8月6日、人事院は、国会及び内閣に対し、国家公務員の給与及び勤務時間について勧告しました。
賃金については、昨年を上回る月例給の1469円(0・36%)改定、一時金の0・1月増などの改善がありました。しかし、対前年比2・9%という物価上昇や消費税増税による影響などを考えると、生活改善にはほど遠いものといわざるを得ません。
また、私たちが様々な問題点を指摘し、一方的な導入を行わないよう求めていた「フレックスタイム」制の導入を勧告しました。そもそも「チームとして仕事をする一般の公務の職場に馴染むのか」という問題に加え、「実労働時間を変えずに時間外手当を削減するという、使用者のみに都合のよい制度」となる危険性が高いものです。
公務員人事管理に関する報告では、定年延長の意見の申出を踏まえた政府の検討に言及するも、改めて申出等を行う姿勢を示さなかったことは大変不満です。
今後は政府との交渉へと舞台が移りますが、給与改善勧告の早期実施を求めるとともに、「フレックスタイム」制導入については、引き続き、国公労連に結集して導入反対のとりくみを強めていきます。
中高年は「埋め戻し」のため、手取り増えず
人事院は、職種別民間給与実態調査(民調)の結果、本年4月分の月例給について、賃金の引上げを図る動きを反映して民間給与が国家公務員給与を平均1469円(0・36%)上回る結果となったことから、俸給表の水準を引き上げる改善勧告を行うとともに、給与制度の総合的見直しにおいて平成28年度以降に予定していた地域手当の支給割合の引上げの一部を前倒しで実施することとしました。
また、特別給(ボーナス)についても、民間事業所における好調な支給状況を反映して、民間が公務を上回ったことから、0・1カ月分の改善を勧告し、年間4・20月分に引き上げることとしました。
今年の勧告は、昨年に引き続く改善勧告であり、初任給は、民間との間に差があることを踏まえ1級の初任給を2500円引き上げ、若年層についても同程度の改定としました。その他は、「給与制度の総合的見直し」等により高齢層における官民の給与差が縮小することを踏まえ、それぞれ1100円の引上げを基本に改定(平均改定率0・4%)しました。
若年層に重点を置きつつ、すべての号俸が引き上げられる俸給表の全面改定によって、再任用職員と非常勤職員の賃金水準及び退職金にも波及することになりますが、これは2015年春闘での官民共同のたたかいなど、私たち労働組合の運動が反映されたものです。
しかし、一方で、対前年比2・9%という物価上昇や消費税増税による影響などを考えると、私たちが要求した生活改善できる賃金水準にはほど遠い不十分な勧告であると言わざるをえません。
とりわけ、昨年の人事院勧告にもとづく「給与制度の総合的見直し」により、平均2%、高齢層では最大4%もの賃金削減が強行されている現状においては、俸給が改定されても、まずは現給保障部分の「埋め戻し」に使われてしまい、多くの職員の手取りは増えないことになります。その原資で、地域手当の一部を4月に遡って改善するということですから、地方で勤務する職員にとっては、この部分も納得できないものです。
反対押し切り、「フレックスタイム」勧告を強行
人事院は、わたしたちの反対を押し切って、すべての職員を対象とした「フレックスタイム」制を導入する勧告を強行しました。
これは「フレックス」の名を冠してはいるものの、労働者が自由に出退勤時間を指定できる民間のそれとは似て非なるもので、単に労働時間を柔軟化させたに過ぎません。そもそも「チームとして仕事をする一般の公務の職場に果たして馴染むのか」という問題に加え、「実労働時間を変えずに時間外手当を削減するという、使用者のみに都合のよい制度」となる危険性が高く、超過勤務やサービス残業の増加にもつながりかねません。こうした労働時間の柔軟化には反対の立場で、引き続き国公労連に結集してとりくみを強めます。
フルタイム再任用に向けた「工夫」に言及
公務員人事管理に関する報告では、定年延長の意見の申出を踏まえた政府の検討に言及したものの、改めて申出等を行うことはありませんでした。
現行の再任用制度について、裁判所では全司法との交渉の到達点として希望者全員のフルタイムの再任用を実現していますが、国家公務員全体では、必ずしも実現しておらず、課題になっています。
この点について、各府省に計画的に「能力及び経験を有効に活用できる配置」や「受入体制の整備」などを求めるとともに、定員管理の面があるとしても「一層の工夫が求められる」と報告の中で言及したことは、私たちのたたかいの成果です。
引き続き、定年延長を中心とする雇用と年金の確実な接続の早期実現と、それを担保できる柔軟な定員管理の実現にむけて、追及を強化する必要があります。
今後は、秋の臨時国会における給与法改定の審議に向け、改善勧告の早期実施を求めるとともに、全職員を対象とした労働時間の柔軟化を一方的に行わないよう求めていきます。また、「給与制度の総合的見直し」の中止・撤回を求めてとりくみます。
2015年人事院勧告のポイント |
1.官民較差にもとづく給与改定
(1) |
民間給与との較差(1,469円、0.36%)を埋めるため、俸給表の水準を引き上げるとともに、給与制度の総合的見直しにおける地域手当の支給割合を引上げ
行(一)1級の初任給を2,500円引上げ。若年層についても同程度の改定。その他は、それぞれ1,100円の引上げを基本に改定。
その他の俸給表も行(一)との均衡を基本に改定。 |
(2) |
ボーナスを引上げ(0.1月分) 年間4.10月分→年間4.20月分
勤務実績に応じた給与を推進するため引上げ分を勤勉手当に配分

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(3) |
地域手当
給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、支給割合について給与制度の総合的見直しによる見直し後の支給割合と見直し前の支給割合との差に応じ、0.5〜2%引上げ
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(4) |
実施時期等
俸給表、初任給調整手当及び地域手当は2015年4月1日、ボーナスは法律の公布日 |
2.給与制度の総合的「見直し」
(2016年度において実施する事項)
(1) |
地域手当の支給割合の改定
2016年4月1日から給与法に定める支給割合に引上げ |
(2) |
単身赴任手当の支給額の改定
基礎額を2016年4月1日から4,000円引き上げ、30,000円に改定
加算額の限度について、基礎額の引上げを考慮して、2016年4月1日から12,000円引き上げ、70,000円に改定
広域異動手当は、給与法の改正により、2016年4月1日以後に異動した職員に係る支給割合が、異動前後の官署間の距離が300キロメートル以上の場合は10%に、60キロメートル以上300キロメートル未満の場合は5%に引上げ |
3.勤務時間に関する勧告
適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充(2016年4月実施)
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フレックスタイム制の適用を希望する職員から申告が行われた場合、公務の運営に支障がない範囲内において、始業及び終業の時刻について職員の申告を考慮して、勤務時間を割り振る |
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組織的な対応を行うために全員が勤務しなければならない時間帯(コアタイム)等を長く設定するなど、適切な公務運営の確保に配慮 |
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育児又は介護を行う職員に係るフレックスタイム制は、より柔軟な勤務形態となる仕組み |
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