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全司法新聞
 
全司法第82回定期大会
「373人」の組合員拡大に全力でとりくむことを確認
 

運動方針案を圧倒的多数で確立

 全司法は7月20〜22日に「要求前進、組織強化・拡大に新たな一歩を!」をメインスローガンに第82回定期大会を開催しました。
 組織と財政が大きな焦点となった大会討論を踏まえて、本部は「373人の拡大は不可能な数字ではない」とする和歌山支部修正案を受け入れて組合費の引上げを留保し、全国一丸となって組合員拡大に全力をあげることを意思統一しました。


「仲間」「参加する人」「担い手」を増やすとりくみの強化を!

 定期大会は、代議員・オブザーバー・執行部・来賓など全体で86名が出席し、大会議長に選出された河上真啓代議員(大阪)、副議長に選出された小田春香代議員(福岡)の進行で議事がすすめられました。
 開会あいさつで中矢委員長は「3・18見解」が出され、維持されている理由として、「職場実態を把握し、要求を前進させる活動を真面目にやってきたこと」「様々な人たちと一緒に運動することで社会的な信頼を勝ち取ってきたこと」の2つをあげ、「この方針を握って離さないことが重要」だと指摘しました。
 来賓あいさつに続いて、運動方針を提案した井上書記長は「昨年の大会で『仲間を増やす・参加する人を増やす・担い手を増やす』という『新たな組織方針』を確立し、その実践を目指してきたが、未だ増勢に転じる一歩が踏み出せていない」と述べ、「みんなで一緒に活動する組織」を目指して、地連・支部のとりくみ強化を呼び掛けました。
 また、要求の前進を組織強化・拡大につなげる観点から、今年の諸要求貫徹闘争の到達点を改めて説明しました。
 討論では、賃金引上げのとりくみ強化、人員削減のもとでの繁忙状況、デジタル化や離婚後共同親権導入に向けた不安、庁舎設備の改善、組織強化・拡大などの課題で、のべ57人から発言がありました。とりわけ、2日目の午後には、議長団の進行で、若手書記長の抱負や悩みを出し合い、職場会活動の工夫について意見交換する機会が持たれました。
 また、組合員ひとり一人に直接情報を届けるツールとして「TUNAG」を導入して、組織強化・拡大に活用することが確認されました。

和歌山修正案を受け入れ、組合費引上げは留保

 財政方針については、本部が、財政基盤確立のために月額500円の組合費引上げと年2000円の特別費の徴収を提案したのに対して、大阪支部から救援資金特別会計の取り崩しや専従役員の減員等により組合費を2000円減額する修正案、和歌山支部と岐阜支部からそれぞれ救援資金特別会計の取り崩しで次年度の組合費の引上げを回避する修正案(岐阜支部はこれに加えて、新採用の本部費を1年間無料にする、次年度も専従役員を削減する、特別会計を今後も取り崩すといった内容をそれぞれ提案)、島根支部から青年協交付金を「0」にする(また、団体加盟のあり方を見直す)などの修正案が提出されました。これらの議案が付託された予算委員会で審議した結果、和歌山支部修正案が賛成多数で可決されました。
 その後、全体討論で本部が提起した組合費の引上げについて反対、やむなし、賛成それぞれの立場から発言があったことを踏まえ、本部は和歌山支部修正案を受け入れる形で原案を修正し、この修正原案が可決されました。修正にあたって吉村財政部長は、当初原案で示した組合費引上げ等が「財政上、必要不可欠なものであるとの認識に変わりはない」としたうえで「組合費の引上げを実行する前に、組合員拡大に全力をあげるという代議員の言葉を信じて、そのために時間をつくることにした」と述べました。また、井上書記長は総括答弁の中で和歌山支部の修正案が「組織拡大を実現できない限り、全司法に未来はない。(組合費引上げ額に相当する)373人の拡大は、裁判所の人的規模から決して不可能な数字ではないはずである」等としていることを踏まえて「全国一丸となって組合員拡大に全力をあげるために、必要な予算的措置をとることを留保して、組合員拡大のための時間を作り出す」ことにしたと述べて、組織拡大に全力をあげることを改めて呼びかけました。

