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  トップページ > 全司法新聞 > 2022年7月 > 2381号
 
 
全司法新聞
 
裁判所のデジタル化
「国民の利用しやすさを徹底して追求
 職員の利用しやすさにも十分配慮」
2022年諸要求貫徹闘争
 

 全司法本部は6月13日〜16日、諸要求貫徹闘争期における最高裁とのまとめの交渉を実施しました。「裁判所のデジタル化」の枠組みについて最高裁が現在検討している内容が示されるとともに、「令状事務処理態勢の見直し」の検討をはじめ、多くの課題で全司法の意見を受け止める姿勢が示され、要求前進につながる回答がありました。
 これらの回答を踏まえ、本部は7月13日に予定していた「プレート行動」の中止を提起しました。

事務総長交渉に臨む中央執行委員

「裁判所のデジタル化」の枠組みを示し、「令状事務処理態勢の見直し」の検討も

 今回の交渉における最高裁回答の最大の特徴は「裁判所のデジタル化」の枠組みを示したことです。
 トップ交渉となる事務総長交渉では「国民の利用のしやすさを徹底して追求するとともに、職員の利用のしやすさにも十分配慮していきたい」との基本姿勢を明らかにしました。この中で「実務や事務の実情をよく踏まえ」等として、NAVIUSの反省を踏まえた回答をしています。これからデジタル化が本格化していくもとで、こうした姿勢を引き出し、「職員及び職員団体の要望も踏まえながら検討していきたい」と回答させたことは、今後の具体化に向けて大きな足がかりとなるものです。
 あわせて、人事局長交渉ではコミュニケーションツール(Microsoft365)の導入、e事件管理システム(RoootS)の機能や開発スケジュールが事務の簡素化・効率化との関わりも含めて説明され、通信インフラ・情報セキュリティの強化、当事者が利用するための機器や法廷への機器の設置などが明らかにされました。デジタル化予算の確保や、利用者サポートも含めた人的態勢についても努力姿勢を示しています。
 また、今回、情報政策課の交渉を「デジタル推進室」も含めた交渉と位置付けて実施したことも、全司法の意見を聞く姿勢を示したものと言えます。
 さらには、刑事手続のデジタル化に関して「令状処理態勢の在り方について具体的に検討を進めるとともに、関係機関とも協議を行っていく」と回答しました。

最高裁回答と職場実態とのかい離、改めて下級裁への指導・徹底を回答

 今回の交渉では、最高裁の回答・認識と職場実態のかい離が大きい問題について、改めて下級裁への指導を徹底するよう求めました。
 超勤の上限規制と自己申告によって超過勤務の「暗数化」や「サービス残業」が全国的に広がり、早朝、昼休み、休日の超過勤務が把握されていない職場実態をあげて追及したのに対して、超過勤務の把握について「下級裁に対して指導を徹底していきたい」と回答しました。
 また、育児短時間勤務等を取得する職員がいる場合の管理職による業務調整や他の職員への適切な説明については「さらに徹底し、取得しやすい環境作りをしていくよう下級裁を指導していきたい」と回答しました。
 いずれも全司法の主張を受けて、改めて指導する姿勢を示したものであり、この回答を地連・支部等の交渉や職場で活かしていくことが重要です。
 人事評価制度について、10月から実施される評語区分見直し(5段階から6段階へ)については「これまでと同様、適正な運用が行えるようにしたい」と回答し、定年年齢引上げについては、「7月頃を目途に定年年齢引上げ運用骨子案を提示」し、「職員及び職員団体の意見を聞く」と回答しました。いずれも労働条件の根幹に関わる重要な制度改変になることから、今回の回答を足がかりに、引き続き意見反映を図る必要があります。

