おいでやす全司法
プライバシーポリシー  
CONTENTS 全司法紹介 司法制度改革 少年法関連 全司法大運動 全司法新聞 声明・決議・資料 リンク サイトマップ
  トップページ > 全司法新聞 > 2019年10月 > 2319号
 
 
全司法新聞
 
裁判所でも「カスタマーハラスメント」(利用者等によるいやがらせ・迷惑行為)対策を!
 

 ハラスメントは今、労働分野の最重要課題の一つとなっており、これまでにない広さと深さで議論がすすめられています。ハラスメントのうち、利用者から受ける嫌がらせや迷惑行為を「カスタマー・ハラスメント」といい、裁判所においても対策を求める声が強まっています。

ILOで採択
条約でもハラスメントを禁止

 6月に開催された国際労働機関(ILO)の総会において、ハラスメント禁止条約が採択されました。職場などでの暴力・ハラスメントをなくすための初めての国際労働基準で、暴力とハラスメントは人権侵害だと明確にした画期的な人権条約となっています。また、ハラスメントの加害者に「国内法および慣行に即したクライアント、顧客、サービス事業者、利用者、患者、一般の人々を含む第三者」が含まれたことも特徴的です。国内では、5月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等が一部改正され、パワー・ハラスメントについて規定し、その防止をするための措置を講じる義務が企業に課されました。しかし、その範囲や罰則規定の有無など、ハラスメントの規制としてはまだまだ不十分なもので、更なる改正が望まれます。

厚労省も対策に着手
カスハラ増加を受け

 カスタマー・ハラスメントは、サービスの提供側に明らかな過失がないにもかかわらず、サービス利用者が執拗に謝罪や対価を要求する、威圧的な言動をとる、さらには暴言や暴行・名誉毀損に及ぶといった行為を指します。増加傾向にあるとされ、威力業務妨害罪や脅迫罪などの違法行為になりうる事例もあることから、2018年に厚生労働省が「働き方改革」の一環として対策の検討に着手し、厚労省が設置した「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」がとりまとめた報告書には、カスタマー・ハラスメントに関する項目が盛り込まれました。これが国内法規になれば、裁判所の業務においても職員を守る規範となり得る可能性が生まれます。

不当要求、居座り、脅迫、ネットでの誹謗中傷…裁判所でも

 裁判所においても、当事者の不当要求や居座り、長時間の電話拘束に苦労しているケースが多く見られます。
 大声で怒鳴りつけられた、「バカ」など罵倒する言葉を投げかけられた、開き直って「警察を呼べ」と叫ばれた、意に沿わないと感じるや急に床に伏せて詐病を演じ、救急車の派遣を強要されたといった事例も報告されています。その影響は、罵声を気にして外部(当事者)に電話がかけられない、受付手続案内に支障があるといった執務遂行に及んだり、自分に対してのものであればもちろん、同僚への暴言であってもストレスが大きく、仕事に集中できない、イライラする、仕事が嫌になるなど精神的な負担も大きくなっています。
 また、対応の間に当事者の言動がエスカレートし、誹謗中傷や暴言に及んだり、脅迫まがいの行為を受けることもあります。実際、勤務時間中に「今、裁判所に来ている。今から外に出てこい」と電話があったり、インターネット動画サイトで庁名や実名を晒して誹謗中傷されたというケースもあります。その動画においては、家族に危害を加えるような発言もありました。

裁判所でも組織的に対応する指針を

 そうした被害を受けた職員の中には、メンタル不調等により病休を取得したり、退職を選択した職員もいます。私たち公務労働者は、「全体の奉仕者」とはされていますが、不法行為ともいえる言動や人権侵害を甘受する必要はありません。職員の健康と安全を守り、公務の円滑な運営を維持するための当局の組織的な“責任”が求められています。
 他省庁の動向を見ると、厚生労働省は今年の4月に、当事者からの暴言・暴行、不当要求行為などに対し組織的に対応する指針を設けました。人事院が設置した「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」でも論点になっています。
 人事院の動きや厚労省のとりくみも参考に、裁判所においても当事者からのハラスメントに対して組織的に対応するよう、要求していきます。

