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全司法新聞
 
IT化、事務の簡素化・効率化、専門性の付与と活用などで
「動きの見える」回答引き出す 2021秋年期・人事局長交渉
 
2021年秋年期まとめの人事局長交渉

 全司法本部は12月7日、最高裁徳岡人事局長と秋季年末闘争期の交渉を実施しました。「IT化」「事務の簡素化・効率化」「事務官の専門性の付与と活用」などの観点から「今後の方向性」も踏まえた「動きの見える」回答を引き出しました。各課題とも今後の展開がより重要であり、これからの全司法のとりくみが重要になります。
 交渉に先立って、全国統一でとりくんだ「人員シフト反対を求める要請書」(54支部分)及び福岡支部独自の「全ての簡裁で簡民Pの利用を求める署名」(312筆)を提出しました。

IT化

高裁にIT検討態勢、書記官養成研修に一人1台パソコン整備、
NAVIUSで謝意表明

 IT化の検討等がすすむもとで「最高裁と下級裁が密に連携して情報を共有し、意見交換等をしていくことがよりいっそう重要となっている」との認識を示し、各高裁にIT検討態勢を整備するよう検討していることを明らかにしました。これを出発点に、下級裁でもIT化に対応できる組織整備をすすめるとともに、人的体制整備や処遇改善にもつながるものとなるよう求めました。
 また、「書記官養成課程研修生に対して一人1台の研修用パソコン整備」を検討していると回答しました。総研の研修環境整備の要求を前進させる回答ですが、調査官補への配布が含まれておらず、具体的な利用方法も含めて、さらに意見を述べていくことが重要です。
 この間、職場で大きな問題となったNAVIUSについては「情報システムの運用管理責任を負うべき立場にある最高裁判所として申し訳ない」と交渉の場で人事局長から表明したうえで、「今回発生した一連の障害と復旧に至るまでの経験を踏まえ、今後、いっそう適切かつ安定的なシステムの運用管理に努めていきたい」と回答しました。
 この回答を受けて、そもそもNAVIUSは使い勝手が悪いなど、数多くの不満が出され、全司法としても改修を要求してきたことを改めて主張しました。こうした状況のもとで障害が発生したことでシステムに対する信頼が損なわれ、職場では怒りの声が上がる結果となったことを指摘して、NAVIUSを使い続けるのであれば、システム改修や職員のニーズにあったサブシステムの整備等を同時にすすめることを求めました。

簡素化・効率化

事務局の簡素化・効率化策を示す

 簡素化・効率化については、「できることから順次速やかにとりくんでいきたい」との姿勢のもと、出納官吏による日銀口座への電子納付(ペイジー払い)、昇給辞令の電子交付、外付けディスプレイの整備(人・給システム及びELGA用)について回答がありました。事務の簡素化・効率化については、この間、書記官事務に関するものが多く前進してきましたが、事務局部門でも簡素化・効率化の検討を行っている姿勢が示されたものです。引き続き、全司法から提案することも含めて、裁判部・事務局それぞれに簡素化・効率化をすすめさせていくことが重要です。

職員制度

新採用の裁判部配置など、事務官の「専門性の活用・付与」に向けた動き示す

 事務官の専門性の活用や付与に関わるものとして、新採用のOJTツールの見直し、新採用事務官の事務局配置、裁判部事務官研修について回答がありました。事務官の育成・研修制度について方策の一部が示されたものですが、全司法の意見の中心は先の大会で決定した「事務官研修体系に関する全司法の見直し案」です。これについては「職員団体から事務官研修に関する意見が出されたところであるが、研修のあり方については引き続き検討していきたい」との回答にとどまりました。
 また、速記官上京団交渉でも主張した音声再生用ソフトウェアの更新整備を行うことが回答されました。

超勤実態の把握

管理職員による現認が基本、最高裁での客観的な把握に向け検討

 超勤実態の把握については、「超過勤務の状況については、管理職員等による現認が基本」「官側が早朝、休日を含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然」との認識が示されました。この回答が職場で活かされるようにすることが重要です。
 あわせて、「最高裁において在庁時間の客観的な把握に関し何かできないか、検討してみたい」との回答がありました。最高裁の職場が対象とは言え、「客観的把握」という考え方を打ち出した意味で評価できる回答です。
 最高裁の職場における長時間労働の実態把握と、その解消につなげることを求めるとともに、こうした最高裁のとりくみを下級裁に伝えることで、当局の責任による超勤実態の把握を全国的に促すメッセージとするよう求めました。

