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全司法新聞
 
「集まる」を再構築、「出来なかった活動」を取り戻し、
さらなる前進を! 全司法第80回定期大会
 

大会で決意を固め、新たな気持ちで方針を確立

 全司法は7月23〜25日及び8月9日に、「活動の担い手を増やし、全司法が果たす役割を次の時代に繋げよう!」をメインスローガンに第80回定期大会を開催しました。
 3年余り続いた新型コロナウイルス感染症に対する社会的な扱いが変わり、「アフターコロナ」へと局面が変わったもとで、「集まる」とりくみを再構築し、コロナ禍で出来なかった活動を取り戻し、さらに前に進む決意を固める大会になりました。

全司法の組織と活動、今いる組合員を「足がかり」に

 定期大会には、代議員・オブザーバー・執行部・来賓など、全体で94名が出席し、大会議長に選出された森慧佑代議員(札幌)、副議長の堀昌和代議員(愛知)の進行で議事がすすめられました。
 開会あいさつで中矢中央執行委員長は、労働組合の歴史と役割から紐解いて「労働組合が頑張ることでしか職場は良くならないし、賃金は上がらない。どんなに厳しくても、この方法しかない」と述べました。そのうえで、全司法には「組織と活動」「今いる組合員」という2つの貴重な財産があり、これが「頑張るための足がかり」だと指摘して組織拡大の重要性を改めて強調し、「次の時代に繋ぐため、一緒に活動できる若い仲間を増やしていこう」と呼びかけました。

「対話」こそ活動を取り戻す第一歩

 来賓あいさつに続いて、運動方針案を提案した井上書記長は、組織強化・拡大のとりくみについて、@「集まる」とりくみの再構築、A組合員拡大のとりくみ、B「青年の組織化」のとりくみ、C次世代の運動の「担い手」を育成するためのとりくみの4点について提案しました。特に「『集まる』とりくみがコロナ禍のもとで最も制約を受けた活動だ」と指摘し、「組合員同士が集まり、『対話』することは労働組合の基本となるとりくみであるとともに、コロナ禍以前の活動を取り戻す第一歩だ」と述べました。
 また、プレート行動を背景とした2023年諸要求貫徹闘争の最高裁交渉について「『60歳までに5級』は厳しい一方、昇格運用の維持と事務官の処遇改善を回答したほか、重点要求に答える形で前進回答があった」と述べ、「まさにプレート行動を配置し、各地連・支部で議論してたたかう態勢を作り、最高裁に要求実現を迫った結果だ」と総括しました。そのうえで、要求の到達点を一つずつ確認し、「今後は、これらの回答を具体化させていくことが重要になる」と述べ、あわせて、地連・支部等での「最高裁回答を活用するとりくみ」を呼びかけました。

財政で修正案。本部案が賛成多数で可決

 一般会計予算案及び特別会計予算案に対して、鞆田順一代議員(香川)から宮城支部及び千葉支部が抱える未納組合費の一部を制度改革特別会計から支出して援助する修正案が、一般会計の地連交付金と組織対策費を執行率に合わせて減少させ、各支部の組合員数に応じて支部に交付する内容の修正案が東山広利代議員(愛媛)から提出され、執行部が提出した議案(原案)とともに討論が行われました。
 討論では、のべ79名から組織強化・拡大、職場諸要求の実現をめざすとりくみなどを中心に運動方針案を補強する発言がありました。中でも、あいさつをきっかけに職場での人と人との関係性を築くことの重要性について語った広島支部の発言が多くの参加者の共感を集めました。
 討論を経て、修正案提案者及び財政部長からの答弁と井上書記長が総括答弁を行い、採決の結果、修正案はいずれも否決され、原案がすべて賛成多数で可決されました。

