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電子速記タイプ、官支給に向け大きく前進!
各課題で前進または足がかり 2016秋年期・人事局長交渉

 

 全司法本部は12月6日、最高裁堀田人事局長と秋季年末闘争期の交渉を実施しました。最高裁は増員や昇格で「最大限の努力」姿勢を示すとともに、各課題で全司法の要求を受け止め、前進または足がかりとなる回答を行いました。特に、電子速記タイプライターの官支給要求に対して、従来の「官支給するつもりはない」との姿勢を大きく転換させ、「整備することが可能かどうか検討してみたい」と回答し、速記官の長年の切実な要求の実現に向けて、大きな一歩を踏み出す前進面を築くことができました。
 なお、交渉の冒頭には、すべての地連・支部から集約した「電子速記タイプライター及び消耗品等の官支給を要求する要請書」を提出しました。

秋季年末闘争をしめくくる人事局長交渉

人員

人員確保に「全力を挙げる」

 2017年度予算における増員に向けては、「民事訴訟事件の内容が社会経済情勢の変化を背景により一層複雑困難化してきていることや、成年後見関係事件をはじめとする家事事件が引き続き増加傾向にある」との認識を示し、財政当局の「理解を得るべく全力を挙げている」との姿勢を示すとともに、人員の確保に向けて「最大限の努力をしていきたい」との姿勢に「変わりはない」と回答しました。
 一方で、国家公務員の定員を巡る情勢や事件数の動向に触れ、「財政当局との折衝はこれまで以上に極めて厳しいものとなっている」との認識を示していることから、今後の動向を注視していくことが必要です。

国民のための裁判所

裁判所の実態ふまえた成年後見の検討がされるよう努力

 成年後見制度利用促進法が成立し、同法に基づく基本計画策定に関する委員会が政府内に設置されていますが、最高裁として「各庁の職制を通じて申出のあった意見や要望を踏まえ対応したい」としたうえ、11月24日の参議院法務委員会での「今後も委員会におきまして各家庭裁判所の実情を踏まえた検討が行われるよう、引き続き努力してまいりたい」とした答弁と「同趣旨である」と回答しました。

労働時間短縮・超勤縮減

超過勤務の「削減」、サービス残業が生じないよう指導

 「長時間労働が社会的に大きな問題となっている中、裁判所においても超過勤務の削減はますます重要な課題となっているものと認識しており、最高裁としては、組織全体として超勤削減に向けたと
りくみをこれまで以上にすすめていきたい」と、従来使用していた「縮減」を「削減」と言い換えて、これまで以上に強い姿勢を示しました。そのうえで、「超過勤務の削減をすすめるに当たってサービス残業や持ち帰り残業が生じることのないよう、より一層下級裁を指導していきたい」と回答しました。

健康管理

人規改正ふまえハラスメント窓口を整備

 女性がん検診に関わって、本年2月に厚労省指針が改正されたことを受け、裁判所においても、本年度中に現行通達の見直しを行うことが明らかにされています。この動きを踏まえ、全司法からは、通達改正に当たっては、職場の強い充実・改善の要望を受け止め、改善の方向で検討することを求めました。
 ストレスチェックの受検率の向上に向けては、「できる限り多くの職員に受検してもらうことが望ましい」としながらも、「受検そのものを義務づけるものではないことなどから、どの程度の割合が適切な受検率なのかについては一概に言えない」との回答にとどまりました。また、集団分析結果について「職員及び職員団体に開示することは予定されていない」との姿勢を崩しませんでした。
 各種ハラスメントの防止に向けては、人規10―15「妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等」が公布され来年1月から実施されることを受けて、「裁判所においては、各庁に配置されているセクシュアル・ハラスメント相談員が、新たにこれらのハラスメントに関する相談員も兼ねて一元的に相談に応じることを考えている」旨明らかにしました。

IT情報システム化

司法研修所データベース改修、一般職も閲覧可能に

 J・NETポータルの充実に関わって、「現在、裁判官を対象としてJ・NETポータル上に開設されている司法研修所のデータベースを、事件情報データベースと同様に見やすく使いやすいものとするよう改修した上、一般職員も閲覧できるようにすることを検討している」ことを明らかにしました。一方、SEABISの旅費等システムの使い勝手の悪さを原因として職場から強い要望が出されている駅すぱあとの追加整備については、「旅費支給事務については、旅費計算機能が搭載された旅費等システムに合わせて事務を標準化していくべきものと考えている」とした上、「追加整備は困難である」との回答にとどまりました。

