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全司法新聞
 
運動の背景にある社会情勢など学ぶ機会に
第26回全司法中央労働学校
 
約50人がオンラインで参加

 5月9日〜10日、第26回全司法中央労働学校をオンラインで開催しました。労働弁護士として活躍する傍ら、安倍政権の経済政策を論じた著書『アベノミクスによろしく』等で注目を集めている明石順平さん、全法務出身で国公労連書記長、全労連事務局長などを歴任し、昨年7月まで全労連議長を務められた小田川義和さんのお二人をお招きして、講演していただきました。
 2日間の日程を通して、運動の背景にある社会情勢をより深く学習するきっかけにするとともに、「職場のルールを作る」全司法の役割を確認する労働学校となりました。

人間使い捨て国家
明石 順平さん

明石順平さん

 弁護士の明石順平さんは「人間使い捨て国家」と題して講演し、「地獄のような労働環境が軽く見られているのではないか」と問題提起して、労働組合の役割発揮を期待されました。

緩すぎる法律、それすら無視する実態

 最初に、長時間労働のもとで、過労死・過労自殺が増加している悲惨な日本の現状を統計などを使って報告したうえで、その原因となっている法制度(労働法制)について、労働弁護士として関わってきた実例などもふまえて、詳しく解説されました。
 そして、「法律自体が緩すぎる上に、その緩すぎる法律すら無視されているという状況であり、これでは長時間労働が無くならないのも当然」とし、さらに「実態はこれより酷い。なぜなら、ブラック企業がこのような調査に真面目に回答するとは思わない」とし、数字に表われているのは「氷山の一角だ」と指摘されました。
 さらには、本社にロイヤリティを搾り取られるコンビニオーナー、ブラックバイト、「現代の奴隷労働」とも言うべき外国人労働者、そして、教員・公務員の長時間労働やただ働きの実態も報告されました。その中で、霞が関では過労死ラインを超える月80時間超の残業をしている公務員が9・8%にも上り、残業代の不払いがあると回答した人が41・6%もいるという実態を報告されました。

労働組合は「非常に、非常に」重要

 こうした残業代を支払わず、長時間労働を蔓延させる様々な仕組みが作られる原因として、財界が自民党に献金し、経済財政諮問会議のメンバーを出すなど、スポンサーになって「カネもヒトも出している」ことを指摘されました。とりわけ、諸外国との比較で「賃金が下がること自体が異常」だと指摘し、アベノミクスの問題点についても指摘されました。
 最後に、人間使い捨て国家から脱出するための処方箋として財界がスポンサーをやっている自民党政権では、構造的に直らない。野党はそこで一致すべきとの意見を述べられました。
 また、「労働組合の存在は『非常に、非常に』重要と述べられ、労働組合が賃金を上げろと言い続けることで、やっとバランスがとれる」と労働組合への期待を表明されました。

明日の労働運動を担うみなさんへのメッセージ
小田川 義和さん

小田川義和さん

二つの課題 ― 新自由主義とのたたかい、平和憲法を守るたたかい

 全労連顧問の小田川義和さんは、@人も組織も、社会、歴史とつながっている(後づけで気づくことの多さ)、A沈黙は相手の主張の黙認(声をあげなければ変化はおきない、民主主義は守れない)、B変化の今こそ前例にとらわれない議論を(今は数十年、百年に一度の時、広い視野と実現可能な高い目標をもって)の3点を「明日の労働運動を担うみなさんへのメッセージ」として講演をされました。
 全法務、国公労連、全労連で活動してきた経験を踏まえ、その時々の社会情勢にも触れながら、70・80年代の職場でのたたかい、国公労連・産別運動の15年、全労連での15年について話をされ、そのうえで「これまでの活動をあらためて振り返って、二つの課題と向き合ってきた」と述べられました。
 一つ目として「新自由主義とのたたかい」をあげ、日本における新自由主義改革(行政改革)の焦点は、公務員減らし、社会保障改悪(社会保障予算の抑制)、労働法制改悪におかれ続けてきたと指摘されました。
 二つ目に「平和憲法守れ、アメリカの軍事同盟強化反対のたたかい」をあげ、特に2014年7月の集団的自衛権容認の閣議決定と2015年の安保法制のもとで、日本が米中の戦争に巻き込まれる危険性が高まっていることを指摘されました。