関口さん(新)、丹羽さん(再)の2人を国公労連派遣で選出

 役員選挙では、立候補者全員が信任されました。
 専従役員では、新たに関口香織さん(神奈川)を選出しました。なお、関口さんについては丹羽秀徳さん(愛知)とともに国公労連中央執行委員に推薦するとの人事案件が承認されました。また、職種担当では、調査官対策にM口宜明さん(大阪)、事務官対策に東康浩さん(福岡)が新たに選出されました。
 最後に「軍備の拡張ではなく、国民生活を守る政策と予算を求める決議」と「大会宣言」を採択し、中矢委員長の団結ガンバローで閉会しました。
 なお、今回の大会は原則として全員参加としたうえで、個別事情によって代議員・オブザーバーのオンライン出席を認めるとともに、ユーチューブで組合員の視聴を可能とする措置をとりました。

 
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全司法の「2つの財産」を活かして次の時代に!
中矢委員長あいさつ
 
あいさつする
中矢委員長

「せめぎ合い」は今も続いている

 今、働く人たちの賃金を上げることが日本の最重要課題になっています。労働組合だけではなく、経済学者も有識者も、自民党を含む多くの政治家もそう言います。日本経団連などの財界団体もそう言いますし、岸田首相もそう言っています。しかし、だからと言って、賃金が自然に上がるわけではありません。労働組合が役割を果たさなければ、賃金は上がらないのです。
 使用者は働く場を提供し、労働者はそこで働いて、生み出した利益を分配します。取り分を増やしたい使用者にとって、賃金は最も削減しやすいコストです。一方、労働者にとって賃金は生活の糧です。そこで、文字どおり命がけのせめぎ合いが起きます。
 18世紀からの世界の歴史の中で、労働者が労働組合を作って話し合いで解決するのが最善の方法だという考え方が確立されました。そこで労働法が作られ、日本では憲法28条に労働基本権が書き込まれました。そのせめぎ合いは今も続いています。
 使用者が持っている力は「お金」です。賃金を使って労働者を競争させ、職場の管理を強め、政治家や政党に企業献金をして都合の良い法律や政策を作ってもらおうとします。
 労働者=私たちが持っている力は「数」です。数を増やして職場で影響力を持ち、使用者と交渉して賃金を上げ、働きやすい職場を作っていく。法律や政策も「数」の力、つまり「世論」を大きくして変えていく。それは、憲法や法律で特に労働組合に認められた権利であり、いずれも労働組合にしか果たせない役割です。
 1980年代に「新自由主義」という考え方が日本にも入ってきました。キーワードは「自己責任」です。「頑張った人が報われる」という言葉は「報われていない人は頑張らなかったからだ」と変換され、社会からこぼれ落ちる人たちが次々に出てきました。それは自然にできたものではなく、財界が利益を拡大するために政府に作らせたものです。その邪魔になる存在としてバッシングされたのが公務員であり、労働組合でした。私たちは、そうした時代の逆風の中で組織強化・拡大を進めざるを得なかった面があります。

労働組合でしか職場は良くならない

 しかし、「仕方がない」とあきらめるわけにはいきません。労働組合が頑張ることでしか職場は良くならないし、賃金は上がりません。どんなに厳しくても、攻撃されても、この方法しかないのです。
 頑張るための足がかりとして、全司法には2つの大きな財産があります。
 一つは、先輩たちが地道に職場で作り上げた組織と活動です。労働組合を一から作らなくてもいい、最高裁が「誠実に対応する」「意見は聞くべきである」と述べて当たり前に交渉ができ、私たちの要求で実際に職場のルールを作ることができる。これは「当たり前」ではなく、他の多くの労働組合が今も必死でたたかって勝ち取ろうとしているものです。それを、私たちは先輩たちから委ねられた貴重な財産として、今すでに持っています。
 もう一つの財産はみなさんです。組織が厳しくなったと言っても、現に全司法に入り、頑張っているみなさんが全国には多数います。若い仲間も少なくありません。そんな組合員こそが最大の財産です。そういう人がいる限り、全司法は続いていくと私は確信しています。だから自信を持って、みなさんの思いを活かし、知恵と力を出し合って、これからの全司法を作っていきましょう。
 本大会のメインスローガンは「活動の担い手を増やし、全司法が果たす役割を次の時代に繋げよう!」としました。頑張るためには一緒に頑張る仲間が必要です。だから、仲間を増やしましょう。特に一緒に活動できる若い仲間を増やしましょう。そのことを訴えて、私の挨拶とします。

