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少年法関連
 
18・19歳の「非行」に少年法で対応することを求める決議
(全司法労働組合第81回中央委員会決議)

 10月29日、法制審議会は、少年法における少年の年齢及び犯罪者処遇を充実させるための刑事法の整備に関する諮問第103号について、法務大臣に対し答申を行った。答申の内容は、18・19歳の事件について家庭裁判所への全件送致を維持したものの、多くの問題点を含んだものであり、私たちは「答申」どおりの法改定に反対する。
 「答申」は原則検送対象事件を拡大し、「短期1年以上」の事件(強盗、強制性交、放火、公文書偽造等)を対象にするとしている。本来、少年事件の検察官送致は個別・具体的な事案に応じて判断すべきものであって、罪名のみで「原則検送」する制度は「少年法の原則と例外を逆転させる異質なもの」である。現行制度が「被害者の死亡」という重大かつ明白な結果が発生している場合に限定しているのに対し、強盗などでは発生した結果や行為態様に様々なものがあり、罪名のみで原則検送の対象とすることには、大きな問題がある。
 また、「答申」によると、18・19歳について「ぐ犯(虞犯)」の扱いがなくなる。「ぐ犯」はその性質上、慎重な運用が必要であることは当然であるが、現場の感覚としては「選択肢として」必要であり、有効であると受け止めている。とりわけ、「ぐ犯」がセーフティネットの役割を果たしていることは重要であり、18・19歳について「ぐ犯」をなくすことは、若年者の処遇・更生に大きな空白を作ることになりかねない。
 少年法61条の推知報道(実名報道)の禁止は、少年の立ち直りにおいて重要な役割を果たしている。「答申」は公判請求を基準にその解禁を打ち出しているが、就職等を控える18・19歳という年齢で推知報道がされる影響は、成人事件とは比較にならないぐらいに大きい。なお、これとの関連でよく論じられる被害者に対する配慮については、これまでの法改正等をふまえて、現在、家庭裁判所において審判傍聴や説明などのとりくみが着実に積み重ねられており、その実態も踏まえた議論が必要である。
 加えて「答申」は「少年の年齢を18歳未満にすること」について諮問されながら、その肝心な結論部分を「今後の立法プロセスにおける検討に委ねる」としており、法制審の役割を適切に果たしたと言えるのか、疑問を感じざるを得ない。
 これらの問題は、法制審がそもそも18・19歳を少年法の対象としないことを前提に議論を進めてきたことが大きく影響している。しかし、審議会の議論でも少年法が有効に機能していることは一致した見解となっており、答申も「成長発達途上にあって可塑性を有する存在」と結論づけている。そうであれば、少年法の規律に従うことこそが必要であり、その意味で「答申」には同意できない。一方、少年法をめぐる誤解や厳罰化論が根強くあるもとで、「答申」が維持した全件家裁送致も含めて法案づくりや国会審議で覆される、いわゆる「巻き返し」も強く懸念される。
 今通常国会には少年法「改正」案が提出される見通しである。私たちは、少年事件の現場で働く職員の労働組合として、引き続き、少年法の適用年齢引下げに反対し、18・19歳の「非行」には文字どおり少年法で対応することを求めるとともに、少年事件処理の実態や家裁が果たしている役割を広く国民に発信していくことを決意する。
 以上、決議する。

2021年2月1日
全司法労働組合第81回中央委員会

 
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