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全司法新聞
 
「全司法の役割」示す諸要求交渉
多くの要求が前進、今後の職場の在り方も意見交換
 

 全司法本部は6月22日〜25日、諸要求貫徹闘争期における最高裁とのまとめの交渉を実施しました。上訴記録の丁数に関する通達改正など多くの要求が前進した今年の諸要求期の交渉結果には、3つの大きな特徴がありました。

第1の特徴

全司法が主張してきた要求が数多く前進

事務総長交渉に臨む中央執行委員
 第1の特徴は、この間、全司法が主張してきた数多くの要求が前進したことです。
 特に事務の簡素化・効率化については、「取組を一層加速させ、職員の負担感にも配慮しながら、できることから順次速やかに取り組んでいきたい」と事務総長交渉で回答し、人事局長交渉では、上訴記録丁数に関する通達改正、秘匿情報の取扱い、実務講義案等の総研教材の電子データ化など、全司法が求めていた書記官事務の簡素化・効率化の要求が大きく前進しました。
 カスタマー・ハラスメントへの対応方針を策定するよう求めていたことについても、「的確な当事者等対応を行うための事務フロー」を策定することが示されました。
 事務官制度については、全司法が意見を提出したことを踏まえ、専任事務官の専門性の活用・付与という視点から、研修やジョブローテーションの在り方等について検討する姿勢が示されるとともに、その体制づくりに向けて総研に専任事務官教官を配置することが明らかになりました。また、全司法の指摘を受けて、各庁が設置している家裁調査官のプロジェクトチームについて「過重な負担とならないよう、下級裁に対し目配りしていきたい」と回答しました。
 人事評価制度についても、全司法が評価者によるバラつきを指摘していること等を踏まえ、「これまで以上に幹部職員が適切に関与する」ことにより、充実した運用を行う努力姿勢を示しました。
 インターネット接続分離以降、要求していた職員端末のネット接続についても、検討姿勢が示されました。障がい者雇用の非常勤職員についてのステップアップ制度(常勤化)の開始も明らかになりました。
 全司法が提起した令状センター構想について、具体的な動きは示されませんでしたが、情報通信技術の急速な発展普及や裁判手続のIT化の動きにも触れる等、検討の動きが見られる回答となりました。
 昇格では、処遇維持のための定数確保に向けた最大限努力の姿勢が示されるとともに、事務官4・5級について、今年4月に新たに専門職を増設し、発令したことも工夫の一つである旨回答しました。

第2の特徴

今後の裁判所の組織態勢について意見交換

 第2に、最高裁が「今後の方向性」を示したことです(下参照)。これについては、交渉後、7月上旬を中心に職場での説明があり、全職員に周知されました。
 裁判手続のIT化や今後本格化する大量退職が職場に与える影響を検討し、これに向けた職員政策を策定することは、裁判所にとって必要不可欠です。当局が示した「今後の方向性」は、その骨格であると考えられます。
 こうした考え方を全司法との交渉の場で事前に示し、全司法の意見を聴く姿勢を示したことは、誠実対応の姿勢として評価できます。今回の交渉において、最高裁は多くの課題で、この考え方を反映した回答を示しました。
 「今後の方向性」が示している「事務の合理化、効率化を推し進める」「書記官や事務官をはじめとする職員一人一人が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築」するという考え方は、全司法の要求を正面から受け止めたものです。今後、これを足がかりに、更なる前進を求めていくことが重要です。
 一方、「退職者と同数の採用をし続けることの相当性」という考え方は、裁判所全体での人員減につながる可能性を含んだものであり、当局の動きを注視する必要があります。全司法としては、「事件動向や事務処理状況等をきめ細かく見つつ検討を進めることから、個々の職員の負担が過度に重くなることはない」との回答を足がかりに、職場実態に見合った人員確保を求める立場でとりくみを強化する必要があります。
 「今後の方向性」に関わる事項については、引き続き、意見を述べていきます。

