おいでやす全司法
プライバシーポリシー  
CONTENTS 全司法紹介 司法制度改革 少年法関連 全司法大運動 全司法新聞 声明・決議・資料 リンク サイトマップ
  トップページ > 全司法新聞 > 2018年10月 > 2296号
 
 
全司法新聞
 
台風・豪雨など災害に備えるBCPが必要
 

 中国・四国地方を中心とした西日本豪雨や近畿地方での地震があった直後の7月に開かれた第75回定期大会では、災害発生時の職場での対応に議論が集中しました。
 その後、北海道での地震と停電、度重なる台風など、秋になっても自然災害が続いていますが、その影響を受けた多くの庁で、災害発生時の業務継続や特別休暇のあり方が課題となっています。全司法本部ではこの秋、災害時の職員の安全確保と業務継続のあり方について、交渉等をはじめとするとりくみをすすめます。

安全確保を最優先で、実効性ある業務継続を

 国の機関としての業務を継続することは重要ですが、「とにかく、できるだけ通常どおり」というのは、使用者としての「安全配慮義務」からも問題がある対応です。まして、その理由が必要性、相当性の検討にもとづくものではなく、「後で何か言われないため」という責任回避にもとづくものだとすれば、言語道断の判断と言うしかありません。
 使用者には、従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務があります。これは国家公務員でも同じで、国は職員に対して自然災害の場合も安全配慮義務を負っているのです。
 地震・風水害など、自然災害時における対応は、職員の安全確保を最優先した上で、実効性のある業務継続を図ることが必要です。

大規模地震以外の場合も対応の備えを

 BCP(事業継続計画)は「企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にしながら、中核事業の継続・早期復旧を可能とするために平常時に行うべき活動や事業継続のための方法等を取り決める計画」だとされていますが、帰宅・待機の指示などを含め従業員に対する安全配慮は、その大きな要素です。
 裁判所では、各庁ごとにBCPは策定されていますが、主に大規模地震を想定したものが多く、台風や豪雨などについては十分意識されてはいません。
 しかし、この間の状況を踏まえると、大規模地震以外の自然災害も多く、それらについても平常時から備えておく必要性が高まっています。そこで、全司法としては当面、次の観点で運動をすすめます。

閉庁などの判断を柔軟に

 大型台風が接近し、交通途絶も懸念されるもと、被害発生の可能性を考慮して閉庁した庁がある一方、宿泊を前提に当日になって職員を填補させるなどの対応をした庁もあります。
 独立簡裁をはじめへき地における閉庁判断については、職員の安全確保を最優先し、柔軟に行うことを求めます。また、利用者との関係では、庁規模を問わず、期日の取消しや変更のあり方を検討することも必要だと考えます。

特別休暇の判断をすみやかに

 人事院規則では、「災害・交通機関の事故等により出勤が困難な場合」や「退勤途上の危険を回避する場合」には「必要と認められる期間」を特別休暇とすることができることになっています。しかし、この間の自然災害発生時、職場では交通機関の運行休止直前しか特別休暇を認めないなど、判断が遅く、また、硬直的な運用がされたとの指摘が多く寄せられています。
 特に台風や降雨による水害については、警報等の発令もあり、予見が比較的可能であることから、早期に判断することを求めます。

通勤時の自己負担をなくす

 災害により列車の運行ができないなど、通勤経路が使えなくなった場合、仮に代替手段で通勤すると、その分が自己負担になってしまいます。
 こうした事態が生じないよう、臨時的に通勤手当の認定替えを行うことを求めます。
 なお、これは国家公務員全体の制度上の問題になりますので、裁判所当局から人事院に働きかけさせるとともに、国公労連等に結集してとりくむことが必要です。

防災等を担う公務員を増やす

 最後に、近年の自然災害による被害の拡大については、防災、避難対応、復旧・復興の業務にあたる公務員の数を減らし、災害に対する態勢を弱めてきたことにも大きな要因があります。
 公務員の労働組合として、そういう視点に立った運動にも結集していきます。

 
ページの先頭へ
 
改善部分の早期実施、やりがいを持てる定年延長などを主張 18年人勧の取扱い等で総長交渉
 

 全司法本部は10月1日、「2018年人事院勧告の取扱い等に関する要求書」に基づき、最高裁今崎事務総長と交渉を行いました。交渉では、給与勧告の取扱いに加え、長時間労働の是正や両立支援制度の拡充、健康課題など、公務員人事管理報告に関わる労働条件課題について追及するとともに、人事院が示した定年延長に関わる意見の申出の問題点を指摘し、「やりがいを持って安心して働ける制度」の実現を求めました。