職員制度

調査官育成新施策について「必要な検討を行う」

 電子速記タイプライターの官支給の要求に対し、「これまで官側で整備してきた速記タイプライターについては、近い将来において、安定的な維持管理に支障を来す可能性があることから、後継機種として、電子速記タイプライターを整備することが可能かどうか検討してみたい」と、従来の「官支給するつもりはない」との姿勢を大きく転換させる前進回答を引き出すことができました。長年の運動の積み重ねが築いた大きな到達点であり、早期に官支給が実現するよう、今後も追及を強めることが必要です。
 家裁調査官の育成新施策に関わっては、「特に任官後の小規模庁配置が本年度末でちょうど3年が経過することから、その育成等の状況を適切に把握した上で、必要な検討を行っていきたい」と、見直しを示唆する回答を行いました。現行の運用において、小規模庁配置後の指導・育成態勢の確保が課題となっていたことから、引き続き改善の方向で追及を強めていく必要があります。

採用・異動

受験者確保のとりくみを順次充実

 裁判所職員採用試験の受験者の確保が課題となる中で、これまでのとりくみに加え「今後、フェイスブックによる採用情報や広報動画の発信、パンフレットの内容充実等、受験者確保に向けたとりくみを順次充実させていきたい」と回答しました。また、今年度実施した家裁調査官のインターンシップについて、「来年度以降もさらに充実した形での実施を予定している」ことを明らかにしました。

昇格

定数確保に最大限努力

 「級別定数改定をめぐる情勢はこれまでと比較にならないほど厳しい状況」との認識を示しつつ、「考え得るあらゆる理由付けを持ち出して、粘り強く、全力で、定数の維持、確保に向けた折衝を行っている」「職員の処遇の維持・改善に向けて少しでも定数を獲得するため、更に引き続き最大限の努力を続けていきたい」との姿勢を示しました。

 
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「公務員賃下げ違憲訴訟」控訴審判決
控訴棄却・一審判決なぞり、国の「立法理由」を鵜呑み

 
東京高裁前で決意を述べる国公労連岡部委員長

 2012年4月度から2年間にわたり、人事院勧告によらずに国家公務員の賃金を平均7・8%引き下げた「給与改定・臨時特例法」(「賃下げ特例法」)は違憲・無効だとして、国公労連と全司法組合員39名を含む359名が原告となって提訴した「公務員賃下げ違憲訴訟」は、12月5日に東京高裁で控訴審判決が言い渡されました。

約200名が集まり原告を送り出し

 控訴審判決の言渡しに先立ち、全司法は原告団会議を開催しました。会議には、全国各地から13名の原告が参加し、これまでの運動の経過や到達点等をあらためて確認し、その後の行動に臨みました。
 国公労連が配置した東京高裁前行動では、原告や各単組の組合員、民間労組の仲間、支援者など約200人が集まる中、主催者あいさつに立った国公労連岡部委員長は「公務員は憲法に規定された『全体の奉仕者』として、その地位の特殊性はあっても一人の労働者であることに変わりはない。公務員労働者も、自らの労働条件決定に参加し得る制度の構築をはじめ、安心して職務に専念できる身分保障、そして市民的政治的な自由の確立など、職場から権利意識を高め合うとりくみ、権利闘争を改めてしっかり位置づけ、勝利解決をめざして全力をあげたい」と決意を述べました。行動の締めくくりに、公正で正しい憲法判断を行うことを参加者全員で強く訴えながら、原告団と弁護団を全員で裁判所内に送り出しました。