事務官研修、事務の簡素化・効率化など様々な要求が前進

 事務官の研修制度に関わっては「一定の経験を積んだ主任・調査員への研修」が、人材育成に関わって「50代職員を対象とした研修」が新たに示されました。事務官の「専門性の付与と活用」に関わって、全司法が意見や提言を出してきた課題であり、研修内容や体系的な位置づけも含めて、研修の充実につなげていくことが重要です。
 事務の簡素化・効率化では、日銀の統合に関係なく支部の歳入歳出外現金出納官吏を本庁集約すること、原則として全ての人事異動通知書を電子交付することなど、事務局に関連する方策が示されました。書記官事務に関わっては、デジタル化に伴う簡素化・効率化の考え方を示すとともに、秘匿情報の取扱いや執務資料の整備について今後につながる回答が示されました。
 そのほか、速記原本の電磁的記録化、出張の際のタクシー利用基準(Q&A)の作成などが回答されました。
 2023年度予算の概算要求にむけた姿勢では、人員について「必要な人員確保について引き続き最大限の努力」をする姿勢が示されましたが、同時に内部努力・定員削減計画への協力についての姿勢は変えませんでした。
 昇格の定数拡大については、財務省との折衝の厳しさに言及しつつも、2023年度予算にむけて最大限努力の姿勢を示しました。

2022年諸要求期最高裁交渉での主な動き

1.「裁判所のデジタル化」の枠組みを示す
*コミュニケーションツール(Microsoft365)の導入
*民事裁判IT化のためのシステム開発
 RoootS の対象・機能(MINTAS の操作性をベースに。最高裁民事、簡裁民事、家事・人訴も対象。郵便料の電子納付、統計システムへのデータの自動転送など)
*NAVIUS の改修
*通信インフラ、情報セキュリティの強化
*情報システム統一研修… デジタル庁の研修への下級裁職員の参加
*利用者のための機器、法廷への機器設置
*利用者サポートを含めた人的態勢について「努力」、予算確保に「最大限努力」
*令状処理態勢の見直し検討

2.最高裁の認識と職場実態とのかい離で「指導を徹底する」と回答
*早朝、昼休み、休日も含めた超勤実態の把握
*育児短時間勤務等を取得する職員がいる場合の管理職による業務調整等

3.事務の簡素化・効率化
*支部の歳入歳出外現金出納官吏の本庁集約、人事異動通知書を電子交付
*速記原本の電磁的記録化(電子データで保存し、紙への出力不要に)
*タクシー利用基準(Q&A)の作成
*過誤報告の簡素化

4.事務官の研修制度
*50代職員を対象とした研修
*一定の経験を積んだ主任・調査員への研修

5.その他
*職員貸与PCからのストレスチェックの受検
*オンラインで外部講師によるハラスメント相談員の研修を実施
*人事評価制度の見直し…「これまでと同様、適正な運用が行えるようにしたい」
*定年年齢引上げ…7月頃を目途に運用骨子案

 
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多くの要求が前進
Microsoft365の導入により事務を合理化・効率化
最高裁人事局長交渉
 

 全司法本部は6月14日、諸要求貫徹闘争における最高裁人事局長交渉を実施しました。交渉では、3回にわたる人事局総務課長交渉などの交渉結果をふまえ、最高裁への追及を強めた結果、国民のための裁判所、裁判所のデジタル化、事務官研修、宿日直など、多くの要求が前進しました。

《人員》
人員の確保に最大限の努力、内部努力は不可欠

全54支部から届いた請書を手交
 人員については、「司法需要に的確に対処し、適正迅速な裁判を実現するために必要な人員の確保について引き続き最大限の努力をしていきたい」と回答しました。また、「デジタル化の進捗状況を踏まえて、利用者のサポートのための態勢も含め、必要な人員の確保について努力していきたい」と回答しました。
 他方、大規模庁へのシフトを行わないよう追及したことに対しては、「人員配置の見直し等の内部努力は必要不可欠」とし、「各種事件数の動向や事件処理状況等の種々の要素を考慮し、事務量等を見極めて行ってきており、人員配置の見直し後の事務処理態勢等についても、十分検討した上で実行してきている」と回答しました。

