2014年秋季年末闘争の重点要求を紹介するこのシリーズ。第1回は「宿日直における裁判官泊まり込み態勢の拡大」です。全司法はこの秋季年末闘争の中で「各庁における裁判官の泊まり込み態勢の拡大等を含めたさらなる宿日直事務の負担軽減をめざします」との方針を確立し、裁判官の泊まり込み等により令状事務を処理することを求めています。
執務のあり方として、どうなのか?
現在、多くの庁で、夜間・深夜に令状請求があった場合、当直の職員が記録を持って裁判官宅にタクシーで赴き、そこで令状事務を処理する取扱いを行っています。
この取扱いでは、令状請求がある度に裁判官宅を往復することから、当直職員の大きな負担になっています。その間、睡眠時間が確保されないことはもとより、中には、令状発付までの間、冬季の深夜、寒い屋外で長時間待機したというケースも報告されています。
そもそも、捜査記録を庁外に持ち出すことによるリスクや、執務資料等が必ずしも十分に揃っているとは言えない自宅で令状を処理すること、裁判官宅との往復にかかる時間を考えると、「裁判所の執務のあり方として、本当に適切なのか」という声も出されています。
また、裁判官の中でも、家族がいる深夜の自宅を職員が訪れて事件処理をすることを敬遠し、自費で裁判所近くのホテルに宿泊して事務を処理している裁判官もいますが、こうしたあり方は、やはり本来の形とは言えないものです。
一方で、職員の宿直と同様、裁判官も庁舎に宿泊して令状事務を処理している庁(左表のとおり)や、裁判官が登庁して事務処理を行う態勢をとっている庁があります。当直職員の負担軽減のうえでも、人権に直接の影響がある令状事件処理のあり方から考えても、こうした態勢をとる庁が順次拡大していくことが、裁判所にとって望ましい姿だと考えられます。
高まる負担軽減求める声
全司法は宿日直の廃止・縮小を要求に掲げ、時間外令状処理の本庁への集約化による支部の宿日直廃止や年末年始の宿日直廃止庁の拡大など、一定の到達点を勝ち取ってきました。また、時間を区切っての電話の自動応答への切り替えやKEITASの過誤防止機能を充実させるための改修など、宿日直業務の負担を軽減するための方策もはかられてきています。
一方で、時間外に持ち込まれる令状等件数の増加等により、さらなる宿日直業務の負担軽減を求める声が高まり、今年の全国大会や各地連の大会等でも、多くの発言が出されました。裁判官の泊まり込みや登庁しての令状事件処理も、そうした要求の一つとして出されています。
各支部での追及を全国的な流れに
最高裁は「裁判官の泊まり込み令状処理態勢」について「各庁で工夫されている方策の一つ」と位置づけており、これを導入するかどうかは各庁の判断に委ねられるところが大きいと言えます。
「裁判官の泊まり込み態勢」を拡大し、さらなる宿日直業務の負担軽減を求めていくためには、各支部が交渉等で要求をぶつけ、各庁当局を動かしていくことが求められます。この秋、そうした運動の流れを作っていきましょう。
裁判官全員が宿泊する態勢をとっている庁(12庁)
東京高地家裁本庁
東京地家裁立川支部
横浜地裁本庁
横浜地家裁小田原支部
さいたま地家裁本庁
さいたま地家裁熊谷支部
千葉地家裁本庁
千葉地家裁松戸支部
大阪高地裁本庁
京都地裁本庁
神戸地裁本庁
名古屋高地家裁本庁
裁判官の希望により泊り込むこととしている庁(13庁)
水戸地家裁土浦支部
神戸地家裁姫路支部
奈良地家裁本庁
大津地家裁本庁
和歌山地家裁本庁
津地家裁本庁
岐阜地家裁本庁
金沢地家裁本庁・名古屋高裁金沢支部
広島高地家裁本庁
福岡地家裁飯塚支部
福岡地家裁久留米支部
福岡地家裁小倉支部
佐賀地家裁本庁
※裁判官が登庁する庁は表に含まれていない |
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