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裁判手続IT化〜どこまで進んでいるか、どう向き合うべきか〜
第42回司法制度研究集会
 
オンラインで講演いただいた日下部弁護士

 3月5日、第42回全国司法制度研究集会をオンラインで開催しました。「国民のための裁判所」をめざす司法制度研究活動は、諸要求実現の活動とともに「車の両輪」と位置付けているとりくみで、2年に一度の研究集会はその柱となるものです。
 今回は「裁判手続IT化〜どこまで進んでいるか、どう向き合うべきか〜」がテーマでしたが、2月14日に法制審議会が民事訴訟のIT化について法務大臣に答申を出した直後のタイムリーな集会となりました。

 集会では、政府の検討会段階から民事裁判IT化の検討に関与し、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の委員であった弁護士の日下部真治さんに「民事裁判のIT化 〜法制審部会での主要論点と日弁連の立場〜」と題して講演していただきました。

事業環境における諸外国からの遅れを取り戻す目的で検討

 日下部さんは基調講演の最初に民事裁判IT化の経緯を振り返り、1990年代後半から各国でIT化がすすめられ、日本でも2004年に民訴法改正が行われたものの、その後、動きが止まってしまい、2016年の世界銀行が示す各国の事業環境ランキングがOECD35か国中23位になったことで、内閣官房が主導して急展開することになったと説明しました。内閣官房の検討会が「利用者目線に立った上で、訴訟記録の全面的な電子化を前提とする『裁判手続等の全面IT化』を目指すべきである」としたことから、「全面IT化」という言葉が「裁判がAIに置き換わるのか」などと一人歩きした面があるが、検討内容は諸外国からの遅れを取り戻す実務的なものだと指摘しました。
 続いて、2月14日に法務大臣に答申された法案要綱の内容について、主要論点を解説するとともに、日弁連がどういう立場で意見を述べたのか説明がありました(下の囲みに掲載のとおり)。

ユーザーフレンドリーな対応・措置を裁判所に期待

 そのうえで、今後、裁判所に期待することとして「多くの人が任意でオンライン申立て・システム送達届出をする気になるような、ユーザーフレンドリーな対応・措置」「ITの活用による当事者(代理人)とのコミュニケーションの活性化」「障害者権利条約に沿った、障害者に対する手続上の配慮の具体化」などを挙げました。
 また、参加者の質問に次のとおり答えました。
 IT化で利用するシステムの具体的な内容については、最高裁から法制審にほとんど示されなかったとのことで、最高裁の立場には理解を示しつつも、どういうシステムになるのかということは、今回の法改正では「卵が先か鶏が先か」という関係にあるので、「もう少し最高裁に示していただくと、議論が進んだのではないか」と述べられました。また、裁判所においてどのような本人サポートを考えているのか、という点についても同様の思いを持ったとのことです。
 IT化による土地管轄の見直しについては、商事法務研究会の検討で最初は課題としてあがっていたものの、地方に様々な意見があるもとで、手をつけないことになり、法制審では議論されなかったとのことでした。
 書記官権限の拡大については、最高裁から提案があり、裁判所内部の分担の問題なので日弁連としては特に異論はなかったものの、議論の末、要綱に書かれたように限定的なものになったとのことです。
 「当事者の申出による期間が法定されている審理の手続の特則」について、日弁連は法定期間を定めることに反対をしたものの、結果として期間を定めることになったと経過を説明し、少なくとも両当事者に代理人がついている事件を対象とする運用が想定されていると述べました。

IT化を支える人的態勢、安定的に稼働するシステム構築を強く求める

 集会はZoom参加の63名とユーチューブによる配信により実施しました。
 基調講演の後、@民事裁判IT化、A家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等IT化、B刑事裁判IT化、CIT化予算や職員制度についての4つの分科会に分かれて議論し、刑事分科会の中で「令状センター構想」実現にむけた具体的な検討事項も提起しました。
 集会のまとめで簑田書記長は、「司法分野におけるIT化はあくまでツールの一つであり、司法制度の本質が変わるものではない。裁判手続IT化をすすめるにあたっては、それを支える裁判所の人的態勢整備が必要不可欠である。また、裁判所内におけるこれまでのIT化の経過と総括を踏まえ、利用しやすく安定的に稼働するシステムの構築と、それを可能にする予算の確保を強く訴える」と述べました。