 
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総括答弁(要旨)
「職場のルールを作る」役割を発揮し、
組合員同士の結びつき・つながりを強めよう
 

情勢
総括答弁する井上書記長

物価高騰のもとで、生活改善に賃上げは欠かせない

 賃金引上げのとりくみに関わって、物価高騰が続くもとで青年層の生活が苦しくなっている実態や定年引上げにより60歳を超えると賃金が7割に減額されることの問題点が指摘された。
 人事院が検討をすすめている「給与制度のアップデート」では「65歳定年を見据えた60歳前・60歳超の給与カーブ」の見直しが狙われている一方で、「俸給表、初任給・昇格・昇給の基準、諸手当などについて、一体的に取組」とされていることから、初任給の改善をはじめとした青年層の賃上げと高齢層の賃金抑制を許さない立場で労働者本位のアップデートを求めていく必要がある。

全司法大運動

署名集約数を伸ばすためのとりくみが必要不可欠

 全司法大運動について、複数の支部からこの1年間のとりくみ報告や反省点、今後の課題等が述べられた。
 全司法大運動は「裁判所の人的・物的充実を求める請願署名」を「組合員1人あたり20筆以上」集約することをとりくみの中心に据え、職場内のとりくみだけでなく、県国公や県労連、弁護士会や司法書士会など、幅広い団体等に協力を要請することで目標数の達成をめざしている(数の追求)。
 あわせて、街頭宣伝行動や地域で実施される各種集会等に参加し、裁判所の実情を国民に訴えていくとりくみ(世論形成)を重視していることから、こうしたとりくみを全ての支部で積極的に計画してもらいたい。

職場諸要求

職場実態を把握し、真に必要な人員配置を求めていく

 職場諸要求の実現をめざすとりくみに関わって、交渉にむけて「職場実態アンケート」にとりくみ、交渉結果等を職場に還元しているという活動が報告された。こうしたとりくみは活動の「見える化」につながるものであり、「職場のルールを作る」という全司法の役割発揮と「全司法の見える化」にもつながるものである。
 人員等の課題では、「欠員が生じ、人員が補充されるまで頑張ってきた職場で人員削減が強行された」「1名減の状態でスタートした職場で年度途中に退職者が出たため、応援態勢を組まざるを得なくなった」といった切実な実態が報告された。対応当局に対して、職場実態を踏まえ、具体的かつ詳細に必要な人員配置や増員を求めていく必要がある。
 労働時間短縮・超勤縮減等の課題では、調査官職種を中心に、テレワークの導入を希望する声があるとの意見が述べられた。下級裁へのテレワーク導入については、最高裁における試行の状況等にも注視しながら、問題点や課題の整理をすすめていく必要がある。
 健康を守るとりくみに関わっては、メンタルヘルスの不調を抱える職員が増加している実態やカスタマーハラスメントが増加している実態、管理職がパワーハラスメントを繰り返しているといった実態が報告された。問題等が発生した場合は、当該支部とも協力しながら問題解決を図っていく。
 裁判所のデジタル化に関わって、中部地連からデジタル化を課題に上高団交渉を実施したことが報告された。交渉にむけて実施した会議の中で明らかとなった課題や問題点については、本部としても最高裁当局に対する追及を強め、早期に明らかにさせていきたい。