【賃金】

「要望は関係機関に伝わるようにしたい」

 今年の人事院勧告は、5年連続の改善勧告となったものの、その水準は生活改善につながらない低額勧告であり、「給与制度の総合的見直し」の経過措置終了に伴う賃下げが強行された状況のもと、「高齢層に重点を置いた配分など生活改善ができる政策的な賃上げ」を求めてきた私たちの要求に応えない、極めて不十分なものとなっています。
 この評価を前提としつつ、賃金・一時金・宿日直手当などの改善部分を早期に実施するとともに、住居手当や通勤手当の改善など、私たちの要求を踏まえた改善を関係機関に働きかけるなど、使用者責任を果たすよう求めました。
 これに対して、事務総長は「職員にとって、賃金の問題が最も重要な問題であり、職員団体がこの問題を最も重視して真剣に取り組んでいることは十分理解している」、「最高裁としては、職員の人事行政を所掌する立場から、職員の生活が少しでも改善されることを常に望んでいるところであり、これまでと同様、職員及び職員団体に誠実に対応していきたい」としたうえで「職員団体の要望は関係機関に伝わるようにしたい」と回答しました。

【定年延長】

裁判所の制度設計「誠実に対応していきたい」

 定年延長の課題では、人事院の意見の申出について、60歳を超える職員の年間賃金を60歳前の7割水準に引き下げることなど、私たちの要求から大きくかけ離れており、「はじめに賃下げありきで到底受け入れられない」と指摘しました。また、裁判所における制度設計にあたっては「定年延長が導入されたことにより処遇面で後退することがあってはならない」と指摘し、全司法の意見を踏まえた制度設計を求めました。
 事務総長は「職員が強い関心を有していることは十分に認識」しているとしながら、「(政府の)検討状況を注視していきたい」と述べるにとどまりました。一方で、裁判所の制度設計にあたっては「適切かつ誠実に対応していきたい」との姿勢を示しました。

【国家公務員の超勤規制】

「事務の簡素化、合理化に向けた取組を後押しする」

 公務員人事管理報告に関わっては、国家公務員の超過勤務命令の上限規制を実効性あるものとするため、最高裁や各庁当局の責任による事務の簡素化・効率化や必要な要員確保を求め、正確な勤務時間把握が大前提でなければならないことを指摘しました。
 事務総長は、「人事院規則の規定内容等を注視しつつ、裁判所としての対応について検討をすすめていきたい」と述べ、「管理職員を含めた職員の勤務状況の適切な把握に努め、職場実態に合った事務の簡素化、合理化に向けた具体的な取組を実施していくよう、最高裁として、より一層下級裁を指導するとともに、その取組を後押ししていきたい」との姿勢を示しました。

【パワハラ防止】

「職員団体の問題意識も踏まえながら検討」

 この他、両立支援制度が、十分活用される職場環境の整備やとりわけ不妊治療休暇の創設を求めるとともに、ストレスチェックの運用改善やパワハラ防止に向けた積極的な対策をすすめるよう要求しました。
 事務総長は、「職場全体で業務の見直しをすること等により両立支援制度をより一層取得しやすい環境作りに努めていきたい」「職員団体の要望は、人事院に伝わるようにしたい」と述べるとともに、ストレスチェックについては「できる限り多くの職員に受検してもらうことができるよう、制度への理解の浸透を深めていきたい」と回答しました。また、パワハラ防止について「職員団体の問題意識も踏まえながら」「全ての職員に対する意識啓発や相談しやすい体制づくりを行っていきたい」との積極的な姿勢を示しました。
 労働基本権回復に関わっては、今年6月に出された2つのILO勧告(ILO総会基準適用委員会、結社の自由委員会)を踏まえ、民主的公務員制度の確立を求めたのに対し「これまで同様、職員及び職員団体の意見を聴くなど、適切かつ誠実に対応していきたい」と回答しました。

 
ページの先頭へ
 
3年に一度の一大イベント 釧路支部「旅行会」(学習会)に鳥井書記次長が参加
 
鳥井書記次長が「組織」を語る

 釧路支部では、3年に1回、定期大会に合わせて、「旅行会」と位置づけた学習会を支部独自で企画しています。組合についての知識を深めるほか、懇親会を通じて組合員同士の絆をより強くすることを目的に、全ての組合員に参加を呼び掛けて開催しています。9月29〜30日に開催した今回の旅行会も、多くの組合員の参加で成功を収めました。

支部に根付き、子連れの参加も

 今回の旅行会は、屈斜路湖の近くにある川湯温泉内の「名湯の森きたふくろう」で開催しました。本庁がある釧路市内から1時間半、帯広支部からは3時間もかかる中、4月期新採用職員を含めて約25名(全組合員の3割近く)が車に乗り合わせて続々と集まりました。お子さんを連れての参加もあり、この旅行会が釧路支部に根付いていることが分かります。

