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  トップページ > 全司法新聞 > 2013年9月 > 2178号
 
 
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給与勧告見送り 人事院、責務を放棄
 
  8月8日、人事院は国家公務員に対する給与改定勧告を見送り、国会と内閣に対する「報告」という形で、職員の給与等に関する報告を行うとともに、国家公務員制度改革等に関する報告、配偶者帯同休業制度に関する意見の申出を行いました。
 この間、私たちは人事院勧告に基づかない一方的な賃下げを強いられている中で、国公労連が提起するとりくみに結集し、実支給額との比較に基づく給与回復・改善勧告を求めてきました。しかし、人事院が「賃下げ特例法」を「未曽有の国難に対処するため」とする政府の姿勢を容認し勧告を見送ったことは、労働基本権制約の「代償機関」、第三者機関としての責務を放棄したことに他なりません。
 すべての労働者の賃上げと雇用の安定を実現するため、広範な労働者・国民との連帯を広げながら、引き続き職場・地域で奮闘することが求められています。

報告のみは59年ぶり

 人事院は、「賃下げ特例法」による減額後の国家公務員給与が民間と比較して7・78%(2万9282円)下回ることを認識しながらも、給与法に定められた給与月額との較差が0・02%と極めて小さく、俸給表等の適切な改定が困難であるという理由で、昨年に引き続き月例給の改定を見送りました。また、一時金についても、減額後の公務の支給月数(3・56月)を認識しながら、減額前の支給月数(3・95月)が民間と均衡しているとして、改定を見送りました。諸手当を含めて給与の改定勧告を行わなかったのは、官民較差を認めながら経済情勢等を理由に勧告を留保し、報告のみにとどめた1954年以来、59年ぶりのことです。
 私たちはこれまで、国公法28条に定められた情勢適応の原則、5%以上の較差がある場合の勧告義務に照らして、実支給額との比較に基づく改善勧告を行うよう求めてきましたが、その責務を放棄し、自らの存在意義すら否定した人事院の態度は到底容認できるものではありません。

再任用の賃金水準も先送り

 また、すでに2014年3月定年退職予定者に対する再任用の意向確認のためのヒアリングが行われている中、私たちは、雇用と年金の接続をめぐって年金支給開始年齢の繰り延べにより4月以降無年金となることを前提に生活設計を立てる上では、重要な労働条件である賃金水準を早く明らかにさせる必要があることから、再任用職員の賃金水準引き上げを求めて人事院を追及してきました。  しかし、人事院は公的年金が全く支給されない民間再雇用者の実態把握などを理由に、再任用者の賃金水準に関わる勧告を先送りしました。これは、再任用者の賃金を年金支給が前提となっている水準のまま放置するものであるとともに、生活設計の根幹である賃金や労働条件を示さないものであり、人事管理にも重大な影響を及ぼすものです。  このほか、一般職国家公務員でありながら、劣悪な処遇に置かれている非常勤職員の処遇改善にも一切言及しなかったことは、大きな問題です。

給与制度の総合的見直しを準備

 人事院は、今回の報告の中で、今後とりくむべき課題として「給与制度の総合的見直し」を実施できるよう準備に着手するとしています。2005年の給与構造改革以降8年が経過し、国の社会経済情勢が急激に変化していることや、国家公務員給与についていっそうのとりくみを進めるべき課題が種々生じてきていることを理由としていますが、私たちの労働条件にも大きく影響する内容を含んでいることから、労働組合と十分渉や協議を尽くし、合意と納得を得ることが検討の大前提です。「給与制度の総合的見直し」として触れられた内容および組合の主張は、左の表のとおりです。

賃上げの悪循環をI断ち切ろう!

 以上のような報告を行う一方、人事院は「適正な給与の要請」として、「賃下げ特例法」が終了する来年4月以降の給与については、勧告制度の意義・役割に深い理解を示し、民間準拠による適正な給与を確保するよう国会および内閣に対し要請していますが、「賃下げ特例法」による減額が強行されている中で、実支給額との比較を行わない人事院の姿勢とは矛盾するものであり、「代償機関」としての存在意義を自ら否定しているものに他なりません。  今後、東京地裁で行われている「公務員賃下げ違憲訴訟」の公正な判決を求めるとりくみ、憲法とILO条約に基づく労働基本権回復のとりくみにも力を注ぎながら、賃下げの悪循環を断ち切り、すべての労働者の賃上げと雇用の安定を実現することが重要になっています。

「給与制度の総合的見直し」の内容
(1) 民間の組織形態の変化への対応
 部長、課長、係長等の間に位置づけられる従業員についても来年から官民比較の対象とする方向で検討

主張 国家公務員の職場に照らした場合、具体的にどのようなポストとして取り扱うことになるのか不明であることから、今後注視していくことが必要です。

(2) 地域間の給与配分の見直し
 (地域の公務員給与が高いとの指摘から)地域における官民給与の実情を踏まえ、更なる見直しについて検討

主張 報告では、公務員問題懇話会や中小企業経営者等との意見交換において、給与減額措置について「デフレからの脱却に向けたとりくみが求められている中で地域経済への影響を懸念」する意見があったことに触れる一方、地域間の給与配分較差をさらに拡大しようとしていることは、極めて大きな問題です。見直しが行われれば、同じポストに就いている者でも、勤務する場所や地域によって受け取る給与が今以上に拡大することになり、職務給原則に照らしても問題であると言わざるを得ません。

(3) 世代間の給与配分の見直し
 地域間給与配分の見直しと併せて、民間賃金の動向も踏まえ、50歳台、特に後半層の水準の在り方を中心に給与カーブの見直しに向けた必要な措置について検討

