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全司法新聞
 
労働組合をめぐる変化をチャンスに変えて、
要求と組織を前進させよう!
第2回全国書記長会議
 

地連・支部書記長がオンラインで参加

 4月20日、2024年度第2回全国書記長会議をオンラインで開催しました。会議では、5〜6月の最高裁交渉で要求前進を目指す2025年諸要求貫徹闘争方針の意思統一を行うとともに、7月の定期大会にむけて組織強化・拡大にとりくむ意思統一をはかりました。

報告する井上書記長
職場の要求を最高裁交渉に集中させることが重要

 開会あいさつで中矢委員長は、最高裁が増員をめぐる交渉回答で「国の財政事情が引き続き切迫している」と述べていることに触れて、国の税収は過去最大にも関わらず、防衛予算が膨れ上がっているために、社会保障費等が削られ、必要な施策が実施できなくなっていると指摘したうえで「全司法は『国の財政事情が厳しい』から職場の人が減らされても仕方ないとは考えない」と述べ、情勢を見て運動することや、国公労連・全労連に結集して声をあげる必要性を説明しました。
 また、組合費の引上げを含めた組織と財政の議論について「討議資料は、あくまで予備討議を始めるにあたっての本部の考え方(問題意識)を整理したもの」と述べ、組織と運動を維持・前進させる立場での建設的な議論を求めました。
 井上書記長は諸要求貫徹闘争を「要求の出発点」と位置づけ、職場の要求を最高裁交渉に集中させることが重要だと述べて、最高裁あて要請書、職場実態報告、全国統一要求書の提出などのとりくみとともに、要求前進を目指す「戦術」として7月11日に早朝時間外職場大会と引き続く全1日の全国統一プレート行動を配置していることを報告しました。そのうえで、人員、労働時間短縮・超勤縮減等、職員の健康管理・安全確保等、デジタル化への対応、職員制度に関する要求、休暇・休業・次世代育成支援等の重点要求それぞれについて、交渉に臨むポイントを解説しました。
 また、猪股組織部長は4月1日と2日に全国でとりくんだ新採用職員のファーストアタックを総括したうえで「ここから先はファーストアタックではなく、継続的なとりくみや、新採用以外の未加入者も視野にいれた働きかけが重要になる」と報告し、吉村財政部長は組織と財政の予備討議について、改めてポイントを確認しました。

勤務時間管理、全国統一の執務要領などで討議

 会議に参加した地連・支部の書記長からは、春闘期の総括に関わって、支部交渉で様々な要求を前進させた経験、全司法大運動の街頭宣伝行動、組合活動の見える化を意識して朝ビラにとりくんだ経験などが報告されました。とりわけ、4月期に減員された部署が全国に多数あることが報告され、「事件数のみで判断している」「職場実態を見ず、上級庁から求められて減員しているとしか考えられない」「家裁は一定の手当てがされたが、到底足りない」等の発言がありました。
 諸要求期に前進を目指すべき要求については、超勤実態の把握について「事前申告が形骸化している」との指摘があり、客観的データにもとづく勤務時間管理の必要性が議論されるとともに、事務の簡素化・効率化に関わって「全国統一の執務要領を最高裁の責任で整備すべきだ」等の意見が出されました。また、裁判官の職員に対するパワハラについて複数の発言があり、「多忙を極める中で、書記官に対して問題のある接し方をする裁判官が増えた印象がある」との実態が報告されました。その他、専任事務官の昇格改善、ウェブ弁論の運用、デジタル化のもとでの情報共有、ポータルサイトの検索機能の改善、地方ではタクシーを利用することが難しくなっている実態などについて発言がありました。

ファーストアタックに取り組んだ支部で成果

 組織拡大では、新採用職員の加入について東京地裁、大阪、広島、福岡などの高裁所在地をはじめ、ファーストアタックを意識してとりくんだ支部で結果に結びついた報告があり、その前提として、事前の意思統一の重要性、迎える側のマインドを変えること、自信を持って働きかけることが強調されました。また、「新採用の雰囲気が変わってきて、労働組合の話をよく聞いてくれる」といった感触も出されました。あわせて、今後の加入者に対するフォローや、いわゆる「二の矢、三の矢」のとりくみの重要性が確認されました。
 組合費の引上げを含む組織と財政の予備討議の中間報告では「組織拡大と組合費の引上げは両立しえない」「脱退者が増えるのではないか」「組合員から反対の声が出されている」などの理由から反対意見が出される一方で、「丁寧に説明した結果、引上げはやむなしという声が多かった」との意見もあり、また、「引上げの理由による」「具体的な金額による」「本部も様々な努力をして欲しい」といった発言もありました。

