全司法本部は11月14日、秋季年末闘争第3回となる最高裁人事局和波総務課長との交渉を実施しました。次年度の増員をはじめ、労働時間短縮・超勤縮減、ITシステム化、休暇・休業、次世代育成支援対策、男女平等・両立支援等の課題で最高裁を追及しました。
家裁調査官の育休正規補充「小・中規模庁の困難さも踏まえ検討」
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総務課長交渉の様子 |
人員課題について、「来年度の増員をめぐる状況はこれまで以上に厳しいものとなっている」との認識を示しつつ、「適正迅速な裁判を実現し、国民の負託にこたえていくために、裁判所の人的態勢の充実強化を図っていく必要があることについて、財政当局の理解を得るべく説明を行っているところである」と回答し、「必要な人員の確保に引き続き努力していきたい」との姿勢を示しました。また、全国的なシフト政策を見直し、地方職場から人員を削減しないよう求めたのに対し、総務課長は「個々の庁について、各種事件数の動向や事件処理状況等の種々の要素を考慮し、事務量等を見極めて行ってきている」、「各庁各部署の実情等を踏まえた適正な人員配置に努めていきたい」と回答しました。
この他、職場の欠員が繁忙に拍車をかけている実態を指摘し、代替要員の確保や小・中規模庁における十全な正規補充を求めました。総務課長は「育児休業を取得した職員の業務を処理するための手当の必要性はあるものと考えている」とした上で、家裁調査官の正規補充について「小・中規模庁における代替要員確保の困難さも踏まえた上で」「実施規模等について検討していきたい」と回答しました。本年4月期の家裁調査官の正規補充は、札幌高裁管内や高松高裁管内ではそれぞれ1人となっており、小規模庁も含めた欠員補充は職場の切実な課題となっています。
超勤命令の上限規制「人事院規則を注視しつつ、裁判所としての対応を検討」
国家公務員の超過勤務命令の上限規制に関わって、適切な勤務時間把握について追及するとともに、管理職が超勤申告の抑制を行うのではないかとの懸念があることから、上限を超えた場合の事後的検証はペナルティとせず事務の簡素化・効率化に活用するよう求めました。総務課長は「人事院が、超過勤務命令を行うことができる上限について、原則1か月45時間かつ1年360時間等と設定し、これを人事院規則で定めることになったことについては承知している。今後、人事院規則の規定内容等を注視しつつ、裁判所としての対応について検討を進めていきたい。サービス残業があってはならないという姿勢は変わるものではない」と回答しました。
また、特に超過勤務が多い最高裁については、「上限規制の動きも踏まえ、これまで以上に超過勤務の削減にとりくむ必要がある」とし、「行政府省における効率化の検討状況なども勘案しながら、引き続き超過勤務削減に努めていきたい」と回答しました。本部からは、国会関係業務の簡素化について国会や各政党に申し入れるべきだと主張しました。
裁判手続IT化「幅広い職員の意見反映が望ましい」
裁判手続IT化では、PTの議論がブラックボックスであり、職員の意見が反映される仕組みになっていないと指摘しました。これに対し総務課長は、「各庁のPTにおける議論が適時に職員全体で情報共有され、その検討に幅広い職員の意見が反映されることが望ましい」との認識を示し、「裁判所全体で幅広く意見交換等が行われるような方策を検討していきたい」と回答しました。
また、人給システムの導入について、現に他省庁で生じている不具合等について指摘し、拙速な導入は行わないよう求めましたが、最高裁は「行政府省等からの情報収集に努めるとともに、導入に際しては、各職場での事務処理等に支障が生じないよう、必要な準備を行っていきたい」との回答にとどまっています。
繁忙が権利行使をためらわせる懸念を指摘
次世代育成支援策に関わって、最高裁はこれまでも、「男女を問わず、仕事と生活を両立しながら真に協働できる職場にしていくため、育児や介護の各種両立支援制度の活用に向けたとりくみを行ってきた」と回答していますが、家裁調査官においては、育児時間や早出遅出勤務の取得など育児や介護のための制度を利用した職員数が減少し、介護休暇では昨年、一昨年と利用者がいないことも明らかになっています。職場の繁忙状況が権利行使をためらわせていることも懸念され、安心して制度が利用できる職場環境の構築が求められます。
その他の課題については、概ね従前回答を維持しました。
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