おいでやす全司法
プライバシーポリシー  
CONTENTS 全司法紹介 司法制度改革 少年法関連 全司法大運動 全司法新聞 声明・決議・資料 リンク サイトマップ
  トップページ > 全司法新聞 > 2024年6月 > 2425号
 
 
全司法新聞
 
「こんなにも復興が進んでいないのか」
能登半島地震支援ボランティアに参加して
 
 1月1日に発生した能登半島地震は、元日に起きたこともあって社会的に大きな影響を与えました。地震発生から4か月あまり経った現在の様子を、震災ボランティアに参加した関口さん、丹羽さんに報告していただきました。
 
珠洲市の家屋 輪島市の朝市跡

いまだに金沢市内から往復5時間近く

 全労連が取りまとめている「能登半島地震支援ボランティア」の第2次(4月19日から21日)及び第3次(5月10日から12日)派遣に、それぞれ本部中執の丹羽、関口が参加してきました。派遣地は津波、地震被害ともに甚大であった能登半島先端の珠洲市、能登町及び輪島市でした。
 支援内容は主に家財道具等の搬出でしたが、これらの地域へ向かう道路は多くの箇所で崩落しています。速度が40キロに制限され、いまだに金沢市内から往復5時間近くかかるため、支援作業は1日に2時間程度しか実施できず、私たちはとても歯がゆい思いをしました。
 また、水道・ガス・バス路線など公共インフラが完全復旧していない山間の地域も多く、雨漏りをしのぐための青いビニールシートを処置しただけの家屋もいたる所で目につきました。

人影もなく、時が止まっているかのよう

 特に言葉を失ったのは、半島先端の珠洲市の市街地の様子です。テレビで繰り返し報道されていた、ほぼ地震発生当時のままだったのです。被害が特にひどかった地域の一つである珠洲市蛸島町地区は、切り妻、妻入り、桟瓦葺きの屋根が軒を連ねる風情のある美しい、観光客にも人気の景観地区でした。しかし、今は住居部分が屋根に押しつぶされた全壊家屋や壁がゆがんで斜めに傾いたままの半壊家屋が道路脇に連なっている状況で、窓ガラスの破片、木材、屋根瓦などが粉々になって道路にはみ出し、美観地区の面影を完全に消し去っていました。
 人影もなく、時が止まっているかのようで、気が付けば「こんなにも復興が進んでいないのか」と驚きと悔しさと悲しさといろいろな思いがごちゃ混ぜになった涙があふれていました。また、住民のお一人からは「報道される地域にはボランティアも入るが、珠洲市にはほとんどボランティアも来てくれず、置き去りにされているよう。まだ支援が届かない地域もあることを知ってもらいたい」と話されました。
 大火災に遭った輪島朝市跡とその周辺も視察しました。横倒しになったままのビルや押しつぶされたままの輪島塗のお店や酒蔵が点在し、朝市跡も撤去作業にはほとんど手を付けられておらず、ここもまた震災が起きた1月1日のままでした。珠洲市同様、高齢化が進んでいたことで建物の権利関係も複雑で、撤去作業の実施も簡単にできない事情があると現地の方はおっしゃっていました。
 また、海底が3メートルほど隆起してしまった輪島港は、4月下旬から海底掘削をするための漁船移動が始められたようでしたが、漁業の全面再開はまだまだ先であることを実感しました。

継続的な支援が必要 『発信する』使命も感じた

 全国的には能登半島地震の続報はほとんど聞かれなくなっていますが、実際には甚大な被害を被った能登半島先端地域の復興は全く進んでいません。継続的な支援が必要であることをまざまざと感じました。
 また、いろいろな制約があり、現地での支援活動が思うように実施できない中、「活動に参加している私たちには『発信する』という使命もあるんだ」とはっとさせられ、見てきたこと・感じたことをいろいろな場面で伝えていくことの大切さも改めて痛感しました。
 この震災を過去のものとせず、引き続き被災地の状況を共有し、被災地に寄り添い続けていきたいと思った3日間でした。

 
ページの先頭へ
 
諸要求貫徹闘争期最高裁交渉スタート
職場実態にもとづき主張・追及
 
 次年度裁判所予算の概算要求と今後の裁判所の運営方針に私たちの要求反映をめざす諸要求貫徹闘争期の最高裁交渉がはじまりました。
 これまでに2回実施した富澤人事局総務課長との交渉概要をまとめてお伝えします。

【第1回交渉】

 5月15日に実施した第1回交渉では、人員、労働時間短縮・超勤縮減、労働基本権の確立、民主的公務員制度の確立、高齢者雇用・再任用制度、宿舎、旅費・庁費、宿日直、権利の課題で最高裁を追及しました。

人員

病休による欠員等「必要な対策が講じられている」と認識

職種担当も出席した第2回交渉
 デジタル化等を見据え、2025年度裁判所予算の概算要求で大幅な増員要求を行うよう求めたことに対して、「必要な人員の確保について引き続き努力していきたい」と回答しつつも、「増員をめぐる状況はよりいっそう厳しくなる」との認識を示しました。
 家裁調査官の増員については、「親権に関する規定の整備等を内容とする民法等の改正の影響はもとより、事件数の動向や事務処理の状況等をきめ細かく把握した上で、必要な人員の確保について努力していきたい」と回答するにとどまり、家族法制の見直しに伴う民法改正が人的態勢に与える影響について、最高裁の認識は示されませんでした。
 職場でメンタルヘルス不調を抱える職員が急増していることを踏まえ、病休等があった場合の機動的な応援態勢や最高裁が管理する「空き定員」の活用を求めたことに対しては、「応援態勢を組むなど必要な対策が講じられているものと考えている」と回答し、人的手当等がされず、他の職員の負担が増加しているという職場実態とかい離した認識が示されました。

