システム化要求に加え、書記官の職務権限確立も主張
民事裁判手続のIT化については、フェーズ1(ウェブ会議等のITツールを活用した争点整理手続)の運用が拡大されていますが、法制審議会―民事訴訟法(IT化関係)部会で、フェーズ2実施のための法改正に向けた議論が急ピッチですすめられています。
全司法では、2018年3月に「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」が出された時から、この問題にとりくんできましたが、具体的な議論がすすんでいるもとで、改めて職場で議論し、意見反映を図ることが重要になっています。
こうした動きをふまえ、全司法本部は9月25日、最高裁に意見書を提出しました。
最高裁は「書記官事務に関して検討を要するものと考えられる立法課題やIT化後の書記官事務を見据えたシステムの在り方について意見を募る」として、下級裁からの意見報告を求めています。今回の意見書は、それに合わせて、現段階における全司法の意見を提出したもので、以下のような内容になっています(ただし、2―(4)以外は要求項目のみ記載)。
また、各地連・支部から報告された「システム化を希望する事務と機能について」を集約して意見書末尾に添付しました。
1.民事訴訟手続のIT化に関するシステムの在り方について
(1)原則として、書面を前提としないシステムとすること。
(2)裁判手続の利用者にとっても、裁判所の担当者にとっても、利用し易いシステムとすること。
(3)事務の効率化、過誤防止に資するシステムとすること。
(4)十分なセキュリティ対策をとるとともに、認証制度やシステムへのアクセス権限について考え方を整理すること。
(5)安定的に稼働するシステムとすること。
(6)システム化と合わせて、IT利用環境にない当事者への対策をとること。
(7)上記のシステムを構築し、安定的に運用するための十分な予算を確保すること。
2.書記官事務に関して検討を要するものと考えられる立法課題について
(1)民事訴訟の基本原則を踏まえつつ、前記のシステムを実現し、システムに合わせた訴訟運用を可能にする目的で法規の改正を図ること。
(2)送達費用の廃止、郵券・印紙の使用をなくすこと。
(3)より一層円滑な訴訟進行を図るため、関係官署等と連携した枠組みを作ること。
(4)裁判手続IT化のもとでの書記官の職務権限を確立すること。
裁判所書記官が手続きの公正さの担保のために裁判官とは別の独立官職として設置された意義を踏まえ、訴訟記録が電子化されるもとでも、記録(データ)を作成・保管する職務は書記官が担うべきである。そのための法的裏付けや、システム設計にあたり書記官権限でのみアクセスできる部分を作ることなども考える必要がある。
また、IT化によって、システムを活用して事件管理を行うことが書記官事務の大きな部分を占めることになるが、それとの関わりで、事件管理に関する事務の中で書記官の権限とすることが相当なものについて検討してもらいたい。
あわせて、窓口業務、事件関係者との連絡調整やIT利用環境がない場合のサポートも含めた、当事者との接点として書記官が担う役割もさらに重要となることから、それに相応しい人的・物的体制を整備することを求める。
職場で議論し、意見反映を図ることが重要
裁判手続IT化について、全司法は2018年にとりくみを開始し、2019年4月には「裁判手続IT化に関する要求書(第1次)」を最高裁に提出するなど出足早くとりくんできました。今年の諸要求貫徹闘争でも、最高裁交渉全体を通じたテーマとなり、その一つの到達点として最高裁が「新たな方向性」を示しました。今後、その具体化について議論する中で、IT化予算の確保、事務官・書記官などの職員制度、今後の人的体制について、意見を反映していくことが重要になります。
全司法では、これから始まる秋季年末闘争でも重点課題と位置づけてとりくみをすすめます。あわせて、7月の第77回定期大会を経て設置したIT化検討プロジェクトチームで議論し、年内に意見書を作成することにしています。
法制審は年内に一通りの議論を終え、年明けには方向性が示される見通しになっています。各支部でも積極的に議論をすすめ、職場からの意見・要望を本部に伝えていただくようお願いします。
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