一審の「コピペ判決」に怒りが噴出

 午後3時からは、多くの仲間が傍聴席を埋め尽くす中、東京高裁第101号法廷において控訴審判決が言い渡されました。しかし、その内容は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置たる人事院勧告をも無視した給与減額について、憲法28条には違反しないとして合憲と判示し、国公労連との誠実交渉義務違反も認定せず、原告らの請求をすべて棄却した一審判決を支持して「本件控訴をいずれも棄却する」というものでした。
 判決は、一般論として「人事院勧告は尊重されるべき」としつつも、「人事院勧告には拘束力がない。他方で、勤務条件法定主義、財政民主主義に基づき立法裁量がある」との国の主張を受け入れ、「我が国の厳しい財政事情」と「東日本大震災に対処する必要性」があるとの立法理由を鵜呑みにして、合憲と判断したものとなっています。一審判決をそのままなぞったような内容の判決に、弁護団からは「コピペ判決」との批判も飛び出し、傍聴に参加した原告団や民間労組などの支援者、国公労連の仲間からは強い怒りが噴出しました。

訴訟の意義と到達点を組合員に伝えよう

 判決言渡し後は、国公労連主催の報告集会が行われました。集会では、鎌田国公労連書記長が「これまでの運動により、ILOからの2度の勧告など国際世論も高まり、官民共同のたたかいによって、各方面の賃下げを抑止する効果もあった。上告については原告の意思確認などの状況を踏まえ判断するが、これまでの到達点とこの訴訟の意義・目的を組合員に伝えて欲しい。上告することとなれば、広く国民の理解と支持が必要となるため、署名等のとりくみを提起することとなる。憲法尊重擁護義務のある国家公務員として、我々だけでなく、非常勤職員を含め幅広い労働者の権利を守る必要がある」と訴えました。
 最後に、全司法の原告団会議を再開し、これまでの運動の到達点を確認するとともに、原告団一致して上告する方針を確認しました。

全司法独自の原告団会議を開催

加藤弁護士を囲んで原告団会議

権利守る運動が組合員の信頼につながった

 「公務員賃下げ違憲訴訟」の控訴審判決にあわせ、全司法は原告団会議を招集し、全国各地から13名の原告団が結集しました。
 会議では、弁護団の加藤弁護士から判決内容についての説明を受けた後、これまでの運動の経過と到達点を振り返るとともに、次の(1)〜(3)について確認を行い、原告団一致して上告する方針を確認しました。

(1) 「公務員賃下げ違憲訴訟」は、個々の原告が提起した訴訟であると同時に、国家公務員の権利を守る「運動」であること。
(2) 全司法の長い歴史の中で、裁判書闘争などの個別の解雇事案等を除き、本件訴訟のような労働条件に関わる裁判闘争に原告団を構成して参加したことは例を見ず、こうした運動が組合員を勇気づけるとともに、組合員からの信頼につながってきたこと、また、こうした組合員の期待に応える運動を引き続き構築していく必要があること。
(3) 政府の人事院勧告尊重の姿勢や「賃下げ特例法」が一時的臨時的措置であるとの答弁を引き出したこと、その後の減額措置の延長や人事院勧告に基づかない新たな賃下げ立法を許さなかったことなど、本件訴訟が築いた到達点から見ても、上告審での判断によって今後の労働条件の改悪につながる余地は見当たらないこと。

「上告して損はない」(加藤弁護士)

 上告を検討するに当たって、仮に上告で敗訴した場合、最高裁判例となってしまうことのマイナス面の影響について不安視する意見も出されたところですが、前記のような全司法の今後の運動の方向性に関わって、加藤弁護士からは「この裁判の到達点や2年間の時限立法だったとする原判決の枠組みを踏襲すれば、今後の運動の足かせになることはない」「上告して損はない」との見解が示されています。

上告を決定 引き続く結集を!

 この訴訟は、すべての国家公務員が経済的な損害を被っただけでなく、公務員の労働基本権に関わる問題を含んでいる訴訟です。公務労働者の権利を守るために、上告審での逆転勝利をめざし、今後も奮闘していくことが求められます。引き続き、職場からの支援と結集を呼びかけます。
 なお、国公労連は、12月8日に開催した中央闘争委員会において、各単組の意見を踏まえ、最高裁に上告することを決定しました。

 
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繁忙状況の解消に向け、適正な人員配置・事務分担を求めよう
書記官担当者会議・上京団交渉