職種

身に付けた専門性を処遇に適切に反映させる

 行(二)職に関わって、マイクロソフト365が行(二)職に導入されないことはおかしいとの意見が述べられた。コミュニケーションツールとして位置付けているマイクロソフト365を行(二)職も含めた全職員に導入するよう、最高裁当局に対する追及を強めていきたい。
 事務官に関わっては、処遇改善にむけて、4級発令が重点課題であることが確認された。2023年諸要求貫徹闘争では、事務局(課)専門職のポスト拡充、共済組合の組織統合に伴う処遇低下を避ける努力、支部・簡裁庶務課長ポストへの登用、訟廷組織見直しによる新たな専任事務官ポストの設置など、全司法が強く求めていた4級昇格改善を視野に入れた一定の具体策を示していることから、今後はこれらの回答を早期に具体化させていく。
 あわせて、事務官制度については、「事務官制度に対する全司法の意見について」(2020年4月28日付け渉外30号)及び「事務官研修体系に関する全司法の見直し案」(第78回定期大会決定)に基づき、研修体系の構築と専門性を重視した職員制度への転換を求めていく。
 家裁調査官に関わって、「家庭裁判所調査官の育成のための新たな施策」(育成新施策)の問題点とともに、異動希望が実現しないために退職を余儀なくされる若手調査官が増えていることなどが報告された。育成新施策については、依然として研修カリキュラムやグループ修習のあり方についての問題点が指摘されており、養成課程生の負担等への配慮や育成を意識した研修への見直しを求めていく。

組織強化・拡大

組合員同士が集まり、対話するとりくみを実践しよう

 「集まり、対話する活動」の再構築をはかると提案したことを受けて、数年ぶりに旗開きを実施した、管内分会や職場会にオルグに入った、中高年の座談会や女性の昼食会を再開したなどのとりくみが報告された。職場会や昼食会、オルグ等のとりくみは、組合員同士が「集まり、対話する活動」であるとともに、コロナ禍以前の活動を取り戻すためには欠かせない活動であることから、全ての支部で実施しよう。
 組合員拡大のとりくみについて、複数の支部からこの1年間のとりくみ報告や反省、今後の課題等が報告された。各地でのとりくみを教訓に、改めて新採用職員は早期の加入をめざすことを確認する。
 「青年の組織化」のとりくみに関わっては、毎週水曜日のお昼に集まることを定例化させた、4月期新採用職員のガイダンス等に青年の意見を取り入れたといったとりくみが報告された。こうしたとりくみはまさに本部が提起する「青年の組織化」のとりくみであり、全ての支部でこうしたとりくみを実践しよう。
 次世代の運動の「担い手」を育成するためのとりくみに関わって、オブザーバーとして参加した地連役員からは地連労働学校や青年レクを再開させたという報告や今後は「集まる」とりくみを積極的に開催していくという決意が述べられた。いずれも、「集まる」とりくみの再構築をはかるという方向性で述べられたものであり、地連が提起するとりくみに最大限結集しよう。
 「集まる」とりくみの再構築をはかりながら、コロナ禍以前の活動を取り戻し、組合員同士の結びつきやつながりを強めながら全司法の組織を強く、大きくしていこう。

 
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来賓あいさつ、祝電・メッセージの紹介
 

 大会には4人の来賓が出席され、激励と連帯のご挨拶をいただきました。

井上哲士参議院議員

「憲法が守り生かされる政治の実現に力を合わせたい」

 日本共産党の井上哲士参議院議員は、自身も紹介議員となった全司法大運動の請願採択について「『国民のための裁判所実現』を求めるみなさんの運動の積み重ねによるもの」と述べました。
 続いて、マイナンバーカード問題での保険証廃止、敵基地攻撃能力の保有を含む54兆円の軍拡予算などの政治情勢に触れて「岸田政権のもとで国民の声を聞かない政治が横行している」と指摘し、「こうした政治を転換し、暮らしと平和、民主主義、個人の尊厳など憲法が守り生かされる政治を実現するために、みなさんと一緒に力を合わせていきたい」と述べました。

