人事院は8月7日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。賃金・一時金とも6年連続の改善にはなっていますが、俸給表の改定(賃上げ)は初任・若年層のみにとどまるものとなりました。また、住居手当が見直され、最高支給限度額が引き上げられるものの、受給者の約4割が減額となる見通しです。
公務員人事管理に関する報告では、能力・実績主義に基づく人事管理の推進に言及しているほか、超勤上限規制が導入されたもとで運用実態を把握し各府省を指導していくこと、ハラスメント対策については新たにパワー・ハラスメントの防止策を措置すること、非常勤職員に夏季休暇が新設されることなどが盛り込まれました。また、定年の65歳への段階的な引上げを実現するための措置が早期に実施されるよう改めて要請しました。
30歳台半ばまで賃上げ、一時金は0・05月改善
企業規模50名以上の民間企業約1万2500事業所から約55万人の個人別給与を実地調査した結果、官民較差は月例給で平均387円(0・09%)、一時金(ボーナス)で0・06月、ともに民間が公務を上回りました。その較差を埋めるための俸給表の改定は、一般職(高卒者)初任給を2000円、総合職及び一般職(大卒程度)初任給を1500円引き上げ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について4月にさかのぼって引き上げられます。一方で、30歳台半ばを超える職員や再任用職員については、俸給表の改定はなされません。一時金は0・05月引き上げられますが、不十分な点の多い人事評価の結果を直接反映する勤勉手当にすべてを配分するとしていますし、再任用職員は据え置きです。
6年連続の改善勧告とはなりましたが、中高年層の生活改善を強く求めてきたもとで、これに全く目を向けない勧告となりました。10月に消費税率引上げが実施されることになれば、生活悪化に拍車がかかることは目に見えています。
住居手当「見直し」で約4割の受給者が減額
手当については、17年勧告以降「必要な検討を行う」と言及されていた住居手当について、公務員宿舎使用料の上昇との均衡をはかるとして家賃額の下限を4000円引き上げ、これにより生ずる原資を用いて手当額の上限を1000円引き上げることとされました。住居手当を受給している職員は、現在国家公務員全体で約5万5000人おり、そのうち約4割の職員が減額となる見込みです。1月の減額幅が2000円を超えないよう、1年間の経過措置が講じられますが、「見直し」に期待感を抱いていた職員も多い中、改悪の影響を受けるのは家賃額が比較的安い地方部であり、地域間格差が一層すすむことになる今回の見直しは大きな不満が残ります。
パワハラ対策 4月1日を念頭に措置
公務員人事管理に関する報告では、「能力・実績に基づく人事管理を推進する」として「分限処分に関する運用の徹底など必要な取組を行う」と言及しましたが、人事院は国公労連に対して「従来どおりの考え方に沿ってやっていくということで、直ちに何らかの通達等を出すというものではない」と説明しています。一方、ハラスメント防止対策については、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」の審議状況も注視しながら、「その結果も踏まえて、新たな防止策を講じていく」としています。この点については、国公労連に対し「指針のようなものを出していく方向であり、当事者等からのハラスメント(カスタマー・ハラスメント)に関しても念頭に置いて検討を進めている。民間法制が来年4月1日を念頭に進んでいるため、公務も遅れることなく措置することを予定している」と説明しました。私たちのこれまでの要求が反映されるよう、注視していく必要があります。
非常勤職員の夏季休暇が実現
全司法としても強く要求している不妊治療休暇の新設等については、昨年と同様「不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っていく」とするにとどまりました。一方で「不妊治療と仕事の両立も重要な課題であり、引き続き民間の状況を注視」するとしており、昨年秋の「民間企業の勤務条件制度等調査」の項目にもあがっていたことから、今後の動きを注視し、追及を更に強めていく必要があります。
また、裁判所でも採用が始まった非常勤職員について、この間国公労連では処遇改善を重点課題として人事院等を追及してきましたが、「新たに夏季休暇を設ける」ことが明らかにされました。7月から9月の間に連続する3日間取得できることとなり、来年から活用できます。要求実現の大きな成果ですが、病休等の有給化や諸手当の格差是正、公募要件の撤廃については触れられませんでした。
勧告の翌日である8月8日に行われた給与関係閣僚会議では、「人事院勧告を尊重する」との立場を示しながらも「現在の財政は極めて厳しい状況にあり、総額の増額の抑制に努め」ると述べています。人事院勧告の改善部分の早期実施等を求め、運動を引き続き強化していくことが求められます。
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