井上書記長を離職専従役員として配置

 役員選挙では、立候補者全員が信任されました。また、中長期的視点に立って、本部の体制を強化していく必要があることから、書記長に再任された井上隆博さん(広島)を離職専従役員とすることが承認されました。中央執行副委員長については非専従として、猪股陽子さん(宮城)、加藤理恵さん(東京地裁)、光田透修さん(東京地裁)の3人が選出されました。
 最後に「『国民のための裁判所』実現のため、裁判所の人的・物的充実を求める決議」と「大会宣言」を採択し、団結ガンバローで閉会しました。

 
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「前を向いて、新しい一歩を踏み出す大会」に
中矢委員長あいさつ
 
あいさつする中矢委員長

労働組合は権利を守る唯一の手段。
基本的人権


 厚労省の調査によると2024年6月時点の労働組合の推定組織率は16・1%となっています。1980年代の前半まで30%台だった組織率は減少傾向が続いていることになりますが、労働組合は必要がなくなったのかというと、けっしてそうではありません。労働組合は、働く人たちの権利を守る唯一の手段であり、人間が生まれながらに持つ基本的人権の一部です。
 日本で労働組合が力を失ったのは、自然のなりゆきではありません。1980年代後半から、社会の仕組みを「自己責任」を基本としたものに置き換える「新自由主義」にもとづいた政策が進められるもとで、国民生活や働く者の権利を守ろうとした労働組合が標的にされ、力を奪われてきたことが発端です。
 しかし、今、物価高騰のもとで賃上げが最大の経済問題になり、改めて労働組合の役割が注目されています。ここ数年は、春闘でストライキを配置して賃金交渉に臨む労働組合も増えています。フジテレビで人権問題になった件では、会社の危機に労働組合の組合員が80人から500人に激増したことがニュースになりました。厳しい労働条件に直面したり、働く者の尊厳が奪われると感じた時、労働組合が働く者の拠り所になる実態は全く変わっていませんし、潜在的に労働組合の必要性や役割を感じている人は、けっして少なくないのです。

職場と社会で信頼を勝ち取ってきたことが全司法の力に

 1992年3月に全司法との「誠実対応」を約束する最高裁の事務総長見解が出されて、全司法は名実ともに職員代表として意見を述べる組織となりました。最初は敵視し、その後は無視してきた全司法を最高裁が認めることになったのは、何故でしょうか?
 一つは、職場で対話して職員の声を集め、職場実態を把握し、それにもとづく要求を交渉で当局にぶつける。そんな地道な活動を、全国すべての支部が真面目に積み重ねることで、職場での信頼を勝ち取り、職場に根を張った組織になってきたからです。
 もう一つは、全司法が孤立して運動してきたのではなく、憲法と平和、暮らしや民主主義を守る立場を鮮明にし、「国民のための裁判所」実現を組織目標として、国公労連をはじめ、法律家団体、民主団体など、様々な人たちと一緒に運動することで社会的な信頼を勝ち取ってきたことにあります。この方針を握って離さないことが重要です。
 本大会では、この間の要求の到達点を確認して運動方針を確立し、財政方針の議論とともに、ファーストアタックをはじめとした組合員拡大のとりくみや、TUNAGの導入、離職専従を含めた本部の新たな体制などもあわせて検討し、みなさんの知恵を集めて要求前進と組織強化・拡大に「前を向いて、新しい一歩を踏み出す大会」にしたいと考えています。

 
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総括答弁(要旨)
仲間・参加する人・担い手を増やすとりくみに全力を!

