8月8日、人事院は、国家公務員の給与に関する勧告及び公務員人事管理に関する報告を行いました。
賃金については、月例給631円(0・15%)の官民較差を埋める改定、一時金0・1月の改善勧告となりましたが、4年連続のプラス勧告となったとはいえ、生活改善を実感できるには程遠い低額勧告にとどまっています。また、職場の要求が強い通勤手当や住居手当などの改善は行わず、地域間・組織間格差の一層の拡大となる本府省業務調整手当の引き上げを4月に遡及して行うとしたことは、私たちの要求を真正面から受け止めない、大変不満なものと言わざるを得ません。
とりわけ、「給与制度の総合的見直し」における現給保障が来年3月末で終了することから、その時点で多くの職員が賃下げとなります。職員の労働条件を確保し、その不利益を回避することは労働基本権制約の代償機関たる人事院の責務であり、これを放棄した姿勢は厳しく非難されなければなりません。
月額631円、一時金0.1か月分を引き上げ
人事院は官民の給与較差に基づき、俸給表の水準で631円(0・15%)の改善、一時金を0・1か月分引上げて4・4か月分にすることとした改善勧告を行いました。これにより、初任給を1000円引上げるとともに、若年層についても同程度の引上げを行い、それ以外の号俸については400円程度の引上げを基本として、全ての号俸を引上げることとしています。月例給、一時金ともに4年連続でプラスの勧告となったことは、今年の春闘相場で中小企業の労働組合の奮闘によって着実にベアを勝ち取ってきたこと、民間の春闘に公務も共にたたかい、官民一体となった運動によって勝ち取ってきた貴重な成果です。
しかし、生活改善を実感できるにはほど遠い低額勧告であり、とりわけ「給与の総合的見直し」による現給保障を受ける職員の多くが実際の支給額は改善されず、ここ数年と同様に据え置かれたままとなります。全司法は国公労連に結集し、最高裁や人事院に対し、大幅賃上げをはじめ「給与制度の総合的見直し」の中止・撤回や現給保障の延長・恒久化により、今年度末での経過措置終了に伴う賃下げ回避を強く要求してきましたが、今勧告はこうした要求に応えないものであり、到底納得できません。
また、一時金については全て勤勉手当に配分することとしており、今年度は12月期の勤勉手当に0・1月分を割り振り、来年度は6月期と12月期の勤勉手当にそれぞれ0・05月分を割り振ることとしています。成果主義賃金の更なる強化により職員の分断を広げるものであることから、なお不満が残ります。改善分は全ての職員に平等に配分されるよう、期末手当に振り分けられるべきです。
住居・通勤手当改善は見送り、本省庁業務調整手当のみ改善
再任用職員の増加や在職期間の長期化を踏まえ、再任用職員の処遇改善は喫緊の課題です。今勧告によって、月例給・一時金ともに一定の改善となりますが、私たちが要求する生活関連手当の支給や年休の繰り越しなどには応えず、「引き続き必要な検討」にとどまったことは、再任用職員の職務と生活実態を顧みないものです。定年延長の検討も含めて、引き続き再任用職員の処遇改善に向けて追及を強めていく必要があります。
この他、職場の要求が強い通勤手当や住居手当などについては全て改善を見送る一方で、較差原資を用いて本府省業務調整手当を4月に遡及して改善したことは、今勧告の問題点の一つです。物価上昇に満たず実質賃金でマイナスとなる下、地方で働く職員との格差を更に拡大させることになります。なお、住居手当の改善見送りは不満ですが、公務員宿舎の削減等による受給者の増加や職員の家賃負担の状況を踏まえて「必要な検討を行っていく」との姿勢を示したことは、今後の足掛かりとなります。都市部を中心に高額な家賃負担となっている実態や、民間における最高支給額の平均が公務を上回る(3万円以上3万1000円未満)状況を踏まえても、早急に改善が図られるよう追及を強める必要があります。
定年延長に向けた姿勢示し、その他の課題でも報告
今年の人事院勧告にあわせて示された「公務員人事管理に関する報告」では、定年延長に関わって「雇用と年金の接続が確実に図られるとともに、採用から退職までの人事管理の一体性・連続性が確保され」「職員の意欲と能力に応じた配置・処遇も可能となることから、定年の引上げによって対応することが適当」との考えを改めて強調し、労働組合の意見も聴取した上で論点整理を行うなど「必要な検討を鋭意すすめる」としています。定年延長に向けた積極的な姿勢を示したことは、私たちの要求を反映したものです。報告では具体的な検討にあたって「組織活力を維持するための方策について政府全体で検討をすすめることが必要」としていることも踏まえて、定員問題や総人件費抑制方針なども含めた議論の方向性にも注意しながら、その実現に向けてとりくみを強めることが重要です。
この他、報告では府省全体としての業務の削減・合理化、長時間労働の是正や管理職も含めた勤務実態の把握、OJT・OFFJTの充実をはじめとする人材育成、人材確保など、裁判所の人事管理においても活用すべき課題も示されています。各課題について、報告内容も踏まえ、職場環境の改善に結びつくよう、最高裁への追及を強めていきます。
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