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  トップページ > 全司法新聞 > 2018年5月 > 2286号
 
 
全司法新聞
 
今後の運動の方向性を考える集会に
第41回司法制度研究集会
 

 全司法が2年に1回開催している司法制度研究集会が、4月22〜23日に静岡県熱海市で開催されました。この集会は、労働条件の改善とあわせて全司法が目的とする「国民のための裁判所」を考えるために開催しているもので、今回は「『裁判手続のIT化』と令状センター構想の実現に向けて「戦後裁判所の歴史と課題」をテーマに学習と討論を行い、今後の運動の方向性を考える集会になりました。

裁判手続のIT化、令状センター構想が現実の課題に

IT、令状センタ―でパネルディスカッション

「司法分野に関わる国民的基盤の整備」として

 第1日目は「『裁判手続のIT化』と令状センター構想の実現に向けて」をテーマに、全司法内部の3人のパネリストによるパネルディスカッションを行いました。
 長岡書記長は、3月30日に取りまとめ結果を公表した「裁判手続等のIT化検討会」(内閣官房に設置)の審議経過をふまえ、4月3日に発表した書記長談話の趣旨を説明し、「裁判所におけるこれまでのOA化、IT化の経過と総括のうえに立ち、三権の一つである司法分野に関わる国民的基盤の整備として、十分な予算を確保して行う必要がある」等、今後のとりくみの視点やその背景にある問題意識を示しました。
 近畿地連委員長の坊農正章さんは、全司法が「令状センター構想」を中心とした「宿日直提言」を第62回大会(2005年)で決定した時の書記長として、「令状事務処理は、国家の国民に対する人権制限を直接的に監視する極めて重要な司法作用である」との認識から出発して「提言」の意義について述べ、その後の情勢にも触れながら、「令状センター構想」実現にむけて「今こそ動かすべき時」だとの意見を述べました。
 本部書記官対策担当の斉藤裕記中央執行委員は、令状センターが設置された場合の勤務態勢のあり方や、センターに集約される一般令状以外の勾留や保釈・準抗告といった事務については勤務時間の割振り変更や超過勤務等で処理する必要があること、庁舎管理は機械警備、文書授受は既にある通達に則って処理することで、宿日直が廃止できる展望を示しました。

「宿日直問題の解決、これしかない」

 各パネリストの発言を受けた後のディスカッションでは、裁判手続のIT化について「遠い将来の話ではなく、政府の政策として早いテンポで進むのではないか」との見通しが示され、職場で認識を広げるとともに、全司法として積極的にとりくみを進める必要性が確認されました。また、「令状センター構想」については、最高裁も検討をすすめている様子がうかがわれることが指摘され、フロア発言では「宿日直問題の解決はこれしかない」「今日の話を聞くまでは夢物語だと思っていたが、ここでの議論を聞いて、現実的で、実現可能な方策だと思った」といった発言が相次ぎました。
 長岡書記長はまとめの発言の中で「令状センター構想については、今日の議論をふまえ、7月の大会を経て具体的な要求をまとめていきたい。当面、最高裁を動かすためにも、各庁で宿日直態勢が限界に来ていることを、下級裁から最高裁に伝えさせていこう」と提起しました。

50年前の「司法の危機」の時代から今、学ぶべきこと

講演する米倉弁護士

安保や自衛隊をめぐる裁判と深い関係があった

 2日目のテーマは「戦後裁判所の歴史と課題」で、日民協(日本民主法律家協会)事務局長の米倉洋子弁護士から、とりわけ1960年代後半から70年代初めにかけての「司法の危機」と呼ばれた時代に焦点を当てた講演を受けました。
 裁判所当局が裁判官の判決内容に介入し、また、強権的な人事政策で裁判官の市民的自由を奪っていったと批判される「司法の危機」が起きた原因について、米倉弁護士は砂川、恵庭、長沼ナイキなど日米安保条約や自衛隊をめぐる事件と深い関わりがあることを明らかにし、違憲立法審査権の積極的な行使など、憲法にもとづいた裁判のあり方を研究し、実践しようとした意欲的な若い裁判官たちの試みに対して、田中耕太郎(第2代長官)、石田和外(第5代)、飯守重任といった戦争責任を問われることなく戦後裁判所の幹部を形成していた裁判官たちが危機感を抱き、政権と一体となってこれを潰したというのが実態だったと指摘しました。
 また、安倍政権のもと、はじめて具体的に9条改憲が狙われている情勢にも触れながら、「国の根幹に関わる政策を前にした時、裁判所当局の本質は、今も当時と変わっていないのではないか」との問題提起がされました。