「戦争は最も愚かな政策。無関心に陥ることなく考えていこう」

大門晋平 国公労連中央執行委員

 国公労連の大門晋平中央執行委員は安保3文書を閣議決定した岸田政権がすすめる政策、とりわけ南西諸島へのミサイル配備について「ショッキングな出来事」と言い、「沖縄を返せ」(全司法福岡高裁支部作詞)を6月に実施した沖縄支援連帯行動で歌ったことや両親から聞いた戦争体験などに触れながら「国のあらゆる政策の中で、戦争する、戦争に加担することが最も愚かな政策」と述べました。
 また、「憲法や政治の話は公務職場でタブー視されがちだが、私たちの働き方や要求とは切っても切れない問題。政治的無関心に陥ることなく、この一年、一人一人が考えていくことを提案したい」と述べました。

「10年、20年先の職場のために、できることをやっていきたい」

西山義治 全法務中央執行委員長

 全法務の西山義治中央執行委員長は、全法務の請願署名について、今年は日本維新の会が「公務員を2割削減し、小さな行政組織を目指す」党の政策と、「増員」を求める請願が矛盾することを理由に賛同せず、採択されなかったことを紹介したうえで「職場も国民も増員を求めている。そういう立場から、来年以降の運動を考えていく」との決意を示されました。
 また、自身が採用されて以降、法務局の職場環境の改善が進んできたことを紹介したうえで、「10年、20年先の職場のために、今私たちができることをやっていきたい」と述べました。

「全司法の役割は当局も認めてきたもの。自信をもって活動して欲しい」

新田俊司 裁退連会長

 裁退連(裁判所退職者の会全国連合会)の新田俊司会長は「退職者の交流と親睦を深め、豊かな老後を過ごす」という退職者の会の目的を語ったうえで「会員の拡大と若返りが喫緊の課題になっている」と述べ、「再任用のみなさんが全司法に残るとともに退職者の会に入ってもらいたい」と訴え、昨年から始まった全司法・退職者サポーターズ交流会のとりくみへの期待が示されました。
 また、最高裁人事局で長年勤務し、職員管理官も務めた先輩が「全司法の存在と活動が職場の民主主義につながっている」と語っていたことを紹介し、「全司法の役割は当局も認めてきたもの。自信をもって活動して欲しい」と激励の言葉をいただきました。

メッセージ一覧

以下のとおり大会への祝電・メッセージをいただきました(順不同、敬称略)

衆議院議員
 阿部知子、小川淳也、金子恵美、鎌田さゆり、神谷裕、菊田真紀子、櫻井周、重徳和彦、柚木道義、米山隆一

参議院議員
 佐々木さやか、良鉄美、田名部匡代、徳永エリ、芳賀道也

労働組合
全国労働組合総連合、全税関労働組合、全厚生労働組合、全日本国立医療労働組合、全経済産業労働組合、国土交通労働組合、全情報通信労働組合、全労働省労働組合、国家公務員一般労働組合、日本国家公務員労働組合連合会共済会

その他
裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化を求める会、原水爆禁止日本協議会、日本国民救援会中央本部、日本子どもを守る会、中央社会保障推進協議会、労働者教育協会、株式会社きかんし、中央労働金庫霞が関支店

 
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急激な物価の上昇等を踏まえ、全世代の賃上げを要求
人事院勧告にむけた最高裁交渉
 

