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全司法新聞
 
「家裁は一番身近な司法 その距離が遠くならないように」
家裁を考える集会2024
 

 全司法は11月23日、民法(家族法)改正による離婚後共同親権の導入や改正少年法の運用実態を切り口に家庭裁判所の機能と役割を考える「家裁を考える集会2024」を東京都内で開催しました。
 会場参加の65名に加えて、オンラインで約30名が参加し、ユーチューブ視聴を含めると全体で100名を超える参加があり、集会は大きく成功しました。


パネルディスカッションの様子
戒能民江さんが基調講演

基調講演

法制審の審議で感じた5つの問題点

 集会の基調講演として、「家庭裁判所に求められる役割―共同親権法制化と女性と子どもの人権保障をめぐって」というテーマでお茶の水女子大学名誉教授の戒能民江さんによる講演を受けました。
 民法改正のもとになった法制審議会(家族法制部会)で委員を務められた戒能さんは、「あくまで個人的見解」と前置きしながら、以下の5点をあげて、法制審での審議の問題点を指摘されました。

@「既定路線」だったのではないか
 第1に、そもそも共同親権の導入が「既定路線」だったのではないかということ。そのことは、弁護士などの実務家が少なすぎる等の委員の構成にも表われていた。
 審議の進め方も、法務省が用意した検討事項にそって各委員が意見陳述し、座長がまとめるという形であり、意見交換が少なかった。また、ヒアリングや調査研究結果などのエビデンスに基づいた議論が不十分だった。パブコメの扱いについても問題があった。

Aきわめて政治的な課題であった
 第2に、きわめて政治的な課題であったということ。2016年に作られた親子断絶防止議員連盟が「親子断絶防止法」の議員立法をめざした(法案にはならなかった)が、その流れからつながる動きがあり、審議中に一部国会議員の介入や行政の忖度があるのではないかと感じたこともあった。
 また、「親としての公平」を求める父権運動の流れも影響しているのではないか。

B家族法の「論点」の審議が不十分
 第3に、法案上程に至らなかった1996年の民法改正「要綱案」で課題となっていた論点(選択的夫婦別姓、離婚の破綻主義、離婚法制度など)の審議が不十分であった。
 また、民法上の重要な論点を審議する絶好の機会であったにもかかわらず、例えば「親権」「子の利益」などについて十分な審議がされなかった。特に「子の意見表明権」が明記されなかったことは、非常に残念だった。

C審議対象は「家族法制に限る」縛りが強かった
 第4に、「審議・検討する対象は家族法制に限る」という縛りが非常に強くあった。家族のあり方が多様化する中で、社会保障や就労の問題など民法だけでは対応できない様々な問題があるが、それが対象にならなかった。この点については、法制審として異例の附帯決議をつけた。

D諸外国の法改正の「経験知」に学ばない
 第5に、諸外国の法改正の「経験知」に学ばないこと。諸外国では「共同養育」の経験が一周終わって、課題が明らかになり、軌道修正しようとしている国(オーストラリア、イギリスなど)もあるが、その経験を活かすことなく、「周回遅れ」で参入していく審議だった。
 DV防止法についても、韓国や台湾ではきわめて先進的な法改正が行われているが、それに学ばないということがあったが、今回も同様の問題を感じた。

そして…「家裁の判断」に委ねられた

 こうした審議を経て、法制審(家族法制部会)が「共同親権」制度化に舵を切ったのは2023年4月からだと述べ、最初は「合意がある場合」の議論が始まり、やがて「子の利益」のために必要だと裁判所が認めれば強制的に共同親権になるという結論に広げられていったと述べられました。あわせて、「共同親権の場合、子の養育を行う監護者の指定はしないとされたが、それは不安定な状況を作り出し、子の利益のためにならないと思う」との問題点も指摘されました。
 そのうえで、「子への虐待、DVのおそれのある場合、父母間の協議不調その他の事情を考慮して共同親権行使が困難な場合」について家裁の判断に委ねられたことを踏まえ、家裁に望むこととして、人員、環境整備とあわせて、「全ての職員に対して、十分に時間をとって業務の一環として、DVなどの研修を実施して欲しい」と述べられました。そして、「家裁は一番身近な司法です。そこの距離が遠くならないように願っています」と述べて講演を締めくくられました。

パネルディスカッション

地域が持つ資源を活かし、生活とつながる

 集会後半のパネルディスカッションでは、戒能さんに加えて、社会福祉士の藤原正範さん、非行克服支援センターの横山勝さんの2名の家裁調査官OBも交え、フロア発言を絡めながら議論を深めました。
 研修所時代に三淵嘉子さんや内藤頼博さんの講義を受けたという藤原さんは「『寅に翼』は、生活と法を描いたドラマだった」と述べて、もともと生活に密着した裁判所として作られた簡易裁判所と家庭裁判所が「地裁化」することで、「生活と法が切り離されることになった」と問題提起しました。また、「家裁の体制整備とともに、地域が持つ資源をしっかり活かせないか。関係機関との連携など、地域の中で家庭裁判所が何をするのかを考えていかなければならない」と述べました。
 横山さんは、家裁調査官の広域異動政策について「地域に慣れて、地域が持つ資源を活かせるようになった頃に異動するというあり方が良いのか」と述べました。また、「アメリカの最先端の仕組みとして内藤頼博が持ち帰ったのが家裁調査官と家裁医務室だが、今や家裁医務室は風前の灯になっている」と指摘しました。

