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  トップページ > 全司法新聞 > 2019年5月 > 2309号
 
 
全司法新聞
 
裁判所職員定員法・国会審議傍聴
〜家裁の充実、裁判官の広域異動、
 少年のタクシー押送や職員の健康問題なども質疑
 

 4月18日、参議院法務委員会において、「裁判所職員定員法の一部改正法案」(次年度の定員)の審議がなされました(衆議院では3月26日に可決)。全司法から3名が傍聴し、定員をめぐる国会審議を間近で見ることができたほか、国会議員がどこに関心があるのかも垣間見ることができました。

裁判官の異動「子育て等の事情にも最大限の配慮」と答弁

 裁判所の定員は、毎年「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」として国会で審議されます。4月18日、参議院法務委員会の審議を、全司法本部から田中副委員長、長岡書記長、米島青年協議長が傍聴しました。
 元榮太一郎委員(自民党)からは、裁判官の増員が少なく、平均審理期間が延びていることが指摘され、職権行使の独立等を理由に最高裁が裁判官の勤務時間を把握していないこと等を指摘するなど、裁判官の健康管理や審理期間の長期化の観点から、裁判官の人的充実に焦点を当てた質問がなされました。また、裁判官任官希望者の確保にあたり、全国異動が障害になっているのではないかと指摘し、人材確保のためにも、裁判官についてエリア限定の採用を検討すべきではないかとの質問がなされました。
 これに対して最高裁は、処遇の異なる二つの類型を作ることの問題点をあげ、「本人から任地や担当職務についての希望を聴取した上で異動の時期をずらすなど、子育て等の事情にも最大限の配慮をするとともに、一定の勤務年数を経た後は、できる限り通勤可能な範囲での異動とするよう努めている」と答弁しました。

子の福祉の観点から家裁調査官の増員が必要

 櫻井充委員(国民民主党)からは、子供の福祉の観点から、家事調停の審理期間が短くなるよう、裁判官の定数の検討を求める発言がありました。
 伊藤孝江委員(公明党)からは、家事事件において子をめぐる事件の割合が増加していることを指摘し、家事事件の中には調査に時間が掛かるものもあること、終局後の家族の在り方を考えると、早さよりも納得してもらえる調査が必要であることを指摘し、家裁調査官の増員をすべきではないかとの質問がなされました。
 石井苗子委員(日本維新の会)からは、裁判所職員の39歳以下の女性の割合が50%を超え、ワーク・ライフ・バランス推進のための増員を要求している一方で、定員削減によってワーク・ライフ・バランス推進に支障はないのかとの質問がなされました。

裁判部だけで裁判ができているわけではない!裁判部以外も人的充実を

 仁比聡平委員(日本共産党)からは、官用車が使えないことにより、家裁調査官の調査事務への支障や、タクシー利用による少年押送が少年の心情やプライバシーへの配慮を欠いていることなどを指摘し、運転手の人員や予算の確保が必要ではないかとの質問がなされました。「定員をめぐる情勢の厳しさは増しているが、裁判部門の充実強化は図っていかなければならない」との最高裁の答弁に対しては、「裁判部だけで裁判ができているわけではない。運転手等も含めた各職員が公正な裁判を担っている」旨、語気を強めて指摘されました。また、裁判所における病休者の増加を指摘した上で、裁判所職員の健康管理の観点からも、ストレスチェックの受検率向上や集団分析、労使対等の健康安全管理委員会の設置をすべきではないかとの質問もなされました。
 糸数慶子委員(沖縄の風)からは、民法(家族法)の改正や家裁の業務の増加等を踏まえ、書記官・家裁調査官の増員が必要ではないかとの質問がなされました。また、金銭と感情が絡み合う家事事件においては丁寧な解決を心掛けなければ、終局後に履行が確保されないと述べ、適正迅速な裁判の実現のためにも増員が必要であると指摘しました。
 会派を越えて、子をめぐる事件に関する関心が高まっていることが感じられ、事件の早期終局や、子どもの調査を充実させる観点から、国会議員の中でも家裁調査官の人的充実、調査の充実に関心が高まっています。
 裁判所の人的態勢整備を求める国会での議論もふまえ、家裁調査官を含めた裁判所職員の増員を勝ち取れるよう、とりくみを強めていく必要があります。

