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全司法新聞
 
6年連続の賃上げ勧告 しかし、生活改善にはつながらず
2019年人事院勧告
 

 人事院は8月7日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。賃金・一時金とも6年連続の改善にはなっていますが、俸給表の改定(賃上げ)は初任・若年層のみにとどまるものとなりました。また、住居手当が見直され、最高支給限度額が引き上げられるものの、受給者の約4割が減額となる見通しです。
 公務員人事管理に関する報告では、能力・実績主義に基づく人事管理の推進に言及しているほか、超勤上限規制が導入されたもとで運用実態を把握し各府省を指導していくこと、ハラスメント対策については新たにパワー・ハラスメントの防止策を措置すること、非常勤職員に夏季休暇が新設されることなどが盛り込まれました。また、定年の65歳への段階的な引上げを実現するための措置が早期に実施されるよう改めて要請しました。

30歳台半ばまで賃上げ、一時金は0・05月改善

 企業規模50名以上の民間企業約1万2500事業所から約55万人の個人別給与を実地調査した結果、官民較差は月例給で平均387円(0・09%)、一時金(ボーナス)で0・06月、ともに民間が公務を上回りました。その較差を埋めるための俸給表の改定は、一般職(高卒者)初任給を2000円、総合職及び一般職(大卒程度)初任給を1500円引き上げ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について4月にさかのぼって引き上げられます。一方で、30歳台半ばを超える職員や再任用職員については、俸給表の改定はなされません。一時金は0・05月引き上げられますが、不十分な点の多い人事評価の結果を直接反映する勤勉手当にすべてを配分するとしていますし、再任用職員は据え置きです。
 6年連続の改善勧告とはなりましたが、中高年層の生活改善を強く求めてきたもとで、これに全く目を向けない勧告となりました。10月に消費税率引上げが実施されることになれば、生活悪化に拍車がかかることは目に見えています。

住居手当「見直し」で約4割の受給者が減額

 手当については、17年勧告以降「必要な検討を行う」と言及されていた住居手当について、公務員宿舎使用料の上昇との均衡をはかるとして家賃額の下限を4000円引き上げ、これにより生ずる原資を用いて手当額の上限を1000円引き上げることとされました。住居手当を受給している職員は、現在国家公務員全体で約5万5000人おり、そのうち約4割の職員が減額となる見込みです。1月の減額幅が2000円を超えないよう、1年間の経過措置が講じられますが、「見直し」に期待感を抱いていた職員も多い中、改悪の影響を受けるのは家賃額が比較的安い地方部であり、地域間格差が一層すすむことになる今回の見直しは大きな不満が残ります。

パワハラ対策 4月1日を念頭に措置

 公務員人事管理に関する報告では、「能力・実績に基づく人事管理を推進する」として「分限処分に関する運用の徹底など必要な取組を行う」と言及しましたが、人事院は国公労連に対して「従来どおりの考え方に沿ってやっていくということで、直ちに何らかの通達等を出すというものではない」と説明しています。一方、ハラスメント防止対策については、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」の審議状況も注視しながら、「その結果も踏まえて、新たな防止策を講じていく」としています。この点については、国公労連に対し「指針のようなものを出していく方向であり、当事者等からのハラスメント(カスタマー・ハラスメント)に関しても念頭に置いて検討を進めている。民間法制が来年4月1日を念頭に進んでいるため、公務も遅れることなく措置することを予定している」と説明しました。私たちのこれまでの要求が反映されるよう、注視していく必要があります。

非常勤職員の夏季休暇が実現

 全司法としても強く要求している不妊治療休暇の新設等については、昨年と同様「不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っていく」とするにとどまりました。一方で「不妊治療と仕事の両立も重要な課題であり、引き続き民間の状況を注視」するとしており、昨年秋の「民間企業の勤務条件制度等調査」の項目にもあがっていたことから、今後の動きを注視し、追及を更に強めていく必要があります。
 また、裁判所でも採用が始まった非常勤職員について、この間国公労連では処遇改善を重点課題として人事院等を追及してきましたが、「新たに夏季休暇を設ける」ことが明らかにされました。7月から9月の間に連続する3日間取得できることとなり、来年から活用できます。要求実現の大きな成果ですが、病休等の有給化や諸手当の格差是正、公募要件の撤廃については触れられませんでした。
 勧告の翌日である8月8日に行われた給与関係閣僚会議では、「人事院勧告を尊重する」との立場を示しながらも「現在の財政は極めて厳しい状況にあり、総額の増額の抑制に努め」ると述べています。人事院勧告の改善部分の早期実施等を求め、運動を引き続き強化していくことが求められます。

 
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地連大会の特徴
「みんなで」考え、協力しあい、活動していく重要性が多く語られた大会に
 

中国地連大会の様子(8/17)
 北海道(8/17)、東北(8/24)、東京(8/3)、近畿(8/3)、中部(8/17〜18)中国(8/ 17)、九州(8/3〜4)の各地連大会で定期大会が開催されました。出席した本部役員が、その様子について報告し合いました。

