8月8日、人事院は、国家公務員の給与に関する勧告及び職員の両立支援制度にかかる勤務時間の改定に関する勧告、意見の申出ならびにそれらに関連する報告を行いました。
賃金については、月例給708円(0・17%)の官民較差を埋める改定、一時金の0・1月増の改善勧告となり、3年連続でプラス勧告になったとはいえ、物価上昇にも追いつかず、生活改善にはほど遠い額にとどまりました。また、職場の要求が強い通勤手当や住居手当の改善には手を付けず、地域間格差の一層の拡大となる本府省業務調整手当の段階的引上げに踏み切ったことは、大変不満と言わざるをえません。
また、今勧告の最大の争点となっていた扶養手当「見直し」については、配偶者にかかる手当を現行の1万3千円から6500円とし、子にかかる手当を現行の6500円から1万円とする勧告を行いました。直前まで労働組合に対し具体的な説明がなく、少なくとも6万人に影響する一方的な不利益変更であり、決して許されるものではありません。
今後は政府との交渉へと舞台が移りますが、生活を一刻も早く改善する立場から改善部分の早期実施を求めるとともに、配偶者にかかる扶養手当改悪の中止・撤回等を求め、国公労連に結集してとりくみを強めることが重要です。
3年連続の賃上げも、実質改善にならず
月例給・一時金の引上げ
人事院は、月例給を引き上げる(官民較差は平均708円、0・17%)とともに、一時金を0・10月分改善し、年間4・30月に引き上げる勧告を行いました。3年連続の改善ではありますが、生活改善にはほど遠い僅かな改善額にとどまり、この間の物価上昇等による生活への影響を考えると、5年連続で実質賃金の低下となる超低額勧告です。なお、俸給表改定に当たっては、初任給1500円引き上げ、若年層も同程度の改定を行うなど、昨年同様に若年層に重点を置いたものとなりました。
また、すべての号俸で改善が図られましたが、高齢層への配分は400円という微々たる引上げ額にとどまっています。「給与制度の総合的見直し」により、現在も多くの中高年層が現給保障の対象となっていますが、僅か400円の引上げではその埋め戻しになるだけであり、実質的賃上げにはつながりません。現給保障の措置は2018年3月末に終了するため、現給保障額を上回る大幅賃上げが図られなければ、賃下げとなる職員が出ることになります。賃下げ回避のため、引き続き大幅賃上げ実現をめざしてとりくむことが求められます。
配偶者6500円に、段階的引き下げ
扶扶養手当「見直し」
扶養手当の「見直し」については、人事院は勧告の僅か1週間前に国公労連に具体案
を示すのみで、十分な協議や明確かつ納得できる理由も示さないまま、一方的に改悪を強行しました。配偶者にかかる手当を他の扶養親族への手当額に合わせ、現行の1万3千円から6500円に減額したうえ、その原資を用いて子にかかる手当を現行の6500円から1万円にする内容となっています。3年間の経過措置が設けられていますが、少なくとも6万人という扶養手当受給者の半数を超える職員が労働条件の引下げとなります。
人事院は、「見直し」の理由を「民間では配偶者に家族手当を支給する事業所の割合が減少傾向にある」としていますが、昨年は家族手当制度のある民間事業所のうち約9割が配偶者に家族手当を支給していることから「見直し」を見送っています。また、昨年と今年の民調結果を比較してもほぼ変化はなく、こうした経過から、今回の一方的な「見直し」は到底認められるものではありません。配偶者にかかる扶養手当の「見直し」を求める政府の要請に応じた勧告であることは明白であり、人事院は労働基本権制約の「代償措置」たる第三者機関の役割を放棄したものと言わざるをえません。
総合的見直し継続、地域間格差を拡大
本本府省業務調整手当の引上げ
本府省業務調整手当の段階的引上げについても勧告しました。同手当の引上げは、政府が総人件費抑制の手段と位置付けている「給与制度の総合的見直し」に盛り込まれていたもので、今勧告においても人事院が政府の要請に忠実に応えたものと言わざるをえません。本省を優遇し、地方との格差を一層拡大したことは許されるものではなく、引き続き、「給与制度の総合的見直し」を含め、総人件費削減方針の中止・撤回を求めていく必要があります。
介護休暇などを一定改善
両立支援制度の拡充
人事院は今勧告にあわせ、職員の両立支援制度の拡充に
向けた意見の申出と勧告を行いました。その概要は、(1)介護休暇の3回までの分割取得を可能にする、(2)介護時間(無給)の新設、(3)育児休業等に
かかる子の範囲の拡大などとなっています。その他、介護休暇等の同居要件の撤廃や介護を行う職員の超勤免除、マタハラ等の防止策整備等が人規改正により措置されます。一定の改善が図られますが、さらに利用しやすい制度への拡充と職場環境の整備を図らせることが必要です。
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