《国民のための裁判所》
裁判所内に利用者用パソコンやスキャナを設置

 「裁判所のデジタル化のために必要な予算の確保に向けては、最大限の努力を行いたい」と回答しました。また、「令和5年度中に、原則として全職員に導入することを前提として、(中略)Microsoft365の導入を検討する」とし、導入により「職員間の迅速なコミュニケーションや情報共有、事務の省力化等が可能となり、各種事務の合理化、効率化が図られる」と回答しました。
 人的態勢や物的設備の確保に関わっては、「利用者のサポートのための態勢も含め、必要な人員の確保について努力していきたい」「多くの利用者が任意に電子的な方法による申立てを行ってもらえるよう簡易かつ分かりやすいシステムを構築」する、「利用者本人が自ら書面を電子化することができるように裁判所内にパソコンやスキャナ等のIT機器を設置」するなどと回答しました。

《労働時間短縮》
官側による早朝・昼休み・休日の超勤実態把握は当然

 サービス残業の根絶にむけ、とりわけ早朝・昼休み・休日の勤務実態を把握するよう追及したことに対しては、「官側が早朝、昼休み、休日を含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然」とし、「今後も(中略)下級裁に対して指導を徹底していきたい」と回答しました。
 また、事務の簡素化・効率化に引き続きとりくむ姿勢を示すとともに、過誤報告に係る事務の省力化を求めたことに対して、「報告を必要とする事案を絞り込」んだり、「事案に応じて(中略)報告事項の簡素化を図」るなど、「関係者の事務負担軽減に配慮」してきたとし、「今後も、関係者の過度の負担とならないよう指導していきたい」と回答しました。

《裁判手続のデジタル化》
RoootSは2023年度導入目指して開発

 「TreeeSのうち、RoootS以外の民事訴訟手続のデジタル化に係るシステム開発については、令和4年度に法改正の内容を踏まえた要件定義を行った後、令和5年4月から開発を行う」「mintsについては(中略)令和5年3月を目処に、A3サイズでの書面データの提出及び書面への出力を可能とするなど当事者のニーズに応える改修や、職員の負担軽減に資する改修を行うことを検討している」ことなどを明らかにしました。
 また、「e事件管理システム(RoootS)について、高地裁民事だけではなく、MINTASを利用している家裁家事・人訴、NAVIUSを利用している簡裁民事、最高裁事件管理システムを利用している最高裁民事も対象とすることとし、これらのいずれについても令和5年度に新システムを導入することを目指して開発する」ことを明らかにするとともに、実装する機能を示し、「職員の事務負担も軽減させることができる」と回答しました。

《定年年齢の引上げ》
裁判所の運用骨子(案)の説明は7月をめどに、該当者への説明は11月頃

 検討にあたって「必要に応じて職員や職員団体の意見を聞くなど、適切かつ誠実に対応していきたい」との姿勢を示すとともに、「令和4年7月頃を目途に、役職定年制や定年前再任用短時間勤務制など、60歳以降に適用されることとなる諸制度の概要とこれらについて検討中の裁判所における運用の骨子(案)を整理して、職員等に示したい」「学齢59歳の職員に対して行う任用等の制度に係る情報提供及び60歳以降の勤務の意思確認については、本年度は、遅くとも令和4年11月頃までに始めることを検討している」ことを明らかにしました。

《職員制度/事務官》
一定の経験を積んだ主任・調査員の研修を検討

 全司法が事務官研修体系の見直し案を提出していることにもふれつつ、「専門性の活用・付与等やそれに向けた研修の在り方を検討している」とし、「事務官として一定の経験を積んだ主任・調査員を広く対象とした研修の実施を検討する」と回答しました。