 
ページの先頭へ
 
改善部分の早期実施、パワハラ対策、サービス残業根絶などを要求
19年人勧の取扱い等で総長交渉
 

 全司法本部は、9月30日、「2019年人事院勧告の取扱い等に関する要求書」に基づき、最高裁中村事務総長との交渉を実施しました。

【賃金】

「要望は関係機関に伝わるようにしたい」

 今年の人勧は、6年連続の改善勧告とはなったものの、まったく生活改善には結びつかない不満なものでした。とりわけ、30歳台半ばを超える職員や再任用職員の給与改定がなかったこと、高卒初任給を時給換算すると最低賃金の全国加重平均にも届かないものであること、住居手当見直しなどの問題点を指摘しつつ、改善部分の早期実施を関係機関に働きかけるよう追及しました。
 事務総長は「職員の生活が少しでも改善されることを常に望んでいる」「職員及び職員団体に誠実に対応していきたい」とした上で、「職員団体の要望は関係機関に伝わるようにしたい」と回答しました。また、各種手当や赴任旅費については、「今後の動向を見守っていきたい」と回答しました。

【人材確保・育成】

「管理職員の指導・評価能力の更なる向上を図る」

 家裁調査官補の受験申込者数の減少や事務官の新採用名簿の不足を踏まえ、人材確保のとりくみを強化するよう求めました。また、評価制度については、育成方針や目標が組織的なものになっていないことなどを指摘し、評価者訓練のあり方を抜本的に見直すよう求めました。
 事務総長は「今後も、より能力・適性の高い人材の確保に向けた取組を続けていきたい」「管理職員の指導・評価能力の更なる向上を図りつつ、職員の人事評価や人材育成に対する理解がより一層深まるよう努力していきたい」と回答しました。
 また、人材確保・育成の検討においては、意見聴取などの全司法との誠実対応の姿勢を示しました。

【長時間労働是正】

サービス残業根絶、事務の簡素化・効率化を要求

 超勤の「暗数化」の実態を指摘しつつ、長時間労働とサービス残業の根絶、思い切った事務の簡素化・効率化を要求しました。また、不妊治療休暇の制度化を求めました。
 事務総長は諸要求期と同様に、「超過勤務を的確かつ遅滞なく把握」する、「通達等の見直しなども含め、これまで以上に事務の簡素化・合理化」を推進する、「下級裁に対しても、より一層指導するとともに、その取組を後押ししていきたい」などと回答しました。
 また、不妊治療休暇については、「職員団体の要望は人事院に伝わるようにしたい」と回答しました。

【ハラスメント防止策】

「より効果的な取組に務めたい」

 パワハラ根絶については、人事院の検討を待たず、裁判所における防止策やとりくみをすすめるよう要求しました。
 事務総長は「職員団体の問題意識も踏まえながら、全ての職員に対する研修等の機会を通じた各種ハラスメントの防止に関する意識啓発、相談しやすい体制づくりやその周知等、より効果的な取組に努めていきたい」「職員団体の問題意識、社会一般の取組状況等を踏まえ、職員が健康で働きやすい職場環境の向上により一層努めていきたい」と回答しました。

【非常勤職員】

労働条件改善と職場環境整備を要求

 非常勤職員にかかわっては、病気休暇等の有給化、住居手当等の支給、更新時の公募の撤廃、無期雇用化などの要求について、関係機関に働きかけるよう要求しました。
 また、障がいを持つ職員が活躍でき、無理なく働き続けることができる職場環境の整備を求めました。
 事務総長は、給与については「人事院において何らかの見直しが行われる場合には、必要な見直しを検討してきたい」、休暇については「職員団体の要望は人事院に伝わるようにしたい」と回答しました。
 また、「障害者である職員が働きやすい職場環境の整備に向けて努めていきたい」との姿勢を示しました。

【定年延長】

裁判所における制度設計にあたっての誠実対応を回答

 雇用と年金の接続を制度的に保障する立場から、定年延長に向けて関係機関への働きかけを強めるよう要求しました。また、人事院が示した60歳超職員の賃金水準の問題点などを指摘し、全司法の意見も聞きながら、裁判所における制度設計をすすめるよう求めました。
 事務総長は、政府における「検討状況を注視していきたい」と回答し、裁判所における検討にあたっての全司法からの意見聴取など誠実対応の姿勢を示しました。

ページの先頭へ
 
障害があってもやりがいを持って働ける職場に!
 

