中国・四国地方を中心とした西日本豪雨や近畿地方での地震があった直後の7月に開かれた第75回定期大会では、災害発生時の職場での対応に議論が集中しました。
その後、北海道での地震と停電、度重なる台風など、秋になっても自然災害が続いていますが、その影響を受けた多くの庁で、災害発生時の業務継続や特別休暇のあり方が課題となっています。全司法本部ではこの秋、災害時の職員の安全確保と業務継続のあり方について、交渉等をはじめとするとりくみをすすめます。
安全確保を最優先で、実効性ある業務継続を
国の機関としての業務を継続することは重要ですが、「とにかく、できるだけ通常どおり」というのは、使用者としての「安全配慮義務」からも問題がある対応です。まして、その理由が必要性、相当性の検討にもとづくものではなく、「後で何か言われないため」という責任回避にもとづくものだとすれば、言語道断の判断と言うしかありません。
使用者には、従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務があります。これは国家公務員でも同じで、国は職員に対して自然災害の場合も安全配慮義務を負っているのです。
地震・風水害など、自然災害時における対応は、職員の安全確保を最優先した上で、実効性のある業務継続を図ることが必要です。
大規模地震以外の場合も対応の備えを
BCP(事業継続計画)は「企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にしながら、中核事業の継続・早期復旧を可能とするために平常時に行うべき活動や事業継続のための方法等を取り決める計画」だとされていますが、帰宅・待機の指示などを含め従業員に対する安全配慮は、その大きな要素です。
裁判所では、各庁ごとにBCPは策定されていますが、主に大規模地震を想定したものが多く、台風や豪雨などについては十分意識されてはいません。
しかし、この間の状況を踏まえると、大規模地震以外の自然災害も多く、それらについても平常時から備えておく必要性が高まっています。そこで、全司法としては当面、次の観点で運動をすすめます。
閉庁などの判断を柔軟に
大型台風が接近し、交通途絶も懸念されるもと、被害発生の可能性を考慮して閉庁した庁がある一方、宿泊を前提に当日になって職員を填補させるなどの対応をした庁もあります。
独立簡裁をはじめへき地における閉庁判断については、職員の安全確保を最優先し、柔軟に行うことを求めます。また、利用者との関係では、庁規模を問わず、期日の取消しや変更のあり方を検討することも必要だと考えます。
特別休暇の判断をすみやかに
人事院規則では、「災害・交通機関の事故等により出勤が困難な場合」や「退勤途上の危険を回避する場合」には「必要と認められる期間」を特別休暇とすることができることになっています。しかし、この間の自然災害発生時、職場では交通機関の運行休止直前しか特別休暇を認めないなど、判断が遅く、また、硬直的な運用がされたとの指摘が多く寄せられています。
特に台風や降雨による水害については、警報等の発令もあり、予見が比較的可能であることから、早期に判断することを求めます。
通勤時の自己負担をなくす
災害により列車の運行ができないなど、通勤経路が使えなくなった場合、仮に代替手段で通勤すると、その分が自己負担になってしまいます。
こうした事態が生じないよう、臨時的に通勤手当の認定替えを行うことを求めます。
なお、これは国家公務員全体の制度上の問題になりますので、裁判所当局から人事院に働きかけさせるとともに、国公労連等に結集してとりくむことが必要です。
防災等を担う公務員を増やす
最後に、近年の自然災害による被害の拡大については、防災、避難対応、復旧・復興の業務にあたる公務員の数を減らし、災害に対する態勢を弱めてきたことにも大きな要因があります。
公務員の労働組合として、そういう視点に立った運動にも結集していきます。
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