 12月4日〜5日、地連書記官担当者会議に引き続き、最高裁人事局総務課長との上京団交渉を実施しました。

増員効果は現れているか

書記官の職務に関わる要求等を主張

 会議の中では、家裁について、この間の増員により一定の効果はあるものの、後見係の繁忙に加えて、紛争解決機能として期待される調停事件数が高止まりになっている状況のもと、この間の人的手当てにもかかわらず、家事部門全体で増員数に見合うだけの、あるいは現場が期待しているほどの抜本的な改善には至っていないことが明らかになりました。
 その大きな要因として、当局の異動政策により、家裁を経験した書記官が同時に異動し、経験がない書記官が配置されることが毎年繰り返されている例や、増員になっても育休予定者等が配置されて、実数が増えない例などが指摘されました。
 また民事では、交通事件の増加や、この間の人員シフトの受け皿になったことで一人当たりの事件数や複数係を兼務する配置が増えたことで、負担が大きくなっているとの声が挙げられました。
 刑事では、引き続き身柄事件(保釈・準抗告など)が大きく増加しているほか、公判事件が増加傾向に転じたにもかかわらず人的手当がされていないため、令状部門をはじめ、繁忙になっているとの報告がありました。

書記官事務をめぐる様々な課題の前進を

 その他、秘匿情報やマイナンバーの取扱いにより慎重な対応が求められていること、「失敗を許さない職場の雰囲気」が影響して精神的な負担が増しているなど、事件数には現れない負担がより顕在化していることも確認されました。
 また、刑事訴訟法をはじめ改正・新設される手続への対応、家事版MINTASをはじめとした各種事件処理システムの操作性の改善と機能の充実、郵便切手の両替手続や郵便切手を国庫負担する場合の手続の簡素化など、書記官事務をめぐる様々な課題が出されました。職場環境の抜本的な改善に向けた検討と全司法からの前向きな提案が求められます。
 5日午後からの総務課長交渉では、当該分野の経験がある職員を多く配置するなど、増員効果を最大限発揮するための配置を行うこと、当事者の納得が得られるよう成年後見支援信託に代わる制度を検討すること、WEBを利用した執務資料を質量ともに充実させること、時間外令状処理の負担軽減に向けて対策を講じることなどを追及しました。

 
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母性保護の諸権利を支障なく取得できる環境づくりを
第1回地連女性担当者会議
 
女性の要求と運動について意見交換

 11月13日、第1回地連女性担当者会議を開催しました。

「女性の活躍」?

  午前中は、国公労連女性協の橋本恵美子議長から、「『女性の活躍』っていうけれど」と題し、政府の女性活躍とワークライフバランス推進のとりくみの問題点や各省庁におけるとりくみ、来年1月に施行となる国家公務員の「両立支援制度」の内容やポイント等に
ついて講義を受けました。あわせて、各級機関や職場でも学習と理解を深めるとともに、さらなる制度改善をめざし、国公労連等に結集してとりくんでいくことを確認しました。

「母性保護」は守られているか?

 午後からは、女性をとりまく諸課題について議論しました。
 出産状況調査の結果として、妊娠中の通勤緩和や通院休暇、休息は概ね取得できているものの、「業務が繁忙過ぎるため、気が引けてしまう」
「他の人の負担が気がかり」等の理由で「申し出を自粛した」等の意見も見られました。また、生理休暇や産休前の年次休暇取得時に、無用なことを聞かれたり、マタハラまがいの言動を受けたなど、管理職の不適切な対応に不満をの声もあがりました。
 職場で起こる様々な問題の解決を図りながら、管理職の理解や対応を含め、母性保護の諸権利を支障なく利用できる職場環境をめざすことを確認しました。

女性がん検診の充実を

 乳がん検診について「マンモとエコーを必ずセットで実施してもらいたい」等の強い要望が出されました。各庁予算の範囲内で、厚労省指針が定める検査対象者以外の職員にも拡大して実施できる現在の女性がん検診の枠組みについて、最高裁は予算上の厳しさを理由に「早晩廃止せざるを得ない」との姿勢を示していますが、女性がん検診の充実・改善の要求が高まる中、枠組みの維持とさらなる改善に向けて職場から声を挙げていくことを意思統一しました。

