全司法本部は12月6日、最高裁堀田人事局長と秋季年末闘争期の交渉を実施しました。最高裁は増員や昇格で「最大限の努力」姿勢を示すとともに、各課題で全司法の要求を受け止め、前進または足がかりとなる回答を行いました。特に、電子速記タイプライターの官支給要求に対して、従来の「官支給するつもりはない」との姿勢を大きく転換させ、「整備することが可能かどうか検討してみたい」と回答し、速記官の長年の切実な要求の実現に向けて、大きな一歩を踏み出す前進面を築くことができました。
なお、交渉の冒頭には、すべての地連・支部から集約した「電子速記タイプライター及び消耗品等の官支給を要求する要請書」を提出しました。
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秋季年末闘争をしめくくる人事局長交渉 |
人員
人員確保に「全力を挙げる」
2017年度予算における増員に向けては、「民事訴訟事件の内容が社会経済情勢の変化を背景により一層複雑困難化してきていることや、成年後見関係事件をはじめとする家事事件が引き続き増加傾向にある」との認識を示し、財政当局の「理解を得るべく全力を挙げている」との姿勢を示すとともに、人員の確保に向けて「最大限の努力をしていきたい」との姿勢に「変わりはない」と回答しました。
一方で、国家公務員の定員を巡る情勢や事件数の動向に触れ、「財政当局との折衝はこれまで以上に極めて厳しいものとなっている」との認識を示していることから、今後の動向を注視していくことが必要です。
国民のための裁判所
裁判所の実態ふまえた成年後見の検討がされるよう努力
成年後見制度利用促進法が成立し、同法に基づく基本計画策定に関する委員会が政府内に設置されていますが、最高裁として「各庁の職制を通じて申出のあった意見や要望を踏まえ対応したい」としたうえ、11月24日の参議院法務委員会での「今後も委員会におきまして各家庭裁判所の実情を踏まえた検討が行われるよう、引き続き努力してまいりたい」とした答弁と「同趣旨である」と回答しました。
労働時間短縮・超勤縮減
超過勤務の「削減」、サービス残業が生じないよう指導
「長時間労働が社会的に大きな問題となっている中、裁判所においても超過勤務の削減はますます重要な課題となっているものと認識しており、最高裁としては、組織全体として超勤削減に向けたと
りくみをこれまで以上にすすめていきたい」と、従来使用していた「縮減」を「削減」と言い換えて、これまで以上に強い姿勢を示しました。そのうえで、「超過勤務の削減をすすめるに当たってサービス残業や持ち帰り残業が生じることのないよう、より一層下級裁を指導していきたい」と回答しました。
健康管理
人規改正ふまえハラスメント窓口を整備
女性がん検診に関わって、本年2月に厚労省指針が改正されたことを受け、裁判所においても、本年度中に現行通達の見直しを行うことが明らかにされています。この動きを踏まえ、全司法からは、通達改正に当たっては、職場の強い充実・改善の要望を受け止め、改善の方向で検討することを求めました。
ストレスチェックの受検率の向上に向けては、「できる限り多くの職員に受検してもらうことが望ましい」としながらも、「受検そのものを義務づけるものではないことなどから、どの程度の割合が適切な受検率なのかについては一概に言えない」との回答にとどまりました。また、集団分析結果について「職員及び職員団体に開示することは予定されていない」との姿勢を崩しませんでした。
各種ハラスメントの防止に向けては、人規10―15「妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等」が公布され来年1月から実施されることを受けて、「裁判所においては、各庁に配置されているセクシュアル・ハラスメント相談員が、新たにこれらのハラスメントに関する相談員も兼ねて一元的に相談に応じることを考えている」旨明らかにしました。
IT情報システム化
司法研修所データベース改修、一般職も閲覧可能に
J・NETポータルの充実に関わって、「現在、裁判官を対象としてJ・NETポータル上に開設されている司法研修所のデータベースを、事件情報データベースと同様に見やすく使いやすいものとするよう改修した上、一般職員も閲覧できるようにすることを検討している」ことを明らかにしました。一方、SEABISの旅費等システムの使い勝手の悪さを原因として職場から強い要望が出されている駅すぱあとの追加整備については、「旅費支給事務については、旅費計算機能が搭載された旅費等システムに合わせて事務を標準化していくべきものと考えている」とした上、「追加整備は困難である」との回答にとどまりました。
職員制度
調査官育成新施策について「必要な検討を行う」
電子速記タイプライターの官支給の要求に対し、「これまで官側で整備してきた速記タイプライターについては、近い将来において、安定的な維持管理に支障を来す可能性があることから、後継機種として、電子速記タイプライターを整備することが可能かどうか検討してみたい」と、従来の「官支給するつもりはない」との姿勢を大きく転換させる前進回答を引き出すことができました。長年の運動の積み重ねが築いた大きな到達点であり、早期に官支給が実現するよう、今後も追及を強めることが必要です。
家裁調査官の育成新施策に関わっては、「特に任官後の小規模庁配置が本年度末でちょうど3年が経過することから、その育成等の状況を適切に把握した上で、必要な検討を行っていきたい」と、見直しを示唆する回答を行いました。現行の運用において、小規模庁配置後の指導・育成態勢の確保が課題となっていたことから、引き続き改善の方向で追及を強めていく必要があります。
採用・異動
受験者確保のとりくみを順次充実
裁判所職員採用試験の受験者の確保が課題となる中で、これまでのとりくみに加え「今後、フェイスブックによる採用情報や広報動画の発信、パンフレットの内容充実等、受験者確保に向けたとりくみを順次充実させていきたい」と回答しました。また、今年度実施した家裁調査官のインターンシップについて、「来年度以降もさらに充実した形での実施を予定している」ことを明らかにしました。
昇格
定数確保に最大限努力
「級別定数改定をめぐる情勢はこれまでと比較にならないほど厳しい状況」との認識を示しつつ、「考え得るあらゆる理由付けを持ち出して、粘り強く、全力で、定数の維持、確保に向けた折衝を行っている」「職員の処遇の維持・改善に向けて少しでも定数を獲得するため、更に引き続き最大限の努力を続けていきたい」との姿勢を示しました。
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