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 最高裁が行(二)職員の退職後補充を行わない方針をとっているもとで、運転手が配置されない庁が全国的に広がっています。7月の地連行(二)担当者会議や第77回定期大会でも、運転手の後補充を求める意見とともに、運転手の配置がなくなった庁から、少年押送、出張等で官用車(庁用者)が使えなくなったことによる職員の負担や不安、代替となるべきタクシーの契約や利用で問題が生じている実態などが指摘されました。とりわけ、交通事情が悪い地域等で強い要求が出されていますが、その中から今年4月以降、運転手の配置がなくなった島根支部に実情を報告していただきました。
 
 「車社会」の地域で運転手が0人! 
 松江地家裁では、2020年3月末の運転手の退職に伴い、後補充がなされなかったため、運転手が0人となりました。松江地家裁のある島根県は、本当に田舎で、公共交通機関が充実しておらず(具体的にはJRの本数が1時間に2本あればよしという具合です。)車社会の地域であり、ほぼ、大人1人につき車1台所有しているようなところです。
 このような地域にある裁判所において、運転手が0人となってしまうのは松江地家裁の職員にとって非常に大きな問題であり、裁判事務・司法行政事務を遂行する上で影響が大きいものです。島根支部では、当局からの説明を受けた後、2月に「島根支部緊急アンケート」と銘打ち、運転手の退職に伴うアンケートを実施し、集まった組合員の声を要望書という形で当局に伝えました。
 アンケートで寄せられた意見として、「運転手が必要であり、庁用車が利用できなくなるのは困る」というものが多く、また、庁用車が利用できない場合は、タクシー利用基準の緩和を求める意見が多かったです。また「なんで車社会である島根県で運転手が0人となってしまうのか」という意見もありました。
 要望書に対し、当局からは「運転手の欠員補充は難しく、タクシーの利用基準の緩和はできないが、運用上、利用が認められる場合もあるのでどんどん照会してほしい」との回答がありました。
 
 不便、非効率的な執務状況になった 
 4月以降、現実に運転手がいなくなり、再度、困ったことが生じたかを聞いてみたところ「3月まで庁用車を利用していた用務が当然にタクシー利用が認められるとは限らず、自転車等他の方法となると用務全体の時間が増え、非常に不便になったと感じる」との声や、家裁調査官からは「日帰りの旅程で可能であった出張が、宿泊や複数回に分けた出張として検討する必要が生じ、非効率的な執務状況となっている」などの声が寄せられました。このことから、島根支部では2020年諸要求期独自要求書から、運転手技官の欠員補充を求める要求を加え、当局に対し要求実現を求めています。今後もタイムリーに職場の声を集め要求実現につなげていきたいと思います。
 (全司法島根支部)
 
 運転手の配置について、地連・支部から本部に寄せられている意見・要求
東京地連東京高地家裁と最高裁運転手室の統合の撤回。在京においても裁判所が求める仕様書内容での契約が結べるタクシー会社はほとんどない。運転手を採用していくべき。
 
 九州地連
 各支部とも、特に運転手の減少に対しては、出張や押送などで、一般職からも不満が強く、運転手確保の要請は強い。
 
 秋田
 本庁の自動車運転手がいなくなり、庁用車の利用が制限されるようになった。家裁調査官の負担が大きい。より柔軟なタクシー利用を求めていく。
 
 最高裁
 行(二)職の退職後後補充を強く要求していくべき。他省庁(法務省・検察庁、外務省、国会、内閣府)では、運転手・守衛を毎年募集している。少年の人権を尊重し、よりよい矯正教育を施すための第一歩として、運転手の正規職員を確保すべき。
 
 愛知
 検察庁のように、運転手の採用を求めたい。
 
 福井
 庁用車が使用できない際の押送をタクシーで行っているが、タクシーの契約は前日までに予約しないと手配してもらえないことになっており、緊急同行等の身柄の押送に対応できない。
 
 和歌山
 少年の情操や秘匿性を考えると、民間タクシーによる押送は非常に問題である。
 
 愛媛
 少年押送は、必ず裁判所職員である運転手が庁用自動車で行うようにすべきである。
 
 福岡
 本年4月から飯塚支部で運転手の再任用終了に伴い、タクシー押送の外注契約を行ったが、契約条項が複雑で業者確保が困難なうえ、さらに公募手続を取る必要があり、相当な事務の負担があった。
 
 佐賀
 唐津支部において、本庁庁用車(1台のみ)で都合がつかない場合は、タクシーで少年を押送しているが、目隠しや逃走防止等、職員の負担がかなり大きい。
 
 全司法島根支部緊急アンケート集約結果(抜粋)
1 運転手技官は島根県内に1人はいるべきだと思いますか。
 
  
 2 庁用車が島根県内からなくなった場合、困ること、心配なことは
 ・山間部など公共交通機関が不便なところへの出張
 ・庁用車はこれまで人だけでなく物も運んでいたと思うがそれらをすべて宅配便等で運ぶとなると事務が煩雑になるのではないか。記録の使送。記録書類の送付。
 ・家裁調査官の調査(時間的、体力的不安が大幅に増える。)
 ・少年の押送はやはり庁用車が原則だと思う。少年の人権はないのか。
 ・急な用務に対応できるのか。
 ・銀行への当座小切手の持ち込みが現在は往路分しか認められておらず、往復利用できるようにしてほしい。悪天候時に困る。
 ・裁判官の填補
 ・タクシー会社との調整・連携が必要になり、その分手間がかかるのではないか。
 ・本庁支部間、支部出張所間の移動に時間がかかる。
 
 3 自由記載欄
 ・タクシー利用の緩和した運用基準は、早期に示されるべき(事案に応じて…などとすると利用申請に尻込みしてしまったり、申請を受ける総務課等も事務が混乱するのではないか。)
 ・これは大変な事態だと思う。田舎で車がないと不便な所なのに!!都会はいらないだろうけど、なんで島根が?
 ・もし運転手技官を補充しないのであればそれによって生じる不具合を補う対策をとることを当局に強く要望したい。もし対策がとられないのなら国民への司法サービスが低下しても構わないという当局の認識でしょうか。職員個人の自助努力で何とかしろということにはならないでしょうか。
 ・島根のような移動手段が限られているところで庁用車がなくなるのはすごく大変なことだと思うのにそれに対する有効な手段などについて当局が全く考えていないと思う。
 
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