人事院は8月8日、国会と内閣に対して、国家公務員の給与に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。
給与勧告は、月例給・一時金ともに3年ぶりのプラス勧告となりましたが、俸給表の改定(賃上げ)は初任給及び若年層にとどまるなど、生活改善にはほど遠い低額な勧告となりました。
公務員人事管理に関する報告では、人材の確保、人材の育成と能力・実績に基づく人事管理の推進等、勤務環境の整備の3つの課題とそれぞれ対応策が示されました。
月例給改善は若年層のみ、一時金は勤勉手当に
企業規模50人以上の約1万1800事業所、約45万人の個人別給与を調査した結果、官民較差は月例給(賃金)で921円(0・23%)、一時金(ボーナス)は0・11月、ともに民間が公務を上回りました。この較差を埋めるため、人事院は、初任給及び若年層の俸給月額を引上げるとし、賃金・ボーナスともに3年ぶりのプラス勧告を行いました。具体的には、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を3000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を4000円引上げ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について4月に遡って賃金が引上げられます。
勧告どおりに実施されれば、新採用職員や初任層までの職員は賃上げとなりますが、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸の改定にとどまっていることから、中堅層以上の職員や再任用職員については賃上げとはなりません。感染拡大が繰り返される新型コロナウイルスや急激な物価高騰のもとで、私たちが求めてきた「すべての職員の賃金改善」から見れば不満です。
また、一時金(ボーナス)については、支給月数が0・10月引き上げられますが、勤勉手当に配分するとしています。本年6月期の一時金は、期末手当から「減額調整」されていることに加え、人事評価の結果を反映する勤勉手当にすべて配分することは到底納得できません。
あわせて、「社会と公務の変化に応じた給与制度」への見直しについて言及があり、公務員人事管理に関する報告で述べた様々な取組を進める中で、給与制度のアップデートにむけて一体的にとりくむとされています(2023年夏に骨格案を示し、地域手当の見直しが予定されている2024年に措置することを目指す)。
超勤の適正な管理を指導
定員管理部門への働きかけも
公務員人事管理に関する報告では、人材の確保にむけて採用試験の見直しなどの検討を行うことや、人材の育成と能力・実績に基づく人事管理の推進等に関わって、研修を通じた人材育成をすすめ、人事評価制度の見直しを踏まえて、能力・実績ある人材の登用やメリハリのある処遇を行う必要があるとしています。
勤務環境の整備の課題では、@長時間労働の是正、Aテレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の検討、B健康づくりの推進、C仕事と生活の両立支援、Dハラスメント防止対策が必要であるとし、@に関わっては「客観的記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理を指導」することや「業務量に応じた定員・人員確保の必要性」が指摘されています。人事院が定員や人員確保の必要性について言及し、定員管理を担当する部局に対して必要な働きかけを行うとしたことはこれまでにない動きであり、長時間労働の是正にむけた姿勢を示したものとして評価できます。
また、Aに関わっては「テレワークや勤務間インターバル確保の方策、更なる柔軟な勤務時間制度等について本年度内を目途に結論を得るべく研究会で引き続き検討」するとしていることから、今後の動きを注視しておく必要があります。
人事院勧告の改善部分(月例給及び一時金の引上げ)の早期実施や示された課題の実施にあたっては、対応当局との交渉をはじめ、国公労連が提起する運動への結集を強化していくことが求められます。
2022年人事院勧告のポイント
1.給与勧告
@民間給与との較差(0.23%)を埋めるため、初任給及び若年層の俸給月額を引上げ
ア 行政職俸給表(一)
総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を3,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を4,000円引上げ。これを踏まえ、20歳台半ばに重点を置き、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について改定(平均改定率:0.3%)
イ その他の俸給表
行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表は改定なし)
Aボーナスを引上げ(0.10月分) 4.30月分→4.40月分
勤務実績に応じた給与を推進するため、引上げ分を勤勉手当に配分。その一部を用いて上位の成績区分に係る原資を確保
B実施時期
月例給:2022年4月1日ボーナス: 法律の公布日
C給与制度における今後の課題
・テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みを検討
・能率的で活力ある公務組織の実現に向けて様々な取組を進める中で、給与制度についても、社会と公務の変化に応じたアップデートに向けて一体的に取組
2.公務員人事管理に関する報告
@人材の確保
(省略)
A人材の育成と能力・実績に基づく人事管理の推進等
(省略)
B勤務環境の整備
職員のWell-being 実現等に向けた職場環境整備が肝要。このため、働き方改革の推進は急務であり、中でも長時間労働の是正は人材確保の観点からも喫緊の課題。また、場所・時間を有効活用できるテレワークが広がっており、ライフスタイルが多様化する中、柔軟な働き方に対応した勤務時間制度の整備が必要。さらに、民間で健康経営が進展する中、職員の健康管理等を進める必要があることから、長時間労働の是正、テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の検討、健康づくりの推進、仕事と生活の両立支援及びハラスメント防止対策を進める。
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