「上から目線」でなく「横に並ぶ支援」が重要

 「子の意思の把握」に関するフロア発言を受けて、戒能さんは「女性支援のとりくみでも、本人の意向や気持ちを聞くのが大変だというのは全く同じです。時間がかかるし、つい、『上から目線』が出て来てしまいます。『寄り添っていく』ことが大切ですが、それが難しい。そうした中で『横に並ぶ支援』ということが言われています。その人が見ている景色が対面だと見えない。横に並ぶと、その人が見ている景色が見えて、理解できるということです」と述べました。また、「子の意見表明権」について「時間がかかっても、本人の意向がちゃんと聞けた時の方が、結局は解決が早いのです。また、これまで子どもの意見を聞いてこなかったことを、敏感に感じ取っているのは子ども自身です。子どもの権利条約や子ども基本法の時代の法律として、『子どもの人格の尊重』の中から、あえて取り出して、今回、法律に明記することが、必須だったのではないか」と述べました。

増員や研修の充実は「法制審全員の合意」だった

 裁判官・書記官の増員要求はゼロ、家裁調査官は全国で5人という最高裁の次年度予算の概算要求について、戒能さんは「人手が足りない、専門性をきちんと育成していかなければいけないというのは、法制審も国会審議でも全員の合意で争いがないところなんです。最高裁も関与されていたはずですよ」と、驚きとともにあきれた表情を見せながら述べました。
 また、3名それぞれの立場から、裁判所のあり方として「内向きになり過ぎている」との問題点が指摘されるとともに、「全司法も内向きにならず、視野を広げて運動していって欲しい」との要望が示されました。
 なお、同日の午前中から集会「第1部」という位置づけで少年法対策会議および共同親権導入に関する全司法内部の会議を開催しました。
◆集会の模様は、ユーチューブでアーカイブ視聴が可能です。

 
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「安心してRoootSを利用してもらいたい」
秋季年末闘争第3回人事局総務課長交渉
 

 全司法本部は11月20日、秋季年末闘争におけるd松人事局総務課長との第3回交渉を実施しました。


課長交渉の様子

職員の健康管理

 メンタルヘルスの不調を抱える職員が急増している実態等を踏まえ、健康管理施策を抜本的に見直すよう求めたことに対して、「様々な事情を有する職員がいることも念頭に置きながら、健康管理施策の充実にむけて検討をすすめていきたい」と回答しました。
 健康管理懇談会でストレスチェックの結果を議題として取り上げるよう求めたことに対しては、「協議テーマ等については、各庁において、それぞれの庁の実情やニーズ等を踏まえて検討されるべきもの」と従前回答を繰り返しました。
 また、昨年度からストレスチェックに追加された職場環境改善に係る調査項目をメンタルヘルス対策に活用するよう求めたことに対しては、「幹部職員と当該集団の管理職員による原因分析や職場環境改善にむけた意見交換などに集団分析結果が活用されている」との認識を示しました。

ハラスメント対策

 ゼロ・ハラスメントの実現を求めたことに対して、「今後も引き続き、人事院規則の趣旨等を踏まえ、幹部・管理職員をはじめとする全ての職員に対する研修等の機会を通じた各種ハラスメントの防止に関する意識啓発、相談しやすい体制づくりやその周知等、ハラスメント防止に向けたより効果的なとりくみに努めていきたい」と回答しました。
 また、パワハラに向き合い、組織として対応するよう求めたことに対しては、「パワーハラスメントと認定された場合のみならず、職場環境に問題が生じていることが判明した時には、問題となる言動が繰り返されることのないよう(中略)個別具体的な事情を踏まえた対応が行われている」との認識を示しました。

デジタル化

 RоооtSについて「先行導入庁の協力のおかげで、主要な操作についてのバグは洗い出すことができ、その改修作業もほぼ終えることができた。今後も、不具合が見つかった場合は速やかに改修するので、安心してRoootSを利用してもらいたい」と回答しました。
 また、帳票出力や操作性に関する改善を要求したことに対しては、「まずはRoootSの安定稼働が最優先の課題であり、改修要望については、他にも複数並行しているシステム開発や基盤整備等の状況も踏まえて改修の可否や優先順位を検討することになる」と回答しました。

空調設備と柔軟運転

 空調設備の維持・改善に必要な予算の確保を求めたことに対して、「裁判環境、執務環境の改善に必要な予算の確保にむけて、引き続き努力を行いたい」と回答しました。
 また、中間期の冷暖房運転について柔軟に対応するよう求めたことに対して「冷暖房の柔軟稼働については、期間の制限はしていない」と回答しました。