 
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事務総長交渉回答要旨
 

人的態勢の整備について

 裁判所におけるデジタル化の検討が本格化するもとで、人的態勢の充実を求めたことに対して「裁判手続のデジタル化等の検討・準備状況など多種多様な要因を総合的に考慮し、これから具体的に検討していく」との姿勢を示しました。
 そのうえで、次年度の増員要求にあたっては、「令和5年度の増員をめぐる状況は、これまでにない極めて厳しいものになる」との認識を示しつつも、「要求にあたっては、必要な人員の確保に向けて最大限の努力をしていきたい」と回答しました。

超勤縮減、事務の簡素化・効率化について

 把握されずに「暗数化」する超過勤務が増え続けているとの指摘に対して「管理職員において、勤務時間管理の重要性を認識した上で、部下職員の事務処理状況等をきめ細かく見て、超過勤務を的確かつ遅滞なく把握し、適切な超過勤務時間の管理を行うよう今後も指導を徹底していきたい」と回答しました。
 また、事務の簡素化・効率化については、「各庁において、職場実態に合った各種事務の簡素化・効率化に向けた具体的な取組を実施し、日々の合理的、効率的な事務処理に向けた意識改革を更に徹底していくよう、最高裁として、より一層下級裁を指導するとともに、その取組を後押ししていきたい」と回答しました。

裁判手続のIT化について

 「今後裁判所のデジタル化を進めていくに当たっては、実務や事務の実情をよく踏まえた上で、国民の利用のしやすさを徹底して追求するとともに、職員の利用のしやすさにも十分配慮していきたい」との姿勢を示し、「裁判手続及び司法行政のデジタル化の基盤として、各種デジタルインフラの最適化、情報セキュリティの確保等にも鋭意取り組んでいきたい」と回答しました。

職員の健康管理について

 ハラスメントは「その種類を問わず、これを防止することが、職員が働きやすい職場環境を維持・向上するために不可欠」との認識を示したうえで、「今後とも、全ての職員に対する研修等の機会を通じた各種ハラスメントの防止に関する意識啓発、相談しやすい体制づくりやその周知等、より効果的な取組に努めていきたい」と回答しました。
 また、全司法がとりくんだ「女性の健康問題から考える『働きやすい職場づくり』アンケート」の結果を踏まえて「女性職員はもとより、すべての職員が働きやすい職場環境を整備するため、これまでも様々な配慮をしてきているところであるが、引き続き、適切に配慮をしていくよう指導していきたい」と回答しました。

権利について

 引き続き「誠実対応」の姿勢を示すとともに、「下級裁当局に対しても、職員団体に対して同様の認識で臨むよう、その指導を一層徹底」いくことを確認しました。

 
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総務局、人事局、経理局、情報政策課(デジタル推進室)と交渉
 

総務局交渉
増員で、最高裁の認識と職場実態のかい離を強く追及

 総務局交渉では、人員(各職種)、国民のための裁判所(デジタル化)、職種課題(書記官および速記官)を重点に追及しました。
 人員について、次年度予算の概算要求にあたって各職種の増員要求を行うよう求めたことに対して、「裁判所全体および各庁の事件数や事件処理状況等をきめ細かく把握した上(中略)必要な人員の確保について引き続き努力していきたい」と回答しつつも、「2023(令和5)年度の増員をめぐる状況はより一層厳しくなる」として増員を取り巻く状況の厳しさを強調しました。これに対し、必要人員として当局が確保した定員でさえ、欠員が生じ人手が足りていない実態や、度重なる減員が続き、休暇すら取得できないほど繁忙な地方職場の実態など、最高裁の認識と職場実態にかい離があることをあらためて強く追及しました。
 事務局について「簡素化、効率化を図りやすい」としていることについて、むしろ簡素化・効率化が図られていないと指摘しましたが、最高裁の認識は変わりませんでした。また、職場の労働時間を踏まえた定員措置なのか追及したことについて「職場の労働時間も含めた実態等を踏まえながら必要な人員の確保に努めてきた」として労働時間も含めた人員確保の姿勢を示しました。
 裁判所のデジタル化については、「裁判所のデジタル化のために必要な予算の確保に向けては、最大限の努力を行いたい」「利用者のサポートのための態勢も含め、必要な人員の確保について努力していきたい」と予算確保および人的態勢にむけた積極姿勢を示しました。
 職種課題では、書記官事務の合理化の観点から、更正決定に伴う国費負担の取扱いについて、手続きが煩雑で合理化とは逆行するものになっている実態を主張し、あらためて下級裁への指導を求めました。また、速記官の電子速記タイプライターの操作研修の継続要求に対して「協議テーマとして取り上げることも考えている」と回答しました。
 このほか、タクシーにドライブレコーダーが標準装備になっていることを踏まえた少年押送体制の検討や、簡裁の郵便切手費用等の電子納付化、Web会議を行える専用の事件関係室の全国整備など追及しましたが、いずれも従前の回答にとどまりました。