賃金引上げ

総括答弁する井上書記長

願っているだけで賃上げは実現しない

 「実質賃金が低下しているもとで、子育て世代の生活が一番苦しくなっている」「日本で30年間賃金が上がらない状況を作り出したのは、労働組合が賃上げを求めてたたかわなかったからだ」と指摘があった。まさにそのとおりであり、願っているだけで賃上げは実現しない。地域に足を踏み出し、賃上げにむけた運動に積極的に参加しよう。

全司法大運動

予算確保のため、国会への働きかけは欠かせない

 国会議員の地元事務所訪問のとりくみが報告された。地方でのとりくみが新たな紹介議員の獲得につながり、国会内で理解を広げることにつながっている。
 また、他団体への要請を行うことで集約集を増やしたことが報告された。署名の集約数を増やすために県国公や県労連、弁護士会等をはじめとした他団体への要請は欠かせない。2025年度は他団体への要請を積極的に行うことで署名の集約数を伸ばそう。

職場諸要求

裁判所の人的・物的充実を職場の内外に訴えていこう

 人員に関わって、家裁の繁忙な職場実態や代替要員が確保できないために長時間労働を前提とした人員配置となっている実態が報告されるとともに、地方職場で人員が減らされ続けていることへの不満が述べられた。こうした状況で今後は民事・刑事・家事裁判の各分野での大きな変化への対応が求められる。限られた人員でやりくりすることは不可能であるから、これまでにないような規模の大幅な増員が必要だ。そうしたとりくみの一環として、本大会で「『国民のための裁判所』実現のため、裁判所の人的・物的充実を求める決議」を採択し、裁判所の人的・物的充実を職場の内外に訴えていこう。

システムの導入にむけて整理が必要

 労働時間短縮・超勤縮減等に関わって、勤務時間管理システムの導入にむけた問題点や課題が示された。システム導入にむけて職場実態を踏まえた整理を行わせる必要がある。
 健康管理・安全確保に関わって、事件当事者等からの不当な要求について、職員個人に負担を負わせることのないようにすべきと発言があった。不当な要求は裁判所がその責任において解決すべきものであり、当局が職員を守る立場で組織としての対応を行うよう求めていきたい。

フェーズ3の開始に備えた人的態勢の整備を

 デジタル化に関わって、「RoootSとmintsの並行稼働は事務の簡素化・効率化に逆行しており、当事者への説明にも苦慮している」といった実態が報告された。当事者対応も含めてフェーズ3の開始に備えて訟廷部門をはじめとした人的態勢の整備を求めていく。
 また、民事裁判デジタル化のもとでのウェブ弁論・ウェブ会議のあり方について、大規模簡裁の事件等でこれまで和解等により解決していたものが、話し合う時間が確保されず、和解に代わる決定や調停に代わる決定による終局を余儀なくされ、「もはや司法サービスの低下といっても過言ではない」と指摘された。実態を注視するとともに、必要に応じて運用の改善等を求めていく。

職種・階層

上京団交渉で当事者が訴えていくことが重要

 行(二)職に関わって、処遇改善のとりくみを強化していくべきとの発言があった。行(二)職の処遇の維持・改善にむけて、担当者会議等を通じて実態を把握するとともに、上京団交渉も活用しながら追及を強めていきたい。
 法廷警備員に関わって、病休者がいるために他の法廷警備員の負担が増加している実態や同世代の法廷警備員の昇格が課題になっているとの報告があった。当該支部と協力しながら、落ち着きのある昇格発令を求めていきたい。
 速記官に関わって、電子速記タイプライターについて、あらためて更新の要望が出された。速記官が安心して働けるよう、電子速記タイプライターの更新計画の策定を求めていきたい。

組織強化・拡大

TUNAG導入で運動を活性化させ、組織の強化・拡大をすすめる起爆剤にしよう

 「仲間を増やす」とりくみの中心は新採用職員の加入拡大だ。全ての支部で「ファーストアタック」にとりくみ、10月期新採用職員、4月期新採用職員の「5割以上の加入」をめざそう。
 「参加する人を増やす」とりくみとして最も重視すべきは「職場会」の実施だ。職場会で職場実態や組合員の悩み・要望を掴み、それを集めて要求にして交渉等で追及を強めていこう。
 「担い手を増やす」とりくみの実践として、本部は中央行動や全司法大運動の中央における議員要請行動に全国上京団を配置している。青年協の行事をはじめ、若い仲間に積極的に活動に参加してもらうことで「担い手」を増やしていこう。
 TUNAGの導入についても発言があった。プラットフォームサービスを利用することで運動を活性化させ、組織の強化・拡大をすすめる起爆剤にしたい。全ての支部で、TUNAGの導入を契機に@新採用職員をはじめとした組合員拡大にむけたとりくみ、A組合員との「対話」、B要求実現にむけた交渉・折衝の強化の3つのとりくみにこれまで以上に集中してとりくむことを確認する。

