おいでやす全司法
プライバシーポリシー  
CONTENTS 全司法紹介 司法制度改革 少年法関連 全司法大運動 全司法新聞 声明・決議・資料 リンク サイトマップ
  トップページ > 少年法関連 > 法制審少年法部会へ意見書を提出
 
少年法関連
 
諮問第72号要綱(骨子)に対する意見書
2004年11月17日

法制審議会少年法部会長
芝原 邦爾 殿

全司法労働組合
中央執行委員長 布川  実
 
 私たち全司法労働組合は、全国の裁判所職員で構成する労働組合で、少年事件を実際に扱っている家庭裁判所で働く家庭裁判所調査官や書記官等で組織しています。今回の法制審議会少年法部会に対する諮問第72号要綱(骨子)の内容は、少年の処遇を大きく変えるもので私たちの職務内容にも大きな影響があります。今回、全国に意見を求めて、集約を行いました。審議に当たっては下記の点について十分考慮してください。 

1.幅広い意見を踏まえての慎重な議論を求めます。

 要綱(骨子)の内容は少年司法のみならず、児童福祉、学校教育の分野にも大きな影響を及ぼす内容です。委員だけでなく実際に児童及び少年に関わる仕事をしている家庭裁判所職員、児童福祉施設職員、教員等幅広い国民の意見を踏まえての議論を求めます。拙速に結論を出すことなく、検討には十分な時間をかけてください。

2.議事録の早期の公表を求めます。

 幅広い国民の意見を踏まえての議論を行うためには十分な情報公開が必要です。10月29日に第2回の会議が開かれたにもかかわらず11月16日現在で法務省のホームページには第1回会議の議事録しか公開されていません。可能な限り早期の公表を求めます。

3.福祉的な保護の充実を求めます。

  諮問事項は、少年非行が深刻な状況にあり触法少年による凶悪事件が相次いでいるとの認識に基づいてのものですが、警視庁「少年非行等の概要」によっても、ここ10年間で触法少年の凶悪犯が増加している数字はありません。特定の事件がマスコミによって大きく報道されることによって、凶悪化のイメージが作られています。触法少年は刑事責任が問われず、児童福祉法の対象である要保護児童として福祉的な保護の対象となっていることに留意すべきです。

  1. 上記の点から、基本的には触法少年への調査は警察官でなく児童相談所が行うべきです。十分な調査が行われるよう人員、施設の面でも児童相談所の充実を求めます。
  2. 例外的な事案への対処は少年の情操面への十分な配慮を求めます。
    少年法第20条第2項に該当する重大事件や事実関係を争うもの、あるいは共犯に犯罪少年がいる場合は家庭裁判所の審判に付される可能性が高く、事実認定が問題となるので、警察官が調査を行うことはやむを得ません。しかし、あくまで例外とすべきです。その場合、少年の調査には年齢を十分考慮し、事情聴取の場所に配慮したり保護者等の立会を義務づける等、情操について特別の配慮を求めます。
  3. 児童相談所の裁量を狭めることには反対です。
    検察官による調査を経て資料が児童相談所に送致された場合、家庭裁判所への送致は児童相談所の判断を尊重し裁量に任せるべきで、送致を原則化するような規定は必要ありません。現状でも、児童福祉法第27条第1項第4号の規定によって家庭裁判所への送致は可能です。
  4. 14歳未満のぐ犯少年に対する警察官の調査には反対します。
    14歳未満のぐ犯少年については、警察官の調査を認めるべきではありません。ぐ犯少年は刑罰法令に触れておらず、まさに、児童相談所による福祉的な保護の対象です。要保護児童として児童相談所に通告するべきで、その上で、審判に付す必要があれば家庭裁判所に送致することができます。警察官による調査以前に、児童相談所の充実を図るべきです。 

4.触法少年の少年院送致には反対します。


 触法少年の少年院送致には原則的には反対します。少年院に送致する必要のある触法少年がいたとしてもごく少数と考えられ、年齢の離れた少年ばかりの少年院で処遇するよりも、同年代の児童を処遇している児童自立支援施設の設備、処遇内容を充実させ、児童自立支援施設での処遇を優先すべきです。触法少年の少年院送致を認めることとなれば、保護処分としての児童自立支援施設送致の意義を失いかねません。
 例外的には、学齢が犯罪少年と同じ場合に限っては共犯者との処分均衡の意味で、少年院送致が考えられます。ですから、収容年齢の下限撤廃には反対ですし、小学校卒業の者に限定するような下限を設けるべきです。

5.保護観察所長によるぐ犯通告の活用を求めます。

  保護観察中の者に対する措置については反対します。仮退院とは異なり、家庭裁判所の審判で保護観察決定された後、新たな事件送致がないにもかかわらず、その決定を変更することは一事不再理の原則に反すると考えます。現状でも犯罪者予防更生法第42条による家庭裁判所へのぐ犯通告が可能ですが、その規定が十分に活用されているとは言えません。それは、保護観察所の人員が十分でないために専門性が発揮できないことによるもので、その点を充実させることの方が先な筈です。ぐ犯要件よりも更にハードルの低い遵守事項違反を理由に少年院送致が可能となれば、少年が自発的に自らの行動を変化させると言うよりは威嚇することで遵守事項を守らせることとなります。それは、少年法の目的である健全育成でなく社会防衛を目的をすることを意味することになり、少年に対する保護観察の変質を招くことになります。と同時に、そうした運用が保護観察の内容を硬直化させ、処遇能力の低下に繋がることを懸念します。

6.保護者に対するきめ細かい働き掛けができるよう求めます。

  保護者に対する措置に関しては、少年法第24条2項に保護観察所の長に対して家庭に関する措置が行わせることができる旨の規定があります。犯罪者予防更生法第36条第2項によれば、家族に対する補導援護はその承諾がなければ行ってはならないことが定められていますし、同法第52条には保護観察官などを家族等に訪問させて環境調整について相談させることができることが定められています。一方、少年院法第13条には少年院の長は保護観察所の長に対して家庭などの環境の状況について必要な援助を求めることができることが定められています。これらの規定が、十分に活用されるならば、保護観察所が保護者との協力関係を保ちながら、有効な助言や指導が行うことが可能だと考えます。非行少年などの保護者は、保護者自身が問題を抱えているが故に、不適切であったり不十分な監護になりがちで、「保護者の責任」を強調する規定をあらためて設けるのではなく、保護観察所や少年院の人員の充実が必要です。

 
以上
 
ページの先頭へ