職場の『今』を話し合い、全司法が職場で果たす役割を広げよう

 会議のまとめで、井上書記長は「討論を通じて職場の課題が浮き彫りになった」と述べて、最高裁交渉で一つでも多くの要求前進を勝ち取っていく決意を述べるとともに、「『職場総点検・要求組織運動』で職場の『今』を話し合うことを全ての支部で実践し、『職場のルール』を作る全司法の役割を全国で広げていこう」と述べました。
 また、組織強化・拡大について「2024年1月の中央委員会で労働組合『復権のチャンス』が訪れていると指摘し、同年8月の定期大会では新採用職員のファーストアタックに全ての支部でとりくむことを提起してきた。そうした流れの中で、本年4月期はこれまで新採用職員の加入拡大に苦戦した支部で多くの新採用職員が加入する結果が出ている。流れが変わったと感じており、こうした変化をチャンスに変えていこう」と述べました。
 組織と財政の予備討議については「出された意見は全て受け止めて検討したい」と述べたうえで、今後、4月末の各地連・支部からの討議結果の報告、今年度の財政の執行状況、本部ができる支出削減の工夫などを踏まえて大会議案を検討すると述べ、「6月時点の組合員数が最大のポイントとなることから、ぜひ全国で組合員拡大をすすめてもらいたい」と改めて訴えました。

 
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旅費法改定を機に要求前進
出張時のタクシー利用が柔軟に
 

 全司法では、家裁調査官の出張などを念頭に、タクシー利用を柔軟に認めるよう要求してきましたが、旅費法が改正されたことを受けて、裁判所でもタクシー利用の柔軟化が図られることになりました。長年の要求が前進したことになります。最高裁は、その趣旨を周知するために、4月21日付で下級裁に対する事務連絡を発出しています。
 同事務連絡には、タクシーを利用することができる場合について、
@ 公共の交通機関がない又は運行本数が著しく少なく徒歩による移動が困難な場合
A 用務の緊急性や時間的な制約によりタクシー等以外の公共の交通機関による移動では用務に支障を来す場合
B 用務の目的・内容からタクシー等を利用することが合理的である場合
 の3つをあげて、「これら3つの場合のいずれかに該当すると判断すれば、タクシーを利用して差支えなく、抑制的に運用する必要はありません。適正迅速な事件処理等のために必要な場合には、適切にタクシーが利用されるようにしてください」と明記されています。
 また、豪雨や酷暑といった気象条件の場合、重い荷物を持っていく必要がある場合、危険な野生動物と遭遇する可能性があるような道路状況などの具体例もあげて、タクシー利用が検討できるとしています。

 
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従業員の尊厳や心身を傷つけるカスハラ 対策が重要
 
講師の津川剛さん
(全労働書記長)

 全司法本部は4月24日、全労働省労働組合書記長の津川剛さんを講師にお招きし、カスタマーハラスメント対策学習会をオンラインで開催しました。

カスハラとは何か、どう対応するのか

 津川さんは最初に、2017〜8年頃に厚労省がパワハラの検討を行う中で「顧客や取引先からの著しい迷惑行為」が問題となってカスハラ対策の検討が始まったことから説き起こし、今年の4月に労働施策総合推進法改正案が国会に提出された経過に至るまでを説明しました。また、その背景には、UAゼンセンなど労働組合のとりくみがあり、企業と労働組合が連名で対策方針を策定するなどの動きがあることも紹介されました。
 続いて、カスハラの定義について厚労省が民間企業に示しているマニュアルでは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・様態が社会通念上不相当なものであって、当該手段・様態により、労働者の就業環境が害されるもの」とされているものの、企業や業界によって違いがあるといった問題意識を示されたうえで、「迷惑行為を体験した後、寝不足が続いた、心療内科等に行ったというアンケート結果もある。カスハラは従業員の尊厳や心身を傷つけ、健康被害や退職にもつながりかねないということを重視してとりくみをすすめる必要がある」と述べられました。

