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少年法関連
 
資料 第4回改正少年法運用状況調査の結果と分析
2003年 4月15日 全司法本部少年法対策委員会
 
 全司法本部少年法対策委員会では、少年法改正後の運用状況について、 全国の家庭裁判所の組合員を対象に実態調査を行っており、今回が4回目の 報告となる。
 今回は2002年1月から6月末までのもので、全国50庁中46庁、47支部から90% を越す報告があり、過去4回中最多の回答率となった。

1.検察官関与事件

検察官関与があった事件 3件 (うち2件は裁定合議)
検察官からの関与申出があって関与決定がなかった事件 19件

否認の態様
全部否認 2件  
(受理時全面否認だったが、最終審判で否認なしに転じたものを除外)
一部否認 1件
否認なし  1件
(受理時全面否認していたが、最終審判で否認なしに転ずる)
うち裁定合議 2件
審理期間 28日を越える観護措置は1件(40日間)
審判期日の回数 3回が2件、4回が1件

各地の声

  • 回付後、審判までの日数が少なく、日程調整に苦労した(3回の審判中、前2回 が支部、後1回が本庁に回付して裁定合議で行われ、途中に鑑定留置を挟むな どの事情が重なった。最終審判のみ裁判所の要請で検察官関与)。
  • 被害者尋問の際、被害者が審判直前に検察官と打ち合わせを行っており、 検察官の質問には安心して答えられたが、付添人の質問には身構えていた。
  • 非行事実に争いがあり、付添人に社会調査を拒否されたが、裁判官の説得に より事実に触れない形で調査に着手できた。調査場面で非行内容に審判間近 まで触れられず、少年に内省を深めさせる働きかけがあまり行えなかった。

解説と問題点

  • 今回の検察官関与事例は、少年側から心神喪失、和姦、正当防衛の主張が あったものであり、犯人性そのものを争うものではなかった。結果は3件とも送致 事実どおり認定され、いずれも保護処分決定となっている。
  • 殺人、強盗致死、傷害致死、危険運転致死などの結果が重大な事件では、 少年が事実を否認している場合はもちろん、否認がない場合でも検察官からの 関与申し出がなされる場合がある。しかし、裁判所独自で事実認定ができると 判断して関与させなかった例が多数を占めている。

2.裁定合議事件

裁定合議があった事件 22件

各地の声

  • 合議審のあり方が問題となる例はなかった。
  • 合議対象となった理由については、
     ・少年の責任能力を争うもの
     ・集団事件(多数共犯)中の一部否認
     ・証人尋問でビデオリンクシステムを利用したもの
     ・移送元の遠方の庁まで出張尋問した例
     ・未特例判事担当で検送が検討される例
    など様様であった。
  • 担当者も、合議に伴う付随的な問題の煩わしさ(期日調整など)を訴えている ものが多かった。

解説と問題点

  • 前回報告との顕著な違いは、検察官関与が減少しているのに対し、裁定合議 は3倍近くに増加している点である。慎重な事実認定が必要となった場合、検察 官関与でなく裁定合議によって行おうとする姿勢がうかがわれる。

3.原則検送該当事件

原則検送該当事件 29件

原則検送該当事件の審判結果

検察官送致 19件(うち1件55条移送)

少年院送致 10件(うち1件55条移送後の処分)
 ・内訳:中等少年院(相当長期)3件
 ・医療少年院(比較的長期)1件
 ・中等少年院(比較的長期)1件(55条移送後)
 ・中等少年院(長期処遇)2件
 ・医療少年院 1件
 ・少年院 1件
 ・移送 1件
 ・係属中 1件

各地の声(但書きが適用され、検察官送致でなく保護処分となった事件の性質)

  • PTAから寛大な処分を求める署名あり。
  • 成人共犯者の異常さに引きずられた。
  • 精神発達が未熟。
  • 特殊な家庭環境によるいびつな生育歴。
  • 追従的関与。
  • 場当たり的で計画性がない。
  • 自己の責任を認識。
  • 現場にいた成人が積極的に制止していない。
  • 少年の精神が混乱し刑事処分に耐えられない。
  • 遺族(被害者と少年双方の親族)が少年の社会復帰を望む。
  • 資質面の問題改善と家族関係の調整には保護処分が妥当。
  • 被害者の行為に触発された過剰防衛。