第3の特徴

感染拡大防止策のもとで職場の問題や声を伝える

 第3は、新型コロナウイルス感染拡大のもとで、職場で起きた様々な問題を伝える交渉になったということです。人事局長交渉でも職場実態に基づいた主張を行い、「今後、第2波、第3波が訪れる可能性があることも考えれば、最高裁としても、下級裁から実情や意見等を聞くなどして、今回の経験を振り返り、今後の対応に活かしていく必要があると考えている」との回答を引き出しました。
 今回の交渉で前進した要求は、全司法がこの間、粘り強く主張し、運動を積み重ねてきた成果です。また、「今後の方向性」について、職場よりも先に交渉の場で示したことは、裁判所の将来像について全司法の意見を聴こうとする最高裁の姿勢を示したものです。加えて、コロナ問題でのやりとりは、緊急事態のもとでも全司法と当局が話し合って職場の問題を解決していく関係にあることを明らかにしました。
 職員の代表として意見を述べ、当局と話し合って「職場のルール」を作っていく、全司法が果たしているこうした役割をすべての組合員の確信にし、組織を強化・拡大するとともに、今後のとりくみの中で職場の声を集め、更なる要求前進を目指しましょう。

今後の裁判所における組織態勢と職員の職務の在り方の方向性等について

1 裁判所は、これまでも、適正迅速な裁判の実現に資するよう、裁判手続のIT化を始めとした情報通信技術の活用、通達等の見直しも含めた各種事務の簡素化・効率化、組織・機構の見直しにより、事務の合理化、効率化を進めてきたところである。もっとも、情報通信技術の急速な発展普及を始めとした近時の社会経済情勢の変化やそれに伴う国民のニーズの変化等に適切に対応し、より質の高い裁判を迅速に行うためには、今後、これらの取組を一層加速させ、事務の合理化、効率化を推し進めることにより、書記官や事務官を始めとする職員一人一人が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築して、より活力のある組織を目指す必要があると考えている。
 また、そのような取組の結果として、文書作成や記録管理の利便性が向上したり、IT機器を活用した多様な働き方が可能となる余地が広がるなど、職員の執務環境の改善も期待できるのではないかと考えている。
2 裁判手続のIT化を始めとした情報通信技術の活用、通達等の見直しも含めた各種事務の簡素化・効率化、組織・機構の見直しにより、事務の合理化、効率化を図り、職員が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築していくのに合わせて、それに相応しい最適な人的態勢の在り方を検討することになる。その際、事件動向や事務処理状況等も見ながら、退職者と同数の採用をし続けることの相当性についても改めて検討することとなろうが、この点について見直しを行うこととした場合には、その状況を最大限活用して、職員が、今後の裁判所における専門性を身に付けられるよう育成を図るとともに、身に付けた専門性を活かせる態勢を整備し、専門性を活かした能力の発揮について適正な評価を行い、職員の処遇に適切に反映できるよう努めていきたいと考えている。

 
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事務の簡素化・効率化
「できるところから順次検討を進めていきたい」
最高裁人事局長交渉
 

人員

「最適な人的態勢」検討、次年度に向けて最大限努力

全54支部から提出された要請書を提出
 「今後の方向性」を示し、「最適な人的態勢の在り方を検討することになる」と回答しました。それが「削減ありき」の姿勢であれば容認できないとの本部の追及に対して、「検討するにあたっては、事件動向や事務処理状況等をきめ細かく見つつ検討を進めることから、個々の職員の負担が過度に重くなることはない」と回答しました。
 次年度の増員に向けた基本姿勢については、「必要な人員の確保について引き続き最大限の努力をしていきたい」との姿勢を示しました。その際、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響も含め、各種の事件数の動向や各部署の事務処理の状況等をきめ細かく把握」するとの回答を引き出しました。

