人事院は8月10日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告を行い、同時に、公務員人事管理に関する報告、定年延長にかかる意見の申出を行いました。賃金・一時金ともに5年連続の改善となりましたが、生活改善にはつながらない低額の勧告です。定年延長に関わっては、「当分の間」としつつ給与等を60歳前の7割に引き下げることなど、問題の多いものになっています。
平均655円(0・16%)、一時金0・05月の改善
給与勧告では、人事院が算出した官民較差にもとづいて、月例給で平均655円(0・16%)、一時金(ボーナス)で0・05月を、それぞれ改善するものとなっています。具体的には、俸給表を改定して、初任給を1500円、若年層については1000円程度、その他は400円の引き上げを基本として全ての号俸を引き上げ、一時金は勤勉手当に配分するとしています。
5年連続の改善勧告となりましたが、改善額はわずかで、生活改善につながらない低額勧告です。とりわけ、4月に「給与制度の総合的見直し」の現給保障が廃止されるなど、ベテラン層職員を中心に賃下げになっている状況のもと、「高齢層に重点をおいた配分など生活改善できる政策的な賃上げ」を求めていた私たちの要求に応えないものとなっています。
手当については、宿日直手当が200円引き上げられるものの、職場の強い要求である通勤手当や、昨年の勧告で「必要な検討を行う」としていた住居手当の改善を見送ったことは不満です。住居手当については、改善を実現するためには、較差外の手当とすることを同時に求めていくことが重要です。 再任用職員については、月例給・一時金ともに改善するとし、今回はじめて他の職員と同様に一時金の改善をはかるとしたことは、運動の一定の成果です。一方、生活関連手当の支給や退職前の年休繰り越しの要求には応えませんでした。
超勤の上限時間を人規に明記、実効性が課題
公務員人事管理に関する報告では、さきの通常国会で「働き方改革関連法案」が成立したことも踏まえて、長時間労働の是正にむけて超過勤務命令の上限を人事院規則において原則1月45時間・1年360時間(他律的業務の比重の高い部署においては1月100時間・1年720時間等)に設定するなどの措置に言及しています。
国公労連全体としては、上限規制の厳格な運用とそれを可能にするための客観的な勤務時間管理の義務化、さらには必要な要員確保などを求めて、これを実効あるものにしていくことが課題です。
裁判所においては、全司法がこの間、勤務時間の適正把握、事務の簡素化・効率化による超勤縮減、早朝・休日も含めてサービス残業をなくすことの3つを一体ですすめるよう要求して勝ち取った、「持ち帰り・サービス残業があってはならない」等の最高裁回答をはじめとした到達点を職場の隅々にまで浸透させ、その実効性を確保させることが重要です。
65歳まで段階的に定年延長、給与水準は7割
定年延長にむけては、定年年齢を65歳まで段階的に引き上げるとした意見の申出が行われました。
その内容は、役職定年制の導入、60歳超職員の年間給与を60歳前の7割の水準に引き下げること、定年前の短時間再任用の導入、分限処分を適時厳正に行うことを目的とする人事評価の適正な運用の徹底などとなっており、多くの問題点を含むものとなっています。
今後、これにもとづいて政府がどういう制度設計をするかが最大の焦点になることから、引き続き、国公労連に結集して、定年延長を希望しない人も含めて、安心して働き続けられる高齢者雇用の枠組みを作らせることが重要です。
あわせて、最高裁が裁判所にどう当てはめるかが課題となってきます。これまでの裁判所における再任用制度の到達点を足がかりに、裁判所の特殊性を踏まえた運用を実現するよう求めていく必要があります。
パワハラ対策で検討会を設置、森友・加計の影響も
公務員人事管理に関する報告では「今般、決裁文書の改ざん、幹部職員によるセクシュアルハラスメント等の問題により、国民の信頼を大きく損なう事態が生じていることは誠に遺憾」と述べ、行政への信頼回復に全力を挙げるとして、一定の方向性が示されています。森友・加計問題など、政治の責任で起きた問題を公務員の人事管理に転嫁する姿勢には疑問を感じるとともに、今後の具体化を注視する必要があります。
また、パワハラについては、検討会を設けるなどして外部有識者の意見も聞きながら、公務におけるパワハラ対策を検討するとしており、パワハラ対策の強化を求めてきた私たちの要求が反映されるよう、注目していく必要があります。
非常勤職員については、雇用の安定や均等待遇など、制度の抜本的、賃金、有給休暇制度をはじめとする改善を求めてきた国公労連等の要望を正面から応えることなく、結婚休暇等の慶弔に係る休暇を措置するにとどまりました。
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