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少年法関連
 
第7回「改正」少年法運用状況調査結果まとまる
 

 全司法本部少年法対策委員会では、2001年4月から少年法が改正されたことを受け、その後の「改正」少年法の運用状況の調査を定期的に行っています。
 第7回「改正」少年法運用状況調査は、2003年7月から12月末までの改正少年法の運用状況を全国的に調査したものです。3月30日現在、全国50庁の家庭裁判所のうち46庁から回答を得ています。

1.検察官関与事件

検察官関与決定のあった事件 11件
検察官から関与の申出があって関与決定がなかった事件 4件

 ・否認の態様
  全部否認 1件(9%)
  一部否認 6件(54%)
  否認なし 4件(37%)
 ・うち合議 あり8件 なし3件
 ・審理期間  28日を超える観護措置は9件(最長55日)
 ・審判期日の回数  1回が5 件 、2回が1件、3回が1件、4回が1件、5回が2件、6回が1件

<各地からの声(順不同;以下同じ)>

  • 中間審判と終局審判に一人ずつ別の検察官が出席し、審判中の発言はほとんどなかった。成人の裁判に近い内容だったが、少年は自分のために3人の裁判官、検察官、付添人と多くの人が関与したことに感激し、感銘力はあった。
  • 検察官も少年裁判官のような接し方で少年法の趣旨に合った審判だったが、少年自身は厳しかったと述べていた。
     ・ 検察官の少年に対する威圧的な言動等はなかった。共犯事件での否認で、審判回数が多く、調査面接と付添人の面会との日程調整や調書作成など、裁判所全体が大変だった。
     ・ 審判に出席する人数が多くなって威圧感があり、検察官は少年の供述の細かい矛盾を問いつめ厳しい口調になりがちだった。否認事件だったため、事実認定が確定するまで、事実を前提にした調査ができず、時間が足りない感じが残った。
     ・ 少年が殺意を否認し最後まで争ったため、審判は終始固い雰囲気だった。早い時期に非行事実についての審判が開かれたのはよかったが、否認事件のため、要保護性の調査にはやりにくさがあった。

<解説と問題点>

 少年の年齢は14歳から19歳と幅広く、内容的にも、殺意や教唆の否認、強姦における和姦の主張から、多数共犯の傷害致死事件で否認していないものまでが検察官関与となりました。検察官関与を認めなかった例では、強姦事件の少年が観護措置中に和姦の主張を始めたが、被害者調査の結果、検察官関与は必要としないと判断されたものがありました。
 前回に引き続き、事案が重大であることのみが理由と思われる関与申出が見られます。裁判所としても、多数共犯等の理由から、争点や主張を明らかにする上で検察官を安易に関与させてしまう傾向がないか、注意が必要です。14歳といった年少少年の事例もあり、否認があったとはいえ、検察官関与の相当性については年齢等の事情を考慮し、慎重になされることが望まれます。また、前回に引き続き、要保護性審理の審判に検察官を在席させた事例も報告されました。これは、事実認定の適正化という制度趣旨を逸脱した非常に問題のある運用と言わざるをえません。

2.裁定合議事件

裁定合議があった事件 18件

<解説と問題点>

 裁定合議は、少年に精神障害が疑われたというような資質的な問題によるものもありましたが、否認事件や重大事件が多くを占めています。重大事件や否認事件、あるいは社会的耳目を集めたという外形的な事情だけでなく、審理に多数の大人が関わることの少年への影響等、多角的・複眼的に検討し、裁判所にとってだけでなく少年にとってもメリットのある事例を選んでいくことが大切だと考えます。

3.原則検察官送致(検送)該当事件

原則検送該当事件 67件

原則検送該当事件の審判結果
 ・検察官送致 35件
 ・特別少年院送致  1件(相当長期)
 ・中等少年院送致 10件(相当長期1件、比較的長期3件、長期5件、短期1件)
 ・保護観察 3件
 ・審判不開始 1件(心神喪失)
 ・在宅試験観察 1件
 ・係属中 16件

<各地からの声>

○「ただし書き」により検送にはならず、保護処分となった事件

  • 少年が追いかけたバイクの転倒による結果であり、少年自らの暴行ではないこと。
  • 少年の未熟さから矯正教育による改善可能性があると判断されたこと。
  • 挑発という被害者側の落ち度が一定程度考慮された。
  • 初回係属
  • 従犯、非行の中核部分への関与の度合い
  • 少年は被害者と友人関係にあって、共犯者の暴行をやわらげるために暴行しており、少年が致命傷を与えたとは考えられなかった。
  • 被害者が厳罰を望まなかった。
  • 少年が年長者からの強い影響を受けていた。
  • 少年の反省の度合い
  • 検察官送致の後、地方裁判所から保護処分が相当と判断されて、少年法第55条による家裁への移送を受けた。 