司法の二面性に目をむけた職場からのたたかいを

 また、「アベスガ政治」が推しすすめてきた政策を踏まえ、「コロナ禍での矛盾の露見、意識の変化もふまえた運動」「制度の仕組み、慣習さえ変える運動」の段階を迎えているのではないかと問題提起されました。
 最後に、全司法の若手役員にむけたメッセージとして、そもそも国の機関は二面性があり、司法は「市民の権利擁護」と「権力行使」、「司法の独立性」と「統治機能(国家権力)の一部としての司法」という二面性を持っているとして、そこにも目をむけて、職場からのたたかいをすすめてもらいたいと述べられました。
*1日目の内容は
アーカイブ視聴可能です。
 また、参加者の疑問に答え、社会情勢を学ぶ意義について「職場で起きる問題の根っこに何があるのか、将来どういう結果につながるのか想像力を働かせることが重要」と述べられました。

☆ ☆ ☆

 2日目は、全司法本部の中矢委員長が講義し、全国統一要求の各項目に沿って、最高裁交渉の到達点や、今の焦点になっている課題について解説し、「最高裁交渉の到達点を各支部の交渉で活かして欲しい」と述べました。

 
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国家公務員定年延長法案、国会に提出
 
 

雇用と年金接続のため、早期成立が必要

 4月13日、政府は国家公務員の定年延長を行うための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。
 この法案は、国家公務員の雇用と年金の接続を確実なものにするとともに、高齢層職員の能力及び経験を本格的に活用することで質の高い行政サービスを維持することを目的とした非常に重要な法律です。
 人事院は2011年9月に「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」を提出しましたが、その後政府がこれを放置してきたことから、早期に成立させる必要があります。

一方で修正、注意すべき点も

 一方で、法案は様々な問題点を含んでおり、国公労連は以下の点をあげて、法案修正を求めています。
@給与水準を基本7割にすることは、年齢差別であり、職務給の原則にも反する。職務にふさわしい処遇を基本に、賃下げとならない制度とすべきである。
A役職定年制は一方的な不利益変更であり、地方出先機関にまで一律に導入することは、組織運営上も問題が多い。
B定年前短時間再任用は、フルタイムへの転換が可能な制度設計にすべきである。また、31時間以上の枠組みを設けるべきである。
C加齢により就労が困難な職種については、特別な措置を検討すべきである。
 あわせて、退職手当、定員、能力・実績主義にもとづく人事管理について意見を述べ、国公労連との合意にもとづいてすすめるよう求めています。
 また、法案提出にあたって、@60歳前後の給与水準が連続的なものになるよう、人事院において給与制度について検討し、定年引上げ完成前に所用の措置を講ずること、A人事評価について検討し、試行日までに所用の措置を講ずることがそれぞれ検討事項とされており、注視する必要があります。

 
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法制審に「IT化」意見書を提出
 
法務省に意見書を提出する中矢委員長と斉藤東京地連委員長

「義務化」ではなく、利用しやすい態勢整備を

 4月28日、法制審議会宛ての「『民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案』に対する全司法の意見書」を法務省に提出しました。
 提出にあたって、中矢委員長は次のように補足説明しました。
 「全司法は裁判手続のIT化を進めることは必要だと考えるが、国民がより裁判を利用しやすくすることが最大の目的でなければならない。その際、ITへの対応が万全な企業やその代理人のみを想定するのではなく、広くすべての国民を視野に制度を検討すべきである。そうした観点から3点を強調したい。
@インターネット申立ては「義務化」するのではなく、利用しやすいシステムの構築と申立てをサポートする態勢の充実によって、利用者を増やすことを目指すべきである。
Aウェブ会議等のIT技術の活用によって適正・迅速な裁判をすすめることに異論はない。ただし、直接主義の要請が働く口頭弁論や証人尋問について、当事者のいずれかが裁判官の面前で審理を望む場合は、それによるべきである。
BIT化によって、電子記録の管理、システムを活用した事件管理、当事者へのサポートが書記官の重要な職務となるが、この機会に、事務処理の実態に合わせた書記官権限の在り方ついて、拡充の方向で検討していただきたい。それに伴い、手数料の電子納付をはじめとした事務の効率化もあわせて検討していただきたい。」

郵券・印紙をなくす方向で議論している

 対応された法務省の担当者は「担当部局に伝えます」と述べた上で、以下のようにコメントしました。
 「前提として言われたことは、そのとおりと認識している。ご意見は担当部局に伝える。システムについては、安定的に運用されることが前提で議論している。システム自体は最高裁が準備されるものなので、ご意見をくみ取って法制審で議論というわけにはいかないが、ご意見の趣旨は理解した。
 口頭弁論や証人尋問については、「自分が裁判官の前で主張したい」という点と「相手側を来させろ」という点があるが、少なくとも前者を制約する議論にはなっていない。
 書記官権限については、どういう分野で力を発揮していただけるか検討しているが、なかなか難しい問題もある。事務の効率化について、IT化を契機に郵券、印紙の取扱いをなくしていくというのは、そういう方向で議論されている。」

 
 
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