4月18日、参議院法務委員会において、「裁判所職員定員法の一部改正法案」(次年度の定員)の審議がなされました(衆議院では3月26日に可決)。全司法から3名が傍聴し、定員をめぐる国会審議を間近で見ることができたほか、国会議員がどこに関心があるのかも垣間見ることができました。
裁判官の異動「子育て等の事情にも最大限の配慮」と答弁
裁判所の定員は、毎年「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」として国会で審議されます。4月18日、参議院法務委員会の審議を、全司法本部から田中副委員長、長岡書記長、米島青年協議長が傍聴しました。
元榮太一郎委員(自民党)からは、裁判官の増員が少なく、平均審理期間が延びていることが指摘され、職権行使の独立等を理由に最高裁が裁判官の勤務時間を把握していないこと等を指摘するなど、裁判官の健康管理や審理期間の長期化の観点から、裁判官の人的充実に焦点を当てた質問がなされました。また、裁判官任官希望者の確保にあたり、全国異動が障害になっているのではないかと指摘し、人材確保のためにも、裁判官についてエリア限定の採用を検討すべきではないかとの質問がなされました。
これに対して最高裁は、処遇の異なる二つの類型を作ることの問題点をあげ、「本人から任地や担当職務についての希望を聴取した上で異動の時期をずらすなど、子育て等の事情にも最大限の配慮をするとともに、一定の勤務年数を経た後は、できる限り通勤可能な範囲での異動とするよう努めている」と答弁しました。
子の福祉の観点から家裁調査官の増員が必要
櫻井充委員(国民民主党)からは、子供の福祉の観点から、家事調停の審理期間が短くなるよう、裁判官の定数の検討を求める発言がありました。
伊藤孝江委員(公明党)からは、家事事件において子をめぐる事件の割合が増加していることを指摘し、家事事件の中には調査に時間が掛かるものもあること、終局後の家族の在り方を考えると、早さよりも納得してもらえる調査が必要であることを指摘し、家裁調査官の増員をすべきではないかとの質問がなされました。
石井苗子委員(日本維新の会)からは、裁判所職員の39歳以下の女性の割合が50%を超え、ワーク・ライフ・バランス推進のための増員を要求している一方で、定員削減によってワーク・ライフ・バランス推進に支障はないのかとの質問がなされました。
裁判部だけで裁判ができているわけではない!裁判部以外も人的充実を
仁比聡平委員(日本共産党)からは、官用車が使えないことにより、家裁調査官の調査事務への支障や、タクシー利用による少年押送が少年の心情やプライバシーへの配慮を欠いていることなどを指摘し、運転手の人員や予算の確保が必要ではないかとの質問がなされました。「定員をめぐる情勢の厳しさは増しているが、裁判部門の充実強化は図っていかなければならない」との最高裁の答弁に対しては、「裁判部だけで裁判ができているわけではない。運転手等も含めた各職員が公正な裁判を担っている」旨、語気を強めて指摘されました。また、裁判所における病休者の増加を指摘した上で、裁判所職員の健康管理の観点からも、ストレスチェックの受検率向上や集団分析、労使対等の健康安全管理委員会の設置をすべきではないかとの質問もなされました。
糸数慶子委員(沖縄の風)からは、民法(家族法)の改正や家裁の業務の増加等を踏まえ、書記官・家裁調査官の増員が必要ではないかとの質問がなされました。また、金銭と感情が絡み合う家事事件においては丁寧な解決を心掛けなければ、終局後に履行が確保されないと述べ、適正迅速な裁判の実現のためにも増員が必要であると指摘しました。
会派を越えて、子をめぐる事件に関する関心が高まっていることが感じられ、事件の早期終局や、子どもの調査を充実させる観点から、国会議員の中でも家裁調査官の人的充実、調査の充実に関心が高まっています。
裁判所の人的態勢整備を求める国会での議論もふまえ、家裁調査官を含めた裁判所職員の増員を勝ち取れるよう、とりくみを強めていく必要があります。
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