 
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賃金改善、昇格実現とともに、
定年延長引上げ・評価制度などの検討状況を示すよう追及
春闘期最高裁交渉
 
賃金、昇格などの課題で人事局長交渉

 全司法本部は、「2022年国公労連統一要求書」及び「2022年4月期における昇格改善要求書」に基づき、3月1日に福島人事局総務課長と、3月8日に徳岡人事局長と、それぞれ交渉を実施しました。

賃金要求

「要望は関係機関に伝わるようにしたい」

 賃金課題に関わっては、公務員賃金の月額2万1000円(5・2%)以上引き上げ、民間との初任給格差の是正、地域間格差の解消、退職手当の改悪反対及び改善、通勤手当等の諸手当の改善を求めました。最高裁は、「職員の生活が少しでも改善されることを常に臨んでいる」との姿勢を示した上で「職員団体の要望は関係機関に伝わるようにしたい」と回答しました。

定年延長の制度運用

「検討を進めているところ」

 定年年齢の引き上げに伴う課題では、60歳を超える職員の給与水準を60歳前の7割に引き下げないよう求めるとともに、役職定年制の運用と級別定数の確保、定年前再任用短時間勤務の運用、昇格にあたっての占有期間延長などの問題を指摘し、裁判所における検討状況を明らかにするよう求めました。最高裁は、「検討を進めているところ」とし、「説明できる段階になり次第、説明する」と回答するにとどまりました。
 運用がはじまる2023年度まで時間がないことを踏まえ、職員が将来設計を検討する期間を確保できるよう、早期に検討内容を明らかにすることや全司法の意見を聞くことを改めて求めました。

人事評価制度の見直し

「基本的な考え方に変わりはない」

 人事院規則等の改正に伴う、人事評価における評語区分の見直し(5段階↓6段階)や評価結果の任用や給与への活用について、裁判所の検討状況を明らかにするよう求めたことに対しては、「人事評価制度の基本的な考え方に変わりはない」としつつ、「現在検討しているところであり、説明できる段階になり次第、説明する」と回答しました。
 従来の「B」と見直し後の「良好」及び「優良」の運用の在り方によっては、処遇に及ぼす影響が大きいこと、従前から上位評価の分布率が行政府省よりも少ないことを指摘し、従来の処遇水準を後退させないよう改めて強く求めました。

濃厚接触者のPCR検査

―臨時の健康診断として
「勤務」の取扱いを認めず

 健康・安全確保の課題に関わっては、新型コロナの感染防止対策を十分に講じるよう求めるとともに、職員が濃厚接触者となった場合(とりわけ職場で陽性者が出たことによる場合)、職場での感染状況を把握し、感染拡大を防止する観点から、人事院が認めている制度を活用し、PCR検査を受ける場合には臨時の健康診断として「勤務」として取り扱うよう要求したことに対しては、「感染防止対策を確実に実施していれば、基本的に、職場における濃厚接触は生じないと考えられる」との認識のもと、「職場においてクラスターの発生が疑われる場合などには、その感染拡大防止に適切に対応していく」、「一律の枠組みを示すことは困難」と回答するにとどまりました。行政府省における運用をふまえ、緩和を求めていく必要があります。
 カスタマー・ハラスメントを含むパワー・ハラスメントの制度周知を徹底するよう求めたことに対しては、「12月実施のハラスメント防止週間においても改めて周知した」と説明するとともに、「今後も引き続き周知に努めていきたい」との姿勢を示しました。

昇格

今年3月、4級以下のままの定年退職者は30前後

 昇格について、今年3月末に4級以下のまま退職する職員の数は、「30前後となる予定」とし、「3級退職者が10前後、2級退職者が0又は1、書記官は10前後」と明らかにしました。
 その他、非常勤職員の雇用の安定と給与・休暇制度の改善、定員合理化計画への協力反対、地方から中央・大規模庁への人員シフト反対、全司法の要求を基本とした研修制度の整備、各職種・各級の昇格改善などについて、最高裁を追及し、要求の前進をめざしました。

 
 
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