全司法は5月31日、通算28回目の請願採択をめざし、全司法大運動の国会議員要請行動にとりくみました。全国から集めた「裁判所の人的・物的充実を求める請願署名」を国会に提出するため、92名の国会議員に対して要請を行いました。要請行動には全国から30名(本部を含む)が参加しました。
 |
 |
出発式で本村議員、仁比議員に署名提出 |
仁木博文議員(自民)に要請 |
 |
 |
寺田学議員(立憲)に要請 |
国会議員に職場実態をアピール |
請願が採択されれば「国会の意思」になる
午前中は、中矢委員長が講師となり、全司法大運動の意義について学習を行いました。憲法に「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する」と書かれているとおり、「国民主権は選挙で議員を選んで終わりではなく、国民のために仕事をしてもらうよう、いつでも働きかけることができる。その一つが請願(憲法16条)です」「国会に提出した請願が採択されたら、それは国会の意思になる」との説明に、参加者からは「請願や採択の意味がよくわかった」等の感想が出されました。
また、午後からの要請行動に向けて、@職員を31名減員した裁判所職員定員法は職場実態とかい離があること、A離婚後共同親権の導入などを含む民法改正法案が可決・成立したことで、家庭裁判所の体制整備(とりわけ家裁調査官の大幅増員)が必要不可欠であること、B裁判所予算は国家予算の0.3%しかなく、デジタル化への対応を含め、国として十分な予算をかけるべき時期にあること、C裁判所職員定員法を可決するにあたって、衆・参それぞれ「裁判所職員の労働時間を把握し、適切な労働環境を整えること」との附帯決議をつけているのに、超勤実態の把握がきわめて不十分である、といった国会議員にアピールするための具体的なポイントについて確認しました。
家裁の職場実態や法改正後の体制整備を伝えて要請
午後からの出発式には、法務委員を務める本村伸子衆議院議員、仁比聡平参議院議員(いずれも日本共産党)が参加され、参加者から裁判所の職場実態を伝えるとともに、請願署名を手交しました。
参加者からは民法改正を踏まえて、次のとおり、家裁の実態や共同親権が導入されることに伴う体制整備について多くの意見が出されました。
○家事調停の長期化が問題になっているが、職員や調停委員も含めて人的体制が変わっていないので、内部努力だけでは追いつかなくなっている。
○男性が育児に関わるようになったことで、監護親をどちらにするのか、より慎重な検討が必要になっており、調査官の調査が重みを増している。
○調査官の養成には2年かかり、その後も、経験を積む中で技量をつけていくので、急に増やせるものではない。共同親権についても、事件が増えてから対応するのでは遅い。
○共同親権に関する事件は、かなり手間のかかる調査が必要になると思われる。しかも、過去に離婚した夫婦についても申立てがある可能性が高く、法施行直後から事件が増加する懸念がある。
○家裁では書記官も繁忙であり、共同親権が導入されると、書記官の大幅増員も必要である。
○共同親権以外にも、祖父母の面会交流が認められ、複雑困難化が予想される。
○官用車が廃止されたことによって、出張時に公共交通機関を使わなければならならず、負担が増えている。タクシーを使おうと思っても運転手不足で、地方では稼働台数が減ってタクシーも使えなくなっている。
○学校の先生が忙しいもとで、学校に赴いての調査がたいへんになっている。
本村議員からは「離婚後共同親権の導入をめぐって、国会審議では家裁の体制がかなり議論された。最高裁の回答は『これまで体制整備をしてきた』と言い、他の部署から人員を持ってくるような雰囲気を感じたが、審議を通して、少し増員を検討するような様子も見えたので、引き続き純増しかないことを強調していきたい」との決意が述べられました。
「全司法のとりくみに心から敬意を示したい」
また、家裁以外についても次のような意見が出されました。
○中規模庁で裁判員裁判が係属すると、起訴されて9か月後にやっと裁判員の選任手続が始まるケースもあった。身柄を拘束されており、人権上も問題だと感じている。
○人員が増えないうえに、システム導入による効率化も図られていない。予算がないためにパソコンも最低限のスペックのものしか購入されていない。
○予算が少ないことで、災害時備蓄品の調達を削っていく方向になっている。
○ウェブ弁論の際に機器の設置から始めないといけないので、5分の期日をやるのに設営と撤去で1時間かかる状況になっている。
○いわゆる「ゼロゼロ融資」が終わって、貸金の回収で事件が増えている実感があるが、4月に人員が削減された。
○簡裁ではメルカリ、ペイペイなど、電子決済が増えてきたことによる事件増もある。
○成年後見、情報取得、財産開示など、国民のための制度が新たに導入されても、それに伴う人的体制整備がされないため、右から左に作業が流れているように感じる。裁判所が果たすべき役割を果たせていないとの思いを感じながら仕事をしている。
こうした発言を受け、仁比議員からは「みなさんの発言にもあったが、共同親権をめぐる国会論戦を通じて、多くの人たちの目に裁判所の現実が明らかになったのではないか。最高裁は『改正法の趣旨に照らして、適切に対応していくものと考えております』という答弁を繰り返したが、令和7年度予算の編成にあたって、これまでとは違うという構えが作れるように、共産党の国会議員団としてもがんばらないといけないと思った。裁判官を含めて現場の空気も変わってきているのではないかと感じるが、そうした状況を作ってきた全司法のとりくみに心から敬意を示したい」と述べて、全司法に対する期待を表明されました。
「裁判所にとって大切な活動をしていることを伝えたい」
その後、参加者を7班に分けて、衆議院・参議院の法務委員や過去に紹介議員になったことのある議員などに対して、要請行動を行いました。
とりわけ、「離婚後共同親権」導入に関する関心が高く、多くの議員室で熱心に話を聞いていただき、「裁判所は大丈夫か」(立憲)、「家庭裁判所が重要な役割を担うことになるのはわかっており、体制強化には賛同できる」(自民)、「導入に向け、何か対策を立てているのか」(自民)など、政党・会派を問わず賛同の声が出されました。その他にも「デジタル技術で裁判官のタスクをシェアする職員の役割にも期待しています」(自民)、「デジタル化を進めているのに、ワイファイ環境がないんですか」(維新)と言った質問や意見も出されました。
また、地元から上京したことを伝えると、急遽、議員本人が懇談に応じたり、同じ政党の議員を紹介するなど、丁寧に対応していただいた議員が複数おられました。
要請行動のまとめでは、参加者からは「裁判所の問題について関心を持っていただいていることを心強く感じた」「思った以上に共同親権の話題では理解を示してくださる方が多くおられた」など、手ごたえを感じた旨の報告がありました。
参加者の感想
・「署名を出した後に、このような活動をしていることは知らず、この活動も大事だと感じました。多くの青年に参加してもらいたいと思いました」
・「全司法がこうした裁判所にとって大切な活動をしていることを、未加入者にも伝えていきたい」
・(調査官の参加者から)「多くの方が家裁の充実を強く訴えてくださり、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。仲間がいることの心強さを改めて実感しました」
|