「全司法が勝ち取ったものは何ですか?」との質問を受けることがあります。むしろ、裁判所の職場に関する施策で、全司法が関わらないものはありませんが、ここでは、その一部をご紹介します。
「サービス残業があってはならない」
1990年代に「サービス残業や持ち帰り仕事については、あってはならない」との回答を勝ち取り、超過勤務をすれば、手当が必ず支給される到達点を築いたことは、その後の裁判所の勤務時間管理につながる成果となっています。昨年6月には全司法との交渉を受けて、最高裁は改めて超勤時間把握の徹底にむけた事務連絡を発出しました。
「事務の簡素化・効率化」で超勤縮減
事務の簡素化・効率化は、超勤縮減の観点から2019年以降、全司法の要求で具体的にすすめられてきました。上訴記録の丁数打ち廃止はそれを象徴する成果ですが、それ以外にも書記官事務をはじめ、様々な効率化策を実施させています。なお、当局は人員削減と結びつく「合理化」という言葉を使っており、「人員削減ありき」の検討をさせないことが重要です。
人員については、この間、厳しい情勢が続いていますが、90年代の司法制度改革からの流れを見ると、書記官の大幅増員などを勝ち取ってきました。現在でも毎回の交渉で増員の主張を続けています。
職種ごとの要求もきめ細かく主張して改善
処遇改善では、事務官の「退職までに5級」など、昇格運用を改善させることで、職員の賃金を引上げてきました。事務官の研修制度も全司法の意見を踏まえて、整備させています。2018年の電子速記タイプライターの官支給は、最高裁の姿勢を大きく転換させるものでした。家裁調査官では最初の任官にあたっての個別事情の配慮、「二重の異動」の解消など育成施策に関わる課題を改善させてきています。あわせて、調査官組合員のネットワークを活かして、様々な問題を解決してきました。「公募3年要件」の撤廃など非常勤職員に関わる要求も前進させています。
青年に関心が強い書記官試験や総研の運営については、成績の開示や研修中の休暇取得など、青年協を先頭に多くの要求を実現させています。昨年、寮の電子レンジが増設されたのは記憶に新しいところです。
休暇が取得しやすい職場環境づくり
年休をはじめ、休暇が取得しやすい職場環境も全司法が勝ち取った成果です。とりわけ、育児休業をはじめ、育児・介護等に関する制度は全司法が国公労連に結集して勝ち取ったものですが、裁判所での運用にあたっても「両立支援制度ハンドブック」を作成させ、職場に周知することを通して権利を定着させてきました。育児休業時の代替要員の確保も全司法が交渉で勝ち取った成果です。
異動の内示時期、異動希望の実現や個別事情への配慮
「異動は官側の都合で行うもの」というのが当局の考え方ですが、異動にあたって、できるだけ内示時期を早くさせ、10日の赴任期間を徹底させたのは全司法が勝ち取ったものです。また、本人の家庭事情に「配慮する」等の回答を引き出したことで、数多くの職員の異動要求の実現につなげてきました。
健康管理施策を積極的に提案
健康管理懇談会の開催やストレスチェックの実施も、全司法が積極的に提案する中で、その意見を踏まえて行われるようになりました。また、ハラスメントについては「その防止が不可欠」との回答も引き出しています。これらを足がかりに、さらに健康管理施策をすすめさせることが、今後ますます重要になっています。
賃金や休暇制度の改善にも大きな力を発揮
賃金や休暇制度については人事院の勧告等で決まる制度になっていますが、最高裁は全司法との交渉で「人事院に伝える」と回答し、実際に全司法の意見や要望を人事院等に伝えているようです。もちろん、全司法は国公労連に加盟して、直接、政府や人事院とも交渉しています。
最高裁が「意見は謙虚に聞くべき」と位置付けた
こうした様々な要求前進に決定的な役割を果たしているのが1992年に最高裁が出し、「(全司法の)意見については、謙虚に聞くべきである」とした3・18事務総長見解です。これにより、全司法は職員を代表する立場で交渉等に臨み、裁判所の職場で起こるあらゆる問題について、意見を述べ、裁判所の施策に反映することができています。
全司法が勝ち取ってきた主な成果
●1990年代(「3・18見解」からの流れ)
「3・18事務総長見解」、参事官室提言(事務官の研修制度の整備と処遇改善「退職までに誰でも5級」、書記官の増員など)、庁舎の新営・改修時の意見聴取(「3・20見解」)、育児休業制度の新設と運用(「母性保護ハンドブック」)、週休二日制、宿日直の廃止・縮小
●これ以外の時期
裁判所独自の人事評価制度(目標管理の手法はとらない)、司法制度改革に伴う毎年3桁の書記官増、健康管理懇談会の開催、ハラスメント相談窓口の設置など
●2019年以降の動き
書記官事務の簡素化・効率化(上訴記録の丁数打ち廃止、実務講義案の電子データ化、全国統一の事務処理要領など)、事務官研修制度の充実、専任事務官の処遇改善(課専門職の増設、訟廷管理係長や新たな類型の専門職)、電子速記タイプの官支給、調査官任官時の「二重の異動」解消、非常勤職員の処遇改善(賃金、「公募3年要件」撤廃、病休の有給化など)、ストレスチェック制度の改善、
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