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少年法関連
 
「少年法等の一部を改正する法律案」成立への抗議声明
 
 2007年 5月25日、「少年法等の一部を改正する法律案」が参議院で可決成立しました。
 私たち全司法労働組合は、これまで一貫して、少年たちがよりよく育つことを可能にする社会をめざし、2005年に今回の法案が発表されて以来、慎重審議を求めるとともに、この「改正」の問題点を繰り返し指摘してきました。
 今回の「改正」の動きは、もともと現場のニーズとは離れたところから起きているものであり、家庭裁判所をはじめとして、保護観察所、児童相談所など、子どもに関わる現場の多くが当惑してきました。「改正」を求める合理的理由はなく、少年が凶悪化しているといったヒステリックな世論に安易に迎合したものであることは、法案審議の過程における、法相をはじめ政府・与党の稚拙な答弁からも明らかです。また、衆議院における与党の強行採決という暴挙があったことも許し難いことだと思います。
 この間、心ある多くの市民や諸団体の指摘を受けて、当初の法案は与党修正案によって大幅に修正され、ぐ犯少年に対する警察官の調査権限が削除されたほか、触法少年に対する警察官の調査(捜査)に対しては弁護士付添人の選任権が明記され、少年の情操の保護に配慮し、質問に当たっては強制にわたることがあってはならない旨の規定が盛り込まれました。また、国選付添人選任の効力が少年の釈放後においても最終審判まで維持されるようになるなど、今国会において大幅な修正が行われたことは率直に評価しなければなりません。
 しかし、与党修正案によっても、小学生の少年院送致を可能とし、また,保護観察の遵守事項違反を理由とする少年院送致を可能とするなど、少年の自主的な更生意欲の涵養よりも国家権力による威嚇・拘束を優先し、さらなる厳罰化を推し進めた欠陥が多々あることは隠しようがありません。最初の少年法制定から50年間にわたって日本の社会が培ってきた、少年に対する福祉的・教育的配慮、科学的知見に基づく深い少年理解などの蓄積を無視したものと言わざるを得ません。参議院においては、今回の「改正」の適正な運用を求める異例とも言える附帯決議がなされましたが、皮肉なことに、これは大人としての良心を放棄した国会議員の自責の念の表れのように見えると言っても過言ではありません。
 子どもたち・少年たちが健やかに育ち、社会の中で生き生きと日々を過ごし、良識ある大人に成長していくことを誰しもが願っています。しかし、今回のような俗論重視の「改正」によって、大人が内省することなく子どもたち・少年たちだけを締めつけるということでは、日本の未来は開けません。今、何より肝要なことは、保護観察所、児童相談所などが本当の意味でより充実した処遇、子どもたち・少年たちへのケアができるよう人材を確保し、施設を充実させることです。
 私たちは現場で働く職員労働組合の立場から、今回の「改正」を誠に遺憾に思っており、ここにあらためて強く抗議の意を表します。そして、引き続き保護観察所や児童相談所などで実際に子どもたち・少年たちと関わる人達との連携を深めながら、子どもたち・少年たちが健やかに育つことのできる社会が実現できるよう努力していく決意です。
2007年 6月12日

全司法労働組合少年法対策委員会
 
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