(問題点)

  • 付添人の都合で審判期日が前倒しとなり時間に追われた。
  • 遺族から被害者調査を拒否された。
  • 少年が実行犯ながら、主犯格の共犯が逃走中で共謀に曖昧な点があった。 
  • 外国人少年による事件で、通訳人の確保に追われた。
  • 年齢によって処分が分かれた(16歳以上と未満)印象は拭えず、事件関与の 実態(主従関係)と合わなかった。

解説と問題点

  • 前回調査同様、該当事件の3分の2が検察官送致となっており、少年院送致 事例でも半数が長期間の処遇勧告をつけられているなど、厳罰化を裏付ける結 果となっている。しかし、3分の1は保護処分が選択されており、とくに検察官が 関与した事例がいずれも保護処分となった点は注目に値する。
  • 一方で、少年法55条による再逆送の事例も報告され、その理由として公判中 に少年の内省が進んだことや示談が成立したことなど、調査段階では明らかで なかった事情が挙げられている点も注目に値する。刑事裁判では、量刑相場と 少年院の収容期間が同等であれば保護処分を選択やすいとの指摘もあった。

4.観護措置の特別更新

更新が2回以上になった事件 10件

解説と問題点

  • 観護措置期間は38日間〜52日間で、審判回数も3回〜6回となっている。 今回の調査結果では、すべて3回以上の審判が開かれているが、少年から、 特集短期処遇より身柄拘束が長いとの不満が出た事例があり、特別更新の 必要性が慎重に吟味される必要がある。

5.被害者対応(被害者の意見陳述、記録の閲覧・謄写、審判結果通知)

各地の声

  • 閲覧につき、強姦事件で被害者が親に知られたくないとのことで苦慮した。
  • 被害者の親に処罰感情が強く、結果通知申出がなされた。
  • 被害者の本人確認のための資料提出が厳格で、申出者の負担になっている。
  • 閲覧場所がない。
  • 実際に訴訟が提起されず、被害者の親が少年や保護者に謄写を突きつけて 責め立てた。
  • 謄写の際、少年のプライバシー配慮が大変だった。

解説と問題点

  • 今回の法改正で、被害者からの意見陳述、記録の閲覧・謄写あるいは審判 結果の通知制度が盛り込まれ、被害者への配慮が明文化されました。しかし、 記録の閲覧場所も整備されていない状況で十分な配慮ができるのか疑問です。 その一方、謄写に備えて、少年や関係者のプライバシーを守るために謄写を認めない部分と、謄写を認める部分との区分けなどの準備作業に大きな労力が割かれています。

6.付添人の変化

  • 20条2項該当事件で、審判で非行事実を争うのかはっきりしない付添人がおり、 検察官関与のないまま検察官送致になった事例があった。事実審理の場として 審判より公判を重要に考えていると思われ、少年審判に対する期待の薄さの現 れともとれる一方で、少年法改正による理念の変化を危惧し、より少年本位の 活動を行う付添人の報告もなされた。

7.人的手当の必要性

  • 検察官関与や裁定合議のように、弁護士、検察官、裁判官、調査官など、 多数の関係者が調査、審判に携わると、日程調整に労力が裂かれ、手続き進 行にしわ寄せが及ぶことになる。さらに、観護措置期間延長も加わり、少年の情操に配慮した審判運営がなされにくくなっている。
  • 被害者対応につき、被害者へのインフォメーションが不足している一方で、対 応は現場任せとなり、対応を正当に評価されていないとの不満も出ている。 ・ 少年事件の複雑困難化や被害者対応など、現場は以前にも増して慎重な対応を迫られており、人的手当の必要性は高まっている。

8.開かれた議論の重要性

  • 今回の調査で、家裁と地裁(刑事裁判)の判断の違いや、付添人(弁護士)に より活動の方向性が異なるなど、少年司法に関わる大人の考え方に大きな違い があることが明らかになった。こうした現象は、法改正に伴う現場の混乱をあら わしており、そのしわ寄せが少年や被害者に及ぶのであれば本末転倒である。
  • 少年法のよりよい運用のあり方は、常に検証し続けられなければならない。 よって、一部法律家や司法関係者だけの狭い議論でなく、国民レベルでの開か れた議論が必要であり、情報公開による運用実態の周知を徹底することが望まれる。
以上
 
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