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人事院は国公労働者本位のアップデートを行え!
 

 人事院は2022年8月、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(給与制度のアップデート)」にとりくみ、「令和6年にその時点で必要な措置の成案を示し、施策を講ずることを目指す」ことを表明しました。2023年8月の勧告時の「公務員人事管理に関する報告」では、「措置を検討する事項の骨格案(主な取組事項)」を明らかにしましたが、抽象的・不明確な内容にとどまっています。2024年8月の勧告にむけ、アップデートの結果が適用される当事者である私たち国公労働者本位のアップデートとなるよう、国公労連に結集してとりくみを強める必要があります。

 2023年8月に人事院が示した「骨格案」は、@人材の確保への対応、A組織パフォーマンスの向上、B働き方やライフスタイルの多様化への対応の3つの課題に沿って報告されており、多くの事項が検討対象となっています。この間の私たちの要求とも関連付け、いくつかの点を見てみることとします。

新卒・若手はもちろん、全世代の処遇改善を

 2023年人勧に基づく給与改定で、大卒・高卒とも1万円以上の賃上げが行われましたが、全国平均での官民格差は解消されておらず、とりわけ地域手当が支給されない地域での格差が顕著となっています。また、都市部を中心とした8都府県では、高卒初任給が地域手当を加味しても地域別最低賃金を下回る水準となる地域が残されています。このような状況のもと、人事院は、初任給を引き上げるとしていますが、生活改善はもちろんのこと、人材確保の点からも新卒初任給引上げは当然の措置です。
 また、人事院は「若手・中堅の優秀者の給与の伸びは20歳台後半から30歳台にかけて鈍る」「これらの年齢層の職員の給与の満足度が低い」として、係長から本府省課長補佐級(3級〜7級)の俸給額の最低水準を引き上げ、「若手・中堅の優秀者層の給与水準を引き上げる」としています。同時に、「特に優秀と評価される職員に対する勤勉手当の成績率の上限を引き上げる」としています。この層で7級に達することは、皆無に等しく、中堅層までの処遇をいうならば、3級〜5級の級別定数拡大や昇格メリット拡大のための措置を検討すべきです。
 賃金の満足度が低いのは「優秀者」や「20歳台後半から30歳台」に限ったものではなく、中堅・ベテラン層を含む全世代共通の問題であることから、全体の処遇の改善を検討すべきです。

地域手当は市町村単位ではなく、大くくり化を検討

 地域手当の級地区分(支給割合)は市町村単位で決められていますが、人事院は、「級地区分の設定を広域化するなど大くくりな調整方法に見直す」としています。全労連の調査では全国各地の生計費に大きな差はないとの結果が報告されており、政府が閣議決定した骨太方針でも地域間格差の是正にふれられています。そもそも全国均質な行政・司法サービスを提供する国の機関に20%もの大きな賃金格差があること自体に問題があるといえます。現行の地域手当による地域間格差は是正・縮小するとともに、将来的には廃止し、それを原資に全世代を対象とする俸給表改善に活用すべきです。
 級地区分の「大くくり化」において、当該地域の支給割合を地域内の高い地域にあわせることは考えにくく、支給割合の引き下げとなる地域が出てくることが懸念されます。今回のアップデートで支給地域や支給割合を見直す場合には、職員にとって不利益変更とならない措置を検討させる必要があります。

新幹線通勤に係る通勤手当額の見直しを検討

 人事院は、民間人材確保の必要性や異動にあたっての新幹線通勤のニーズの高まりから、「新幹線通勤に係る通勤手当額を見直」す、「適用範囲を『採用』の場合にも拡大」するとしています。そもそも通勤手当は、官から当該官署で勤務することを命じられたことにより生じる通勤のための経費を実費弁償するものであることから、支給上限額が定められるようなものではなく、自己負担を完全に排除し、全額支給すべきです。また、ワークライフバランス確保の必要性や公共交通機関の偏在事情をふまえるならば、通勤距離や通勤時間短縮効果などの機械的な基準に固執することなく、柔軟に運用すべきです。
 また、マイカー通勤に係る通勤手当についても、ガソリン料金の実費を賄えないのが実態であり、駐車場料金も含め、実質的な自己負担を余儀なくされており、解消にむけた措置が同時に検討されるべきです。
 なお、単身赴任手当の適用範囲も、新幹線通勤に係る手当と同様に、「『採用』の場合にも拡大」するとしています。

配偶者の扶養手当を見直し、子の手当の増額を検討

 人事院は、「配偶者等に係る手当を見直す一方、子に係る手当を増額する」としています。その理由として、「民間において配偶者に対し家族手当を支給する事業所の割合は…減少傾向にある」ことをあげています。しかし、人事院自身が実施した2023年の職種別民間給与実態調査の結果では、配偶者に家族手当を支給する事業所の割合は56・2%と前年より微増しています。また、配偶者に支給する家族手当の平均月額1万2744円は、国家公務員の配偶者に係る扶養手当月額6500円とは大きな格差があります。子に係る扶養手当の増額は、配偶者に係る扶養手当の見直しとは関係なく実施すべきです。