超勤縮減、事務の簡素化・効率化

過剰な過誤防止策が求められているのではない

 超勤実態の把握について「各庁においては、超過勤務の事前申告等を通じて、勤務実態の正確な把握と超過勤務の必要性・緊急性の適切な判断に努めており、特に超勤削減に向けた積極的なとりくみを進めるべき幹部職員は、部下の管理職員の働き方を含めて、その指導を行っている」「的確かつ遅滞なく把握するよう今後も指導を徹底していきたい」と回答しました。
 事務の簡素化・効率化については、「裁判部、事務局を問わず、組織全体として超過勤務の削減にとりくむ必要があると考えており、できるところから順次検討を進めていきたい」と回答し、過誤防止策についても「ただ単に過剰な過誤防止策を構築するようなことが求められているのではない。この趣旨が各庁で正しく理解され、実践されるよう、最高裁として支援を行っている」と回答しました。

新型コロナ下のBCP

経験を振り返り、今後に活かしていく

 新型コロナウイルス感染症対応について、職場実態を踏まえて追及したのに対して、「裁判所がこれまで直面したことのない事態であり…、職員等の理解と協力の下、各庁ともBCPの定めに従い、地域の実情に即した柔軟な対応に努めたと認識している。今後、第2波、第3波が訪れる可能性があることも考えれば、最高裁としても、下級裁から実情や意見等を聞くなどして、今回の経験を振り返り、今後の対応に活かしていく必要があると考えている」と回答しました。

事務官制度

全司法の意見書を受けて制度の検討を開始

 全司法は事務官制度について、人材育成の仕組みや任用の在り方等を、専門性を中心に据えたものに転換するよう求める意見書を4月に最高裁に提出していましたが、これを正面から受け止める前進回答がありました。
 人事局長は「職員団体から、事務官制度に関する意見が出された」と前置きしたうえで、「専任事務官の専門性の活用・付与等やそれに向けた研修の在り方を検討する必要がある」「新採用事務官の配置を含むジョブローテーションの在り方についても、問題意識を持っている」「研修の在り方について検討するため、裁判所職員総合研修所の一般研修部に、専任事務官の教官を配置することとした」と回答しました。

書記官事務の簡素化・効率化

上訴記録丁数など、多くの要求が前進

 この間、通達改正も含めた簡素化策を要求してきたのに対して、「上訴記録の丁数打ちについては…、合理化に向けて現在具体的に通達の見直しを含めた検討を鋭意進めている」「また、秘匿情報の取扱いについてもIT化を待たずに何か工夫できないか検討してみたい」と回答しました。
 課題となっている郵便切手の管理についても、電子納付について日弁連への協力を依頼をしていることを明らかにしました。
 地連書記官担当者会議や青年協で重点要求と位置付けた総研教材のデータ化について、「まずは書記官実務研究報告書について、J・NETポータルに掲載することとした。なお、実務講義案のデータ化についても、引き続き、検討していきたい」と回答しました。
 また、全司法がカスタマー・ハラスメント対策を要求していたことも踏まえ、「事件当事者等に対する対応に一定程度の事務負担が生じていることを踏まえ、最高裁において、考えられる基本的な当事者等対応の流れと留意点を示し、これに基づき、各庁において、事務フローを策定してもらうことによって当事者対応の合理化を図ることができないか検討している」「事件当事者等によるパワー・ハラスメントの防止等に資するところがあるのではないか」と回答しました。

その他

職員端末のインターネット接続、家裁調査官のPT、非常勤の常勤化など

 この間要求していた職員端末のインターネット接続について、「補正予算において、ウェブ分離ソリューションの導入等が計上された…、民事訴訟手続のIT化に向けて、同サービスに基づき、職員端末と外部のインターネット網を接続できないか検討している」と回答しました。
 また、家裁調査官のPTについて、「職員団体からは、家裁調査官に一定程度の事務負担があるとの主張がされているところである」と前置きをした上で、「プロジェクトの設置が適切になされるとともに、設置された場合には特定の職員に過重な負担とならないよう、下級裁に対し目配りしていきたい」と、全司法の指摘を踏まえた回答を行いました。
 非常勤組合員からも要求が強かった障がい者である非常勤職員の常勤化について、「裁判所においてステップアップ制度の運用を開始することとした」と明らかにしました。
 宿日直については、全司法が長年要求している令状センター構想について、令状の電子化に触れた新聞報道があったことも踏まえて追及しました。
 人事局長は「情報通信技術が急速に発展普及しており、また、他の裁判手続のIT化についても検討が進められていることを踏まえながら…、引き続き多角的かつ慎重に検討していきたい」と回答しました。情勢を踏まえながら検討を進めている様子はうかがえるものの、もう少し時間がかかる感触です。

