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交渉に臨む全司法本部 |
全司法本部は12月4日、最高裁堀田人事局長と秋季年末闘争期の交渉を実施しました。労働時間短縮、健康管理、IT化、昇格などで全司法の意見もふまえた足がかりとなる姿勢が示される一方、各職種の重点課題では従前回答にとどまるものが多く、諸要求期に向けたとりくみが重要になります。また、2019年度の定員については「最大限の努力」姿勢を示したものの、同時に情勢の厳しさを強調しました。
人員
増員をめぐる厳しさを強調
2019年度の定員について、「裁判所の人的態勢の充実強化を図っていく必要があることについて、財政当局の理解を得るべく説明を行っている。このように最大限の努力を行っているところであるが、裁判所を含む国家公務員の定員をめぐる情勢や、先に述べたような事件数の動向等の下で、次年度の増員をめぐる状況はこれまで以上に極めて厳しい」と回答しました。2018年度の全国の定員が10名減だったことをふまえると、なお予断を許さず、4月の人員配置に向けて各庁の繁忙な職場実態を当局に認識させることが重要です。
労働時間短縮
上限規制後も「サービス残業等があってはならない」
人事院規則に超勤の上限規制が書き込まれ、来年4月から施行される情勢のもとで、「45時間」という数字が一人歩きして実態を無視した記録を作られ、サービス残業になることのないよう追及したのに対し、「新たな上限規制の運用の下でも、サービス残業や持ち帰り仕事があってはならないとの姿勢は当然変わるものではなく、今後とも管理職員を含めた職員の勤務状況の適切な把握に努めていきたい」と回答しました。
超勤削減に向けた事務の簡素化、効率化については、この間の最高裁のとりくみとして、渉外事件処理の参考情報のJ・NETポータルへの掲載、「情報公開ハンドブック」の作成・提供、刑事事件及び少年事件の調書の人定事項欄の記載を見直す通達改正等を上げたうえで、「今後も引き続き、事務の簡素化・効率化策について検討していきたい」と回答しました。
災害時の対応
閉庁判断もある、特休は適切に運用
自然災害時の対応について「裁判所として、利用者や職員の安全確保、庁舎や設備等の保安管理をした上で、必要な業務を適切に継続していくべき責務がある」との姿勢を示しつつ、「具体的な状況を考慮した結果、一時的な閉庁という判断を行った例もある」「特別休暇の取扱いについては、今後とも適切な運用に努めていきたい」との姿勢を示したことは、今後の足がかりになるものです。
健康管理
職場環境改善に向けた支援を行う
3月末の共済診療所の総研分室廃止後の健康管理体制について「同研修所の職員や養成課程研修生等の健康管理業務を行うため必要な時間について医師及び看護師を配置する」ことを明らかにしました。
ストレスチェックについて、自宅パソコンやスマートフォンでの受検について「引き続き具体的な検討を進めている」としました。集団分析結果については従前回答にとどまったものの、「職場環境の改善に向けた支援を行うことは、もちろん最高裁の役割であると考えている」と回答しました。
ハラスメント防止
遠慮なく相談できる体制づくりにとりくんでいる
ハラスメント防止については、セクシュアル・ハラスメント防止週間について「このとりくみがセクシュアル・ハラスメントの防止だけを目的とするものではないことをより分かりやすく示すため、『ハラスメント防止週間』として実施することとした」「周知用ツールとして作成したチラシには、セクシュアル・ハラスメントに限らず、その他の各種ハラスメントについても相談できる旨を明記する等、遠慮なく相談できる体制づくりに一層とりくんでいるところである」と述べました。
「セクハラ等に関する相談員に対し、パワハラに関する相談をした場合にも、相談員は、これを拒絶せず、職員の話に真摯に耳を傾け、丁寧に聴いた上で、その内容を各職場の管理者や人事担当者等に引き継ぐなどの対応をとることになっている」と回答する一方、ハラスメント総合窓口の設置は従前回答にとどまりました。
IT化
職員団体の意見等も踏まえつつ検討
裁判手続のIT化については、「今後の検討を進めるに当たっては、裁判所全体で幅広く意見交換等をしていくことが必要であり、職員及び職員団体の意見も踏まえながら検討していきたい」「各庁のPTにおける検討状況等についても、適時に情報提供することとしたい」との姿勢を示しました。