職種や職員制度の理解が課題

チーム対抗、クイズで労働組合を学ぶ
 学習会のテーマは「組織論」。クイズと本部からの講義で、労働組合の組織や要求について学びました。
 クイズは、4チームに分かれて9問に挑みました。労働組合の要件を問う問題や、要件の一つである「自主性」を欠く行為とは何か、団体交渉の意義や制約など、硬派な問題がずらりと並びます。裁判所の各職種の現状や要求について理解を深める問題もありました。労働組合に関する問題は多くのチームが全問正解しましたが、一方、職種や職員制度に関する問題については答えが分かれ、「身近なことでも知らないことが多い」ということが実感できる結果になり、全司法としての課題が明確になったようにも思います。
 クイズはチーム対抗形式で行われ、答えが分かれつつも3チームが同点。じゃんけんで優勝チームを決めるという仲の良い結果となりました。参加者からは、「グループで話し合いながら問題を解いたため、主体的に知識を得ることができた」との感想が寄せられました。

組織強化が要求実現に。「出た声に必ず答える」ことから

 休憩を挟み、本部の鳥井書記次長から、組織強化・拡大の必要性や、そのために具体的に何をすればいいのか、また、本部や地連の役割について、経験談も交えながら1時間の講義を受けました。
 講義では、組合活動への理解者・協力者を増やすことが「組織強化」であり、組織強化をすすめれば組合の運営が楽になるというだけではなく、要求実現にもつながるということが強調されました。組織強化・拡大の具体例として、「出してもらった声には必ず応える」として、声を反映させた場合はその結果を、反映させなかった場合はその理由をきちんと伝えることで信頼を得てきたことや、職場で組合の話が当たり前にできることが大切であり、「会話のネタのひとつに組合を」と意識してきたことも紹介されました。
 最後に、「職場に組合の風を吹かせることができるかどうかは、組合活動が役員だけのものではなく、組合員全員のものとなっているかどうかにかかっている。何かあれば組合へという意識をしてほしい」ということ、そして、組織強化・拡大と要求実現のために「一人ひとりが行動しよう」と呼びかけられました。
 参加者からは、「組合では、職場環境改善や異動要求実現等あらゆることを行っていることが分かった」「充実した2日間になった」との感想や、「今後の活動(青年部の活動)にも活かせる内容ばかりだったので、少しずつとりくみを広げ、より意義のある活動をしていきたい」との決意が寄せられました。

この絆が、明日の釧路支部の活動につながる

 学習会の後は、温泉を楽しんでから大交流会の始まりです。学習会のクイズ優勝チームに賞品授与式を行った後、全員に賞品が当たる大ビンゴ大会を行いました。お子さんも含めて、大変盛り上がり、宴会場が使える時間ギリギリまで交流を楽しみました。
 今回の旅行会では、宿泊部屋のほかに二次会用の部屋が準備されており、大交流会が終わった後も、参加者は自分のペースで集まって、時間を気にせず、趣味や好きなものなど、ふだん聞けないディープな話で盛り上がりました。「この絆が、明日の釧路支部の活動につながる」ことを確信できる旅行会となりました。

 
ページの先頭へ
 
少年法「年齢引き下げありき」ですすむ審議会
 

家裁が担う「新たな処分」も

 少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げることについて、現在、法制審議会で審議がすすめられています。
 法制審では「少年法における『少年』の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について」が議題となっており、少年法の適用年齢だけではなく、懲役刑と禁錮刑の単一化、宣告猶予制度の新設など、成人の刑事法も含めた幅広い内容が議論の対象となっています。
 具体的な検討をすすめてきた分科会では「比較的軽微な罪を犯し、検察官において訴追を必要としないと判断した18歳及び19歳の者」を対象とした「若年者に対する新たな処分」が検討されており、これを家庭裁判所が担うとしています。
 しかし、この手続については、虞犯や警察の捜査で終わるいわゆる「署限り」の事案などは保護する必要性が高くても対象とならないのではないか、検察官の起訴・不起訴にかからせる制度で良いのか、少年法のもとで行われてきた教育的措置と同様の効果があるのかなど、様々な疑問が出されています。

適用年齢の本格議論は一度もなく

 一方で、少年法の適用年齢引き下げの是非については、これまで審議会で議論が行われたことはありません。適用年齢引き下げに反対する学者・弁護士等からは、引き下げの結論ありきで犯罪者全体の処遇のあり方が検討され、その結果をもって「年齢を引き下げても大丈夫だ」という結論が導かれるのではないか、との懸念が高まっています。
 朝日新聞は「少年法と年齢引き下げありきの矛盾」と題した9月24日付けの社説で以下のように書きました。
 「今の制度はおおむね有効に機能しているというのが、現場の共通認識だ。にもかかわらず、引き下げありきで改正を論じる。その矛盾が議論の端々にのぞく」「この混迷ぶりは、今回の法制審の動きが、『改正のための改正』でしかないことを物語っているといえよう」「罪を犯した人に過ちを繰り返させないために、社会がすべきこと、してはならないことを、しっかり整理する必要がある」
 今こそ、現場から少年法の理念や、少年事件において家庭裁判所が果たしている役割を正確に社会に伝え、適用年齢の引き下げに理由もメリットもないことを明らかにしていくことが重要になっています。

 
ページの先頭へ
 
 
ページの先頭へ