 
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事務総長交渉回答要旨
 

「今後の方向性」について

 諸要求期の交渉で「今後の方向性」を示したことを受け、事務総長交渉においても、人的態勢、職員の育成等の2か所で「情報通信技術の急速な発展普及を始めとした近時の社会経済情勢の変化やそれに伴う国民のニーズの変化等に適切に対応し、より質の高い裁判を迅速に行うためには、今後、書記官や事務官をはじめとする職員一人一人が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築して、より活力のある組織を目指す必要がある」との基本姿勢を示しました。

人的態勢の整備について

 人的態勢では、前記の基本姿勢に基づき「それに相応しい最適な人的態勢を構築し、裁判所が、国民の期待に応え、信頼が得られるよう、引き続き、努力していきたい」と回答しました。
 次年度の増員要求については「新型コロナウイルス感染症対策も含め、国の財政事情が引き続き逼迫している」ことや、事件数が「一部の事件を除いて減少又は横ばいで推移している」こと等をあげて「これまでにない極めて厳しいものになる」との認識を示しつつ、「必要な人員の確保に向けて最大限の努力をしていきたい」と回答しました。

超勤縮減、事務の簡素化・効率化について

 引き続き「組織全体として超過勤務の削減に取り組む」姿勢を示すとともに、事務の簡素化・効率化について「最高裁としては、これまでも、通達等の見直しも視野に入れながら、各種事務の簡素化・効率化に取り組んできたところであるが、今後はこの取組を一層加速させ、職員の負担感にも配慮しながら、できることから順次速やかに取り組んでいきたい」と積極的に進める姿勢を示しました。

職員の健康、ハラスメント対策について

 ストレスチェック制度について「対象となる全ての職員がストレスチェックを受検することが望ましい」とし、「引き続き、制度への理解の浸透を深めていきたい」と回答しました。
 また、パワー・ハラスメントに関する人事院規則の制定等を受け「ハラスメントの防止に関する裁判所の運用を更に充実させたところであり、今後も引き続き、全ての職員に対する研修等の機会を通じた各種ハラスメントの防止に関する意識啓発、相談しやすい体制づくりやその周知等、より効果的な取組に努めていきたい」と回答しました。

職員の育成、研修及び任用政策等について

 「今後の方向性」の基本姿勢のもと、書記官について「IT化後の書記官事務について、法的知識と実務慣行に通じ、裁判官の審理運営方針等を理解・共有できる書記官こそが担うべき事務があるのではないか、といった視点から議論がなされるところであり、そのような事務に注力できる事務処理態勢を構築していく必要がある」、事務官について「専門性の活用・付与等やそれに向けた研修の在り方について検討する必要があると考えている」と回答しました。
 また、人事評価についても「その更なる充実も図っていきたい」との姿勢を示しました。

権利について

 引き続き、「誠実対応」の姿勢とともに「下級裁当局に対しても、職員団体に対して同様の認識で臨むよう、その指導を一層徹底」していくことを確認しました。

 
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最高裁3局(総務・人事・経理)、1課(情報政策課)と交渉
 

