全司法本部は6月5日〜8日、諸要求貫徹闘争におけるまとめの交渉を実施しました。最重点要求のうち、事務官全般の処遇改善、デジタル化に関する各種施策、裁判事務における文字の取り扱い、ストレスチェックを活用した職場環境改善、始業前等の超勤実態把握など、様々な課題で要求前進や足がかりとなる回答がありました。これらを踏まえ、本部は7月14日に予定していた「プレート行動」の中止を提案しました。
また、人事局長交渉に先立って、全54支部からの要請書、「定年年齢の段階的引上げのもとで昇格の到達点維持を求める署名」2123筆(第1次集約分)、速記官の養成再開署名3041筆を提出しました。

事務総長交渉に臨む中央執行委員
昇格運用の維持と事務官の処遇改善を回答
昇格運用全体は維持する姿勢
「これまで同様、退職時5級の枠組みの維持に努めたい」との姿勢を示すとともに、「裁判所の組織および職務の特殊性等を説明して、可能な限り現在の昇格運用が維持できるよう努力したい」と回答して、その他の職種や級について、定年年齢引上げに伴う昇格運用の後ろ倒しは行わない考えを示しました。
専任事務官の処遇改善にむけた姿勢を示す
また、この問題を事務官全体の処遇と関連づけて追及したことを受けて、事務総長交渉で「専任事務官の専門性の活用にも資するように配慮していきたい」と回答し、これまですすめてきた事務局(課)専門職のポスト拡充に触れるとともに、支部・簡裁庶務課長への登用、訟廷組織の見直しによる専任事務官ポストの設置、共済組合統合に伴う処遇の低下を避ける努力などの前進回答を行い、全司法が強く要求した4級昇格を念頭に「何か工夫できないか検討してみたい」と回答しました。
これらは、「昇格の到達点維持を求める署名」に全職員対象でとりくみ、プレート行動を背景に交渉に臨んだ成果です。
組織・機構の見直しを頭出し、デジタル化は環境整備に向けた姿勢
2024年度以降、組織・機構の見直しを行う
「今後の方向性等」に関わって、2024年度以降、裁判所全体の組織・機構の見直しを行うことを明らかにしました。「これまでの相似形組織(注・庁規模に関わらず、基本的にどの本庁にも同じポストが設置されている組織)を見直し、各庁にとって最適で、職員が本来とりくむべき中核的事務に注力できる組織態勢を構築する」としており、かなり大きな見直しになることが予想されます。今後の動きを注視する必要があります。
デジタル化に向けた姿勢を示す
裁判所のデジタル化については、「国民の利用のしやすさ(分かりやすく使いやすいシステム等)を徹底して追求するとともに、職員の利用のしやすさ(直感的な操作性、ユーザーインターフェイスの共通化、応答性等)にも十分配慮していきたい」としたうえで、必要な予算の確保に向けて最大限の努力を行う姿勢、職員の意見を聴取する姿勢を示しました。
デジタル化の環境整備等を回答
また、ウェブ会議のための環境整備、無線LANの検証、ポータルサイトを使った情報共有、J・NET回線の強化などが示され、「民事訴訟手続のデジタル化(フェーズ3)を見据えた法廷および業務のあり様の検討方法の一つとして、実証実験用の法廷を整備することを検討している」ことを明らかにしました。
なお、テレワーク等についても検討姿勢を示しています。
「裁判事務における文字の取り扱い」を検討
システム化による事務の標準化・合理化を踏まえ「デジタル化後の裁判事務における文字の取り扱い」について検討していると回答しました。「外字等をなくせ」との要求に応えるものであり、簡素化・効率化に向けた大きな前進です。この他、最高裁によるマニュアルや執務資料等の整備、書式等の統一について検討姿勢を示したこととあわせて、全司法が要求している全国統一化・標準化による書記官事務の簡素化・効率化に向けて、足がかりを築く交渉となりました。
メンタルヘルス・パワハラ対策に、ストレスチェックを活用
ストレスチェックによる集団分析結果を活用
メンタルヘルス対策が重要な課題になっているとの全司法の主張に応え、今年度からストレスチェックの調査項目に「仕事のやりがいや職場の人間関係、コミュニケーション等」について把握できる項目を追加し、現在の57項目を80項目に増やして実施すると回答しました。あわせて、「各庁において、集団分析結果をさらに活用できるよう検討していきたい」「各庁において、ハラスメントを含めた職場環境改善に活用できるような工夫を考えてみたい」としており、ストレスチェックをツールとして健康管理施策等を前進させる回答をしています。
また、異動期にメンタル不調を生じる職員が多いことを踏まえ、職務導入研修の重要性を主張したのに対して「今後も効果的かつ充実した研修が実施されるよう、努力していきたい」との回答を引き出しました。
これらの回答を足がかりにメンタル不調の発生予防も含めたとりくみが強化されるよう、各庁で具体化させていくことが重要です。
超勤実態把握などで、最高裁の認識と職場実態のかい離を埋める努力を求める
人的態勢整備は「最大限努力」
2024年度予算との関係では人的態勢整備や、昇格のための予算となる級別定数について「最大限の努力」姿勢を示しました。
増員については情勢の厳しさを強調し、政府の「定員合理化計画」への協力や内部努力の姿勢は崩しませんでしたが、「利用者サポートを含めたデジタル化の態勢整備」や「ワークライフバランス推進のための人的配置」については努力姿勢を示しました。回答を受けて本部は、各地連・支部が交渉等で主張している職場実態もきちんと把握したうえで、事務処理状況等をきめ細かく見て人員配置を行うよう重ねて主張しました。
「適切な勤務時間の管理を行うよう今後も指導を徹底」
超勤縮減については「超過勤務命令の上限規制の導入後、超過勤務の削減はますます重要な課題となっている」との認識を改めて示し、「組織全体として事務の合理化・効率化を推進して、超勤削減にむけたとりくみをこれまで以上にすすめていく必要があると考えている」と回答しました。
最高裁の認識や回答と職場実態のかい離の大きさが問題となっている超過勤務時間の把握については「管理職員が勤務時間管理の重要性を認識した上で、部下職員の事務処理状況等をきめ細かく見て」「適切な勤務時間の管理を行うよう今後も指導を徹底していきたい」と改めて回答しました。
超過勤務「始業前も変わらない」ことを徹底
これを踏まえ、実際にはそれ以上の超過勤務をしながら月30時間以内に調整して申告する実態が全国的に広がっている実態を主張するとともに、とりわけ「勤務時間把握については、始業前、昼休み、休日における勤務についても変わるものではない」との回答を下級裁に徹底するよう強く求めました。
同じく、最高裁の認識と職場実態がかい離している課題として、育児短時間勤務や育児時間などの制度を利用している職員の業務量の調整について「十分目配りしていくよう下級裁を引き続き指導していきたい」と回答しました。
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