経理局交渉
物価上昇踏まえ「枠配分方式」による職場の混乱を追及

 労働時間短縮・超勤縮減等の課題では、会計事務の簡素化・効率化にむけて「今後も、通達等の見直しも視野に入れながら、できることから順次速やかにとりくんでいきたい」と回答しました。この回答を受けて、永年勤続表彰の筆耕業務の見直し、少額の修繕契約の簡素化、新聞購読契約や運送契約の合理化、グリーン購入法に基づく報告の省力化など、職場実態報告等をもとにさらなる簡素化・効率化を求めました。
 庁舎・機械設備等の課題では、庁舎の新営・増改築・修繕等に必要な予算確保にむけて「職員の勤務条件に関わる問題として、常に関心を持って努力しているところであり、今後も必要性・緊急性の度合いや当事者の利便を考慮しながら必要な予算を確保していきたい」と回答しました。
 また、ウェブ会議専用の事件関係室の整備を求めたことに対しては「ウェブ会議用パソコンやウェブ会議用スペースの整備など環境の充実に向けて要望があることは承知したが、その整備については、引き続き今後の業務の在り方や予算状況等の諸事情を総合的に考慮した上で検討することになる」と回答しました。
 旅費・庁費等の課題では、タクシー利用に関して、庁によって利用基準が異なることや申請手続きが煩雑であることなどを指摘して改善を求めましたが、「最高裁において一律の具体的な指針を設けることは難しく、公務上の必要性の有無等を個別に判断することになる」「公務上の必要性の有無等を個別に判断することになるため、必要最低限度の書類を提出してもらわざるを得ないことは理解してもらいたい」と従前の回答にとどまりました。
 また、光熱水料や清掃費、物品等の購入のために必要な庁費の増額を求めたことに対しては「これまでも必要な予算を確保してきたところであり、今後も引き続き確保するよう努力していきたい」と回答しました。この回答を受けて、今年度の予算執行から、庁舎維持管理等経費を含む庁費について、高裁ごとに配分額の上限枠を定め、各高裁はその枠内で自庁を含む管内地家裁の予算管理を行う方式(枠配分方式)が導入されたことで基本インフラ的出費である光熱水料を確保する必要性から、消耗品等にしわ寄せがいくこととなり、年度当初から消耗品等の購入に支障が出ているなど、現場が大きく混乱している実態を伝えるとともに、急激な物価高騰を踏まえた必要な予算の確保を求めました。
 この他、裁判手続のIT化にむけた予算やコロナ対策のための物品等整備に必要な予算の確保、休養室の整備、エレベーター設置をはじめとした庁舎設備の充実、空調・冷暖房設備の改善、必要な宿舎の確保などを求めました。あわせて、職場実態報告等に基づく庁舎の新営要求、特急包括協議路線の追加を求めました。