総務局交渉

IT化後の書記官事務
職場の声を踏まえ、追及

 増員要求については、「次年度の増員を巡る状況はより一層厳しくなる」との情勢認識を強調したほか、「裁判手続のIT化をはじめとした情報通信技術の活用、通達等の見直しも含めた各種事務の簡素化・効率化、組織・機構の見直しにより、事務の合理化、効率化を図り、職員が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築していくのに合わせて、それに相応しい最適な人的態勢の在り方を検討する」と回答しました。
 全司法は、各地域の減員及びコロナ禍による職場の繁忙実態を伝えた上で、特に、家裁調査官や書記官の増員、大規模庁への人員シフト縮小を強く求めました。
 「国民のための裁判所」の実現については、各種法改正の情報提供や、条解民事執行規則の新版を各庁に配布したという回答がありました。労働審判事件の事務処理体制については、各庁において判断するとしながらも、「今後の運用状況等を注視していきたい」と回答しました。通訳人については、研修において、民事、行政、家事、少年事件等に関する説明を盛り込むなど能力向上に向けた施策を明らかにするとともに「通訳人候補者の確保に努めていきたい」と回答しました。また、遠隔地にいる通訳人について構外ビデオリンクを活用して公判を実施した例を紹介するとともに、「今年度中に勾留質問手続においても遠隔通訳を実施できるよう環境を整備する予定である」と回答しました。
 裁判手続のIT化については、職場の意見を広く反映させることを求めたのに対し、「立法課題やIT化後の書記官事務を見据えたシステムの在り方について、意見を募ることとした」と回答しました。
 職員制度に関する要求については、事務の簡素化・効率化について、「通達等の見直しも視野に入れながら、できるところから順次速やかにとりくんでいきたい」と回答したほか、総合研修所のIT環境については「裁判手続のIT化の今後の動向も踏まえて検討していきたい」、郵便切手管理については「電子納付の推進に向けてできることからとりくんでいきたい」、実務講義案等のデータ化については「検討すべきことが多い」、上訴記録の丁数打ちについては「負担については認識している」と回答しました。
 電子速記タイプライターの保守・メンテナンスの要求については、従前回答にとどまりました。

経理局交渉

簡素化やシステム障害改善を
新営・包括協議路線は庁名・路線を挙げて追及

 事務の簡素化・効率化については、「『新版会計事務提要』を本年3月に刊行した」「予算関係の報告事務の一部簡素化を図ったほか、予算執行方針に関する事務連絡文書の整理を行ったり、下級裁における備品の調達手続の合理化に資するよう、予算示達時期を調整する等のとりくみを行った」と説明し、今後も「通達等の見直しも視野に入れながら、できることから順次速やかにとりくんでいきたい」との姿勢を示しました。
 また、全司法から、住宅事情調査の廃止・見直しや、保守業務の複数年契約による事務負担軽減、旅費業務の簡素化、共済組合の事務の改善等、現場から出された具体的方策を示して検討を求めたところ、「簡素化・効率化については、会計法令等とのバランスを考えてとりくみたい」との姿勢を示しました。
 庁舎設備の新営・増改築・改修の要求については、「必要性・緊急性の度合いや当事者の利便を考慮しながら必要な予算を確保」していくとの姿勢を示しました。全司法は地連・支部からの報告に基づき、庁名を挙げて新営・回収等を要望しました。
 また、障がい者雇用がすすめられているもと、執務室等における車いす等での移動の支障を解消するためや、コロナを経た新たな生活様式や今後の感染症対策などの観点から、職員一人あたりの面積を広げるための設計基準の見直しを検討することも求めました。
 宿舎については、異動対象者への早期の宿舎情報の提供、丁寧な説明や、住宅事情の悪い地域においては宿舎の確保が必要であることを追及したところ、「宿舎需要があるのであれば、努力したい」と、全司法の主張に応えた回答を行いました。
 旅費・庁費等については、移転料の3社見積り要件の緩和、職場からの要求が出されている15区間の特急包括協議路線の拡大、出張時のタクシー利用の要件緩和等を求めたことに対して、「関係機関に伝えていきたい」と回答しました。
 また、保管金システム等の度重なる障害を受け、保守契約にあたっては競争性だけではなく、技術的保証を考慮するよう求めたことに対しては、「価格と履行確保の難しいバランスの中で、会計法規を遵守しなければならないことを理解してもらいたい」と回答しました。