代替要員等の確保

 育児時間の取得パターンの多様化や子の看護休暇の見直しが行われることを踏まえ、両立支援制度を気兼ねなく利用できる職場環境の整備を求めたことに対して、「今後とも管理職員をはじめとする職員の意識啓発をすすめ、職場全体で業務の見直しをすることにより、両立支援制度をよりいっそう取得しやすい職場環境作りに努めていきたい」と回答しました。

 このほか、民主的公務員制度の確立、ジェンダー平等、社会保障・共済制度について追及しました。

 
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LINEグループで信頼関係を構築し、加入へ!
青年協第2回常任委員会+最高裁交渉
 
和気あいあいと常任委員会

常任委員会

 11月10日、11日に青年協第2回常任委員会(中部地区と九州地区からそれぞれ1名がオブザーバー参加)を開催しました。同委員会では、第34回定期総会で確立した運動方針の具体化として、次回友好祭典は2026年に開催すること、今年も暮らしむきアンケートを実施し、回答目標数を550とすること、庁舎内に青年が少ない小規模庁勤務の青年を対象としたオンライン交流会を開催することを確認しました。
 また、全国各地の新採勧誘の取り組みが共有され、その中で「ファーストアタックの時点での加入はなかったが、その場で採用2年目の青年1人と新採用職員のグループラインを作成し、『職場の服装はどんなものが良いか』『お昼ご飯はどこで調達することが多いのか』等を気軽に質問できる環境を提供し、やり取りの過程で信頼関係を築くことが加入に繋がった」という成功例が報告されました。

人勧出されても青年のお財布事情は厳しい!
入寮したいが入れない、なのに自己負担が発生!?


最高裁交渉

 11月11日の交渉では、総研生意見交換会および全国の青年から集めた職場実態報告を基に、人勧での賃上げを踏まえても青年の生活が苦しいこと、デジタル化が進む一方で、現実の事務が簡素化されたと感じることは少なく、かえって使用するシステムが増えたことで事務が繁雑となっていること、ただ働き残業の原因の一つとして、声掛けはあるが、「今日やる必要はあるの?」という聞き方により青年が委縮している実態等を主張しました。また、総研生対策に関わっては、前期は入寮できたが後期になって入寮を断られ、通勤2時間弱かかることや自宅から所属庁よりも総研までの通勤費が高い場合にはその差額が自己負担となっていること、デジタル化により研修資料がデータ配布されたがPCを寮内に持ち出せないため居室内で予習・復習ができないこと、調査官補の任官庁の内示が遅く、赴任先の住居探しの直前に内示を受け高額な飛行機代を負担したこと等の実情を述べ、改善を求めました。
 回答については、従前回答でしたが、青年の声を最高裁にしっかり主張することができました。

 
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「増員わずか5人」の衝撃のもとで会議と交渉
地連調査官担当者会議+上京団交渉
 

 11月17日〜18日、2024年度地連調査官担当者会議と上京団交渉を行いました。


各地から家裁調査官が参加した上京団交渉

ただでさえ繁忙な現場に共同親権導入の不安

 共同親権を含む改正民法の施行に伴って家事事件や人事訴訟事件の増加が当然に予想され、ただでさえ繁忙な現場の家裁調査官が強い不安を抱いている中、来年度の概算要求では全国で約1600人の定員をわずか5人増やすだけという方針が示されたことに対し、衝撃と言ってもいい受け止めがなされています。そのような状況のもと、家裁調査官を中心とした家裁の繁忙状況を共有し、問題点や課題を最高裁当局に伝える重要な会議・交渉となりました。

都市と地方、それぞれの問題が浮き彫りに

 会議では、各地の職場実態や問題等が共有されました。とりわけ、都市部と地方とでは問題となる事項が大きく異なり、いずれも深刻と言える現状が明らかになりました。都市部においては、非常に繁忙な状況にあるにも関わらず、育児時間等を取得する職員が集中し、人員と実際の勤務時間のギャップによってマンパワーが不足し、地方では小規模庁を中心に任官直後の家裁調査官の配置が多く、主任家裁調査官の指導も十分に行われていない状況にあることが明らかになりました。そうした配置のもとで、地方庁で若手の家裁調査官が相次いで退職していることも看過できない問題です。また、タクシー利用の不便さなどによって出張の際の負担が大きくなっている実態や、管理職の事件負担の一方的な軽減などの問題も共有されました。どの職場でも、余裕がなく、改正民法施行に対して強い不安を抱いているのが現状です。

任官直後の調査官が参加。実態をリアルに伝える

 交渉では、家裁調査官の実情について、交渉参加者の主張を受けて率直な意見交換が行われるなど、職制を通じては明らかにならない現場の実態について、直接最高裁当局に伝えることができる貴重な機会となりました。また、本年3月まで家裁調査官補として裁判所職員総合研修所で研修を受けていた2人が参加していたこともあり、実務修育や総研での研修について問題意識をリアルに伝えることもでき、非常に有意義だったと思っています。
 今後も、全司法の主張に対する当局の動きを見据え、人的・物的体制の充実を求めていく必要があります。

 
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