びに事件数が一定程度ある簡裁合計121庁に整備する予定である」とし、スキャナについては「各裁判所の係属事件数・本人訴訟割合をベースにした上で、一定程度の利用が見込まれる簡裁合計100庁にまずは整備する予定である。今後、当事者等からさらなるニーズが見込まれれば、整備範囲の拡大を検討する」と回答しました。
 共同親権を求める事件への家裁調査官の関与については「個別の事案ごとの調停委員会の判断にはなるが、一般論としていえば、『共同親権』を求める事件においては、例えば、父母が共同親権か単独親権かをめぐって対立している場合、その紛争解決にあたって、子と父母の関係性や子の意向等を確認する必要がある局面において、家裁調査官が専門性を発揮して関与すべき場面とされることが多いものと考えられる」と回答しました。

職員制度に関する要求について

組織見直し

「課題解決に向けた企画・立案を行えるよう目配りしていきたい」

 裁判部企画官について、本来求められる事務がこなせていないのではないかとの指摘に対し「裁判部企画官ポスト設置の具体的な効果が見えにくいことがあるかもしれない」としながら、最高裁として「各庁の課題解決に向けた主体的・実効的な企画・立案を行えるよう目配りしていきたい」と回答しました。

給与等支給認定事務の集約

集約後の事務処理も残る事務も明らかにせず

 各拠点で取り扱う事務については「各種手当の認定及び支給額の決定に係る事務、職員に支給される俸給を含めた給与の支給額の計算事務、職員別給与簿・基準給与簿・給与支給明細書の作成事務などを予定している」とし、「退職手当については、退職手当支給事務や支給調書作成事務、税額計算事務などを最高裁において取り扱う予定」としつつ、「今後細部に亘って様々な検討を進めていくことを予定しており、慎重な検討を進めた上、説明できる段階となれば改めて説明する」として、明確な説明はありませんでした。
 また、被集約庁に残る事務、被集約庁の人的態勢については「現時点で説明できるものはない」との回答にとどまりました。

書記官

パソコン「何かできることはないか考えてみたい」

 ウェブ会議等に支障のないスペックのパソコン整備を求めたことに対しては「特に端末に大きな負荷のかかる部署や職員があれば、その実情を踏まえた上で、何かできることはないか考えてみたい」との姿勢を示しました。
 裁判手続において提出された書面の電子化については「書面等を電子化する場合における具体的な方法及び使用機器等については、各庁における事件数の動向や本人訴訟の割合、事務処理体制等を踏まえ、合理的な方法を検討していくことになる」との回答にとどまりました。

家裁調査官

主任調査官の調査事務は「その庁の実情等に応じて検討」

 管理職員の調査事務の軽減(変更)については、「適正迅速な裁判の実現にむけた業務管理、人事管理の重要性を踏まえて、その庁の執務態勢や全体的な事件処理の実情等に応じて検討することになると考えている」とし、「家裁調査官の専門性を活用した一層効果的かつ効率的な事務処理の在り方を実現し、個々の家裁調査官の経験、能力等を踏まえた育成を図るべく、主任家裁調査官による指導監督が一層適正かつ充実したものとなるように必要な環境整備が行われているものと認識している」と回答しています。

昇格

「級別定数の改定のために努力をしていきたい」

 各職種の処遇を向上させるために級別定数の大幅拡大を求めたことに対しては「これまでと同様に級別定数の改定のために努力をしていきたい」との姿勢を示しつつも、「来年度予算における級別定数をめぐる情勢は全く予断を許さない」と回答しました。
 事務官の「退職までに誰でも5級」の到達点を維持し、役職定年制による役降り職員との処遇のバランスも踏まえて60歳までに5級昇格を実現するよう求めたことに対しては「これまで同様、退職時5級の枠組みの維持に努めたい」との従前回答を繰り返しました。

 
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