厚労省の職員等向け『要綱』を策定し、随時改定

 また、全労働との交渉などを経て厚労省が行っているカスハラ対策では、『局署所の職員及び来庁舎の安全確保対策要綱』が策定され、随時改定されているとのことで、「これを職場の隅々まで定着させていくことが課題になっている。最近では、SNS等での誹謗中傷への対応も課題」と述べられました。
 また、参加者の質問に答えて、厚労省における電話でのカスハラ対策について「電話はほとんどがナンバーディスプレイになっているものの、録音機能がついているものは予算の関係もあって半数程度。一方、外部から着信があった場合、まずはコールセンターが受けて担当部署に振り分けるようになっており、コールセンターで電話を受けた際には『この会話は録音することがあります』とアナウンスを流すことで、抑止効果につながっている」と述べられました。

カスハラ対策の具体的とりくみ

(厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』より)

カスハラを想定した事前の準備

1)基本方針・基本姿勢の明確化と周知・啓発
 → 組織のトップがカスハラ対策に向けた基本姿勢・基本方針を明確に示す。
 → 組織としてカスハラから従業員を守るという基本姿勢・基本方針や
  具体的なとりくみ・対応を従業員に周知・啓発する。
2)従業員(被害者)のための相談体制の整備
 → カスハラを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、
  または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。
3)対応方法、手順の策定
 → カスハラ行為への対応体制や方法などをあらかじめ決めておく。
4)社内対応ルールの従業員への教育・研修
 → 顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの具体的対応について、教育・研修を行う。

カスハラが実際に起こった際の対応

1)事実関係の正確な確認と事案への対応
 → カスハラに該当するか否かを判断するため、顧客や従業員等からの情報をもとに、
  その行為が事実であるかを確認する。
 → 確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに過失がある場合は謝罪し、
  商品の交換を行うなどの対応を図る。瑕疵や過失が無い場合には要求に応じない。
2)従業員への配慮の措置
 → 被害を受けた従業員への配慮の措置を行う
  (一人で対応させず、複数名で組織的に対応する。メンタル不調への対応なども行う)
3)再発防止のためのとりくみ
 → 同様の問題が発生することを防ぐため、対応の見直しや改善を行うとともに、
  カスハラ対策を継続的に実施する。

 
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確実に声は届いていた 慎重審議を生んだ組合の力
 
 
議員要請を終えて
国会議事堂(参議院)前にて

 4月10日、裁判所職員定員法改正案の審議が参議院法務委員会で行われ、私はこれを傍聴しました。
 裁判所の人員は「裁判所職員定員法」という法律にもとづいて決められます。今回の「改正」案は、裁判所の定員を47名減員する内容であるため、全司法はこれに反対し、3月6日、衆・参両院の法務委員全員に対して慎重審議を求める要請行動を実施しましたが、その成果をこの目で確かめるために傍聴に行きました。なお、衆議院の審議は3月14日に行われており、私はこちらも傍聴しています。
 委員会では「人が減れば現場は回らない」「家裁はさらに多忙になる」といった議論が交わされ、現場の実態に即した審議がなされました。
 議員の発言の多くは、私たちが要請行動を通じて秘書や議員に直接伝えた声にもとづくものでした。組合の行動が確実に国会を動かしていると実感しました。中には「裁判所は予算を取るのが下手だ」との指摘もありました。だからこそ、私たちの現場の声が、予算や定員の根拠として必要なのだと再認識しました。
 法案は可決・成立してしまいましたが、国会議員の多くは、裁判所の現場に対する理解を深め、増員の必要性を真正面から受け止めようとしている姿勢を感じることができました。

ぜひ、自分の目で確かめてほしい

 審議の様子はオンラインでも視聴可能で、アーカイブもありますので、ぜひ一度、見てみてください(※衆議院、参議院のHPにリンクがあります)。
 ただ、実際にその場に足を運ぶと、国会の緊張感、張り詰めた空気を肌で感じることができました。中継では味わえないものが、現場にはあり「行ってよかった」と心から思いました。空気ごと記憶に残る体験です。
 「職場の実態を伝える」――それは本部交渉でも、国会議員への要請でも変わりません。私たちが日々やっていることは、すごいことなのです。
 議員も、私たちも、現場の声を集め、それを政策に反映させようとしています。その役割を担っていることに、誇りを持ってほしいと思います。
 傍聴という経験を通じて、「声は届く」という確信を得ました。この実感を、多くの仲間と共有したいと強く感じています。

 
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