人事局交渉
家裁調査官の異動面談
「職種によって異なるものではない」

 超勤縮減に関しては、「サービス残業はあってはならない」という回答と職場実態のかい離をふまえ、とりわけサービス残業の温床となっている早朝・昼休み・休日の超過勤務の把握を行うよう強く求めたことに対して、「的確かつ遅滞なく超過勤務の把握に努めている」「始業前、昼休み、休日における勤務についても変わるものではない」とした上で、「適切な勤務時間の管理を行うよう今後も指導を徹底していきたい」と回答しました。
 繁忙状況が著しい事務局を中心に、事務の簡素化・効率化をすすめるよう追及したことに対して、あらためて「裁判部、事務局を問わず、組織全体として超過勤務の削減に取り組む必要があると考えており、今後も、通達等の見直しも視野に入れながら、できることから順次速やかに取り組んでいきたい」との姿勢を示しました。
 人事評価制度に関わって、評語区分の見直しにより、従来の昇格の運用を後退させないよう追及したことに対しては、「今回の見直しによっても、裁判所における人事評価制度の基本的な考え方に変わりはない」と回答しました。
 定年年齢引き上げに関しては、「必要に応じて職員及び職員団体の意見を聞くなど、適切かつ誠実に対応していきたい」と回答したものの、具体的な裁判所の制度設計等については、「検討をすすめている」との回答にとどまりました。
 召集法廷警備員の事務室事務の業務量の調整等を求めたところ、「各職場の管理職員は、その(警備業務の)増減に伴い法廷警備業務以外の業務量を適切に調整している」とし、「改めて下級裁を指導する」と回答しました。
 家裁調査官の異動に関わって、異動面談において管理職員から強制ともとれる言動が各地で広がっていることを指摘して追及したことに対して、「本人の生活関係等に影響を及ぼすこともあり得る」ことから、「職員の意向や結婚、育児・介護といった家庭事情等を個別的確に把握するよう務めて」いるとした上、「必要な意向聴取や説明等を行うよう下級裁に対して指導していることは、職種によって異なるものではない」と回答しました。
 その他、非常勤職員、休暇、母性保護、宿日直等の課題で最高裁を追及しました。

情報政策課(デジタル推進室)交渉
「グランドデザイン」の基本的な考え方に基づいて検討

 今年度は情報政策課(デジタル推進室)交渉として実施しました。
 冒頭、今後の裁判所のデジタル化を進める上での基本姿勢として、「実務や事務の実情をよく踏まえた上で、国民の利用しやすさを徹底して追求し、職員の利用しやすさにも十分配慮するといった先般示したグランドデザインの基本的な考え方に基づいて」検討を進めていくと回答しました。
 また、「実際にシステムを使用する職員の意見や要望等を的確に把握し、裁判所全体で幅広く意見交換等をしていくことが必要であり、職員及び職員団体の意見も踏まえながら検討を進めていきたい」「利用者サポートのための態勢も含め、必要な人員の確保について努力していきたい」と回答しました。今後のシステム構築に関しても、「安定的に稼働するシステムとなるよう設計・構築するとともに、障害時においては迅速な対応ができるよう十分に配慮していきたい」と回答しました。
 NAVIUSに関しては、システム障害に加え使い勝手の悪さから、事務の簡素化・効率化に資するシステム改修と、職員のニーズに合ったサブシステムの整備、地裁刑事部門への導入中止などを主張しました。これに対しては、昨年度に「差込用データ出力ファイルの項目を追加」する改修を行ったこと、各庁における事務フローが区々であるためサブシステムの整備は困難であること、今後も補助ツール作成のための参考資料等の提供は検討していくこと等を回答しました。
 また、現在東京簡裁民事3室・同10室については、「当面の間、簡裁期日進行管理プログラムを継続使用してもらう」とし、「業者による運用保守体制を確保し、また、Windows10環境下で稼働できるよう」改修を行う旨を回答しました。
 グランドデザインの周知やその後の意見聴取等のとりくみが、庁によってバラつきがあることを指摘して、職場にどのようなとりくみを求めているのか示すよう求めたことに対しては、デジタル化の全体像を示し、職員に理解を深めてもらうことが目的であると説明しました。

 
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全司法第79回定期大会に向けて
「加入は当たり前」と呼びかける自信を広げよう!
 