障がい者雇用、10月からは常勤採用も

 最高裁が策定した「裁判所における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、2018年12月から非常勤職員を採用するとともに、2019年10月からは選考試験による常勤職員の採用が始まりました。
 非常勤職員の処遇については、病気休暇をはじめとする無給休暇の有給化、住居手当や寒冷地手当などの生活関連手当の支給などの均等待遇、更新時の公募の撤廃、無期雇用化などが課題となっており、国公労連に結集して、政府・人事院に制度を改善させる必要があります。
 また、常勤・非常勤を問わず、障がいを持つ職員が他の職員とともに働くための環境整備も重要です。

職場への早めの情報提供とフォローが重要

 この間、障がい者雇用で採用された職員の組合加入を積極的にすすめてきた最高裁支部は、9月27日に定期大会を開催しましたが、執行部から、組合員拡大のとりくみの中で出された要求に基づき交渉・折衝をすることで、要求を前進させた経過が報告されました。
 これを受けて、同じ職場で働く職員の立場から「採用面接の時に業務内容の説明をもっと丁寧にすべき、プライバシーに配慮しながら配置される職場に早めに情報を伝える必要がある、採用後のフォローが不十分という3点で問題があると感じている」との発言があり、障がい者雇用で採用された組合員からも、これに同意するとともに、業務内容などを含め、働きがいのある勤務実態となっていないことが指摘されました。
 10月から採用が始まった常勤職員の場合、基本的には他の職員と業務内容等の差がない中で、どのようにして「合理的な配慮」を行っていくかといった課題もあります。

組合加入をすすめ一緒に運用を作っていこう

 障がいを持つ職員の勤務や非常勤職員の働き方や処遇改善は、新たな課題としてとりくみをすすめていく必要があります。
 採用された障がいを持つ職員の実情をきめ細かく把握し、やりがいを持って無理なく働き続けることができるよう要求していくことが求められます。
 そのためにも、組合員として仲間に迎え入れ、対話と要求づくりを一緒にすすめていくことが重要です。

ページの先頭へ
 
臨時国会の焦点 「改憲」ではなく、国民生活の議論を!
 

国会での改憲議論を呼びかける安倍首相

 臨時国会(第200回)が4日に始まりました。7月の参院選後初めての本格論戦の場となり、12月9日まで開かれる予定です。
 7月の参院選で改憲勢力が3分の2を維持できず、9月の改造内閣発足後の世論調査でも「安倍政権のもとで憲法を改正すること」には「賛成」が33%で、「反対」の44%を下回る結果(朝日新聞)だったことなど、性急な改憲議論は望まない国民意思は明確です。
 それにもかかわらず、安倍首相は所信表明演説で、「私たち国会議員がしっかりと議論し、国民への責任を果たそうではないか」と国会での改憲論議を促し、改憲手続を定めた国民投票法改正案を今国会で成立させ、改憲に向けた道筋をつけることを狙っています。

消費税、社会保障など議論すべきことはたくさんある

 「改憲」よりも国会で議論すべきことはたくさんあります。中でも国民生活に関わる議論が重要です。
 まず、消費税増税が与える影響についてです。安倍政権発足以来2度の増税で合計13兆円もの負担を国民に押し付けたことにより消費不況をさらに深刻にし、日本経済に破局的な影響をもたらす危険性が指摘されています。消費税が大企業減税の穴埋めに使われていることも問題であり、国会で議論することが必要です。
 年金問題では、参院選後に厚労省が、経済成長と雇用拡大が進んでも、30年後の年金受給額は約2割も減ると発表しました。物価や賃金の伸びよりも年金給付の伸びを抑制して給付水準を自動削減する「マクロ経済スライド」の弊害は明らかです。
 安倍首相は所信表明で「全世代型社会保障」を打ち出しましたが、その内容は年金や介護、医療などの社会保障全般にわたって「自助努力」を押しつけようとするものです。年金、社会保障のあり方を議論するのも今国会の役割です。
 また、関電への原発マネーの還流や日米貿易協定の承認、NHKの番組制作への圧力や文化庁による補助金「全額不交付」の決定など、国会で審議して、問題点を明らかにすべき課題は目白押しです。

 
ページの先頭へ