再任用職員に支給する手当の拡大を検討

 人事院は、再任用職員についても「転居を伴う異動」などの人事運用が生じてきていることをふまえ、定年前再任用短時間勤務職員や暫定再任用職員に支給する「手当の支給範囲を拡大」するとしています。現在、扶養手当・住居手当・寒冷地手当・特地勤務手当が支給されず、一時金の支給月数も一般職員の約半分程度であるなど、再任用職員と一般職員の間に不合理な格差が持ち込まれています。
 手当の支給範囲や支給額を一般職員と同じにすることに加え、あまりにも低い給与水準を是正するなど、再任用職員の処遇改善を求めていく必要があります。

65歳定年を見据えた給与カーブのあり方は引き続き検討

 人事院は、「65歳定年の完成を視野に入れた60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方」については、「引き続き検討を行っていく」として、先送りしています。
 定年年齢65歳が完成するまでの間の「当分の間」の措置として、60歳超の職員の賃金は60歳時点の7割まで引き下げられますが、2023年の人事院の調査では、「非管理職」では60・2%の事業所で「給与減額なし」、給与を減額した事業所の「非管理職」の給与水準は60歳までの77・3%となっており、公務と民間の実態には相当な乖離があります。60歳に達したことのみを理由に3割もの賃下げを実施するという年齢差別かつ高齢層職員のモチベーションを低下させる制度は「当分の間」であったとしても受忍できるものではなく、ただちに是正されるべきです。

「優秀者」等の一部の職員のためではなく、国公労働者本位のアップデートを

 人事院は、「(給与について)様々な立場の職員にとってより納得感のあるものとなるよう、分かりやすくインクルーシブ(包摂的)な体系を志向し、より職務や個人の能力・実績に応じたものにシフトする」必要があるとの方向性を示しています。
 前述したとおり、新幹線通勤に係る通勤手当額の見直しや再任用職員に支給する手当の拡大など、これまでの要求が一定前進すると思われる事項はあるものの、政府の一貫した総人件費抑制政策と能力・実績主義の強化の方向性のもと、「優秀者」等の一部の職員のためのアップデートとなることも懸念されます。
 今後とも、学習を深めるとともに、国公労連に結集し、@あらゆる不合理な賃金格差を解消・是正すること、A全世代の職員のモチベーションを向上させること、B能力・実績主義の強化を是正することを求め、今回のアップデートが国公労働者本位のものとなるようとりくみをすすめる必要があります。

 
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専任事務官処遇の道を示す前進回答
春闘期の最高裁人事局長交渉・人事局総務課長交渉
 
 全司法本部は、「2024年国公労連統一要求書」、「非常勤職員制度の抜本改善にむけた重点要求書」及び「2024年4月期における昇格改善要求書」に基づく要求の前進をめざし、3月5日に富澤人事局総務課長と、同12日に徳岡人事局長との最高裁交渉を実施しました。
 

人事局長交渉に臨む全司法本部

全司法の要望は関係機関に伝える

 物価上昇のもとで実質賃金が低下し、生活がますます厳しくなっている実態を踏まえ、「賃上げ」にむけた人事院への働きかけとともに、政府に対して、人事院勧告を待つことなく「政策的な賃上げ」を行うよう働きかけを求めました。
 また、諸手当の改善に関わっては、地域手当や通勤手当等の改善にむけて、「給与制度のアップデート」にむけた検討への意見反映を求めました。
 最高裁は、いずれも「要望は関係機関に伝わるようにしたい」と回答しました。

ステップアップ制度は従前回答にとどまる

 非常勤職員制度に関わっては、ステップアップ制度を積極的に活用して常勤化を図るよう求めましたが、従前回答にとどまりました。
 また、人事院において「任用のあり方」が検討されていることを踏まえ、公募要件の撤廃や非常勤職員の休暇制度を常勤職員と同等の制度とするよう求めたことに対しては、「職員団体の要望は関係機関に伝えることとしたい」と回答しました。

「組織見直し」について、各級機関との意見交換を要求

 国民本位の行財政・司法確立の課題では、「組織見直し」について「『組織見直し』に対する全司法の考え方」(第84回中央委員会決定)を基に追及しました。
 事務の簡素化・効率化をさらに進めるよう求めたことに対しては「今後もできるところから順次速やかにとりくんでいきたい」との姿勢を示し、全司法の各級機関と意見交換を行うよう下級裁への指導を求めたことに対しては「相互の信頼関係の下、勤務条件やこれに関連する事項についてはその意見を聴取するなど誠実に対応してきた」とした上で、「下級裁当局に対しても、職員団体に対して同様の認識で臨むよう、その指導を一層徹底していきたい」と回答しました。

