6月1日から人事院規則10―16(パワー・ハラスメント防止等)が施行されました。これを踏まえて、最高裁は5月22日に事務総長通達(最高裁人能第618号)を発出し、全司法本部に説明するとともに、全司法が事前に提出していた意見・要望等に回答しました。今後、職員周知、研修、相談体制の構築、職員の救済と再発防止などについて具体化し、「ハラスメントのない職場」を作るとりくみが重要になります。
規則の職員への周知・徹底を
人事院規則では、パワー・ハラスメントの禁止が明記され、パワー・ハラスメントの定義、管理監督者の責務、などが定められました。
「職員の責務」が人事院規則で位置づけられたことも踏まえ、全職員に対する説明会を各庁で実施するよう求めたのに対して、最高裁は「実施することも考えられる」との認識を示したうえで、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、それに代えて「職員周知文書を配布するなどして、職員の意識の啓発及び知識の向上を図っていきたい」としました。また、各庁の健康管理懇談会で議題とすることについては、「議題として取り上げてほしいという意見が出されたことについては、下級裁に伝えることとしたい」と回答しています。
今後、これらを活用して、職場の中で認識を広げていくことが重要です。
規則の趣旨等も踏まえて、研修を検討
人事院規則は研修の実施を規定し、特に留意するものとして「新たに職員となった者」と「昇任した職員」をあげています。最高裁は「規則の趣旨等も踏まえながら、今後検討することとなる」と回答しました。
全司法からは、ハラスメントに関する最新の知見に遅れることのない充実した研修を実施することなどを求めています。
とりわけ、相談員の研修は極めて重要であると考え、「別途、専門的な研修を実施すること」を求めましたが、最高裁は「新たに相談員になった際、職場におけるきめ細やかなOJTが実施されているものと認識しており、今後もそのようなとりくみが適切になされるよう努めていきたい」と回答するにとどまりました。
「職員の救済と再発防止」も重要
人事院規則にもとづいて「職員が認識すべき事項についての指針」と「苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項の指針」という2つの指針が人事院により策定され、これが準用されます。
全司法は、ハラスメントが起きた場合の「職員の救済と再発防止」は極めて重要であることから、これらの指針とは別に「対応方針」を文書で作成し、職員に周知するよう要求しましたが、最高裁は「事案ごとの個別具体的な事情を十分踏まえながら対応することが必要」として「策定することは考えていない」としており不満です。
最終的には事案ごとに対応されるとしても、基本の「対応方針」があれば、解決策を検討するうえで有効であり、「対応方針」を示すことで職員の認識が深まり、被害にあったと考える職員が相談しやすい環境づくりにもつながるものと考えられます。
人事院の「検討会報告」(1月公表)の「[職員の救済と再発防止」に基本的な観点が示されていることから、研修等でこれを広げ、「対応方針」として文書化させるとともに、具体的な事案の解決を図らせていくことが重要です。
事件関係者からの言動もパワハラの対象に
今回の人事院規則では「行政サービスの利用者」からの不合理なクレーム、暴言、嫌がらせ等(いわゆる「カスタマー・ハラスメント」)についてもパワー・ハラスメントに含まれました。国公労連・全司法などが強く要求した成果です。
最高裁も「事件関係者からの言動についても、パワー・ハラスメントとなる場合があり、苦情相談等の対象になることを明らかにした」とし、「事件関係者からの言動に対する対応については、事務の合理化のほか、働きやすい職場環境の整備にも影響を及ぼし得る問題であると認識している」と回答しました。これは、大きな足がかりになるものです。
見聞きした職員からの相談も
人事院規則を受けて、従来のセクハラ相談窓口は、ハラスメントについて一元的に相談することができるものと位置づけ、相談態勢が充実されることになりました。
ハラスメントを受けた職員、行ったとされる職員だけでなく、ハラスメントを現認した職員などの第三者の相談も受け付けることとなっています。
パワー・ハラスメントを見聞きした場合、被害者の相談に乗ったり、加害者に注意したり、上司等に相談することが呼び掛けられているのも大きな特徴です。もちろん、全司法の役員にも、ぜひ相談してください。
今回の規則施行を契機に、みんなで「ハラスメントのない職場」を作っていきましょう。
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