労働時間短縮・超勤縮減

客観的記録を基礎とした勤務時間管理には消極

 ただ働き残業の根絶を求めたことに対して、「事務の合理化・効率化を推進して、超勤削減にむけたとりくみをこれまで以上にすすめていく必要がある」と、これまでの姿勢を維持しました。その上で、最高裁における事務の簡素化・効率化のとりくみが紹介されましたが、職場段階での事務の簡素化・効率化に結びついているか疑問を抱くものも多数あります。
 早朝、昼休み、休日における超過勤務を正確に把握するよう求めたことに対しては、「的確かつ遅滞なく把握し、適切な超過勤務時間の管理を行うようあらためて指導した」と回答しました。
 一方で、最高裁で行われている職員端末の使用時間の記録化や勤務時間管理システムを使った「客観的記録」を勤務時間管理の基礎とするよう求めたことに対し、「職員貸与端末のサインイン時刻およびサインアウト時刻の記録および勤務時間管理システムで記録される客観的記録は実際の勤務時間と必ずしも一致するものではなく、勤務時間管理のための補助的な資料の一つとして用いている」とこれまでの回答を繰り返し、消極姿勢を示しました。

高齢者雇用・再任用

意向調査結果を開示せず

 定年前再任用短時間勤務の2024年4月1日付け採用者数は、全国で29人であることを明らかにしました。
 一方で、情報提供・意思確認制度に基づく意向調査結果を明らかにするよう求めたことに対しては、「希望者数を回答することは相当でない」「同勤務を希望したが採用されなかった者については把握していない」と回答し、制度運用に関わる重要な情報について明らかにしませんでした。

宿日直

「宿日直体制を見直す必要があると認識していない」

 管内支部の宿日直廃止および連絡員体制廃止庁の拡大を求めたことに対し、「これ以上の拡大は困難な状況である」と回答しました。
 また、現状の宿日直体制を見直す時期にきているのではないかとの主張に対しては、「直ちに宿日直体制を見直す必要があるとは認識していない」と回答しました。

【第2回交渉】

 5月22日に実施した第2回交渉では、「国民のための裁判所」実現、職員制度、昇格の課題で最高裁を追及しました。

「国民のための裁判所」実現

法改正に伴う執務資料「できる限り早期に提供」

 裁判手続デジタル化をはじめとする各種制度について、国民が利用しやすく、国民に信頼されるものとなるよう求めたことに対しては、「職員との充実した対話を継続しながら、今後いっそう裁判手続のデジタル化や各種事務の簡素化・効率化のとりくみを推進していく必要がある」との姿勢を示しました。
 また、法改正に伴う執務資料の整備については、「施行日を踏まえて各庁が十分な準備期間が確保できるよう、できる限り早期に資料を提供したい」と回答しました。

「共同親権」導入の家族法改正も増員姿勢は示さず

 家族法制の見直しによって導入される「共同親権」等について、「改正法施行後の運用に関する大規模庁での集中的な検討や、全国規模の検討会の機会を設けるなどして、各裁判所における施行にむけた準備・検討が適切に図られるよう必要な情報提供やサポートに努めていきたい」との姿勢を示しつつも、人的態勢については「事件数の動向のみならず、法改正等による事務処理状況への影響等も踏まえながら、必要な人員配置に努めていきたい」との回答にとどまり、書記官・家裁調査官の増員にむけた姿勢は示されませんでした。

書記官

文字の見直し「近日中に指針を示したい」

 文字の取扱い見直しについて、「システム化による事務の標準化・合理化をすすめる上で大きな問題であると認識しており、近日中に指針を示したい」と回答しました。
 また、書記官事務の標準化について、「マイクロソフト365の導入やその活用を含めたデジタル化の検討にあたっては、事務処理の統一(標準化)という観点も当然必要になる」との認識を示しました。
 送達費用の手数料化を速やかに実施するよう求めたことに対しては、「送達費用を含む郵便費用の手数料化が裁判事務、とりわけ書記官事務に大きな影響を与えるものであることは承知しており、実施にむけては十分に検討をすすめていきたい」と回答しました。

事務官

「専門性の活用については引き続き問題意識を持っている」

 「組織見直し」に伴い整備された訟廷管理係長および新たな類型の専門職について、中・小規模庁への設置(庁規模緩和)を求めました。訟廷管理係長については「係の新設である以上、管理係の業務だけで係を新設できる程度の業務量がある(または今後その程度の業務量が見込まれる)ことが必要であり、高裁や規模の大きい地家裁を中心に配置することを考えている」と従前回答を繰り返したものの、新たな類型の専門職については「専任事務官の専門性の活用については、引き続き問題意識を持っているところである」と今後の足がかりとなる回答がありました。
 法廷警備員、速記官、家裁調査官、行(二)職、営繕技官、医療職の要求に対しては、従前回答にとどまりました。

昇格

「退職時5級の枠組みの維持に努めたい」

 次年度裁判所予算の概算要求にむけて、「級別定数の改定のために努力していきたい」との姿勢を示しつつも、「来年度予算における級別定数改定をめぐる情勢は全く予断を許さない」と回答しました。
 事務官「退職までに誰でも5級」の到達点を後退させないために60歳までに5級発令を求めたことに対しては、「これまで同様、退職時5級の枠組みの維持に努めたい」と従前の回答を繰り返しました。

本部の視点

 「共同親権」等の導入にあたって、家庭裁判所の機能強化が課題となっていますが、人的・物的態勢の整備について不安が残る回答となりました。
 「組織見直し」を契機に事務の簡素化・効率化をさらにすすめさせ、職員(とりわけ事務官)の処遇改善をはからせていくことが重要です。

 
 
ページの先頭へ