定年前再任用短時間勤務制度の運用詳細を明らかにせず

 高齢期雇用・定年延長の課題では、定年前再任用短時間勤務職員について「2024年4月1日付けの採用予定者数は全国で約30人となる見込みである」ことを明らかにしました。
 一方で、「定年前再任用短時間勤務の希望者は少数であり、希望の状況も変動し得るものであるから、希望者数を回答することは相当ではないと考えている」と回答し、情報提供・意思確認制度に基づく意向調査の結果や定年前再任用短時間勤務の希望が認められなかった職員の有無、認められなかった職員で退職を選択した職員の有無等について、一切明らかにされなかったことは不満です。定年前再任用短時間勤務制度の運用は雇用に関わる問題であり、国会の付帯決議に基づく十分な「協議」を行うためには制度が円滑に運用されているかを把握する必要があることから、こうした情報を明らかにするよう追及を強めていく必要があります。

フレックスタイム制の運用を見直す

 労働時間短縮等の課題では、フレックスタイム制について、「フレックスタイム制の活用による柔軟な働き方を推進するため、2024年5月以降の運用方針について見直しを検討している」「運用の詳細については説明できる段階になったら説明したい」と回答しました。

赴任旅費の合理的な事務処理態勢を検討

 労働条件・業務関連予算等の課題では、赴任旅費(移転料)を早期に支給するよう求めたことに対し、最高裁は「迅速な支給のため、各庁には特に移転料等の負担の大きい職員を優先して処理する工夫をお願いしている」と回答し、「赴任旅費について、各庁の実情に応じたより合理的な事務処理態勢とできないか検討している」と回答しました。

専任事務官の専門性の発揮を処遇に反映させる

 昇格改善にむけて、60歳までに5級昇格を実現するよう求めたことに対し、最高裁は「これ以上の占有期間の延長を行うことは極めて困難」として、「これまで同様、退職時5級の枠組みの維持に努めたい」と回答しました。
 他方で、「組織見直しの検討にあたっては、専任事務官の専門性の活用や能力発揮についても考慮しており、組織見直しにより専任事務官の活用や能力発揮ができるようにし、専門性を活かした能力の発揮について適正な評価を行い、職員の処遇に適切に反映できるよう努めていきたい」として、「新たな類型の専門職については、既存の係専門職と比べ所掌係の業務に留まらないより高度な専門性を発揮してもらうことを踏まえた昇格運用とする」「新設される訟廷管理係長に専任事務官が任命された場合の昇格運用については、本庁係長の枠組みを用いる」と回答しました。
 これらの回答は、「今後の方向性」で専門性を活かせる態勢整備と専門性を活かした能力の発揮について適正な評価を行うことで「職員の処遇に適切に反映できるよう努めていきたい」と説明していることや、2023年秋季年末闘争期の人事局長回答(「専任事務官の専門性の活用に関し、職務給の原則を踏まえつつ、専任事務官の専門性の発揮を処遇に反映させることについて検討することとした」)を具体化するものとして評価できます。

 
 
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裁判所職員を31人減らす法案が審議 裁判所職員定員法
 

 来年度の裁判所職員の定員について、裁判官以外の職員を31人減員する法案が提出されています。3月15日に衆議院法務委員会で審議が行われ、全司法から井上書記長、猪股書記次長、小田青年協議長、丹羽国公派遣中執が傍聴しました。

家裁は共同親権に対応できるのか

 民法改正法案(共同親権導入)が国会に提出されていますが、これが成立した場合に家裁の人的態勢強化が必要ではないかとの意見が多数出されました。特に、家裁調査官については育成が必要であるところ、法律施行前から人員を増やしておくことが必要ではないかとの指摘もありました。
 これに対し最高裁は、「法改正の影響、社会情勢の変化のほか、裁判所全体の事件動向や事件処理状況等も注視しながら必要な態勢を検討して整備したい」という趣旨の答弁をして、増員等には言及せず、質疑と噛み合わない場面もありました。

中央行動参加者の職場実態が国会で議論に

 3・7中央行動で全司法との意見交換をした本村議員からは、行動参加者から聴き取った職場実態をとり上げながら、裁判所職員の増員の必要性が指摘されました。具体的には、@育児・介護によりフルタイムで働ける職員が少なく、若い事務官が1人で夜遅くまで超勤している実態、A病休者の補充がされないことで周囲の職員の負担が増え、ドミノ倒しのように病休者が出ている状況、B小規模庁では宿日直が頻繁に当たり、職員が疲弊している実態等が紹介されました。
 これに対し最高裁は、「事件動向を踏まえると令和6年度は、これまでの増員分を有効活用しつつ、審理運営の改善工夫等を引き続き行うことで、適切かつ迅速な事件処理を行うことができる」と答弁し、最高裁の認識と職場実態との乖離が見えました。

全司法大運動がますます重要!

 議論の結果、法案は賛成多数(反対は日本共産党とれいわ新選組)で可決されました。その後、19日には衆議院本会議で可決され、(3月22日)現在、参議院で審議中です。
 夏頃には、国家公務員の新たな定員合理化目標数の策定が予想されています。裁判所ではデジタル化が進み、共同親権の導入も議論されている中、「国民のための裁判所」実現に必要な人員を確保するためには、全司法大運動のとりくみがますます重要になってきます。全支部において、署名集約および地元議員への要請行動にしっかりととりくんでいきましょう。

 
 
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