「外部からどう見られているか」という視点が重要

 講演後の中矢委員長との対談では、「司法の危機」で反動的な役割を果たした飯守重任が鹿児島地裁所長として不当労働行為を組織的に行い、全司法潰しに執念を燃やしたこと、庁舎管理規定やリボン・プレート禁止通達がこの時代に作られたことなど、当時の裁判所当局の攻撃が全司法にも向けられていたことや、石田和外長官のもとで、それまでの最高裁判例を覆して公務員のストライキの全面禁止を合憲とする全農林判決が出されたことが話題になりました。また、平成の司法制度改革の評価も話題になり、法曹養成制度や裁判員裁判など、そこで導入された制度についても問題意識が示されました。
 あわせて、「国民のための裁判所」を目指す全司法の立場からは、裁判所が外部からどのように見えているのかという視点を持つことや、今後の運動を考えるうえでも歴史を学ぶことの重要さが確認される企画となりました。

 
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地道に息長く、そして一歩一歩階段を上って
第2回全国書記長会議
 
諸要求貫徹闘争に向けて意思統一

要求実現のため「最高裁を動かすこと」

 4月21〜22日、静岡県熱海市で全国書記長会議が開催されました。
 とりくみの提案を行った長岡書記長は、諸要求貫徹闘争は「次年度の概算要求に私たちの要求を反映させるため、最高裁を動かすことが必要だ」と述べ、各支部の要求を本部に集め、それにもとづく最高裁交渉を実施し、全国統一のとりくみでそれを後押しすることが重要だと強調しました。
 全国統一のとりくみとしては、@5月14〜18日のゾーンで全国統一総決起集会を実施する、A最高裁あて「要請書送付行動」にとりくむ、B7月6日に早朝時間外職場大会と引き続き1日のプレート行動を配置する、という3つのとりくみに整理して力の集中をはかることを提起しました。
 同時に、昨年の大会で決めた「新たな組織方針」が「職場における対話活動」の強化を全司法の運動の基本方向の一つに据えているもとで、秋と春に提起した職場会のとりくみが不十分だった状況にも触れて「まだまだ活動も緒に就いた段階」であり「地道に息長く、そして、一歩一歩階段を上っていきたい」と述べました。そのうえで、6月〜7月に「職場総点検・要求組織運動」で全ての職場で職場会を実施し、それをもとに「各支部が9月の定期大会で要求書を確立することを推奨したい」としました。

「本気で組合員を増やしましょう!」

 鳥井組織部長は組織強化・拡大に関する報告で、これまでのとりくみ状況が「二極化し、全国的に見て十分ではない」との総括の上にたち、4月新採用全員加入や各支部の重点対象者への積極的な働きかけに全力を注ぎ、全国大会までにすべての支部で増勢になるよう「本気でとりくみましょう」と強く訴えました。
 報告を受けた分散会では、各支部の重点課題を出し合って交流し、あらためて最高裁交渉に向けて職場実態を報告すること、「職場会」を運動の中心に据えてボトムアップの運動を作ること等が話し合われました。
 全体討論の中では、4月新採用の全員加入を達成した広島支部から「支部が責任を持ってフロントに立つ青年たちと『最初の歓迎会で加入をすすめること』を意思統一し、やるべきことを明確にして臨んだことが成功に結び付いた」との報告がありました。

 
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裁判所の定員はこうして決まる!
鳥井書記次長・国会傍聴記
 
「これから傍聴に向かいます」
 
衆議院法務委員会の様子(藤野委員の質問)

議員席の間近で質疑を傍聴

 裁判所の定員は、毎年「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」として国会に提出され、衆参両院の法務委員会で審議が行われた後、本会議に上程されて法律が可決・成立することによって決まります。2018年度の定員を決める法案に対して質疑がなされた3月30日の衆議院法務委員会と4月10日の参議院法務委員会を傍聴してきました。
 委員会は、一般傍聴ができる本会議と違い、国会議員の紹介がないと傍聴することができません。紹介議員から受け取った傍聴券に氏名・住所・年齢を記入して受付をし、傍聴人と分かるリボンを胸につけて、委員会が開催されている部屋に入ります。驚くことに委員会室は議場と傍聴席に仕切りなどがなく、部屋の隅とはいえ議員席や参考人席と同じように傍聴人席が設けられていて、緊張しました。
 質疑にあたっては、国会議員は、予定している質問の内容を事前に担当当局(法務委員会では、法務省や裁判所)に伝えておき、担当当局は回答を準備して法務委員会に出席します。両日とも、各議員がいろいろな切り口で、裁判所の人的態勢や任用施策、司法をめぐる政策について質問を行い、最高裁の担当局長や法務大臣・法務省事務次官などがそれに対して答弁していました。