全支部で「寄せ書き行動」を実施しよう

 女性運動の活性化に向けて、女性同士で集まり話し合う場を作りながら、一人ひとりのつながりを強めていくことが大切であることを確認しました。そのためのきっかけ作りとして、来年2月の女性上京団交渉に向け、昨年に引き続きすべての支部で「寄せ書き行動」にとりくむことを意思統一し、同交渉に職場の要求を持ち寄ることを確認しました。

 
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1月から、「両立支援制度」が拡充されます

 

 2017年1月から、国家公務員の両立支援制度の拡充が図られ、介護休暇にかかる制度の改善と介護時間の新設、マタハラ等の防止措置が講じられることになりました。

介護休暇の分割取得が可能に

 これまで、介護休暇は、「要介護の状況ごとに承認の日から連続する6か月間」とされていたため、介護要件が変わらない限り再度の取得ができませんでした。しかし、今回の改正では、通算期間の6か月からの拡大とはなりませんでしたが、指定期間の6か月分を3回まで分割取得することが可能になったほか、対象となる家族要件も同居していない祖父母等が加わるなど要件緩和も行われました(イメージ図参照)。

1日2時間の介護時間などが新設

 また、介護休暇とは別に介護時間が新設され、連続する3年の期間内において、1日につき2時間(介護時間と育児時間を同日に取得する場合は、両者を合わせて2時間の範囲内)を超えない範囲内で取得可能となりました。取得のイメージは、育児時間等と同様に始業及び終業に連続する2時間の範囲内で30分単位での取得が可能となります。さらに、介護のための超過勤務の免除が新設され、要介護者の介護をする職員が請求した場合、公務の運営に支障がある場合を除き超過勤務をさせないことができるようになり、請求は1年又は月単位となっています。
 介護制度の拡充や要件緩和については、これまで私たちが要求してきたものとして一定の成果と言えますが、介護は子育てのように年限を過ぎたらなくなるものではないことから、介護を理由として退職せざるを得ない人が出ないよう引き続き制度の拡充を求めていくことが重要です。

ハラスメント防止対策強化も

 また、各種ハラスメントの防止の観点に「妊娠をしたこと等」の具体化を明示し、職場内において上司や同僚から行われるハラスメントについても規制をかけることになりました。具体的には、(1)不利益取扱いの示唆、(2)業務上の必要性に基づかない制度の利用阻害、(3)繰り返し嫌がらせをすることが典型例とされています。職場内でのコミュニケーションを高め、ハラスメントが行われない職場環境整備が重要です。

 
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裁判所が果たすべき役割、超勤縮減と「サービス残業」、職員育成と職場のあり方などを話題に
全司法本部四役 最高裁長官会見を実施
 

2016年度最高裁判所長官会見における発言要旨

 全司法本部四役は、11月22日に就任あいさつをかねて寺田逸郎最高裁判所長官と会見しました。最高裁からは、今崎事務総長、堀田人事局長、春名人事局総務課長が同席しました。

委員長 本日の会見にあたって、全司法労働組合として持っております問題意識のいく
つかの項目について意見を述べさせていただき、長官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
長官 承りました。当局と職員団体という立場の相違はありますが、今後ともこれまで同様、相互の信頼関係に基づき、いろいろな問題について、率直に意見交換をしながら、より良い方向で解決していってもらいたいと思います。

裁判所の人的態勢の整備について

「今後とも人的・物的態勢を整備していく必要がある」

委員長 2015年の事件数を見ると、引き続き増加傾向にある家事事件に加えて、民事訴訟事件、刑事訴訟事件についても、新受事件数が減少から増加に転じていることに注目しています。
 この間、全国的に家庭裁判所の人的手当てがはかられてきていますが、今年4月には成年後見制度利用促進法が成立し、今後も引き続き、裁判所の役割が求められると考えています。家裁の問題では、少年の支援・更生や再犯防止の観点から、少年法の適用年齢に関する議論についても関心を持っているところです。
 刑事事件については、裁判員制度の安定的な運用とともに、被害者保護等の従来の刑事事件の枠組みにはなかった各種のとりくみについて、きめ細かな対応が求められていることなどが職場から報告されています。
 民事事件等での事件の複雑・困難化に対する対応も重要です。各種の紛争解決のために、引き続き適正・迅速な事件処理が求められているとともに、社会的な論点を含んだ多様な事件について裁判所が求められる役割が、ますます大きくなってきていることが感じられます。とりわけ、社会情勢が大きく動いているもとで、憲法にもとづいて、裁判所がその役割を果たすことが国民から求められていると感じています。
 また、人的態勢整備とあわせて、防災対策をはじめとした安全な庁舎設備、ITシステムの整備といった物的な面での対応も必要だと感じています。
 それぞれの職場状況をきめ細かく見ていただき、次年度に向けて、引き続き、各職場の人的・物的充実をお願いしたいと思います。

