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秋季年末闘争まとめの人事局長交渉 |
全司法本部は12月3日、最高裁堀田人事局長と秋季年末闘争期の交渉を実施しました。上限規制をふまえた超勤実態の把握、事務の簡素化・効率化、書記官BU研修、専任事務官の処遇、ストレスチェックの受検方法、異動期の通勤手当など、諸要求期の交渉を含め、この間、全司法が指摘してきた職場実態、主張してきた要求に噛み合う部分で、具体的な前進・足がかりとなる回答を多数引き出し、今後のさらなる要求前進につながる交渉となりました。
人員
努力姿勢示すも、情勢の厳しさを改めて強調
2020年度予算における増員については、「最大限の努力を行っている」としつつも、「後見関係事件など一部の事件を除き減少又は横ばいの状況が継続しているという事件数の動向等の下で、次年度の増員をめぐる状況はより一層厳しい」との認識を示しました。
また、地方から大規模庁への人員シフトについては「厳しい財政事情の下において増員要求について国民の理解を得るためにも、こうした人員配置の見直し等の内部努力は必要不可欠」との姿勢を崩しませんでした。
超勤実態の把握
下級裁に対して指導を徹底していきたい
超勤実態の把握については、「官側が早朝、休日を含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然であり、今後も、超過勤務については的確かつ遅滞なく把握するよう、下級裁に対して指導を徹底していきたい」と回答しました。管理職員の声かけ、事後確認など、超勤時間の把握が4月の導入時と比べて緩くなり、超勤が暗数化している実態を主張したのに対し、全司法の指摘や主張をふまえて改めて下級職を指導していく姿勢を示しました。また、上限規制のもとでも「サービス残業や持ち帰り仕事については、あってはならない」と改めて強調しました。
事務の簡素化・効率化
郵便切手の管理に負担があると認識
事務の簡素化・効率化については「裁判部、事務局を問わず、組織全体として超過勤務の削減にとりくむ必要があると考えており、できるところから順次検討を進めていきたい」との姿勢を示しました。
そのうえで、書記官事務について「郵便切手の管理に関し、書記官に一定程度の事務負担があるとの声があることは認識している」としたうえで、「最高裁から日弁連に対し、電子納付をより推進していくことに向けての議論を開始したところである。今後、この協議の結果等を踏まえながら電子納付の推進に向けてできるところからとりくんでいきたい」と回答するとともに、「書記官事務に関する職場実態に合った事務の合理化については、工夫できるところから順次検討しているところであり、引き続き、検討をすすめていきたい」との姿勢を示しました。
当事者等の暴行等への対応
「各庁において対応」の姿勢崩さず
当事者等からの暴行・暴言・名誉棄損等への対応については、「各庁において、収集した情報を元に、事案に応じた安全確保のための対応をとっているものと承知しており、これからも継続していきたい」と各庁任せの姿勢を示しました。それに対して、各庁が事案に応じた対応をするためにも、その基本となる指針を最高裁が作るべきだと重ねて強く要求しました。
ストレスチェック
自宅パソコン・スマホ受検可能に
ストレスチェックの受検(実施)方法について、この間、受検しやすい仕組みを要求していたところ、「この度、自宅パソコンやスマートフォンで受検ができるよう、受検方法を見直すこととした」との前進回答が示されました。
パワハラ対策
指針等の策定に全司法の意見を聞くよう要求
パワハラ根絶に向けたとりくみについては「裁判所においても、人事院の動向を注視しつつ、引き続きパワー・ハラスメントの防止に向けたとりくみを検討していきたい」と回答しました。これに対して、各庁に研修用として配布されたDVDやハラスメント防止週間のチラシの問題点(「パワハラには該当しません」の記載をあえて盛り込んだこと等)も指摘したうえで、今後、指針等を策定するにあたっては、事前に全司法の意見を聞くよう求めました。
裁判手続のIT化
全体で幅広く意見交換等をしていくことが必要
裁判手続のIT化については、「裁判手続のIT化のために必要な予算の確保に向けては、最大限の努力を行いたい」「裁判手続のIT化の検討を進めるにあたっては、裁判所全体で幅広く意見交換等をしていくことが必要であり、職員及び職員団体の意見も踏まえながら検討していきたいと考えているので、意見があれば述べてもらって差し支えない」と回答しました。
研修の見直し
来年度からBU研修期間を5日間に短縮
総務課長交渉で回答した書記官BU研修の見直しについて、その概要が示されました。「問題を把握し解決するための基盤となる能力及び組織的な視点のかん養を図っていくためのカリキュラムを充実させる一方、知識付与やその再確認をする色彩の強いカリキュラムについては、これまでも各種研修において効果的に付与されていることを踏まえてスリム化を行い、全体として研修期間を短縮(概ね5日間)する等最適化を図る」としています。なお、見直し後のカリキュラムによる研修の実施時期は来年度からの予定です。全司法が育児等の家庭事情にも配慮した期間短縮を要求していたことに応えるものとなりました。
また、家裁調査官の養成課程の見直しが行われる際に、過密なスケジュールの見直しや、任官後に自信を持って単独で事件処理ができるスキルの向上に資するカリキュラムとするよう求めました。
事務官の処遇
専門性の活用や付与等に問題意識を持っている
事務官の処遇に関して、「専任事務官に関する任用や育成の在り方については、従前回答のとおりであるが、裁判所を取り巻く状況の変化等も踏まえ、専任事務官の専門性の活用や付与等について問題意識を持っているところである」と新たな検討姿勢を示しました。
また、これに関連して、係長・専門職4級・5級の昇格で「現在の昇格運用が維持できるよう努力するとともに、更に何か工夫できないか検討してみたい」と回答しました。なお、各職種の昇格の級別定数改定については、情勢の厳しさを述べつつも「職員の処遇の維持・改善に向けて、引き続き最大限の努力を続けていきたい」との姿勢を示しています。
異動時の通勤手当
転居完了前でも、発令日基準で支給可能に
異動時のいわゆる引越難民問題に関して、「制度上認められる赴任期間(10日)内に転居後の住居からの通勤を開始し、通勤手当の支給要件を具備するときは、転居が完了する前にホテル等から着任した場合であっても、異動等の発令日を支給要件が具備されるに至った日として取り扱うことができないか、人事院の見解を確認しながら、来年4月の異動期に向けて、検討している」ことを明らかにしました。この間、4月異動期に生じた様々な問題点を指摘していたところ、その一部が改善されることになります。
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