人事局交渉

意向打診、宿直、業務縮小下での新採OJT、採用試験などの課題で追及

 全体としては従前回答に留まりましたが、職場実態を最高裁へ示しながら追及し、職場の問題意識を伝えました。
 超勤実態に関しては、異動期の超過勤務に加えて、コロナ対策の業務縮小体制のもとで出勤日の超過勤務時間が増加している実態があることを指摘するとともに、昼休みや早朝の超勤の把握を徹底することを改めて求めました。また、上限規制のもとに必要な超勤申告がしにくい状況があることを伝えました。
 事務の簡素化・効率化に関しては「できるところから順次速やかにとりくんでいきたいと考えている」と回答しました。
 家裁調査官の異動に関して、総研14期生について、異動内示が遅かったため転居準備が十分にできなかった事例や、意向打診が全くなく突然内示を受けた事例を紹介し、できるだけ意向打診を行ってほしいことを重ねて要求しました。また、少年調査票の記載例を早期に示すことを改めて求めました。
 宿日直に関して、裁判官宅に令状を取りに行くことについて職員負担やセキュリティ上の問題が大きいと指摘し、裁判官の泊まり込み又は登庁処理の積極的な検討を求めました。宿日直中の令状処理の実態把握を最高裁の責任で行うよう求めたのに対しては、「各庁において宿日直の実態を踏まえて、職員の負担感や健康管理に十分配慮された態勢で行われていると考えており、最高裁において宿日直業務における令状関係の処理時間等を把握することは考えていない」と、従前どおりの回答となりました。
 コロナ対策の業務縮小体制のもとで、新採用職員のOJTや異動した職員の新たな職場等における職務導入研修が十分に実施されていない状況を指摘して、各庁の実態を把握し、対応策を検討するよう求めました。
 採用試験に関わっては、今後のコロナの状況によって、予約していた会場が使えなくなり、代わりの会場が当初予定していた会場よりも高額で予算を確保できなかった場合や、代替会場が見つからなかった場合において、予算上申に柔軟に対応するなど配慮するよう求めました。

情報政策課

IT化
「事務の簡素化・効率化、事務過誤防止、職員の働き方等の観点についても配慮」

 情報化戦略の具体化について「実際にシステムを使用する職員の意見や要望等を的確に把握することが重要」「システムの利用者の意見を踏まえつつ、裁判所のシステム最適化計画の考え方に沿った合理的かつ有益なものとなるよう努めていきたい」と基本姿勢を示しました。IT情報システムの開発・改善等にあたっての全司法の意見反映を求めたことに対しては、「裁判手続のIT化の検討を進めるにあたっては、(中略)職員及び職員団体の意見も踏まえながら検討を進めていきたい」と回答しました。
 事務の簡素化・効率化等に関連し、「(裁判手続のIT化等の検討は)事務の簡素化・効率化、事務過誤防止、職員の働き方等の観点についても配慮していきたい」と回答するとともに、セキュリティ対策を検討していく中でも「事務の簡素化・効率化等の観点についても可能な限り配慮していきたい」と回答しました。BCP下の在宅勤務にあたり、セキュリティポリシーの例外的な取扱いがなされたことについて、職員に情報流出への危機感があったこと、緩和により可能となる事務の説明等がなかったことなどにより、十分に活用できなかったことを示し、新型コロナ第2波に備えた検討を行うよう求めたことに対しては、「意見として承る」との回答に止まりました。
 必要な予算の確保を求めたのに対し、「予算の確保は大変厳しい状況」としながらも「必要な予算の確保に向けては、最大限の努力を行いたい」と回答しました。裁判手続のIT化とNAVIUSとの関連性については「NAVIUS(第3次開発部分)と民事訴訟手続のIT化のためのシステムの関連性について検討を深めているところであり、その状況も踏まえながら、今後の開発についても更に検討していく必要がある」と回答しました。
 NAVIUSの開発にあたっては「これまで職員及び職員団体から出された意見等を踏まえて」「書記官事務の在り方を踏まえつつ、真に必要かつ相当なものは何かという観点から検討」「事務の合理化・効率化や過誤防止といった点についても考慮している」としつつ、操作の煩雑さや出力帳票の改善等を求めたことに対しては、「承る」との回答に止まりました。IT情報基盤の強化については「引き続き障害時の迅速対応に努めていきたい」と回答しました。