修正原案を提出

組合員拡大のための時間を作り出した

 財政関係議案に関わって、本部は和歌山支部の修正案を一部受け入れる形で第2号議案及び第3号議案の修正原案を提出した。修正原案は、和歌山支部修正案の「組織拡大を実現しない限り、全司法に未来はない。そして、373人の拡大は、裁判所の人員規模から決して不可能な数字ではない」という姿勢を受け止めたものだが、必要な予算的措置をとることを留保し、組合員拡大のための時間を作り出したものに過ぎない。
 大会の議論を踏まえ、全国一丸となって組合員拡大に全力を挙げることが重要だ。諦めたり、迷ったり、ためらっている余裕はない。大会後は、まだ加入に至っていない新採用職員や職場の未加入者との「対話」を速やかに開始し、全ての支部が組合員拡大に全力を挙げよう。
 結成以来、多くの先輩方がバトンを繋ぎ、ずっと大切にしてきた全司法という組織を次の世代につなげていくために組織の強化・拡大は欠かせない。大量退職・採用期をチャンスと捉え、「過半数」組織への回復をめざそう。そのためには、全ての支部で「仲間を増やす」「参加する人を増やす」「担い手を増やす」とりくみに全力を挙げていくことが重要だ。
 要求前進と組織の強化・拡大に新たな一歩を踏み出そうと呼びかけたい。

 
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来賓あいさつ、祝電・メッセージの紹介
 
 大会には4人の来賓が出席され、激励と連帯のご挨拶をいただきました。
 

みなさんのお話を聞いて国会で追及していきたい
本村伸子
 日本共産党衆議院議員

 本村議員は、全司法から聞いた職場実態を国会でとりあげてきたことを報告し、「労働時間の客観的把握をせずに人員配置を決めていることを追及してきたので、来年1月から下級裁に勤務時間管理システムを導入する旨の回答をみなさんが勝ち取ったことについて敬意を表したい」とし、「引き続き、みなさんのお話を聞いて国会で追及していきたい」と述べました。
 また、全司法大運動の請願が与党も含めた全会一致で採択されたことを紹介し、「毎年、国会が人的・物的充実の意思を示しているのに、最高裁が人員削減を続け、国会の意思に反する状況が続いている」と指摘しました。
 あわせて「先の衆議院選挙で裏金自民党に厳しい審判が下されたことで、政治が前に動いているのを感じる。ジェンダー平等など人権を保障し、外国にルーツを持つ方への差別をなくし、原爆投下80年を迎えた今年、平和憲法を活かし、戦争する国づくりをストップさせていくために、みなさんと力を合わせていきたい」と述べました。

公務員や労働組合に対する攻撃に注意
笠松鉄平
 日本国家公務員労働組合連合会書記長

 国公労連の笠松書記長は、「私たちの賃金や労働条件は政治によって左右される」と述べたうえで「『日本人ファースト』といった差別や選別の刃は、いずれ『非国民』という言葉になって日本人にも向けられることは歴史が証明している」とし、公務員について「極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない」と述べた政党代表がいたことについて「公務員や労働組合に対する攻撃が強まってくることを注意していかなければならない」と指摘しました。
 また、人事院勧告について「比較企業規模の見直しが焦点であり、全ての世代で生活改善につながる大幅賃上げに向けて最後まで頑張る」と述べ、あわせて、「みなさんのがんばりで前進を勝ち取ってきている。できることからコツコツと積み上げていくことが職場を改善し、社会を良くしていく」と述べました。