衆院法務委員会

「地方に余裕があるわけではない」

 衆議院法務委員会では、裁判官の増員に関し、裁判官の手持ち事件数や事務処理状況等についての質問、法科大学院を中心とした法曹養成の在り方についての質疑が行われたほか、藤野保史委員(共産党)から、国民の裁判を受ける権利の担保・司法サービスの充実を求める観点から、一般職の定員に焦点を当てた質問がなされました。藤野議員は、増員数が昨年を下回り裁判所の定員が全体として10名削減となっていることや、十分な増員が図られないもと地方の職員を都市部に置き換えることで対応がなされている実態、2人庁が増えていること等を指摘したうえで、「地方に余裕があるわけでは全くなく、むしろ、人員が少ないもとで大変な労働を強いられている」として、最高裁の小規模庁から大規模庁への人員シフトを批判しました。また、家裁調査官の増員要求がなされていないことを指摘し、現場の実態も明らかにしながら、「家裁調査官の増員にかじを切るべきだ」と指摘しました。

参院法務委員会

「司法の独立に関わる重大問題」

 参議院法務委員会では、有田芳生委員(立憲民主党)が、定員削減に協力して行(二)職が削減された点について、「政府の定員合理化計画に従う必要はなく、必要な清掃・警備等の仕事は続けるべき」と意見を述べました。糸数慶子委員(沖縄の風)は、家裁の職場実態を丁寧にあげて家裁の充実を求めるとともに、「裁判所は迅速化、合理化によって人員削減をすべきという理屈が通らない分野だ」「人的・物的充実を求める声が現場からも上がっている」と述べました。仁比聡平委員(共産党)は、予算要求から予算案までの間に削られた10名の人件費が約5000万円であることを最高裁に明らかにさせたうえで、概算要求から10名削減した理由を追及しました。最高裁は「裁判所が財務省との意見交換の中で自主的に判断して削減した」「財務省には司法権を行使する裁判所の特殊性は十分に理解いただいており、数の点については財務省から査定を受けたということではない」と答弁しました。それに対し、仁比委員は「司法の独立に関わる重大問題であり、最高裁が財務省を弁護する必要はない」と最高裁の姿勢に抗議し、国民の裁判を受ける権利を保障するためにも定数を増やすしかないと述べました。

職場実態を伝えることが重要

 これらの質問には、現状を伝えながら裁判所の人的・物的充実の必要性を国会議員にアピールしてきた私たちの運動の成果が反映されています。法案は、両院とも賛成多数で可決されましたが、「裁判所は増員が必要」という立場に立って法案に反対する委員もおり、職場の実態や要求をいろいろな方法を使って伝えていくことの重要性を再認識しました。(本部書記次長鳥井)

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「公務員の定年引上げ」 裁判所独自の課題は何か?
 

裁判所独自の課題は何か?

処遇や定員は、国公労連に結集して

 2月16日、政府は内閣人事局に設置された「公務員の定年年齢の引き上げに関する検討会」がまとめた「論点整理」を確認し、人事院に国家公務員の定年引上げの検討を要請しました。
 これに対して、国公労連は、職務給の原則を前提とした給与水準や柔軟な定員管理等を要求しています。安心して働き続けられる制度になるよう、引き続き、国公労連に結集していくことが重要です。

短時間勤務をどうするか?

 裁判所においては、現在の再任用制度を導入するにあたって「雇用と年金の接続」を全司法が強く主張するもとで、「原則として、フルタイムで再任用する」到達点を築いています。
 一方で「年齢からくる体力の衰え等もあり、短時間勤務で働きたい」という要望はこれまでにも出されており、定年延長が具体的な課題となってきたことを踏まえて、改めて、そうした枠組みを検討することも必要になってきます。それに伴う定員上の取扱いや担当業務をどうするかということが課題です。

「役職定年制」をどうするか?

 また、「論点整理」では「本府省・地方機関の管理職以上の職員を対象に役職定年制(一定以上の年齢で役職から外れること)を導入することが必要」だとしています。
 国公労連は「基本的に反対であり、慎重に検討をすること」を主張しています。裁判所においては、従来から再任用制度について一定の実績があったことから、管理職への再任用が導入された後も限定的な運用となっています。こうした経過をふまえ、裁判所ではどういう制度が適切なのか、検討が必要です。

計画的な人材育成をどうするか?

 また、「論点整理」は定年の引き上げの意義について、単に定年を5歳引き上げるだけではなく、「高齢期までを見据えた計画的な人材育成や高齢期の職員の知識・技術・経験等の積極的活用に向け道筋をつけ、能力・実績主義の徹底等、若手・中堅職員も含めた人事管理全体をより適切な方向に見直す契機」とするよう求めています。
 裁判所においても、人材育成は大きな課題です。全司法は、若い時期には多様な仕事を経験させるとともに、中堅・ベテランには、研修だけではなく配置や異動も含めて、専門性を考慮した人材育成を行うよう主張しています。定年延長の議論とあわせて、裁判所における職員の育成も検討することが必要です。

 
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