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少年法関連
 
第9回「改正」少年法運用状況調査結果まとまる
 
 

全司法本部少年法対策委員会では、2001年4月から少年法が「改正」されたことを受け、その後の「改正」少年法の運用状況の調査を定期的に行っています。
 「改正」少年法の第9回運用状況調査は、2004年7月から12月末までの「改正」少年法の運用状況を全国的に調査したものです。2005年3月18日現在、全国の家庭裁判所50庁、全司法組織として51支部から100%の報告がありました。

1.検察官関与事件

検察官関与決定のあった事件 6件
検察官から関与の申出があって関与決定がなかった事件  1件

 ・うち合議 2件
 ・審理期間  28日を超える観護措置は5件
 ・審判期日の回数  8回、5回、3回、2回が各1件、1回が2件 、不明2件

<各地からの声(順不同:以下同じ)>

  • 支部の審判廷が狭いため法廷で行ったが、多人数が関わり裁判官が壇上にいるなど、雰囲気は固く厳しいものだった。
  • 第2回調査で全面否認し、関与申し出有り。観護措置を取り消したが月1回しか期日が入らず審理が8か月にわたり少年に対する適切な処遇は困難になっている。
  • 悪質な殺人事件で検察官関与申請があったが、事実認定上の問題がなく、関与を認めない事例があった。

<解説と問題点>

 今回はじめて非行なし不処分決定に対して抗告受理申し立てがなされ、差し戻されたとの報告が2件ありました。そして、今回は抗告受理申し立てが相次いで報告され高裁から差し戻されており、検察官が積極的に少年審判に関わろうとする動きの表れとも考えられます。
 また、審判前に、少年調査票の閲覧希望の有無を検察官に尋ね、検察官は閲覧しなかったとの報告もありました。調査官の調査は要保護性審理のためのものですので、事実認定手続きのみに関与する検察官が閲覧するものではないと思われます。

2.裁定合議事件

裁定合議があった事件 16件

<解説と問題点>

 裁定合議は16件で前回より6件増加しています。内容は20条2項該当の重大事件や精神鑑定がなされているもの、被害者と少年との関係が複雑で慎重な審理を要するもの、検察官関与事件、否認事件が中心ですが、特に触法少年による重大事件や否認事件で3件となっており、触法事件での慎重な対応がうかがえます。

3.原則検察官送致(20条2項該当)事件

原則検送事件 18件

原則検送事件の審判結果
 ・検察官送致  12件
 ・医療少年院送致 1件
 ・中等少年院送致 3件(相当長期1、長期1、短期1)
 ・その他少年院送致 2件

<解説と問題点>

 今回は、18件が報告され検察官送致は12件です。検察官送致率は67%と前回と同様になっています。ただし書きが適用された主な理由は、事件への関与程度や事案の特殊性で、前回同様に事案の評価によるものがほとんどです。少年院での矯正が可能と思われたが結果が重大で検送もやむを得なかったとの意見もあり、いわゆる原則検送が裁判官、調査官の姿勢にも影響を与えているようです。

4.15歳以下の検察官送致

該当事件の報告はありません。 

5.観護措置

<解説と問題点>

○観護措置の延長

 4週間を超えて観護措置が執られた事件の報告が17件ありました。いずれも否認事件で、最長は検察官が関与し、54日間で5回の審判がなされています。特別更新が行われたにもかかわらず、審判が2回以下のものも3件報告されており、うち1件は検察官が関与しています。検察官関与事件は6件中5件が特別更新になっています。
 今回はじめて特別更新された後に「非行なし」となり、補償がなされたとの報告が2件ありました。

6.被害者からの申し出

<解説と問題点>

 被害者からの意見陳述申し出は47件と、前回に比べて大幅に増加しています。調査官が聴取したものは被害者感情の悪化や、事件の被害者の様子から慎重な対応が求められるものが含まれていました。
 被害者の方は様々な思いを抱いて申し出を行います。それを受け止めたうえで、いつ、誰がどのように聴取を行うのかを吟味し、適切な対応をしなければ申し出を行った被害者に二次的な被害を与えてしまうことになりかねません。
 他に、被害者との面接にふさわしい部屋の整備の必要性もあり、被害者関連申し出の増加への対応として、人的・物的な充実は重要な課題です。
 また、被害者による閲覧謄写関連では、コピー代が高額で金銭面の負担が大きいのではとの指摘もありました。
 少年の健全育成を目的とする少年法の下で、家庭裁判所が被害者への配慮をどのように行っていくのかについて一層の議論が必要ですし、被害者の保護を目的とした抜本的な対応策の必要性が感じられます。

7.まとめ

 今回の調査報告では、主に20条2項や55条移送に関する問題意識が報告されています。20条2項については、原則検送の定着を懸念する意見と、保護処分の有効性を実証的に研究すべきとの意見もありました。また、調査後に検送された事案について、検送後の少年の処遇に関する問題意識も見られました。
 被害者関連申し出の増加や、検察官関与による審理の長期化などが今回の調査で目立った点です。より充実した少年事件審理のために、人的物的な充実が求められるとともに、少年法の福祉的理念が守られるかどうか、引き続き監視をしていく必要があります。

以上
 
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