ここから後輩たちにつないでいくことが大切
西山義治
 全法務省労働組合中央執行委員長

 全法務の西山委員長は、直近のとりくみで「大規模災害時における業務継続のあり方について、所属長が開庁の判断ができるようにした」「昇任・昇格の際に県外異動が要件になっていたのを撤廃させた」「来庁者に協力を求めながら、9時から17時までを窓口対応時間とする運用を行わせている」といった前進を勝ち取ったことを紹介し、「全司法も全法務も、先輩方が今の職場を作って、私たちに繋いでいただいたように、私たちも、ここから後輩たちにつないでいくことが大切」だと述べて、「今後とも中央・地方で一緒に運動をすすめていこう」と呼び掛けました。

誇りを持って活動して欲しい
井塚忍男
 裁判所退職者の会全国連合会事務局長

 裁退連の井塚事務局長は、「33年前、3・18事務総長見解が出された時に全司法本部にいた」と自己紹介し、「裁判所職員として憲法にもとづいて仕事をしてきたので、参議院選挙後の憲法をめぐる情勢を危惧している」と述べました。
 また、自身が大学時代のゼミで全司法仙台事件を研究テーマにしたことがきっかけで全司法のことを知り、「全司法の一員になりたいと思って採用試験を受けて、裁判所職員になった」と述べ、「世界の裁判所の中で一般職が労働組合を作っているのは日本だけ。全司法は世界に誇れる労働組合なので、誇りを持って活動して欲しい。全国の退職者はなんとか力になりたいと思っているので、協力できることがあれば積極的に言ってほしい」と述べました。

 
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人事院勧告に向けて「要望は関係機関に伝わるようにしたい」
人勧期最高裁交渉
 

 全司法本部は7月18日、「2025年人事院勧告にむけた重点要求書」に基づく要求の前進をめざして、d松人事局総務課長との交渉を実施しました。

全世代・全職種で大幅賃上げを要求

 物価上昇がすべての職員の生活に影響を及ぼしていることから、若年層の賃金改善にとどまらず、中高年層や行(二)職を含めた全世代・全職種で大幅な賃金引上げを行うよう求めました。これに対して、最高裁は「生計費の維持、確保という観点から、賃上げにむけた強い要望を持っていることは認識しており、職員団体の要望は関係機関に伝わるようにしたい」と回答しました。
 また、人事行政諮問会議の最終提言が官民比較の見直しに言及していること等を踏まえて、比較企業規模の引上げを求めたのに対しては「人事院の権限と責任において定めるべきものであり、最高裁として正式に意見を述べる立場にはないことを理解してもらいたい」としつつ、「職員団体の意見については、人事院に伝えることとしたい」と回答しました。
 諸手当に関しては、地域間格差の解消、マイカー通勤を含む通勤手当の改善、特地勤務手当の見直しなど、全司法本部も参加した国公労連との交渉で人事院が回答している状況も踏まえて主張したのに対して、「これまでも種々の機会を捉えて、人事院に職員および職員団体の要望等を伝えるなど、必要な時期に必要に応じた対応をしてきているところであり、今後とも同様の方針で臨んでいきたい」と回答しました。

非常勤職員の研修等の充実、休暇制度改善を要求

 非常勤職員について「3年公募要件」が撤廃されたことを踏まえて、長期雇用を見越した研修等の実施を求めたことに対しては「OJTおよび人材育成の観点を踏まえた研修等の要望があることは承っておく」と回答しました。また、裁判所における非常勤職員の多くが障がい者雇用であることから、病気休暇をはじめとした各種休暇を常勤職員と同等の制度とするよう求めたのに対しては「要望は機会を捉えて人事院に伝わるようにしたい」との回答にとどまりました。

「請願が採択されたことは認識している」と回答

 人的態勢の整備に関わって、全司法がとりくんだ「裁判所の人的・物的充実に関する請願」が採択されたことを踏まえ、2026年度裁判所予算の概算要求で書記官・家裁調査官等の増員要求を行い、裁判所職員の人的体制を整備するよう求めたのに対して、「第217回国会において、『裁判所の人的・物的充実に関する請願』が採択されたことは認識している」とした上で、体制整備については従前回答を繰り返しました。

