パワハラはあってはならない
みんなの力で「泣き寝入り」しない職場を作ろう! |
パワハラ対策は、今、労働組合がとりくむべき重要課題の一つになっています。全司法もこの間、各支部等が組合員の相談に応じて個別に対応すると同時に、交渉などでも、パワハラなどのハラスメント問題をとりあげてきました。ここでは、秋季年末闘争での最高裁回答を見ながら、ハラスメントで「泣き寝入り」しない職場を作るとりくみを考えていきたいと思います。
「線引きは難しい」に「落とし穴」が…
最高裁は、全司法との交渉で、パワハラについて以下のように回答しています。
パワー・ハラスメントは、働きやすい職場環境の維持・運営の障害となるばかりか、場合によっては職員の意欲を減退させたり、メンタル不全を引き起こす要因ともなりかねず、あってはならないことであると考えている。
当然のこととは言え、使用者である最高裁が正式に、労働組合に対してこう表明していることは、職場でパワハラ問題を解決していくうえで大きな意義を持っています。
また、パワー・ハラスメントの定義を、こう述べています。
一般に「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、それを受けた就業者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用について不安を与えること」を指し、業務上の指導等であってもその手段や態様等が適切でないものも含まれると言われている。
ここまでは良いのですが、あわせて「明らかな違法行為・人権侵害行為は別として、どこまでが業務上必要な指導、助言等で、どこからがパワーハラスメントなのかという一般的な線引きは難しい」と回答している点が問題で、ここにパワハラが曖昧になってしまう「落とし穴」があるのではないかと考えます。
「説明がつくかどうか」が判断基準
最高裁回答にもあるとおり、パワハラの三大条件は「力関係」「人格否定」「業務範囲の逸脱」ですが、特に線引きが問題になるのは「業務範囲の逸脱」があったかどうかです。
これについて、厚労省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」でヒアリングを受けた金子雅臣氏(職場のハラスメント研究所代表理事)は、国公労連が開催した中央労働学校で「業務上の必要性、言葉でそう表現しなくちゃいけない理由をきちんと説明できるかどうかです。そこのところを『言った人には説明責任が求められる』と整理すると、かなりのところは見えてくるだろうと思います」と述べています。パワハラが問題になった場合、「どうしてこんなことを言ったのか」と質問された行為者が「こういう理由で必要があった」と説明がつくかどうかが判断基準だということです。
あわせて、容姿や性格などについて名誉感情を傷つけるようなことを言ったり、プライベートなことに踏み込むなどの「人格否定」があれば、業務上の必要性があってもアウトです。
これをふまえて、金子氏はパワハラの解決手法として、4つ(下記枠内)を示しました。
パワハラの解決手法
@ 通知 … 匿名でも訴えが出た時に行為者に通知し、自覚を促す。
A 調整 … 両当事者の言い分がずれている場合に、話を聞いて調整する。
B 調停 … 両当事者の言い分がまるで違う場合、言い分を聞いて調停する。
C 調査 … 被害者の申立てにより調査を行い、懲戒処分などをする。
※ 職場のハラスメント研究所代表理事金子雅臣氏の整理
当局が設置した苦情相談の申出先
最高裁判所人事局能率課が作成した「職場におけるハラスメントの相談窓口Q&A」に
* 職場の上司(直属の上司に限らない)、人事担当者
* 勤務する裁判所、その管轄高裁及び人事局に配置されたセクシャルハラスメント等に関する相談員
* 最高裁に設置した相談電話番号とメールアドレス
が相談窓口として掲載され、相談方法などが書かれています。
全司法への相談は、
全司法本部 03-6272-9810 mail@zenshiho.net
または、お近くの組合役員に!
裁判所の職場でパワハラが問題となった場合、このように、きちんと整理された対応が行われ、解決が図られているでしょうか。もとより、個別事案を公表する必要はないとしても、一般的に相談があった場合にどのように解決されているのかを示すことは、被害を受けた職員が相談する際の大きな後押しとなるでしょう。
管理職だけではなく、広く職員に知識付与を
最高裁はパワハラに関する知識付与について、以下のように回答しています。
職員が働きやすい職場環境を維持・向上するために、引き続き、問題意識を持って、管理職員の意識啓発、知識付与に努めていきたい。
これに対して全司法は、管理職だけではなく、広く職員一般に知識を付与するように主張しています。そうすることで被害を受けた場合や同僚の立場からの「気づき」にもつながり、職場全体でパワハラをなくしていくために重要だと考えるからです。
また、秋季年末闘争期の交渉で、第三者からの苦情相談について「除外しているわけではない」との回答を引き出しました。この回答を活かせば、ハラスメントを受けて悩んでいる組合員から労働組合が相談を受けた時に、相談を受けた役員が苦情相談窓口に相談することも可能です。
労働組合と当局との対応は別途しっかりやる必要がありますが、こうした回答も活かして、全司法は「泣き寝入り」せず、ハラスメントを職場からなくしていく課題に積極的にとりくんでいきます。
参考文献 『KOKKO』第23号(堀之内出版)
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