 
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通常勤務に戻る中で苦慮する実態明らかに 地連書記長会議
 

使える部屋限られる、TV会議システム台数不足など実態明らかに

オンラインで地連書記長会議を実施
 7月2日、地連書記長会議をリモートにより開催しました。山場交渉における最高裁回答の前進面・特徴や、新たに示された「今後の方向性」について確認するとともに、コロナの影響を受けている職場実態や各支部の活動状況の確認、次年度の運動の課題について共有しました。
 緊急事態宣言が解除されて1か月半となる現在、週1回程度の在宅勤務を維持している庁もあるものの、多くの職場で勤務態勢は元に戻りつつあることが報告されました。しかし、全員が出勤していても、密を避けるために1日当たりの期日指定件数の上限を決めているところがあり事件がなかなか回らない、狭い部屋や窓のない部屋は使えないことから弁論準備・調停などの期日指定に支障が生じているといった報告がなされました。また、テレビ会議や電話会議の活用が進む中、とりわけテレビ会議システムについては、整備台数が少なく、事件だけでなく司法行政での活用も増えていて調整に苦慮している、高裁に整備されていないため地裁の利用を圧迫しているなどの報告も聞かれました。感染拡大防止策をとりながら事件を進めるといった観点が引き続き求められる中、勤務態勢が元に戻っても多くの課題があることを確認しました。

オンライン飲み会、教宣紙など活用し、加入が拡大

 支部活動、とりわけ新採用職員への声かけについては、緊急事態宣言が解除された6月以降に徐々に動き始め、新たな加入の報告がなされているといった状況が確認できました。四国地連からは香川支部のとりくみが報告され、感染対策として全員を対象にしたガイダンスではなく少人数でのガイダンスを実施したところ、少人数にしたことで新採用職員が質問しやすくなった印象があったとのことです。また、コロナの関係でオンライン飲み会といったコミュニケーション手段が大きく広がりましたが、職場内サークルでオンライン飲み会を実施して人間関係を作り、そこから未加入者に話をして組合加入につなげたという報告も寄せられました。また、中部地連からは石川支部や岐阜支部における6月以降の組織拡大が報告され、とりわけ岐阜支部は、コロナ禍の中にあっても教宣紙などで組合の活動を伝えて理解を広げ、6月以降9人の組織拡大が進んだとのことです。九州からは今後、土日を使ったレクを計画している支部もあるとの報告もされ、組織拡大に向けたとりくみを一層強化していくことを全体で確認しました。
 一方で、職場大会の開催などについては、まだまだ職場や組合員に不安な気持ちが大きく、消極的な支部があることも報告されました。以前は多くの支部で実施していた屋外での職場大会や、職場単位での小規模の集まりの開催、またリモート活用の工夫などをしなければいけないということも確認しました。

さらなる前進に リモートも活用

 緊急事態宣言下での業務態勢を総括し、「コロナ後の社会」に活かすこと、第2波に備えた態勢を確立することは喫緊の課題です。加えて、書記長会議では、次年度の運動の課題として、「今後の方向性」の具体化、裁判手続のIT化に向けたとりくみを強化する必要があることを確認しました。全国大会での議論を経て、具体化していきたいと思います。
 コロナの影響を受けて様々な会議や集会が中止を余儀なくされた中、全司法では、こうしたリモート会議や動画配信を積極的に進めてきました。顔が見える機会を増やすことは連帯を深めることにつながることが実感できましたので、各地連・支部でも活用していただきたいと思います。本部では、これまでしていた会議をリモートに置き換えるというのではなく、運動を更に前進させるという観点から、今後も積極的に活用していきたいと思っています。

 
 
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