主張 2005年の給与構造改革以降、50歳台職員を狙い撃ちする給与水準の引き下げが行われてきており、本年6月にも55歳以上の昇給抑制を内容とする給与法が成立していますが、この見直しはその延長線上にあるものです。見直しを行うことは、官民の人事管理の違いを無視した年齢差別であり、職務給原則にも反するものです。

(4) 職務や勤務実績に応じた給与
 「人事評価の適切な実施と給与への反映」「技能・労務職関係職種の給与の在り方」「諸手当の在り方」について検討

主張 人事評価に関して、報告では「下位区分に決定された者は少数となっている」「下位の標語の付与を含め実情に即した適切な人事評価を行うことが肝要」としていますが、人材育成の視点を置き去りにしたまま、必罰の部分だけを強調することは問題と言わざるを得ません。
 また、「業務委託により行(二)職員の削減が一層進められることが必要。直接雇用が必要と認められる業務を担当する職員を念頭に民間の水準を考慮した給与の見直しを検討」するとしていますが、これは、行(二)職の不補充政策が続く中で、公務の特殊性や職場の実態を無視して、さらに定員削減に拍車がかかる危険性があるとともに、今以上に低賃金に抑え込まれる可能性もある内容となっています。行(二)職の働きがいにも関わる重大な労働条件の見直しが狙われていることは間違いないことから、注視していくことが必要です。
 
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全司法大運動、臨時国会で参院採択めざす
 
 2012年度「全司法大運動」は、先の通常国会において衆議院での請願採択を得ることができました。一方、参議院では安倍首相への問責決議が可決したことから、その後の審議がストップし、審議未了のまま閉会となったため、採択に至りませんでした。しかし、改選前の参議院においても、法務委員を中心に11名が紹介議員に立ってくれており、裁判所の人的・物的充実についての理解は着実に広がっています。

採択得ることの意義は大

 一方、政府が「国の財政規律」を強調し、「国家公務員総人件費削減」や公務員制度改革が裁判所の予算に影響を与えていること、一連の司法制度改革が一定落ち着きをみせるなか、事件動向も家事事件以外の事件数が横這い又は減少傾向にあること、などの情勢をふまえると、さきの衆議院での採択に加えて、参議院での請願採択を得ることには、きわめて大きな意義があります。

全職場で取りきろう

 こうした状況をふまえて、秋の臨時国会(10月15日以降に招集見込み)での請願採択をめざして、「全司法大運動」の請願署名にとりくみます。
 各職場においては複雑・困難な事件を多く抱え、正確で迅速な事務処理がこれまで以上に求められています。裁判所の人的・物的充実にむけて、引き続き運動を強めなければなりません。10月上旬までの短期間ではありますが、各職場で全ての組合員等から署名を取りきることを追求します。
 9月は、多くの支部や分会等で大会を控えています。少なくとも全組合員から署名を取りきるよう大会で意思統一しましょう。
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核兵器全面禁止のうなり大きく 2013年原水禁世界大会
 

 アメリカが原爆を投下してから68年目を迎えた今年も、原水爆禁止世界大会が8月5日から9日にかけて、広島・長崎市内で開催され、核保有国(アメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリス)をはじめ、5大陸から反核平和のリーダーなど含め、7000人が参加しました。
 今年の世界大会は、2015年NPT(核不拡散条約)再検討会議(5年に1回開催)にむけて、核兵器全面禁止の世論のうねりを大きくすることに一つの焦点があてられました。

潘事務総長もメッセージ

 潘基文国連事務総長も世界大会にむけたメッセージのなかで、「現在、核軍縮への新たな関心が世界的に高まっている」として、その大きな理由に「核兵器の恐ろしい人道的影響について、人々の認識が広がりつつあるからだ」と述べています。
 今年は、若い世代からも多くの参加があり、被爆者と若い世代がともに、「核兵器のない世界」への扉を開く、意義のある大会となりました。また、「被爆者をつくらせない」の願いを込め、原発の再稼働と輸出に反対し、自然エネルギー転換を求める運動との共同を強めることも確認されました。

山口仙二さんに黙祷

 メイン大会となった長崎での開会総会(8月7日)では、開会の冒頭に、7月6日に82歳の生涯を閉じた山口仙二さんへの黙祷を行いました。
 山口仙二さんは、被爆者運動で長く日本被団協の代表委員を務め、世界大会には一貫して参加してきた方です。自身が14歳のときに長崎市内で被爆し、上半身が灼かれ顔にもケロイドが残っていますが、1982年の第2回国連軍縮特別総会では壇上に立ち、焼けただれた自らの写真をかざして「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ、ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー」と叫び、世界に大きな感動を与えたことでも有名でした。

ミサイル迎撃は困難

 8月8日の午後4時半から、「国公労働者平和のつどい」が開催され、長崎大学の冨塚明准教授(長崎県平和委員会事務局長)が「何が本当の脅威か」というテーマで講演を行いました。
 同准教授は、北朝鮮が発射しようとしている中距離弾道ミサイルは、隕石並みのスピードで、それをアタックして破壊するのはほぼ不可能であることや、日本への短距離ミサイルでもピストルの弾の20倍のスピードがあるといった事実を紹介し、自衛隊が配備している高額の迎撃ミサイル(PAC3)は、軍需産業の儲けのためにあるといったことなどを話されました。

「昔の出来事」にしない運動を

 被爆者の平均年齢が79歳と高齢化が進み被爆の実相を語る方々が減ってきています。一方、被爆2世、3世と言われる人たちが、父母や祖父母から聞いた出来事を語り継ぐ運動が広がりつつあります。原爆の恐ろしさを昔の出来事として忘却しないよう、被爆体験を語り継ぎ、今回のような原水爆禁止や平和の運動にとりくみ続けることが日本の将来にとって大切であると実感させる世界大会となりました。

 
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