 7月21日、全司法本部は「2023年人事院勧告にむけた重点要求書」に基づく要求の前進をめざし、最高裁富澤人事局総務課長との交渉を実施しました。

賃金・休暇など人事院勧告に向けて交渉
【賃上げ】
要望は関係機関に伝わるようにしたい


 公務員賃金を大幅に引き上げ、職員の生活と労働の実態にふさわしい水準に改善することや、急激な物価の上昇等を踏まえ、全世代の賃上げにつながるよう俸給表を改定することを求めました。
 最高裁は、「職員の人事行政を所掌する立場から、職員の生活が少しでも改善されることを常に望んでいる」「職員団体が、生計費の維持、確保という観点から、賃上げに向けた強い要望を持っていることは認識して」いるとし、「職員団体の要望は関係機関に伝わるようにしたい」との基本姿勢を示しました。
 人事院が検討をすすめている「給与制度のアップデート」について、全司法との協議・合意の上での実施、65歳定年を見据えた給与カーブの考え方の開示、成績主義・能力主義に基づく格差拡大反対、諸手当改善、地域間格差縮小などを求めたことに対しては、「職員団体の要望は、関係機関に伝わるようにしたい」「引き続き人事院の動向を見守っていき、説明できる段階になり次第、説明する」との回答にとどまりました。

【非常勤職員のステップアップ制度】
これからも維持・継続していく


 非常勤職員の課題にかかわって、住居手当・寒冷地手当などの生活関連手当の支給、3年公募要件撤廃などの雇用安定を求めたことに対しては、「人事院において何らかの見直しが行われる場合等には(中略)必要な見直しを検討したい」と回答し、病気休暇の有給化などの休暇制度の拡充については、「要望は機会を捉えて人事院に伝わるようにしたい」と回答するにとどまりました。
 また、ステップアップ制度を積極的に活用するよう求めたことに対しては、「これからも維持・継続していく必要がある」との認識を示しつつも、その実施については従前の回答を繰り返すにとどまりました。

【定年前再任用短時間勤務の選考】
できる限り早期に実施することを想定


 定年延長に伴う定年前再任用短時間勤務を希望する職員の選考の実施やスケジュールについて追及したところ、「今後、勤務条件等の明示を行った上で、選考を実施する」「選考は、各任命権者が実施するため、具体的な時期を示すことは困難である」「退職後の進路に関する不安を取り除く意味からも、できる限り早期に実施することを想定している」と回答しました。
 再任用職員の賃上げ、常勤職員同様の諸手当・一時金支給、再任用開始時の年次休暇の繰越などを求めたことに対しては、「職員団体の要望は、関係機関に伝わるようにしたい」と回答するにとどまりました。

【テレワーク】
前向きに検討を進めていく


 人事院が検討・具体化をすすめているテレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等にかかわっては、「テレワークについては、現在最高裁において試行中であり(中略)裁判所全体として前向きに検討を進めていく」と回答しました。
 また、「勤務時間制度等の在り方については、行政府省の動向、人事院の研究会報告、裁判所における組織の特殊性や職務の特殊性等を踏まえて、引き続き検討していく」と回答するとともに、意見聴取など全司法との誠実対応の姿勢を示しました。

【旅費法改正にむけた財務省からの照会】
職員団体の意見・要望等を踏まえ回答


 財務省が旅費法改正にむけた検討をすすめていることもふまえ、旅費支給にあたって職場で生じているさまざまな問題を解消するよう、また、事務の簡素化・効率化をすすめるよう求めました。最高裁は、「旅費法改正に向けて財務省から各府省に対して意見照会がなされたところ、最高裁においても下級裁の意見を聞いた上、従前からの職員及び職員団体の意見・要望等を踏まえ回答している」ことを明らかにしました。

 
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全職員の賃金改定(官民較差0.96%)
2023年人事院勧告のポイント
 

 人事院は8月7日、国会と内閣に対して、国家公務員の給与に関する勧告・報告、職員の勤務時間の改定に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。
 給与勧告は、官民格差が月例給・一時金ともにプラスとなったことを踏まえ、俸給表の水準を0・96%(3869円)引上げ、一時金は0・10月分の改善を勧告しました。
 勤務時間に関する勧告では、フレックスタイム制を活用した「勤務時間を割り振らない日」(ゼロ割振り日)の対象拡大が勧告されています。
 公務員人事管理に関する報告では、多様で有為な人材の確保、組織パフォーマンスの向上、多様なワークスタイル・ライフスタイル実現とWell-beingの土台となる環境整備の3つの課題とそれぞれ対応策が示されました。