書記長 簑田明憲
 

 全司法の1年を締めくくる定期大会の時期になりました。第79回定期大会を7月24日(日)〜26日(火)と8月10日(水)に開催します。
 昨年の定期大会から、議案書の冒頭に「組織の強化・拡大」を記載するようにし、運動方針上も全司法の最重要課題として打ち出しました。この1年間、全国でがんばった状況を出し合いたいと思います。そして、今回の運動方針でも「組織」を方針の冒頭に掲げました。全国の組合員みんなでやり抜く決意を共有したいと考えます。
 全司法が職場で果たす3つの役割(@要求を実現し、職場のルールを作る役割、A相談しあい、助け合う役割、B仲間を繋ぎ、居場所を作る役割)を重視し、全司法の存在を職場にアピールしながら活動にとりくみ、組合員拡大の流れに大きく変えることを、2022年度も基本方針とします。
 大量退職のはじまりを迎える中、2021年度は、全司法が職場で果している役割を踏まえ、新採用職員本人のためにも、裁判所全体のためにも、組合員が自信を持って「新採用の加入は当たり前」だと考えられる状況を作り出すことを提起しました。
 この提起を正面から受け止め、本部・青年協が作成した動画や「働きかけ手のための相談会」を活用してがんばった地連・支部では、まだまだ第一歩ではありますが、全司法の活動に対する自信や「新採用の加入は当たり前」の思いを共通できたと感じています。第79回定期大会は、それを全司法全体で共有し、新たな一歩を踏み出す大会にしたいと考えます。

労働組合の柔軟な発想を武器に意見提出で対峙

 コロナ禍の経験で、社会・経済を立て直すルールづくり、助け合いと繋がり、そして居場所づくりが重要視されています。先に述べた「全司法が職場で果たす3つの役割」は労働組合が社会の中で求められる役割にも通じるものです。
 また、わたしたちの身近な職場においても、コロナ禍も相まってデジタル化の動きが急ピッチにすすんでいます。諸要求期の最高裁交渉でも「裁判所のデジタル化」について基本的な枠組みが示されました。これから、その中身作っていくことが重要であり、それこそ裁判所の真価が問われることになります。
 これまで、全司法は、職場の垣根を超えた柔軟な発想を武器に、裁判所当局に対し様々な意見や提案を出して、これに対峙してきました。ここ数年でも裁判手続IT化、事務官制度、書記官事務の簡素化・効率化など、様々な問題で意見や提案を出しており、多くの課題が実現してきました。
 最高裁は、全司法を「意見を聞くべき」相手だとして、それに「誠実に対応」することを繰り返し約束しています。柔軟な発想で職場のルールをつくる全司法の役割をこれまで以上に発揮できる絶好の機会だと捉えています。
 この機会にあらためて議案書を通して、この1年間の要求課題の到達点や成果を振り返りながら、職場での議論を深めてもらいたいと思います。

結成75周年
全司法が果たす役割を、次の時代に繋げよう!

 新型コロナへの不安はなくなっていませんが、感染状況が落ち着き、社会生活も徐々に元に戻っていることを踏まえて、今回の大会は、オンライン参加も認めつつ、原則、集合参加を呼び掛けています。なお、感染拡大防止対策には万全を期した運営に心がけます。
 この1年間の活動を振り返り、足りなかった部分を洗い出し、軌道修正が必要なところは、そのために何をすべきか、いまできることは何かなど、様々な角度から知恵を出し合い、向こう1年間、組合員みんなが、自信を持って活動をすすめるよう決意を固め合いましょう。
 今年は結成75年の節目の年として、大会スローガンに「結成75周年。全司法が果たす役割を、次の時代に繋げよう!」を掲げました。全司法の新時代を築く新たな一歩を踏み出す貴重な大会となるよう、定期大会にむけた職場からの積極的な討議を呼びかけます。

