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グループ討議で「学習会」を準備 |
全司法は5月13日〜14日に第24回全司法中央労働学校を開催し、青年・若手組合員を中心に27名が参加しました。1日目は、各支部や青年部で学習会のチューターができる人を育てていくための「講師養成講座」と銘打って、レジュメの作成やプレゼンテーションを行い、2日目は、「日本国憲法の理念を伝える伝道師」として知られ、法律資格の受験指導校として有名な伊藤塾塾長である弁護士の伊藤真さんの講演を受けました。
討論とプレゼンで、どんどん理解が深まった
中央労働学校1日目は、昨年に引き続き、体験型の学習として、全司法本部が各機関での組合員学習用テキストとして作成した「全司法標準カリキュラム1 はじめて読む『国家公務員法』」にもとづいて、学習会のチューターを育成する「講師養成講座」を実施しました。
参加者は5つの班に分かれて、「標準カリキュラム」の項目(@国家公務員法と裁判所職員、労働基本権をめぐって、A公務員の給与について、B人事評価制度、C職員団体((労働組合))に関する規定はどうなっているのか)の中から、それぞれ指定されたテーマで学習会用のレジュメを作成し、模擬の学習会をプレゼンテーションとして行い、参加者全員で審査しました。
審査の結果、優勝したのは人事評価制度について発表した班で、レジュメに「めざせA評価!〜人事評価とは〜」とタイトルをつけ、寸劇やホワイトボードの活用などで見せる工夫をした点が評価されました。
参加者からは「自分たちで話し合ってプレゼンし、他の班の発表も聞くうちに、各テーマについて、どんどん理解が深まっていった」「グループ別討論は講義を聴くより大変だったが、班の方々と協力して発表でき、達成感が得られた」「討論の中で、いろいろな感性があり、その感覚を共有することが大切だと感じた」「公務員として知っておくべきことを、楽しく学ぶことができた」等の感想が出されました。
公務員には憲法を擁護する義務がある
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若い仲間に伊藤真さんからメッセージ |
2日目は、伊藤塾塾長で弁護士の伊藤真さんによる講演を受けました。伊藤さんは「憲法を学び、知ってしまった者の責任として、憲法の伝道師なりたいと考えています」と述べられて、「いま改めて『憲法を守り、活かす』ということ 〜裁判所の若いみなさんへ〜」というテーマで、次のような話をされました。
仕事との向き合い方に関わって「自分の成長が幸せに感じられ、自分の幸せが社会の幸せにつながると実感できると、もっと幸せを感じられる、そのためには『誰のものでもない自分自身の原理原則=マイプリンシプル』が必要」としたうえで、「憲法99条には『公務員は憲法を尊重し、擁護する義務がある』と書かれている、みなさんはそういう立場にあることを認識していてほしい」と述べられました。
立憲主義はブレーキのようなもの
立憲主義に関わって、「民主主義は多数決が基本になるが、多数意見が常に正しいわけではない、人権や平和などの多数意見でも奪えない価値があり、これを予め、頭が冷静なうちに文章にしておこうということで作られたのが憲法」だと述べ、「政治権力を憲法で縛るという立憲主義は、民主主義というアクセルに対するブレーキのようなもの」だと説明されました。そのうえで、憲法が81条で選挙などの多数決で選ばれたわけではない裁判所に違憲審査権を与えたことの意味は大きく、「みなさんの中には公務員だから、裁判所だから、政治的なものには関わらないという意見があるかもしれないが、81条の存在は、きわめて政治的なもの」だと指摘されました。
労働組合は「自己実現」を根拠にしている
また、「日本国憲法で一番大切なことは、憲法13条が示している『個人の尊重』である」とし、「誰にもみんなに価値があり、幸せになる権利を持つ」「自分の幸せは自分で決める(自己決定権)」ということが、その内容であると説明されました。そのうえで、労働組合活動について「労働基本権はこれまでは25条の生存権から説明されていたが、今は13条との関連で説明されるようになってきている。つまり、生活できる賃金を求めるだけではなく、自分たちの職場環境について意見を述べるという自己実現の観点が労働組合の根拠になっている」、公務員の仕事のあり方について「『国民全体の奉仕者』ということの意味は、人々の自己決定権をサポートすることが公務員の仕事だということ」と指摘して、今回の労働学校のテーマに引き寄せた説明も加えられました。
他者への共感や想像力が重要
生活の中の憲法という視点では、「私たちの生活の中でも強い者と弱い者がいるときには、強い者から弱い者を守るために憲法が重要な役割を果たす。権力、暴力、財力、会社、社会的地位、専門知識などの強い力から弱い者を守るための道具になる」という憲法の役割を指摘するとともに、「憲法を理解するうえで、他者への共感や想像力が重要」だと指摘されました。参加者からは「憲法についてより深く知ることができた。憲法だけでなく、これからの人生を生きていくうえでの考え方を学ぶことができた」「憲法の問題は自分とは無関係でないことや、むしろ積極的に自分自身の考え方を持つべきだと思った」との感想が出されました。
参加者の感想
◇ 裁判所を良くしたいとか良い仕事をしたいという志や考えを持っている同世代の人が全国にいることが分かって良かった。今後は組合活動についてもう少し興味を持って、根拠やとりくみについて理解を深めていきたいという思いを持つことができた。
◇ 実際に前に出て話すことの難しさをとても感じた。特に印象に残っているのは、本部の方が言っていた「学習会の準備をしている時が、一番、自分自身が勉強している」という言葉であった。
◇ プレゼンや講義も良かったが、ほぼ全員が集まって夜中まで部屋のみをしながら、雑談から組織拡大の話までざっくばらんに話し合えたのがとても良かった。
◇ 普段会う機会のなかなかない全国の組合員の方と話すことができて、すごく楽しかった。今の中心となって組織を運営している方々は遅かれ早かれ抜けられてしまうし、若い世代が頑張っていかないといけないなと思った。
◇ 学習会の必要性を強く感じました。学習会は年に一回開催しているものの、講師は親支部に依頼しているので、青年部内で講師をしても良いなぁと思いました。
◇ 今まで組合の活動に深くかかわることがなく、組合のことを考えることも少なかったのですが、今回の中央労働学校に参加して、全国の組合員の人がそれぞれに問題意識を持って、活動しているということを知ることができ、また、今まで自分が持っていない考えを聞くことができ、勉強になりました。
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