大卒1万1000円・高卒1万2000円の初任給引上げ

 給与勧告にあたり、人事院は官民比較の結果を公表し、月例給(賃金)で3869円(0・96%)、一時金(ボーナス)は0・09月の格差があるとして、月例給を平均3869円(0・96%)引き上げるとともに、一時金を0・10月引上げて年間4・50月分とするよう勧告を行いました。具体的には、初任給をはじめとした若年層に重点を置き、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を1万1000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を1万2000円引上げ、そこから改定率を逓減させる形で俸給表の引上げ改定が行われます。一時金については、期末手当に0・05月、勤勉手当に0・05月均等に配分するとしています。
 初任給をはじめとした若年層の給与改善に重点を置きつつも、俸給表全体の改定が行われることや、一時金についてもこれまでの勤勉手当のみに配分ではなく、期末手当にも配分されたことは私たちの運動の成果と言えます。一方で、今年の勧告は、物価高騰が続くもとで、物価上昇分にも満たない、職員の生活改善には及ばない不十分なものとなっています。
 また、本年の勧告では、テレワーク中心の働き方をする職員について、光熱・水道費等の負担軽減のため、在宅勤務等手当(月額3、000円)の新設が勧告されました。あわせて、在宅勤務等手当の新設に伴い通勤手当の取扱いを見直すとしています。

通勤手当改善、再任用・非常勤の処遇は先送り

 他方、重点要求としていた特急料金の全額支給をはじめとする通勤手当や寒冷地手当の改善、非常勤職員及び再任用職員の手当や休暇制度の改善については、今年の勧告には盛り込まれませんでした。とりわけ、通勤手当については、令和5年職種別民間給与実態調査で民間の支給状況を調査していたにも関わらず、改善等は来年に先送りされる形となりました。
 また、昨年の人事院勧告時に表明された「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」(給与制度のアップデート)については、公務員人事管理に関する報告の中で「令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格案」を示すにとどまり、表現ぶりなどが変更されてはいますが、検討すべき事項の具体的な内容は依然として明らかになっていません。

フレックスタイム制見直し、夏季休暇の使用可能期間などについて報告

 公務員人事管理に関する報告では、労働条件に関わる事項として、フレックスタイム制の見直し、勤務間のインターバル確保、夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し、テレワークガイドラインの策定等が報告されています。
 フレックスタイム制の見直しに関わっては、勤務時間に関する勧告において、現在育児介護等職員について認められている「勤務時間を割り振らない日」(ゼロ割振り日)を一般職員にも拡大できるよう勤務時間法を改正するとされており、フレックスタイムのさらなる柔軟化をはかるとしています。
 夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直しに関わっては、交替制等勤務職員について、15分を単位として休暇を使用することを可能とすることや、夏季休暇について、使用可能期間を前後各1月拡大し、6月から10月までの間に使用できるようにすることなどが報告されています。
 こうした私たちの労働条件に関する事項については、給与制度のアップデートと一体でとりくみがすすめられる課題もあることから、労働者本位のアップデートを求めていく必要があります。
 人事院勧告の改善部分(月例給及び一時金の引上げ)の早期実施や示された課題等の具体化にあたっては、対応当局との交渉をはじめ、国公労連が提起する運動への結集を強化していくことが求められます。

給与勧告のポイント

1.民間給与との較差3,869円(0.96%)を解消するため、初任給を高卒:約8%(12,000円)、大卒:約6%(11,000円)引き上げる等、俸給表を引上げ改定

2.ボーナスを0.10月分引上げ、民間の支給状況等を踏まえて期末手当及び勤勉手当に0.05月分ずつ均等に配分


3.テレワーク中心の働き方をする職員の光熱・水道費等の負担軽減のため、在宅勤務等手当を新設(月額3,000円)

給与制度のアップデート 概要

 
 
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