増員

予算に向けて最大限努力、人員シフト「内部努力不可欠」の姿勢崩さず

 次年度予算に関わって、増員をめぐる厳しい状況に言及しつつ「最大限の努力を行っている」と回答しました。
 各庁への人員配置に関わって人員シフトは行わないよう求めたのに対しては「内部努力は必要不可欠」との姿勢を崩しませんでした。本部は全54支部揃った「人員シフト反対を求める要請書」を提出して、人員配置にあたっては「職員の納得」も重要であり、人員シフトを行わなくても良いように、大規模庁での事務の簡素化・効率化を思い切ってすすめるよう強く求めました。
 その他、次年度予算の関連では、昇格について情勢の厳しさに言及しつつ「職員の処遇の維持・改善にむけて、引き続き最大限の努力を続けていきたい」と回答しました。
 また、IT化予算の抜本的拡充を求めたのに対しては「裁判手続のIT化のために必要な予算の確保にむけては、最大限の努力を行いたいと考えている」と回答しました。

2021秋年期交渉・人事局長回答の主なポイント

超過勤務の実態把握(最高裁における材庁時間の客観的把握)
「最高裁において在庁時間の客観的な把握に関し何かできないか、検討してみたい」

下級裁における情報政策部門の創設(各高裁におけるIT検討態勢の整備)
「裁判手続のIT化等について中心となって検討・準備を進める態勢を各高裁に整備することができないか、検討することとした」

人材育成(新採用のOJTツールの見直し)
「専任事務官の専門性の活用や付与等に関し、(中略)新採用職員に関する既存のOJTツールについて見直すこととした」

研修設備の充実(書記官養成課程生一人1台のPC配布)
「来年度(令和4年度)からの書記官養成課程研修生に対して、一人1台の研修用パソコンを整備することを検討している」

事務官の研修及び配置と異動(新採用事務官の事務局配置)
「専任事務官の専門性の活用や付与等の観点からジョブローテーションの趣旨を充実させるため、2022年4月以降、例えば、新採用事務官を事務局にも配置したり、執務態勢や事務の習熟度等を考慮して短期でもローテーション異動を検討するなど、各庁や個々の事情に応じ、柔軟に運用することとした」

事務局事務の簡素化、効率化(以下の3点)
「歳入歳出外現金出納官吏について、2022年2月28日以降、執務室においてインターネットバンキングサービスを使用して日本銀行への電子払込(ペイジー払い)を行えるようにすることとした」
「2022年1月1日以降、昇給及び復職時調整に関する人事異動通知書については、(中略)電子交付することとした」
「人事・給与関係業務情報システム(人・給システム)および今後導入予定の会計業務電子決裁基盤・証拠書類管理システム(ELGA)を利用する全国の裁判所において、人事および会計部門の職員を中心に職員貸与端末に接続する外付けディスプレイを整備することとした」

速記官の執務に必要な周辺機器の整備(音声再生用ソフトウェアの更新整備)
「Olympus Sonority Plus を導入することとした」

 
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「要保護性」こそが改正法運用のカギになる
2021年度少年法対策会議
 

 4月1日の法施行を前に、全司法本部は11月28日、少年法対策会議をオンラインで開催しました。

18・19歳が「少年」として全件送致されることを踏まえた運用を

山ア健一弁護士
 
葛野尋之教授

 法制審議会少年法・刑事法部会の委員として審議に関わった山ア健一弁護士からは、法制審での議論が当初は年齢引下げを前提に進められていたところ、最終盤で転換されて18・19歳を少年法の対象とすることになった経過が報告され、「特定少年の保護処分は侵害原理のみに基づくものであり、現行の保護処分とは異なる」との考え方は、「適用年齢引下げを前提にしていた当初の段階での整理であって、結果として18・19歳が少年法の対象とされた以上、もはや当てはまらない」と指摘し、今後の運用について「犯情を偏重するのではなく、少年の要保護性を重視した調査・審判が行われるべきだ」と述べました。
 また、国会審議での最高裁家庭局長の要保護性の調査に関する答弁を紹介し、とりわけ参議院の附帯決議の重要性を指摘したうえで、「年齢引下げを食い止めたことは、きわめて大きな成果。家裁に全件送致されることで、懸念される問題点は現場で変えていける」と述べて、付添人も含めた今後のとりくみの重要性を強調されました。

特定少年こそ要保護性の調査、保護的措置、試験観察が重要

 一橋大学の葛野尋之教授は、法制審が18・19歳を「成人」として議論していた考え方を横滑りさせたために「法案は大きな矛盾をはらんだものになった」と指摘し、それを実践的に解決していく運用が求められていると解説され、「要保護性とは、個々の少年の成長発達権を具体的に保障するための『福祉的・教育的援助の必要』であり、それを行うことで、少年が成長発達し、結果としての再犯が防止されるという実務が蓄積されてきたからこそ、少年法が有効に機能してきた」と述べました。
 また、「特定少年であるということが『保護不適』を推定させるほどまでの犯情の重さ・行為責任の大きさに直結するのか」という点から「例えば、『原則逆送だから6割は逆送しないと』ということになると、現実離れしたものになってくる」と批判し、「原則逆送事件こそ、しっかりと要保護性の調査をしないといけない」と述べました。
 そのうえで、「法改正によって、要保護性に関する社会調査、保護的措置、試験観察といったものがむしろ今まで以上に重要になってくる。それが改正法を良い方向に動かす力になる」とまとめられました。

