昨年10月、知的財産高等裁判所・東京地方裁判所中目黒庁舎(通称・ビジネス・コート)が業務を開始しました。知的財産高等裁判所、東京地方裁判所の商事部、倒産部、知的財産権部など、ビジネスに関する裁判部が中目黒に移転したものです。2月20日、全司法本部は東京地裁支部と一緒に、同民事分会の職場会に参加して、組合員から率直な職場実態を聞きました。
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「緊急の賃上げ勧告」要求をアピール |
デジタル化で全国の先駆けを目指すものの…
ビジネスコートは、中目黒駅から徒歩約10分で、桜並木で有名な目黒川が見える場所に建っています。庁舎は地下1階・地上5階建てで、淡いピンクの外壁に内部の案内表示なども桜のモチーフがあしらわれた、きれいな建物でした。ウェブ会議用ブースや国際会議を開くための会議場も備えています。
玄関を入ると広いロビーに待合用の椅子が並べられていました。その片隅に桜の花びらを象ったお洒落な木製のラックが設置され、数台のタブレットが置かれていて、開廷情報を見ることができます。ただ、システムから直接データが転送されるわけではなく、MINTASのデータを抽出し、人手を介して整理したデータを表示しているのは、東京高地裁(霞が関)と変わりません。法廷には紙に出力した開廷表が掲示されていました。
主に非訟を担当していることもあって、事件関係室がたくさん作られていました。ただ、机や椅子などの什器は専用のものを揃えたわけではなく、東京高地裁の庁舎で使っていたものを持ってきたため、スペースの割に机と椅子が少なくガランとした部屋になっているなど、あまり機能的とは言えません。他庁よりも立派なウェブカメラを整備したものの、ディスプレイのサイズとマッチせず養生テープで固定しているものもありました。
書記官室も普通に執務用のデスクが並んでいて、他の庁舎との違いは感じません。ビジネスコートと言っても事務そのものは変わりがないため、特徴的な「現代型オフィス」を作った最高裁のデジタル推進室とは位置づけが違うのでしょう。なお、一人当たりの面積は通常より広めだそうです。
記録の閲覧謄写に対応できる人員などが重点要求
職場の最大の要求は人員で、「訟廷部門の書記官につき、知財部との兼務を解消すること」です。破産、商事非訟、知財などの事件は閲覧謄写の申請が多く、対応する訟廷部門が繁忙で、本来は増員を要求したいところ、せめて兼務を解消して欲しいとのことでした。行政共助も多いとのこと。民事8部では9名中5名が、休職も含めて健康面で問題を抱えている実態もお聞きしました。「通信環境を改善すること」との要求も出されています。ビジネスコートのコンセプトにもかかわらず、開庁以来、電波が入りにくく、Wi―Fiが繋がりにくかったとのことでしたが、この間、少しずつ改善されているようです。また、目黒川が近くを流れている影響もあり、地下の湿気も問題になっているそうです。
「全国の組合員に伝えるのに、何か特徴的なトピックはありますか?」と尋ねると、手元に持っていたスマホを示されました。ビジネスコートの職員は1人1台スマホが貸与され、内線電話のかわりに使っています。ただし、スマホに直接着信があるわけではなく、部屋の固定電話で受けたものを転送しているとのことでした。席にいなくても電話ができるメリットはあるものの、スマホに転送すると回線が空くので、新たな電話が架かってきて、すぐに対応ができないといった問題もあり、「固定電話を取って対応した方が良いという感じになっています」との実態も出されました。
裁判所のデジタル化への対応も踏まえ、鳴り物入りで開庁したビジネスコートですが、設備面も含めて、まだまだ課題が多いと感じました。今後の改善に期待します。
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