今年も8月上旬には、人事院勧告が出される予定です。現在、勧告に向けた交渉・行動が展開されていますが、今年の勧告での主な課題を整理してみました。
生活改善につながる賃金引き上げを
安倍内閣も「消費拡大を通じた景気回復」や「同一労働同一賃金」など、賃金格差の是正にまで言及するなど、国をあげてデフレ経済からの脱却を目指しているにもかかわらず、春闘期の人事院回答は、「情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う」という、私たちの要求に正面から向き合わない従前どおりの建前回答にとどまっています。
今年の春闘の民間賃金改定の回答状況を見ると、非正規雇用をはじめ中小企業では幅広く賃金引き上げが行われているものの、全体では、昨年を若干下回る状況であり、厳しい状況です。実質賃金のマイナス傾向に歯止めがかからない状況からすれば、物価上昇を上回る大幅な賃金引き上げなしには、生活改善につながりません。懸命に公務サービスを支えている職員の努力に報い、その職務に相応しい賃金改善を行うことこそ、人事院の責務です。
一時金については、各種集計で民間では前年を上回る結果が報道されています。職場では賃上げに対する期待感が高まっており、一時金についても少なくとも民間の支給実態を反映した支給月数の改善と勤勉手当の割合を縮小することを求めます。
「給与制度の総合的見直し」を中止せよ
ところで、昨年の賃金改定では、プラス勧告にもかかわらず、多くの職員が「給与制度の総合的見直し」による現給保障を超えず、月例賃金が据え置かれる結果となりました。これは、「総合的見直し」がもたらした矛盾であることから、改めて地域間・世代間の賃金格差の是正・適正化をはかるとともに、誰もが生活改善を実感できるだけの月例賃金の大幅な引き上げを求めます。
加えて、昨年の勧告では、官民較差の約8割が、地域手当に配分されました。このままでは、現給保障の経過措置終了時点(2018年4月1日)で、賃金引き下げとなる職員が相当数出ることになりかねません。
人事院は、総合的見直しを配分の問題と説明していますが、そうだとすれば、1人も賃金引き下げとなる職員が出ないように本俸に厚く配分するとともに、経過措置の延長を含めた対応をはかるべきです。
定年延長、再任用職員の賃金改善を
政府が雇用と年金の接続について、当面は再任用で対応するとしている以上、政府の責任において、再任用職員が安心して生活できる賃金水準を確保すべきです。少なくとも、人事院においては、自ら行った「意見の申出」に沿った賃金水準等の改善を行うべきであり、再任用職員の賃金引き上げや生活関連手当の支給を、早急に実現することを強く求めます。
また、人事院による定年延長の「意見の申出」を政府は放置したままであり、改めて政府の検討を促す措置を講じるべきです。
民間準拠からも認められない扶養手当「見直し」
人事院は今勧告に向け、配偶者にかかる扶養手当の見直しを検討しています。
これは、安倍政権の「経済財政運営と改革の基本方針」に基づく、配偶者にかかる扶養手当の廃止・引き下げに向けた、政府からの検討要請に応えたものといわざるを得ず、政府・使用者の意向に沿った一方的な労働条件引き下げの検討に他なりません。
人事院が昨年行った民間給与実態調査の結果でも、民間企業の76・5%が家族手当を支給し、そのうち90・3%が配偶者に対する手当を支給しており、民間でも支給率の高い手当です。
人事院の見直し表明は、国家公務員の勤務や生活の実態を無視したうえ、人事院が情勢適応の原則の柱としてきた民間準拠さえも曖昧にするものであり、断じて容認できません。
人事院に対して、国家公務員労働者の利益擁護の責務を負う、公正中立な第三者機関として、誠実かつ責任ある対応を求めます。 |