 
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少年法適用年齢引下げ反対で院内集会
 

少年法は「有効に機能している」との認識を共有

議員会館を会議室が満席に
 4月9日、参議院議員会館で「少年法適用年齢引下げに反対する院内集会」が開催されました。これは、日弁連の呼びかけで集まった「少年法の適用年齢引下げ問題に関する各界懇談会」に参加する16団体の共催で開かれたもので、全司法も主催団体に名を連ねています。
 与党の自民党・公明党を含め、多くの政党・会派や無所属の国会議員が参加し、国会議員16名、議員秘書29名を含む173名の参加で議員会館の会議室が満席になるとともに、参加議員の挨拶でも「現行の少年法は有効に機能している」との認識が共通して示されるなど、幅広く国会議員に問題点を伝えるという集会の目的に鑑みて大きな成果がありました。
 集会では、法制審議会の委員でもある山崎健一弁護士から、法制審の審議状況が報告されるとともに、少年に関わる各分野から問題提起するリレートークで「適用年齢引下げ」の問題点を明らかにしました。全司法からは、本部少年法対策委員の横山勝さん(前全司法東京家裁支部委員長、元家裁調査官)が、家裁現場の視点から発言しました。

誤解も含めた「世論」をどう変えるかが課題

 政府の検討が、民法の成人年齢が18歳に引き下げられることによる「国法上の統一」や「わかりやすさ」だけを理由としているのに対し、立ち直りや再犯(再非行)防止策として有効に機能している少年法の対象から、わざわざ18・19歳を外す必要はないという反対論は、実態にもとづいた説得力を持っています。
 しかし、そのことが、まだまだ多くの人に伝わっていないこと、そもそも少年法の内容が国民にあまり知られておらず、むしろ、「少年事件は増加、凶悪化している」などといった誤解が多いことが、最大の課題となっています。
 こうした少年法に対する誤解も含めた世論を、どう変えていくかが重要です。

集会に参加した議員
自民党・藤原崇、自見はな子、田所嘉徳/公明党・佐々木さやか、伊藤孝江/立憲民主党・松田功、本多平直、小川淳也/国民民主党・階猛、奥野総一郎/日本共産党・藤野保史、仁比聡平/社民党・福島みずほ/沖縄の風・糸数慶子/無所属・柚木道義、田嶋要

メッセージを寄せた議員
立憲民主党・西村ちなみ/国民民主党・大塚耕平、青山大人、山井和則/日本共産党・藤野保史

 
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今、パワハラ対策が大きな焦点に
 

初の「対策法」案はきわめて不十分

実効ある規制を求めて国会行動
 4月16日、「ハラスメント対策関連法案」(女性活躍推進法等を一部改正する案)の審議が衆議院で始まりました。初めてパワハラ対策を法制化するものとなりますが、その内容はきわめて不十分なもので、全労連などは根本的に見直し、実効ある規制法を作るよう求めています。
 法案では「事業主にハラスメントをなくす『雇用管理上の必要な措置』を採ることを義務付け、具体的な内容については『指針』を定める」としています。しかし、枠組みだけの義務付けでは実効性に乏しく、ハラスメントそのものを法律で禁止することが必要です。
 また、パワハラを「職場において行われる@優越的な関係を背景とした言動であって、A業務上必要かつ相当の範囲を超えたものにより、Bその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定義していますが、これによると、@対象が狭く限定され、A「必要性」を理由にパワハラを容認する可能性を残し、Bそもそもパワハラが労働者の人格や尊厳を否定し、基本的人権を侵害するという本質を見失わせるものとなります。

ハラスメントのない職場を作ろう!

 ハラスメント禁止は世界的にも課題となっており、ILOは6月に開催する総会で、ハラスメントを禁止する条約と勧告を採択しようとしていますが、今、国会に出されている法案はこれに適合するものになっておらず、このままではILO条約ができても、その批准が難しいものになってしまいます。
 ILOは「顧客などの第三者からのハラスメントも対象とする」としており、これが国内で法規になれば、裁判所の業務においても職員を守る規範となり得る可能性が生まれます。また、国家公務員については、現在、人事院が「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」を設置し、3月11日に第1回検討会を開いています。
 これらの動きの中で、官民一体のとりくみで法整備も含めたパワハラ規制の仕組みを作らせることが今、重要になっています。
 なお、全司法はこの間、裁判所当局に対してパワハラ対策を要求し、「職員が働きやすい職場環境を維持・向上するために不可欠」との認識を示させています。パワハラがない職場を作るために、パワハラ被害に遭ったり、職場でパワハラを見かけたら、ぜひ、全司法に相談してください。

 
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新採用職員のための 裁判所の労働条件解説(2)
賃金と手当
 