<解説と問題点>

 今回の調査では原則検送該当事件が調査開始以来最多の件数でした。係属中を除くと、検察官送致となったものは約70%で、50%台以下だった最近2回の調査結果と比べると急激な上昇です。その理由として、傷害致死事件が大幅に増加したことの影響が大きいと考えられます。今回は多数共犯が傷害致死事件に占める割合が大きく、中には在宅での送致もあり、注目に値します。また、殺人幇助や保護責任者遺棄といった罪名が初めて登場し、殺人では心神喪失が認定されました。
ただし書きが適用された理由では関与の程度が少ないとするものが多く見られました。適用を排除した要因としては係属歴が多く仮退院中というものがあり、また、18歳、19歳と比べて16歳、17歳の検察官送致率が増加しています。総じて、少年の資質や成長、更生の可能性よりも、事案内容や外形的な事情に重点を置いて検察官送致と判断される傾向が強まっており、運用の応報化、厳罰化傾向が読みとれます。そうした傾向は、少年の健全育成という少年法の目的に背を向けた運用であり、少年の資質や矯正可能性についての調査を綿密に行った上で、少年にとって必要な処遇が選択されるべきです。

4.15歳以下の検察官送致

該当事件 2件

<解説と問題点>

 傷害致死事件により検察官送致された15歳の少年2名が、地方裁判所から保護処分が相当と判断されて家裁に戻された事例が報告されています。この件について、新聞報道によれば、地裁はその理由として、(1)暴行は暴走族の年長構成員の指示であり、最年少だった少年たちは逆らえなかったこと、(2)精神的未熟さが著しく、教育的働き掛けで改善する余地があること、(3)謝罪の手紙や反省の日記を書き、事件の重大性の認識が深まりつつあることの3点を挙げ、「相当長期の収容処分が妥当」と結論づけているそうです。そして家裁は、相当長期の処遇勧告を付して少年院送致決定をしたとのことです。最終的に保護処分が選択された一方で、結果的に少年院の短期処遇を越える長期間、更生のための教育的な配慮がほとんどなされないまま身柄拘束がなされてしまったことは問題です。また、家裁の決定でいったん地裁の公開の裁判に付されたにもかかわらず、結局家裁の審判で保護処分に変更されたことにも着目しなければなりません。しかも、家裁は地裁の意見と同じ処遇勧告を付しており、本来は家裁が判断すべき事情を実質的には地裁が判断することになっています。このような事態は家裁の存在意義に関わることではないでしょうか。「改正」少年法施行後、15歳以下の少年の検察官送致は今回を含めて2例にとどまっています。さらに今回、地裁が少年の更生の可能性を重視した判断を行ったことは、そもそも年少少年に刑事罰を科すことの制度的矛盾を表しているといえるでしょう。

5.観護措置

<解説と問題点>

○観護措置の延長

 4週間を越えて観護措置が執られた事件の報告が29件ありました。前回に比べて倍近くに増えています。いずれも否認事件だったことが理由となっており、事実認定のために審判が多数回重ねられた事例が目立ちます。小規模庁に共犯の否認事件が係属した場合、多数回の審判以外に、複数の付添人との面会、閲覧や謄写のための事件記録使用等がかさみ、特別更新がなされても非常に多忙な状態だったとの報告もありました。その一方、6週間を越える観護措置中に審判が2〜3回しか行われなかった事例もありました。長期にわたる身柄拘束で少年が不安定になった事例もあります。今回の調査結果からは、在宅事件に切り替えて審判を続行する可能性が検討されたのか疑問が残りますし、否認事件であっても短期間に審理を行うための十分な体勢が裁判所側にできていないことも問題だと考えられます。

○異議

 同一の事件で複数回の申し出がなされたり、更新時になって申し出がなされた事例がありました。観護措置や特別更新についてどのような説明がなされ、少年がどのように理解したのか、注目すべき事例です。観護措置の必要性について、裁判官が慎重は判断をするようになったとの報告もありました。

6.被害者からの申し出

<解説と問題点>

 今回の調査の結果、被害者からの意見聴取の報告は56件あり、前回の約2.5倍になりました。今回も、審判廷で少年らの面前で意見聴取を行った事例が報告されました。しかし、重大事件を犯した少年が審判段階では現実に向き合えないことも多く、審判の最中に意見聴取することで被害者、加害者双方が深く傷つくこともあり得ますし、葛藤の激化につながるおそれもあります。意見聴取の際には、少年の状況や事案に応じて慎重に対処するべきです。

以上
 
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