全司法本部は5月28日、第3回人事局総務課長交渉を実施しました。今回の交渉では、人員課題や労働時間短縮・超勤縮減等、IT情報システム化、採用・異動、宿舎、旅費・庁費等の予算増額、宿日直など、今年の諸要求期で特に重要な課題について追及しました。
「必要な人員確保に努力」
「内部努力は必要」との姿勢は変えず
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総務課長交渉の様子 |
「成年後見関係事件をはじめとする家事事件については増加傾向が続いているものの、その他の各種事件は減少又は横ばいで推移している」との認識を示し、「裁判所全体及び各庁の事件数や事件処理状況等をきめ細かく把握した上」「社会状況をも見極めながら多種多様な要因を総合的に考慮し、必要な人員の確保に引き続き努力していきたい」との基本姿勢を示しました。また、書記官についても同様に、必要な人員確保に向けた努力姿勢を示したものの、家裁調査官の増員については「家事事件及び少年事件の事件動向や事件処理状況等を踏まえながら、これから検討していく」との回答にとどまっています。
この他、地方における人員削減の縮小を求めたのに対し、総務課長は「内部努力は必要不可欠」とし、「事務量等を見極め」「十分検討を行った上で実行してきている」と回答し、地方職場の要求に真正面から応えたものとはなっていません。
「官側が早朝、休日も含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然」
超過勤務の上限規制に関わって、総務課長は「上限規制の導入後においても、サービス残業や持ち帰り仕事はあってはならない」、「超過勤務については的確かつ遅滞なく把握するよう指導を徹底」するとした基本姿勢を示しました。本部はこの間、特に早朝・休日のサービス残業が増加していることを指摘しましたが、これに対し総務課長は「官側が早朝、休日も含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然」との認識を示した上、職員の申告や管理職の把握が不十分であるとの指摘に対し「適切な勤務時間管理を行うためには、管理職員からの声かけはもちろん、職員においても具体的な超勤の内容をきちんと申告してもらうことが重要」として、その重要性の認識を管理職員と部下職員が共有することも含め「管理職員に対する指導を徹底していきたい」と回答しました。
旅費システム、現場の要望を意識した環境整備に言及
全司法本部は諸要求期に先立ち、「裁判手続IT化に関する要求書」を最高裁に手交し、IT化やシステム設計に向けた方向性や書記官事務のあり方と職務評価の更なる向上などを要求しました。総務課長は「利用者の利便性の向上を図るとともに、裁判所をはじめとする関係者の業務効率の向上がはかられるよう、これまでのシステム化の実情等も踏まえながら適切に検討していきたい」「書記官はあらゆる裁判の運営を支える官職であり、IT化された民事訴訟手続においても、このような役割を適切に果たせていけるよう書記官事務のあり方について検討を行い」「役割の重要性にふさわしい職務評価が与えられるよう努力していきたい」との姿勢を示しました。また、システム開発は事務の簡素化・効率化に資するものとするよう求めたのに対し「裁判事務の最適化に資するものになるよう検討していきたい」と回答しました。
SEABISの旅費システムについて、ユーザー別のマニュアル整備を求めたのに対し、「最高裁において一律にユーザー別のマニュアルを作成することはなじまない」との従前の姿勢を示しながらも、新たに「現場の要望を意識し、円滑な旅費事務に資する適切な環境整備に引き続き努めていきたい」と回答しました。
宿日直 労基法・人規とかけ離れた実態を指摘
人事院規則上、宿日直は「待機を中心とする勤務密度が極めて薄い断続的勤務」と位置付けられており、裁判所の宿日直の実態は人規の趣旨と大きくかけ離れています。本部はこの矛盾を指摘し、各庁の勾留等の令状処理件数や長時間に渡る業務実態を踏まえて、必要に応じ超過勤務に切り替えるよう求めました。これに対し総務課長は「(大規模庁も含め)宿日直勤務における業務量が常態として勤務時間内のそれと同程度にあるとは言い難い」との回答を繰り返し、各庁の宿日直の実態と大きくかけ離れた認識に終始しました。「勤務密度は宿日直の開始から終了までの拘束時間全体で見るべき」との認識を示しましたが、労基法や人事院規則上、宿日直で行うか否かは、業務内容から判断すべきであり、裁判所の宿日直の実態や最高裁の認識は法の趣旨に大きく矛盾していると言わざるを得ません。こうした矛盾の解消のためにも、令状センター構想の早期実現が求められます。
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