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少年法関連
 
第6回「改正」少年法運用状況調査結果まとまる
 
  全司法本部少年法対策委員会では、2001年4月から少年法が改正されたことを受け、その後の「改正」少年法の運用状況の調査を定期的に行っています。
 第6回「改正」少年法運用状況調査は、2003年1月から6月末までの改正少年法の運用状況を全国的に調査したものです。10月7日現在、全国50庁の家庭裁判所のうち42庁から回答を得ています。

1.検察官関与事件

検察官関与決定のあった事件 5件
検察官から関与の申出があって関与決定がなかった事件 4件
 ・否認の態様
  全部否認 1件(20%)
  一部否認 4件(80%)
 ・うち合議 1件
 ・審理期間  28日を超える観護措置は4件(最長55日)
 ・審判期日の回数  2回が3 件 、3回が1件、13回が1件

<各地からの声(順不同:以下同じ)>

  • 正当防衛の主張が行われたが、過剰防衛の認定がなされた。検察官は、紳士的な態度だったが、少年に分かりやすい言葉の質問でなく、一度に複数の回答を望むため、少年が混乱して答えにくい様子だった。付添人は裁判所と争う姿勢を前面に出し、調査妨害とも言えるような対応もあり、もはや協力者とは言えない状態だった。事実認定のために繰り返し審判が開かれて要保護性調査に入れなかったし、裁判官と調査官の打ち合わせ時間を確保するのが困難だった。
  • 調査段階で実行行為の否認を始めたもの。検察官は、共犯少年に対する尋問では情操上の配慮ができていたようだが、本人尋問ではどうしても詰問調になりがちだった。観護措置の特別更新により、社会調査の期間を確保することができ、特に問題はなかった。調査官3名の共同調査で、検察官と付添人が1人ずつ、鑑別所職員も4人在席しており、大勢の大人と対峙している雰囲気はあったかもしれないが、比較的和やかな雰囲気で審判は行われた。
  • 否認事件のため、付添人の方針を確認してからでないと社会調査に入れず、時間が少なかった。
  • 方法を否認したため、死因をめぐって再鑑定が行われ、死因は少年の主張通りに変更された。県外の機関に鑑定を依頼せざる得ず、鑑定留置はなされなかったため、鑑定中は、観護措置を取り消して児童相談所の一時保護所で保護してもらい、少年の心情の安定と自殺防止の対応をした。

<解説と問題点>

 関与した5件のうち、2件は検察官からの申し出がなく、調査段階での否認だと考えられます。
 内容的には、殺意や正当防衛といった法律問題から、実行行為の有無や人違いといった犯人性を争うもの、非行の具体的な内容を争うものもありました。犯人性を争うものはいずれも調査段階での否認と考えられます。少年の言い逃れと見ることもできますが、非行の具体的な内容に争いがあり再鑑定を行わざるを得なかった事例もあることから、捜査段階での問題が潜んでいると思われます。捜査 が適正かつ十分に行われていれば、検察官を関与させなくとも審議は可能な筈です。前回までは、認定が可能との理由で申し出があっても決定されない事案が多数報告されましたが、今回は大幅に減少しました。
 前回に引き続き、発言させないことを条件としてはいましたが、検察官を要保 護性審理に立ち会わせた事案も報告されました。事実認定を超えての検察官関与を安易に行うことは、大きな問題です。複数の検察官が一つの少年事件に関与した事例も報告されたことも注目に値します。

2.裁定合議事件

裁定合議があった事件 5件

<解説と問題点>

 今回の調査結果は、否認事件や少年に発達障害がうかがわれる事案、あるいは被害が重大な事案でした。いずれも慎重な審議が要請される事案と考えられますが、その一方で、裁定合議とすることで大人数が関わることとなったが、打合せも十分でなく、内容が伴ったのか疑問との指摘もありました。

3.原則検察官送致(検送)該当事件

原則検送該当事件 17件(20歳に達したため検察官に送致したものを除く。)

原則検送該当事件の審判結果
 ・検察官送致 9件
 ・中等少年院送致 7件(相当長期2、比較的長期2、長期3、)
 ・保護観察 1件

<各地からの声>

○「ただし書き」により検送にはならず、少年院送致となった事件

  • 実行行為がない等、追従的であったり、主な実行犯でないこと。
  • 少年の能力的な制限や人格の未熟さから罪障感の涵養には刑務所は適当でなく、個別的、系統的、専門的な教育指導が必要なこと。
  • 係属歴がなく、非行性も進んでいないこと。
  • 少年の本件の受け止め方が深刻で、更生意欲も高く、検察官も少年院送致意見だった。
  • 嬰児殺しで少年の対人関係の持ち方が未熟なこと。

<解説と問題点>

 今回の調査では検察官送致となったものは約半数で、前回調査の流れを引き継いでいると考えられます。 罪種では傷害致死が半数以上を占めていますが、前回と比べると殺人の比率が大幅に増加しています。検察官送致の比率の低下は集団で起こされることの多い傷害致死事件についても、調査を綿密に行って個別の評価をきちんと行い、相応しい処遇が選択された結果と考えられます。

4.15歳以下の検察官送致

該当事件 なし

<解説と問題点>

 報告はありませんが、前回報告された事件の公判は続いています。また、報告時期の関係で、今回の調査には入っていませんが、年少少年による重大事件が立て続けに起きたことが報道されており、厳罰化の動きには注意を払っていく必要があります。

5.観護措置

<解説と問題点>

○観護措置の延長

 4週間を越えて観護措置が執られた事件の報告が15件ありました。
前回に比べて倍以上に増えていますし、審判が1回しか開かれなかった事例もあることから、その必要性や運用のあり方に疑問が残ります。鑑定留置が行われた結果、社会調査を行う期間が少なかったために更新した事例もあるようですが、そのように裁判所側の事情だけで泥縄式に特別更新が行われるのは、制度本来の趣旨を逸脱していると考えられますし、特別更新せざる得ない現場の事情について十分に検討がなされるべきです。あわせて、警察が再逮捕を繰り返して、6か月以上も身柄拘束をした等、裁判所以上に警察も少年の身柄を長期間拘束する傾向が現れていることについて問題意識が寄せられており、重大な問題です。

○異議

 認容された事例であっても少年が混乱していたとの報告があり、観護措置手続き自体が少年にきちんと説明されていない様子がうかがわれました。強制的に身柄を拘束される手続きであり、少年や保護者がその必然性を理解できるような対応が求められます。

6.被害者からの申し出

<解説と問題点>

 前回に引き続き、様々な具体的な事例の報告がありました。
 意見陳述や閲覧謄写では、感情をコントロールできない状態で手続きを申し出ててきた被害者の方への対応や閲覧用の記録の準備に大変な労力をかけている様子が報告されています。また、少年が否認している事件について、被害者から意見陳述の申し出があった場合、裁判所はどのように対応すべきかという現実的な問題の指摘もありました。
 閲覧者が落ち着いて記録を閲覧できる場所が確保されておらず、申し出に当たって厳格な身分証明が求められるなど、被害者にとって使いやすい制度になっていないとの指摘の一方で、被害者からの問い合わせが増えているとの報告があり、今後、申出数の増加が予想されます。被害者への配慮を充実させるための人的、物的な手当が是非とも必要です。

以上
 
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