全国の中心となって裁判所のデジタル化の検討をすすめている最高裁。パソコンのサインイン・サインアウトで勤務時間を把握したり、フリーアドレスの職場があったり、テレワークの試行が行われたり、今後の職場を考えるうえでのパイロットとしても注目されます。そこで働く組合員のみなさんに集まっていただき、職場の様子を聞いてみました。
最高裁に異動して戸惑ったことは?
書記長2期目となる金子さんは「みなさん忙しそうですが、なんとか組合員に集まってもらう機会を作りたいと思っています」と今後の抱負を語りました。そんな金子さんは裁判部で事務官をしています。主な仕事は、上告事件について調査官が検討する資料を作成すること。「記録が電子化されれば、仕事も大きく変わるかもしれません」とのことでした。
最高裁は全国から職員が異動してくる職場ですが、最高裁に異動してきて、下級裁との違いを感じたこと、戸惑ったことについて聞いてみました。
「最高裁に異動したからというよりは、事務局の仕事が初めてだったので、決裁や起案など、事務局での仕事の進め方に戸惑った感じです」と細田さん。今回の参加者は、原庁で書記官として勤務していた人が多かったので、他にも同様の感想が述べられました。
「国会対応があること」と言うのは石川さん。国会議員を対象にした想定問答を起案するそうで、国会での質問通告があって17時頃に連絡が入り、その日のうちに準備することも少なくないとのことでした。
今、大きく動いている民事関係を担当している内海さんを含めて、3人は書記官事務を担当する総務局第三課の配置ということもあり、「職場の雰囲気は現場の書記官室にいた時とそう変わりません」とのことでした。
他方で、他の部署の組合員からは「業務が基本的に縦割りで、職員同士のコミュニケーションも活発とは言い難いため、他の係の事務がよくわからない」「異動者へのフォローはあまりない」「周りがフォローするとか、そういう余裕や雰囲気があまりない気がします」との発言もありました。
「最高裁ならでは…」と感じたこと
最高裁ならではの用語が多いという話が、多くの人から出されました。例えば石川さんが教えてくれた「連明(レンメイ)」という言葉。国会対応の時に「連絡先を明記して、待機せずに帰っても良い」という意味だそうです。
経理局用度課で役務の調達を担当している書記次長の比企さんは、もともと東京管内の会計部門にいたことから「最高裁だけがやる契約もありますが、進め方そのものに大きな違いはありません」とのことでした。最高裁でやっている契約は、例えば、全国で配布するパンフレット類や統一調達の用紙などがあるそうです。
自動車運転手の山崎委員長をはじめ、最高裁支部は行(二)職のみなさんが活動を支えています。東京地連の執行委員でもある守衛の鈴木さんによると、立哨や庁内巡視といった通常の守衛業務に加えて、万が一火事が起きた場合は駆けつけて消防にあたるとのことで、そのための資格も取ったそうです。また、最高裁の運転手の仕事として裁判官の送迎がありますが、登退庁の送迎だけでなく、国会や皇居をはじめ外出の際にも送迎があり、それに見合って運転や待機の時間が不規則に発生するそうです。
デジタル化を検討する最前線で
今回は総務局で働く組合員に多く参加していただきました。
焦点になっているデジタル化の関係では、デジタル推進室とフェーズ3以降の書記官事務の業務フローについて意見交換をしたり、システムの開発業者に書記官事務全般について伝えるなどしているとのことです。
ここで、小田青年協議長が「『書記官事務の整理』って今も生きているんですか?」と質問。「オワコンではありませんよ(笑)。書記官事務の整理は、個々の事件処理の場面において、事務の法的根拠を確認し、その目的を見定めた上で、書記官がどのような事務をどのように遂行することが適正迅速な裁判に資するか、状況に応じたベスト(ベターな)事務処理となるのか、といった視点の一つだと思っています。こうした視点は、現状を振り返って課題を分析する視点にもなりますし、デジタル化後の書記官事務の在り方の検討視点にもなりますので、今後も必要だと思っています」と答える細田さんに、小田さんはしきりに感心していました。
また、デジタル推進室の様子を聞いてみました。総務・企画グループにいる和田さんによると、自身は、繁忙度は比較的緩やかであるものの、システム開発グループはかなり忙しそうだとのことでした。デジタル推進室は自分の席が決まっていない「フリーアドレス」になっており、実際には座る場所はだいたい決まっているものの、自由に動くこともできるそうです。収納スペースが少ないとか、落ち着かないという人もいるそうですが、和田さん自身は「相談したり応援したりする時は、気軽に席を替わったりできるので、良いのではないかと思っています」とのこと。
テレワークって、実際どうなの?
最高裁ではテレワークの試行が行われていますが、カチャット(画面転送ツール)を使うと、職場に来なくてもほぼ同じ環境で仕事ができるとのことでした。内海さんによると「テレワークにしておくと帰省しやすかったり、帰省先で仕事ができるのが便利でした」とのこと。また、育児を抱えている和田さんは「子どもの世話や看病が必要な時は、そもそもテレワークはできませんが、それ以外に、一緒に家にいられることで助かることはあります。作業は出勤した方がはかどるのですが、子どもの用事が入ったり、お迎えが早い時などは、通勤時間がない分だけ助かります」と言います。一方、「テレワークでは超過勤務はしないことにしていますが、やろうと思えばできてしまうので…」との率直な声も聞かれ、勤務時間管理はやはり課題になりそうです。
マンパワーで何とかなっている職場?
パソコンのログイン・ログアウトの時間が記録されるようになったことについては、それ自体が勤務時間ではないこともあり、全体的にそれほど意識されてはいないようです。石川さんによると「パソコンを立ち上げた時にわかるので、自分でチェックするきっかけにはなると思います」とのことでした。
全体的に忙しい職場実態はありますが、懇談会に参加された組合員のみなさんは「極端に遅くなることはありません」「超過勤務はきちんと申請しています」と言われていました。ただ、「係によっては相当程度超勤をしているようです」といった意見も出されており、最高裁全体としては、長時間労働の実態はかなりあるようでした。「組合員も少なく、『真面目で有能な方』が多いので、個人のマンパワーで何とかなっている職場なのかなぁと思っています」との感想も出されました。
今回はインタビューに加えて懇親会も行い、これを機に支部のLINEグループを作って、組合員同士のつながりを作っていこうということになりました。最高裁という特別な部署にいるからこそ、全司法でのつながりを持っておくことは重要です。
委員長の山崎さんは「最高裁の職場を良くするためにがんばります」と決意を述べました。今、最高裁の職場にいるみなさん、今後異動して来るみなさん、最高裁支部の活動に結集しましょう。
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