「組合が動けば当局は無視できない」

鳥井 東京地連大会では、各支部から職場実態の報告がなされ、職場環境改善のとりくみの必要性が述べられました。「組合が動けば当局は無視できない。職場の問題解決のために、奮闘しよう」との発言が印象的でした。また、最高裁支部から障がい者雇用の非常勤職員が組合に加入したことが紹介され、その組合員の声をもとに要求を実現させたとの報告もなされました。
簑田 東北では、人員要求に対する当局の交渉回答は一見、型通りなもののように感じることがあっても、組合の主張に耳を傾けていることに間違いはなく、実際の人員配置を見ると組合が繁忙部署だと主張した部署には人的手当てがされている、との報告がありました。
中矢 九州は、引き続く人員減が最大の課題となっているのに加え、裁判手続IT化について、職場によって受け止めに差があるとの報告があり、「書記官事務に与える影響が全国的に議論されていない」との指摘もありました。
 中部は、若い代議員が多かったのですが、様々な要求課題が話し合われるとともに、交渉をはじめとした当局対応、調査活動の方法など、活動のすすめ方についても代議員同士で意見や情報を交換する大会になったのが特徴でした。
大杉 北海道では、管内支部の職場実態として「人員シフトを行うだけの書記官が配置されていないため、仕事のシフト(成年後見を民事の書記官が担当するなど)が行われている」との報告がありました。また、人勧に盛り込まれた住居手当の「見直し」により、大都市部が改善される一方、地方での手当が引き下げられ、地域間格差が広がるとの発言がありました。
簑田 中国では、特に人員削減の問題で多くの発言がありました。「当局は事件数ばかりを理由にするが、職場実態を把握して、それをぶつけることが重要」との認識で全体が一致しました。各課題について全支部からの発言があり、みんなで話し合い、みんなでとりくむ決意が固められた大会でした。
米島 近畿は、災害やカスタマー・ハラスメント、メンタルヘルス等の事案が報告されたうえで、その経験を通して、組合の必要性に確信を持ったこと、身近な存在である支部が、職場に関わる問題にきちんととりくみ、活動を見せていくことが大切であることが確認されました。やれることをやる、みんなで動き、みんなで実現してくことを確認した大会だったと思います。

超勤「申告しづらい」「暗数化」が秋からの課題に

中矢 福岡分会が超勤実態について独自のアンケートを実施したところ、45時間を超えて超勤をした人が4月は7・3%、5月は7・1%あったにも関わらず、それを申告した人は「0」だったという報告がありました。沖縄支部も独自にアンケートを実施しています。こうした実態把握のとりくみは重要です。
簑田 山口支部から始業前の超勤は申告しづらいとの発言があり、広島支部、島根支部でも独自の超勤実態調査に基づいて「暗数化」している実態を交渉等で追及したとの報告がありました。そうした実態が、この秋の焦点になるということが語られました。
中矢 中部では、事前申告をめぐって、単に申告させるだけでは超勤縮減の効果はないのではないかとの意見が出される一方、超勤時間数の確認を行えるだけでも「安心残業」を減らすことができたとの意見がありました。また、「管理職からの視線が痛く、超勤を申告しづらいとの声が出されている」との報告もありました。
米島 近畿では、当局がかなり意識してとりくみをすすめている状況が報告され、今後も注視していく必要があるとの意見が出ていました。
鳥井 最高裁では事務総局のほとんどが他律的部署に指定されましたが、4、5月に超勤が80時間を超えた職員はのべ13人、特例超勤が認められたのは4月1人、5月4人、6月3人となっており、事務の簡素化・効率化が必要だとの発言がありました。

「活動してみてわかった」労働組合の役割と大切さ

鳥井 神奈川支部から、全司法新聞(2309号)でもとりあげた川崎分会における朝ビラや要請書提出のとりくみが紹介され、「自分たちで活動をしているという充実感があった」「年に2〜3回の昼食会でもネットワークがあれば行動に移すことができる。組合の火を絶やしてはいけないと実感した」との教訓が語られたほか、採用2年目の代議員から「組合のガイダンスだけでは何も分からない。加入して活動を知ることが大切」との発言があって、みんなが励まされました。
中矢 九州でも、今年役員を経験した若い人たちから「最初は嫌だと思ったこともあったが、みなさんに応援してもらって、今ではやってよかったと思っている」「最初は負担に感じていたが、やっているうちに執行委員会が楽しみになってきた」といった発言があり、活動する中で全司法に関心を持ち、「担い手」として育っていく様子を見ることができました。同時に若い人たちに「丸投げ」するのではなく、ベテラン役員の適切なサポートも大切だと感じました。
簑田 中国では、組合をやめようと思っていた採用1年目の新入組合員から、地連のロースクール(労働学校)のおかげで組合の意義が理解でき、踏み止まってくれたとの報告があり、学習の重要性が確認されました。同様の話は東北でも出ていました。
中矢 中部地連は今大会以降、専従書記長の配置がなくなるので、それをふまえた各支部の自主的・自立的な運動の重要性が議論されていました。先に専従配置がなくなった九州では、地連書記長が「専従配置凍結で、書記長が一人でやる体制からみんなで分担・協力する体制に変わるきっかけになった。各支部でも書記長が一人でやる体制から変わっていって欲しい」と述べていて、非常に重要な指摘だと思いました。
鳥井 東京地連でも、専従配置がなくなることに伴う活動方法について、事務的な課題も含め議論されました。
米島 近畿では、地連専従がなくなった初年度の反省点として「情報共有の弱さ」があげられ、次期はメールやSNS等も活用し、情報共有を強化していくことが確認されました。
簑田 東北では、若い代議員の発言として、自分が活動しながら職場で労働組合の話をすることで、一緒に仕事をしている同世代の人たちが、より組合を身近に感じることができるようになり、若い世代が活動を具体的に知るきっかけにもなったという経験が出されました。今後の対話活動のヒントになる発言だと思いました。
 中国では、「組合のとりくみは執行部だけで行うものではなく、職場の組合員の協力体制づくりが重要であり、そのために、日常的に人との交流を強化していく」との決意も語られました。

 
 
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