 
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全司法本部から呼びかけ「投票に行こう!」
 

選挙は「民主主義の基本的な営み」

 7月10日投開票で参議院の通常選挙が行われます。
 全司法は、組合員をはじめ、未加入者・管理職、裁判官を含めた職場のすべてのみなさんに「投票に行こう!」と呼びかけたいと思います。
 選挙は民主主義国家の基盤を作る基本的な営みです。昨年の衆議院選挙に続いて、今回も芸能人・著名人が投票を呼びかけて話題になるなど、誰もがごく当たり前に「投票に行こう」と呼びかけることの重要性が指摘されています。
 あわせて、労働組合にとっては、選挙は要求を前進させる絶好の機会です。組合員の政党支持(支持しないことも含めて)の自由を保障しつつ、要求前進のための政治、社会状況を作る必要性をアピールすることが求められます。
 そうした観点から、私たちの要求との関係で、今回の選挙の争点を見ていきたいと思います。なお、与党にとって、選挙はこれまでやってきたことに対する「審判」であり、この視点は政党支持とは無関係です。

「賃上げ」で物価高から生活を守る

 第一に、急激な物価上昇にどう対応し、どうやって国民生活を守るかという点です。とりわけ、労働組合としては、各党・各候補者が「賃上げ」にどういう姿勢を示しているかを重視したいと考えます。
 私たちが結集する全労連は「全国一律最低賃金1500円以上」を要求していますが、与党の自民党・公明党は「加重平均1000円以上(超)」を掲げています。1000円では年収で200万円に届かず、まともに生活できる賃金にはなりません。しかも「加重平均」なので、格差はそのままになってしまいます。
 賃上げの必要性は主要政党のほとんどが認めていますが、それを実現する道筋が重要です。大企業を優遇する政策では賃金が上がらず、内部留保が積み上がるだけだということは、この二十数年間の結果からも明らかです。
 物価上昇そのものに対する当面の対策としては、多くの国が採用している間接税(日本で言えば消費税)の減税に踏み切るかどうかが注目点です。「物価上昇の原因は何か?」ということも、対策を立てるうえで重要です。実際にはウクライナ情勢だけではなく、政府がとってきた「異次元の金融緩和」が招いた円安が大きな原因です。
 また、公務・公共サービス、労働法制、社会保障など、コロナ禍のもとで矛盾が明らかになった新自由主義の政策転換も争点です。

結果次第で「改憲」が現実の課題に

 第二に、平和と憲法、いわゆる「安全保障」の問題です。自民党は「参院選後に憲法改正原案を国会に提出したい」とし、「早期の改正を実現する」ことを公約に掲げました。公明、国民、維新が改憲に前向きの姿勢を見せており、選挙公示日には「改憲4党で3分の2が焦点」と報道されるなど、選挙結果によっては、改憲が現実の課題になる可能性があります。改憲の是非はみなさん自身が考える問題ですが、全司法は、憲法尊重擁護義務を持つ国家公務員の労働組合、「憲法の番人」と呼ばれる裁判所の労働組合として「憲法を守り、活かす」運動方針を持っています。
 また、自民党が防衛費をGDP比「2%以上」にすることを公約に掲げていることも争点です。軍備拡張が平和にもたらす影響に加え、消費税に換算して2%に相当する5兆円規模の増額が本当に必要なのか、生活関連の予算に当てるべきではないか。職場では、常に国の財政状況が厳しいと言われ続け、裁判所の年間予算が3000億円程度に抑えられていることも踏まえて考える必要があります。

 
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全司法大運動・26回目の請願採択!
 

 全司法大運動としてとりくんだ「裁判所の人的・物的充実に関する請願」が6月15日、第208通常国会において衆・参両院で採択されました。

 
 
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