NAVIUSの開発に当たっては、「職員及び職員団体の意見等も踏まえつつ検討している」とし、「第1次開発の少年事件部分の主な画面レイアウトについても、提出された意見等を踏まえ、画面の見やすさや操作性、今後の他の情報システムを統合する場合に及ぼす影響、レスポンスやシステムの保守性、開発や運用保守等に要する費用への影響の程度といった観点から検討を行い、相当であると判断したものについては可能な限り反映することとしたところであって、今後とも同様の姿勢で進めていきたいと考えている」と回答しました。
書記官・事務官・家裁調査官
従前回答にとどまり、諸要求期向けた課題を主張
書記官事務の簡素化・効率化については「法的な根拠及び本来の目的は何かという視点から検討を行い、あるべき事務処理態勢を構築していくこととなる。そのため、結果として、従前と比べて事務が簡素化・効率化するものもあれば、拡充するものもあることを理解していただきたい」、専任事務官の登用拡大については「書記官事務の経験がないということだけで事務官の昇進の途を奪うようなことは考えていない」、家裁調査官の「育成新施策」における「二重の異動」の問題については「任官直後に有用な職務経験を積ませることができることから、その後の異動先である小規模庁において一人前の家裁調査官として事件処理にとりくむための準備段階として、継続的な育成の観点から有効かつ必要なものと考えている」と、いずれも従前回答にとどまりました。
これらの回答を受けて、本部はこの3点が特に重要な課題になっていると重ねて指摘し、諸要求期に向けて検討するよう強く主張しました。
速記官
電子速記タイプ整備前に研修を実施
電子速記タイプライターの整備予定庁や整備後の運用については依然として明らかにしていませんが、「各庁への電子速記タイプライターの整備前に、操作方法等に関する導入研修を実施することとして、具体的な内容を検討している」と回答しました。
法廷警備員の警備業務の研修については、「OJTを基本としながら、引き続き、各庁の実情に応じて適切な研修が行われるように努力していきたい」と回答しました。
また、身分証など旧姓使用の対象となる文書の範囲については、「今後も拡大する方向で、準備を進めているところであると回答しました。
家裁調査官採用試験
「専門知識習得できる」と回答
家裁調査官の採用試験で、専門試験において人間関係諸科学の領域からの科目選択を必須としないこととなる見直しについて、専門性が損なわれるのではないかとの指摘に対し、「家裁調査官の職務に必要とされる人間関係諸科学の広範な領域についての実務的な専門知識等は、採用の時点で必ずしも備えていなくても、採用後の、実務修習も含めた養成課程研修や、任官後の実務を通じて修得できている」との認識を示しました。
女性登用
キャリアプランに基づく意向も十分に確認
女性職員の登用については「男女を問わず、意欲と能力のある職員を、成績主義、能力主義、適材適所の任用原則に基づいて、登用している」「本人のキャリアプランに基づく意向も十分に確認した上で行っているものと承知しているところであるが、引き続き、下級裁を指導していきたい」と回答しました。
令状センター
多角的かつ慎重に検討を進める
令状センターについては「将来考え得る選択肢の一つとして受け止めているところである」としつつ、「多角的かつ慎重に検討を進めなければならない問題であることは理解してもらいたい」とする従前回答にとどまりました。
連絡係職員について「各庁において、実際に連絡係職員を割り当てる際は、連絡係職員を割り当てる職員の範囲のほか、連絡係職員としての職務内容や留意事項等について、各庁の実情に応じた説明がなされているものと受け止めているが、最高裁として引き続き下級裁への目配りをしていきたい」と回答しました。
昇格
処遇維持・改善に最大限努力
次年度の昇格について、「職員の処遇の維持・改善に向けて少しでも定数を獲得するため、更に引き続き最大限の努力を続けていきたい」との姿勢を示しました。また、この間定数拡大がなかった家裁調査官5級について、「今後の昇格運用の枠組みの維持のために少しでも定数を獲得することができるよう、折衝状況を踏まえつつ、努力していきたい」と回答しました。
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