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熱心に講演を聞く参加 |
5月10日〜11日、第21回全司法中央労働学校を熱海で開催しました。機関役員対象にリニューアルして2年目。全国から62名が参加し、3人の講師による情勢や運動に関する講演を受けてグループ討議などで理解を深め、充実した学習の機会となりました。
平和国家のイメージ失われる
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五十嵐仁さん |
五十嵐仁さん(元法政大学教授)の講演では、憲法をめぐる情勢について「戦後70年を迎え、核や戦争のない世界、不信や対立のないアジア、米軍や基地のない日本をどう実現するかなどが問われている中、安倍政権は、戦争法制と日米防衛協力の指針(ガイドライン)再々改定による実質改憲を行い、いつでも、どこでも、どのような戦争にでも関与できるようにしようとしている」と指摘し、「海外で戦争する国になった場合、平和国家としてのイメージが失われ、武力に頼らない平和構築の可能性を狭めるほか、自衛隊員の戦死リスクの増大や国費負担の増大など、様々な観点から不利益を生じることになる」と批判しました。
また、政治をめぐる情勢については「派遣法改悪による生涯ハケンや労基法改悪による残業代ゼロ制度の導入などがすすめられており、国民の不安が高まっている中、国民的共同の可能性が広がっている」と指摘し、「何が問題なのかをわかりやすく伝えるための学習が重要であり、他人事ではなく我が事であることを自覚してもらうよう世論に働きかけることが重要である」と述べました。
労働組合に対する期待として「雇用の安定や賃金の引き上げ、労働時間の短縮、社会福祉の充実など、労働組合固有の課題にとりくむことが求められており、とりわけ、全司法については、国民のための司法を実現するため、裁判所職員の大幅な増員をはかるとともに、裁判所の仕組みや自分たちのあり方について、職員の視点から発言し、提案してもらいたい」と呼びかけました。
代償機能の役割を果たしていない
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盛永雅則さん |
盛永雅則さん(国公労連顧問、元人事院職員)の講演では、人事院の役割について、「人事行政の公正の確保と職員の利益の保護が人事院本来の役割であり、労働基本権制約の代償機能は国公法が改正された際に後から付加された役割である」と述べ、「職員の利益の保護については、超勤手当不払い請求を救済するなどの役割を果たす一方で、民間給与実態調査における調査対象企業規模の見直しや給与制度の総合的見直しなど、政府方針に従順な姿勢から、労働基本権制約の代償機能としての役割は十分に果たしてきたとはいえない」と指摘しました。
講演の最後には、「裁判所職員は、裁判所職員臨時措置法によって、救済を求める先が最高裁になっている」ことを指摘し、「第三者機関による救済を求めることができない状況について問題意識を持ってもらいたい」と呼びかけました。
中矢副委員長の講演では、全司法の歴史について、節目節目の出来事がどういう時代背景のもとで起きたのか、また、それに対して全司法が何を考え、どう運動を作ってきたのかについて解説し、第71回定期大会で確認した「大量退職・採用の時期に多数派を勝ち取るために、全司法の組織の再生・継承と運動の発展にむけて、計画的なとりくみを始めること」をあらためて確認し、活動の中核を担えるよう参加者に対し学習を深めることを呼びかけました。
第21回中央労働学校参加者の感想
政治に無関心ではいられない
五十嵐氏の講演
○安倍政権による問題点を講演いただき、自分の考え方に幅を広げていただいた気がする。世の中が変わっていく中で、全司法を含む労働者の権利が守られていくためにはどうすればよいのかをこれからの活動に生かしていきたいと思う。(大阪・Mさん)
○「知ること」の重要性を再認識することができた。知らなければ問題としての認識もできないため、知ることは活動する上での大前提であるのだと改めて感じた。(宮城・Hさん)
○集団的自衛権行使に関する安倍首相の解説をはじめ、こじつけやごまかしがあることを理解した上でどのような運動が有用なのかを考える必要があると思った。(鹿児島・Yさん)
○「政治は無関心でいることができるけど、無関係ではいられない」という言葉が印象的だった。やはり関心を持つべきだろうと改めて思った。(愛知・Nさん)
盛永氏の講演
○人事院の本来の役割について、根拠となる国公法を押さえながらわかりやすく説明していただいた。裁判所と人事院の関係についても初めて知り、問題点を認識することができた。(鳥取・Hさん)
○人事院について一から知ることができたのは良かった。人事院の設立から大きな視点でみていくことも必要と思った。分限免職の話はとてもびっくりした。(札幌・Yさん)
○人事院の役割や人事院勧告の仕組み等について、わかりやすかったし、理解が深まった。裁判所臨時措置法と人事院の関係はあまり深く考えたことがなかったので、よいきっかけとなった。(石川・Kさん)
中央副委員長の講演
○現在の職場は概ね満足しているが、それが多くの先輩方が勝ち取ってきたものだとわかり、全司法の意義を再確認できた。(秋田・Wさん)
○自分たちの要求の確立のために、今の時代の情勢を理解することの大切さを学んだ。ただ、情勢と要求を結びつけるのは難しいと感じた。(長野・S藤さん)
○歴史を詳しく教えていただき、諸先輩方のすばらしい活動で今の全司法があると思った。これからも継承して自分たちの権利実現や国民の要求が得られる活動が必要と思った。(山形・Kさん) |