昇給・昇格は人事評価にもとづいて。全司法は適正な運用を要求

 みなさんの賃金(給与)は、俸給と手当から構成されています。俸給については、裁判所職員臨時措置法で準用する一般職の職員の給与に関する法律で定められています。2019年4月採用の初任給は、総合職(院卒程度)が21万1、500円(2級11号俸)、同(大卒程度)が19万4、000円(2級1号俸)、一般職(大卒程度)が18万0、700円(1級25号俸)、同(高卒程度)が14万8、600円(1級5号俸)です。
 給料が上がる仕組みは、大きく分けて、ベースアップ、昇給、昇格の3つがあります。ベースアップとは、民間給与との格差があるときに、人事院勧告に基づく俸給表の改訂により引きあがるものです。昇給とは「号俸」があがることで、原則毎年1月1日に行われます。昇格とは「級」が上がることを言い、一定の基準を満たしているときに行われます。昇給・昇格は人事評価の結果に基づいて行われることになっています。
 全司法では、ベースアップがなされるように官民一体となった春闘のとりくみを行っているほか、昇給・昇格のための予算確保や基準づくり、人事評価が適正になされるよう、当局を追及しています。

各種手当も疑問があれば相談を

 手当については、生活補助的手当(扶養手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当)、地域給的手当(地域手当、広域異動手当、(準)特地勤務手当、寒冷地手当)、職務の特殊性に応じた手当(俸給の調整額)、時間外手当(超過勤務手当、宿日直手当、管理職特別勤務手当)、賞与に相当する手当(期末手当、勤勉手当)などの手当があります。
 各手当については要件があり、制度上、様々な問題点があります。特急料金や新幹線代は全額は支給されない、夫婦双方が転居を伴う異動を強いられた場合には単身赴任手当が支給されないなど、要件の厳しさなどに困っている組合員は多く存在します。また、一般的に使わないような経路で通勤手当が認定された、異動に伴い転居したところ4月分の住居手当が支給されなかったなどという事例も発生しています。不安がある場合は、事前に人事課(係)に相談してください。また、疑問がある場合は、人事課(係)又は全司法までご相談ください。
 全司法は、生活実態に見合わない手当額や不合理な支給基準については、改善勧告を行うよう、制度の改善も含めて人事院への働きかけを求めています。

 
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自主的活動 花開け! 第8回
小さな分会が起こした行動 神奈川支部(川崎分会)
 

初の「対策法」案はきわめて不十分

川崎の裁判所庁舎
 神奈川支部川崎分会は、在籍職員130名という大所帯の川崎支部にあって、組合員は9名という、とても小さな分会です。
 そんな小さな分会に3月、激震が走りました。簡裁の4月の配置について、民事係の1名減員と、書記官2名と事務官1名の刑事係について、書記官2名を同時に転出させた上、後任に産前休暇直前の書記官を配置することを当局が示してきたからです。これにより刑事係は、書記官が産前休暇に入る4月半ばから、臨時的任用職員が着任する5月末までの約1か月半、3名で行っている事務を2名で処理せざるを得ないことになります。
 このままでは産前休暇を控えている書記官も安心して休むことはできないし、何より1名の減員となる簡裁の職場実態を無視した配置であり、事務が円滑に行われないのではないかという心配が、組合員の中に芽生えてきました。
 「このままじゃいけない!何か行動を起こそう!」ということになり、何年も実施していなかった朝ビラを配布し、職場大会で決議した「当局に解決策を求める決議文」を地裁庶務課長へ手交しました。
 分会役員だけでなく、どの組合員も朝ビラ配布の経験がほとんどないこともあり、当日まで「本当にビラまきなんてやって効果があるのか」「受け取ってくれるだろうか」といった不安ばかりでしたが、いざ実施してみると、「頑張ってね」と言ってもらえたり、管理職も受け取ってくれたりと、大成功でした。
 こうした行動の結果、当局は4月からの簡裁刑事係に対し応援態勢を組むことを明らかにしました。
 また、この朝ビラと職場大会の実施報告を、しばらくお休みしていた教宣紙に掲載し、配布したところ、この教宣紙を読んだ元組合員だった方が再加入してくれました。
 これで組合員10名!二桁となりました。辛子だねのような小さな分会が起こした行動の辛味がじわじわ効いてきた!と、分会一同一連の行動で自信が持てました。このとりくみで勝ち取った成果を、今後の活動に繋げていきたいと考えています
(川崎分会)

 
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