長官  東日本大震災からの復興途上にある中で、この数年、度重なる自然災害により、社会的な不安が消えない状況となっています。他方、我が国の社会や経済の国際化、少子高齢化、組織や家族の多様化といった情勢の構造的な変化に伴い、裁判所に期待される役割にも変化が見られます。このような社会経済情勢の中、個別の事案、事件に妥当な解決をもたらすことを使命とする司法が、変化に即応しつつ、その役割を十分に果たしていくことは、安定した社会の基盤を確保するために極めて重要です。
 各裁判部門の実情をみると、民事の分野では、情報化の進展、国民の権利意識の高まり、価値観の多様化に伴い、裁判の質の向上が求められるようになっており、事案の実相を的確に捉えた質の高い審理判断を適切な期間内に行うよう努めていく必要がありますし、刑事の分野では、裁判員制度の運営について、公判前整理手続の長期化など、引き続き検討すべき課題に取り組んでいくためには、具体的な事案に基づいて、問題が生じる原因、あい路とそれへの対応策を実証的に検討し、その結果を実践して更に検討を加えるという地道な取組を組織的に続けていく必要があります。
 家事の分野では、家事事件手続法の趣旨に沿った手続運営が定着しつつあるところ、法的な紛争解決機能の強化に向けた取組を進めるとともに、国民にとって一層利用しやすい手続となるよう工夫を重ねていくことが求められています。また、成年後見関係事件が増加の一途をたどる中、今後も更に成年後見制度の利用促進が図られていくことが予想され、引き続き、社会のニーズに的確に応えられ
るような安定的な事務の在り方や処理態勢を検討していかなければなりません。
 私たちは、これまでも、司法の果たすべき役割がますます重要になるという認識に立ちつつ、司法の機能充実・強化に努めてきましたが、こうした状況にあって、裁判所がその使命を果たしていくために、今後とも人的・物的態勢を整備していく必要があります。一方で、極めて厳しい財政状況の中、裁判所の態勢整備に国民の理解を得ていくためには、より一層の内部努力を重ねていくことが不可欠です。職員の皆さんには、引き続き御協力をお願いしたいと思います。

超勤縮減、「働き方の見直し」、事務の簡素化・効率化について

「職員が持てる能力を最大限発揮できるよう検討」

委員長 今年の3月、最高裁は「女性活躍推進法」に基づく「裁判所特定事業主行動計画」を策定されました。
 労働組合の立場からは「働き方改革」という表現自体はやや違和感を感じるものの、「働き方の見直し」などを通じて、男女ともに働きやすい職場を作り、職業生活と家庭生活や社会生活との両立がはかられるようにすることは、私たちも実現を求めているところであり、そのことを通じて、女性の登用拡大がすすみ、次世代育成支援がはかられることは重要だと考えています。
 そのためには、事務の簡素化・効率化を思い切ってすすめ、超勤縮減を図ることが必要不可欠です。同時に、「持ち帰り」や「サービス残業」をなくすことは、超勤縮減を「絵に描いた餅」にしないためにも重要であり、一体的にすすめていく必要があると考えています。これは、職員の健康管理のうえからも重要な課題だと認識しています。
 こうしたとりくみとあわせて、裁判所の職場実態に見合ったフレックスタイム制の活用、ストレスチェック制度の有効な活用、8月の人事院勧告で出された両立支援制度が利用しやすい職場づくりなど、新しい仕組みが適切に運用されていくことが大切だと考えています。
 これらのとりくみの実施にあたっては、最高裁にリーダーシップを発揮していただく必要があると考えており、最高裁の積極的なとりくみを期待しています。

