4月19日、人事院は「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について」を公表し、退職一時金と企業年金(使用者拠出分)を合わせた退職給付額での官民比較について、78万1000円公務が上回るとし、官民均衡の観点から退職手当の見直しを行うよう、内閣に意見を提出しました。前回の見直しに引き続き、大幅な退職手当の引き下げを一方的に求めるものであり、到底容認できるものではありません。
「公務が民間を78万1千円上回る」と公表
人事院が行った退職給付水準の官民比較調査では、1人当たりの平均退職給付額が公務は2537万7000円に対し、民間企業では2459万6000円と、公務が78万1000円(3・08%)上回る結果となっており、この結果に基づき、退職給付水準の見直しを行うことが適切としています。この比較は、いわゆる「退職手当」に加えて、民間の企業年金やそれに対応する公務の共済年金の合算額を比較したものとなっており、勤続年数や退職事由を同じくする民間企業の従業員への支給総額と、現に国家公務員の退職者に支給されている退職給付額の支給総額を比較したものとなっています。
「公務の特殊性」ふまえた検討が必要
しかしながら、国家公務員には公務運営の公正・中立性の確保や生涯にわたる守秘義務が課せられるなど、民間にはない公務の特殊性を有しています。また、厳しい再就職規制があることや、民間では受給可能な雇用保険が受けられないことなどは、官民比較の対象として加味されていません。何よりも、退職手当は最高裁判例で「賃金」と位置付けられており、退職後の生活設計を支える重要な労働条件です。このことは人事院自らも認めており、労働組合との十分な交渉・協議を尽くさず、一方的な水準の引き下げを行うことは、到底容認できません。
前回は平均402万円の大幅引き下げ
国家公務員の退職手当の支給水準は、概ね5年ごとに見直すこととされていますが、前回(2013年)の見直しでは、平均402万円もの引き下げが強行され、極めて大きな影響を及ぼしました。見直しにあたっての明確なルールはなく、単純な官民比較のみで大幅な引き下げが可能となっており、見直しのたびに水準が乱高下する制度では、将来の生活設計はもとより、安定した公務運営にも支障を来すことになります。過去の例では3%の官民格差では見直しを行わなかった経過もあることや、今回の見直しにあたっては経過措置(段階的引き下げ)を予定していないことを踏まえても、今回の退職手当の見直しは断じて行うべきではありません。
たたかいは対政府へ国公労連署名にとりくもう
最高裁は諸要求貫徹闘争期における第1回人事局総務課長交渉において「職員にとって、生涯設計の面からも関心が高い事項であることは十分に認識している」としながらも「今後の状況を見守っていきたい」と回答しており、使用者責任を果たさない不十分な回答にとどまっています。
退職手当の取扱いは内閣人事局が所管することから、今後のたたかいは対政府となります。したがって、国公労連に結集し、一方的な改悪阻止や安定的な制度の整備に向けた政府追及を強めることが重要となります。また、国公労連は政府あての「退職手当の引き下げに反対する署名」行動を提起しており、全司法としても積極的なとりくみを展開することが求められています。1人5筆を目標にとりくみをすすめますので、未加入者も含めた最大限の集約を要請します。
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