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	| 講師の津川剛さん (全労働書記長)
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 全司法本部は4月24日、全労働省労働組合書記長の津川剛さんを講師にお招きし、カスタマーハラスメント対策学習会をオンラインで開催しました。
 カスハラとは何か、どう対応するのか
 
 津川さんは最初に、2017〜8年頃に厚労省がパワハラの検討を行う中で「顧客や取引先からの著しい迷惑行為」が問題となってカスハラ対策の検討が始まったことから説き起こし、今年の4月に労働施策総合推進法改正案が国会に提出された経過に至るまでを説明しました。また、その背景には、UAゼンセンなど労働組合のとりくみがあり、企業と労働組合が連名で対策方針を策定するなどの動きがあることも紹介されました。
 続いて、カスハラの定義について厚労省が民間企業に示しているマニュアルでは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・様態が社会通念上不相当なものであって、当該手段・様態により、労働者の就業環境が害されるもの」とされているものの、企業や業界によって違いがあるといった問題意識を示されたうえで、「迷惑行為を体験した後、寝不足が続いた、心療内科等に行ったというアンケート結果もある。カスハラは従業員の尊厳や心身を傷つけ、健康被害や退職にもつながりかねないということを重視してとりくみをすすめる必要がある」と述べられました。
 
 厚労省の職員等向け『要綱』を策定し、随時改定
 
 また、全労働との交渉などを経て厚労省が行っているカスハラ対策では、『局署所の職員及び来庁舎の安全確保対策要綱』が策定され、随時改定されているとのことで、「これを職場の隅々まで定着させていくことが課題になっている。最近では、SNS等での誹謗中傷への対応も課題」と述べられました。
 また、参加者の質問に答えて、厚労省における電話でのカスハラ対策について「電話はほとんどがナンバーディスプレイになっているものの、録音機能がついているものは予算の関係もあって半数程度。一方、外部から着信があった場合、まずはコールセンターが受けて担当部署に振り分けるようになっており、コールセンターで電話を受けた際には『この会話は録音することがあります』とアナウンスを流すことで、抑止効果につながっている」と述べられました。
 
 カスハラ対策の具体的とりくみ
(厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』より)
 カスハラを想定した事前の準備
 
 1)基本方針・基本姿勢の明確化と周知・啓発
 → 組織のトップがカスハラ対策に向けた基本姿勢・基本方針を明確に示す。
 → 組織としてカスハラから従業員を守るという基本姿勢・基本方針や
 具体的なとりくみ・対応を従業員に周知・啓発する。
 2)従業員(被害者)のための相談体制の整備
 → カスハラを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、
 または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。
 3)対応方法、手順の策定
 → カスハラ行為への対応体制や方法などをあらかじめ決めておく。
 4)社内対応ルールの従業員への教育・研修
 → 顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの具体的対応について、教育・研修を行う。
 
 カスハラが実際に起こった際の対応
 
 1)事実関係の正確な確認と事案への対応
 → カスハラに該当するか否かを判断するため、顧客や従業員等からの情報をもとに、
 その行為が事実であるかを確認する。
 → 確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに過失がある場合は謝罪し、
 商品の交換を行うなどの対応を図る。瑕疵や過失が無い場合には要求に応じない。
 2)従業員への配慮の措置
 → 被害を受けた従業員への配慮の措置を行う
 (一人で対応させず、複数名で組織的に対応する。メンタル不調への対応なども行う)
 3)再発防止のためのとりくみ
 → 同様の問題が発生することを防ぐため、対応の見直しや改善を行うとともに、
 カスハラ対策を継続的に実施する。
 
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