 
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不安なく執務できる環境を 地連速記官担当者会議・上京団交渉
 

 今年度の地連速記官担当者会議と上京団交渉は、11月23日にオンライン会議を行い、翌週の同月29日に上京団交渉を行うという、連続日程ではない初めての形式で開催しました。

速記官上京団交渉の様子

電子速記タイプ購入継続求める声多く

 会議では、まずは最重点課題である電子速記タイプライターに関して、「3年間で調達した合計96台の電子速記タイプライターで執務に支障が生じないと考えている」という最高裁回答について、全国の速記官の約2人に1台で購入を打ち切られていることに対して購入継続を求める強い声が多くの担当者から出されました。
 「今後退職まで20年以上勤める速記官が最後まで不安なく執務できる環境を整えてほしい」「電子速記タイプライターはパソコンと同じく生涯使える物品では決してなく、更新が必須の物品であり、更新時期や耐用年数をきちんと検討して更新計画を立ててほしい」「電子速記タイプライターの購入を今後も続けてほしい」「最高裁には速記官が最後まで安心して執務を続けられる環境を整えてほしい」等の切実な声が出されました。

音声再生ソフトのすみやかな導入等を主張

 また、執務環境に関しては、会議に先駆けて実施した事前調査の回答をもとに、全国で生じているさまざまな問題について意見交換しました。中でも、速記立会事件の選定に速記官が関わることができていない庁からは、運用改善を求める強い声が出されました。また、現在職員端末パソコンの更新にあたって全国の速記官が一時使用を強いられている音声再生ソフト「VLC」が使いづらいという実態報告もなされ、今年度中の導入が予定されている音声再生ソフト「オリンパス・ソノリティ・プラス」の一刻も早い導入を求める声も強く上がりました。
 最高裁交渉では、会議で確認された電子速記タイプライターの購入継続要求をはじめ、名前や庁名を挙げての昇格要求や、全国の職場実態を訴えての執務環境改善要求、研修や特定健康診断の充実などに関する具体的な要望を最高裁にぶつけました。

 
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簡素化・効率化を前進させてきた役割を確認。
書記官の組合員拡大につなげよう
地連書記官担当者会議・上京団交渉
 

 11月21日〜22日、地連書記官担当者会議と上京団交渉を実施しました。

秘匿情報はじめ引き続き簡素化・効率化の要求実現を

感染防止対策をとって会議を実施
 書記官事務の簡素化・効率化については、J・NETへの執務資料掲載、上訴記録の丁数打ち廃止、実務講義案等の電子データ化、送達報告書の「正当処理」の取扱い、当事者対応の留意点作成、事件処理でのメール使用など、この間、数多くの要求が前進したことを改めて確認し、全司法が果たしている役割を職場にもっとアピールし、書記官職種の組合員拡大につなげる重要性が共有されました。
 また、引き続き、簡素化・効率化の要求を組織して当局に改善を求めていくことを確認し、動画再生のための機器整備、全国統一のマニュアル作成、記録送付事務の簡素化、証拠目録の見直しなどとともに、とりわけ、秘匿情報の取扱いについて、法制審での議論を注視するとともに、昨年諸要求期の最高裁回答を足がかりに強く検討を求めていくことが確認されました。
 一方、更正決定の送達費用の国費負担について「費用を支出するために詳細な報告が求められ、過誤扱いされる懸念が広がって、むしろ萎縮している庁がある」「全件国費負担にすべき」との報告などがあり、簡素化・効率化の趣旨を活かす運用を求めていく必要性が確認されました。

NAVIUSで今後のIT化への不安広がる

 民事裁判手続のIT化(フェーズ1)やコロナ禍の影響でウェブ会議の活用がすすむ一方で、利用できるパソコンの台数が少なく調整に苦労している実態や、期日のたびに準備手続室等に持って行って設置する煩雑さに関する意見が多く出されました。今後、職員端末でネット接続が可能になることを期待する意見とともに、それでも設置の煩雑さに変わりはなく、将来のIT化を見据えて準備手続室等に機器を常設する必要があるとの意見も出されました。
 NAVIUSのシステム障害に関わっては、今回の件で今後のIT化への不安が広がったとの声が多く出されました。あわせて、そもそもの使い勝手の悪さや「センターサーバーで管理すべき情報は何か整理すべき」「裁判手続IT化のシステムはNAVIUSとは別に開発し、簡裁民事事件はそちらに統合すべき」といった意見も出されました。
 上京団交渉では、会議で確認された要求や職場実態に基づいて主張しました。回答は従前回答にとどまりましたが、参加者の主張を受けとめる当局の姿勢を感じ、手応えを感じた交渉になりました。

 
 
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