長官 職員の皆さんに持てる力を十分に発揮してもらうには、心身の健康の保持、増進を図るとともに、家庭生活と両立していけるような環境整備を進めることが重要です。このような観点から、これまでも種々の施策を講じてきていますが、これまで以上に組織活力を維持・向上させ、全ての職員が、持てる能力を最大限発揮することができるよう、その実効性を高めるために工夫すべき点がないか等につき検討させていきたいと考えています。

職員の育成について

「職員一人一人の士気を高め、その能力を伸長させる」

委員長 昨年10月に「これからの人材育成について」説明があり、ОJTの仕組みの見直しが行われてから1年が経過します。育成に関する基本的な考え方が組織的に共有され、計画的なとりくみが組織的に実践されることが重要ですが、まだまだ職場では理解が深まっておらず、目的意識を持った実践が行われていないと感じる部分もあります。
 また、若い世代の育成の重要性は言うまでもありませんが、ベテランの職員の活用や育成についても重要な課題だと考えています。若い時期には多様な経験をすることが重要である一方、一定の年齢や経験を重ねた職員にとっては、それまでのキャリアの中で身に付けた経験や能力を活用できるようにし、組織の中で役割を果たすことが本人のモチベーションに繋がり、組織の活性化にも繋がるものだと考えます。
 とりわけ、数年後からは1980年代後半からの大量退職・採用期に採用された職員の定年退職が始まることが予想されるもとで、それらの職員が蓄積してきた知識や経験を引き継ぐことも重要な課題になってくるものと認識しています。
 なお、この間、全司法の会議等で「失敗を許さないという雰囲気が職場の中で強くなっている」と報告されることが増えており、懸念を持っています。国民の権利義務に関わる重要な任務を負う裁判所の事務処理として、正確な事務に心がけることは当然のことですが、一方で、そうした「失敗を許さない雰囲気」が圧力となり、従来踏襲の事務処理につながって組織の活力を失わせたり、かえってミスを報告せずに大きな過誤につながったり、メンタルヘルスの悪化につながるとすれば、むしろ、大きな問題であると考えています。
 現実の仕事は上手くいくことばかりではなく、職員は失敗を繰り返しながらも、そのことを糧にして経験や能力を培っていきます。職員が萎縮することなく、職場の中で協力し合い、自由闊達に議論しながら、のびのびと仕事をすすめる職場を作ることが重要だと考えており、そうした観点から育成者に対する指導や研修を充実していただきたいと考えます。
長官 社会、経済状況の変化等を反映して、裁判所に求められるものがますます幅広く、深くなってきている中、これまでにも増して、一件一件の事件の適正・迅速な解決に向けて誠実に努めることにより、国民、社会からの信頼をより確かなものとしていくためには、若手から中堅層以上に至るまで職員一人一人の士気を高め、その能力を伸長させる人材育成が重要であることから、日常の執務を通じて成長を図る仕組みの一層の充実に努めたいと考えています。

全司法との誠実対応について

「信頼関係に基づき、忌憚なく話し合う中で問題解決を図る」

委員長 1992年3月18日の最高裁事務総長見解以降、全司法と裁判所当局とは相互の信頼関係に基づいて、建設的な労使関係が築かれていると認識しています。
 全司法はこれまでにも職員の声を集め、現場の職員の視点から、当局に対し様々な課題で意見を述べてきていますが、相互の信頼関係にもとづき、そうした率直な意見交換を行うことを通して、様々な施策が立案、検証され、今の裁判所の職場のあり様ができあがってきたものと考えています。そうした役割をふまえ、私たちは今後とも、職員の地位の向上と「国民のための裁判所」実現を目指す立場から努力を重ね、意見を述べていきたいと考えています。
 引き続き、全国の各庁で、全司法の意見に耳を傾けていただき、率直で建設的な議論を積み重ねていけるよう、全司法との誠実な対応と健全な労使関係を築いていくことを確認したいと思います。

長官 昨年も述べましたように、平成4年3月18日の事務総長見解の内容は当然のことと考えています。職員の勤務条件やこれに関連する事項については、これまで築き上げてきた相互の信頼関係に基づき、率直に問題意識をぶつけ合い、忌憚なく話し合う中で、問題の解決を図っていかなければならないと考えています。
 担当部局には、今後もそのような立場で努力させたいと思いますし、職員団体もその方向で努力していただきたいと思います。

 
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