「報告させることが『善』」との考え方に変えよ

 下級裁にも勤務時間管理システムが導入されることを踏まえて、改めて超過勤務を暗数化させないことや管理職員からの確認を徹底させることを求めたことに対しては「的確かつ遅滞なく把握し、適切な超過勤務時間の管理を行うことについて、管理職員に対する指導を徹底するよう、下級裁に対して事務連絡を発出したところであり、今後も引き続き指導を徹底していきたい」と回答しました。この回答を受けて本部は、システム導入を契機に「超勤をさせないことが『善』」という考え方から「超勤をしたら、そのとおりに報告させることが『善』」との考え方に変えていくことが必要だと主張しました。

「安全確保のための対応をとってきている」と認識

 カスタマーハラスメントへの対策を講じるよう求めたことに対しては、「事務連絡に基づいて(中略)各庁の実情に応じた運用を行ってもらうことにより、関係部署が適切に役割を分担して連携を図り、組織として的確な対応を行うことが可能になる」「加害行為が予見される場合も含め、安全確保に関わる情報について、当事者等から密に情報収集を行い、収集した情報を元に、事案に応じた安全確保のための対応をとってきている」との認識を示しました。

 
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2025年人事院勧告 34年ぶりの3%超え大幅賃上げ
 

マイカー通勤手当の改善が実現

 人事院は8月7日、国会と内閣に対して、国家公務員の給与に関する勧告・報告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。
 給与勧告では、月例給3・62%引上げや一時金0・05月分改善、マイカー通勤に係る通勤手当や宿日直手当などの改善を勧告しました。
 公務員人事管理に関する報告では、高い使命感とやりがいを持って働ける公務、実力本位で活躍できる公務、働きやすさと成長が両立する公務、誰もが挑戦できる開かれた公務の4つのポイントに沿って人材確保の課題を前面に押し出し、「激しい人材獲得競争が続くことが見込まれる」「改革を次のフェーズに進めなければならない」などと問題意識を表明しています。


月例給を3・62%引上げ
一時金0・05月分改善


 給与勧告にあたって人事院は官民比較の結果を公表し、月例給(賃金)で3・62%、一時金(ボーナス)は0・05月分の官民較差があるとして、月例給を平均1万5014円(3・62%)引き上げるとともに、一時金を0・05月分改善して年間4・65月分とするよう勧告しました。34年ぶりに3%を超える大幅な賃上げとなった勧告の背景には、25国民春闘において、全労連・国民春闘共闘に結集する労働者・労働組合がストライキ権を確立・行使するなど、いかんなく交渉力を発揮し、単純平均で3%超の賃上げを勝ち取った運動の成果があります。
 給与改定にあたっては、初任給改善(高卒1万2300円、大卒1万2000円)をはじめとした若年層に重点を置きつつも、すべての職員を対象に俸給表全体を引き上げるとしており、中高年層においても、昨年を大幅に上回る改定額(例えば、3級109号俸で9500円引上げ)となっています。また、再任用職員についても「各級の改定額を踏まえ、所要の引上げ改定を行う」としています。こうした賃金改善は全ての世代で物価高騰を上回る賃上げを要求してきた私たちの運動の成果です。

官民格差の比較企業規模を100人以上に

 一方、46か月連続で物価が上昇しているもとで、生活改善という点では不十分な改善となっています。こうした結果となった背景には、官民較差算出にあたっての比較企業規模の問題があります。
 人事院は、「官民給与の比較対象を企業規模100人以上に見直」すとして、2006年に不当に引き下げた比較企業規模を100人以上に戻しましたが、1000人以上に引き上げるよう求めた私たちの要求に答えるものとはなっていません。
 他方、本府省職員については、これまで東京23区に所在する企業規模500人以上の本店事業所の従業員と対応させてきたものを企業規模1000人以上に引き上げています。このことは同一労働同一賃金を求める私たちの要求に反するものであり、機関間格差を拡大させることに繋がります。機関間格差の拡大は職員の不公平感を助長させ、組織のパフォーマンスを低下させる要因となるものであることから、速やかに是正させる必要があります。

