アメリカが原爆を投下してから68年目を迎えた今年も、原水爆禁止世界大会が8月5日から9日にかけて、広島・長崎市内で開催され、核保有国(アメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリス)をはじめ、5大陸から反核平和のリーダーなど含め、7000人が参加しました。 今年の世界大会は、2015年NPT(核不拡散条約)再検討会議(5年に1回開催)にむけて、核兵器全面禁止の世論のうねりを大きくすることに一つの焦点があてられました。 潘事務総長もメッセージ 潘基文国連事務総長も世界大会にむけたメッセージのなかで、「現在、核軍縮への新たな関心が世界的に高まっている」として、その大きな理由に「核兵器の恐ろしい人道的影響について、人々の認識が広がりつつあるからだ」と述べています。 今年は、若い世代からも多くの参加があり、被爆者と若い世代がともに、「核兵器のない世界」への扉を開く、意義のある大会となりました。また、「被爆者をつくらせない」の願いを込め、原発の再稼働と輸出に反対し、自然エネルギー転換を求める運動との共同を強めることも確認されました。 山口仙二さんに黙祷 メイン大会となった長崎での開会総会(8月7日)では、開会の冒頭に、7月6日に82歳の生涯を閉じた山口仙二さんへの黙祷を行いました。 山口仙二さんは、被爆者運動で長く日本被団協の代表委員を務め、世界大会には一貫して参加してきた方です。自身が14歳のときに長崎市内で被爆し、上半身が灼かれ顔にもケロイドが残っていますが、1982年の第2回国連軍縮特別総会では壇上に立ち、焼けただれた自らの写真をかざして「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ、ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー」と叫び、世界に大きな感動を与えたことでも有名でした。 ミサイル迎撃は困難 8月8日の午後4時半から、「国公労働者平和のつどい」が開催され、長崎大学の冨塚明准教授(長崎県平和委員会事務局長)が「何が本当の脅威か」というテーマで講演を行いました。 同准教授は、北朝鮮が発射しようとしている中距離弾道ミサイルは、隕石並みのスピードで、それをアタックして破壊するのはほぼ不可能であることや、日本への短距離ミサイルでもピストルの弾の20倍のスピードがあるといった事実を紹介し、自衛隊が配備している高額の迎撃ミサイル(PAC3)は、軍需産業の儲けのためにあるといったことなどを話されました。 「昔の出来事」にしない運動を 被爆者の平均年齢が79歳と高齢化が進み被爆の実相を語る方々が減ってきています。一方、被爆2世、3世と言われる人たちが、父母や祖父母から聞いた出来事を語り継ぐ運動が広がりつつあります。原爆の恐ろしさを昔の出来事として忘却しないよう、被爆体験を語り継ぎ、今回のような原水爆禁止や平和の運動にとりくみ続けることが日本の将来にとって大切であると実感させる世界大会となりました。