マイカー通勤手当が改善
5000円を上限に駐車場料金を支給


 自動車等使用者の通勤手当について、@100キロメートル以上を上限とする距離区分を新設し、A支給額の上限を6万6400円に増額する、B現在の距離区分についても200円から7100円までの幅で増額する、C1か月当たり5000円を上限とする駐車場等の利用に対する通勤手当を新設するとしています。
 昨年の人事院勧告で公共交通機関を中心とした通勤手当の改善が行われ、マイカー通勤の職員の負担軽減や不公平感の解消が課題となっていたところ、各ブロック・県国公が人事院地方事務局交渉などで追及を強化したことが2年連続で通勤手当の改善という成果を勝ち取ることにつながりました。とりわけ、駐車場料金の支給は私たちの要求に答えるものであり、運動の大きな成果です。また、通勤手当に関わっては、月の初日に支給要件が満たされていなくても、採用や異動の日から通勤手当を支給できるよう支給方法を見直すことも予定されています(2026年10月から実施)。

宿日直手当300円引上げ
特地勤務手当の見直し


 宿日直手当について、官民較差にもとづいて、勤務1回に係る支給額を300円引き上げて7700円(現行7400円)とするとしています。
 また、特地勤務手当に関わっては、「転勤する職員に対する給与上の措置」として、@特地勤務手当等と他の手当(地域手当・広域異動手当)との減額調整の廃止、A新規採用に伴い転居した職員に特地勤務手当に準ずる手当の支給などが行われます。2026年4月には特地官署等の指定の見直しが予定されていることから、特地官署の拡大を求めていくことが重要です。
 なお、「給与制度のアップデート」による地域手当の見直しは、2026年度が2年目の改定となります。引下げは1ポイントずつ最長4年間で段階的に実施され、引上げは、引下げによって得られる原資の状況等を踏まえて段階的に実施されます。地域手当の支給割合の見直しは地域間格差を拡大させるものであり、支給割合の引下げの中止を含め、地域間格差を早急に解消するよう求めていく必要があります。

今後は政府との交渉

 今後のたたかいは、政府との交渉へと移ります。人事院勧告の改善部分(月例給及び一時金の引上げ、通勤手当の見直しなど)の早期実施や報告等で示された課題等の具体化にあたっては、対応当局との交渉をはじめ、国公労連が提起する運動への結集を強化していくことが求められます。

 
給与勧告の概要
月例給
* 官民給与の比較対象を企業規模100人以上に見直し(本府省職員は東京23区本店の企業規模1,000人以上と対応)
* 官民較差15,014円(3.62%)を用いて引上げ改定
* 初任給を大幅に引上げ
 総合職(大卒):242,000円(+12,000円)、一般職(大卒):232,000円(+12,000円)、一般職(高卒):200,300円(+12,300円)
* 若年層に重点を置きつつ、その他の職員も昨年を大幅に上回る引上げ

ボーナス
* 民間の支給状況に見合うよう0.05月分引上げ(年間4.60月分 → 4.65月分)
* 期末手当及び勤勉手当の支給月数をともに0.025月分引上げ

通勤手当
* 自動車等使用者に対する通勤手当について、民間の支給状況等を踏まえ、次のとおり見直し
@「100q以上」を上限とする新たな距離区分(5q刻み)を新設(上限66,400円)、A現行の距離区分についても、200円から7,100円までの幅で引上げ、B1か月当たり5,000円を上限とする駐車場等の利用に対する通勤手当を新設
* 採用や異動の日から通勤手当を支給できるよう支給方法を見直し

宿日直手当
* 宿日直勤務対象職員の給与の状況を踏まえ、300円引上げ(7,400円 →7,700円)

地域手当
* 給与制度のアップデートで段階的に見直しを行うこととしている支給割合について、令和8年度の支給割合を設定

本府省業務調整手当
* 幹部・管理職員を新たに支給対象に加え、51,800円を支給
* 課長補佐級の手当額を10,000円、係長級以下の手当額を2,000円引上げ

特地勤務手当等
* 特地勤務手当等と他の手当(地域手当・広域異動手当)との減額調整を廃止
* 特地官署等への採用に伴い転居した職員に手当を新たに支給

職員の月例給与水準を適切に確保するための措置
* 月例給与水準が地域別最低賃金に相当する額を下回る場合に、その差額を補填するための手当を措置
 
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