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全司法新聞
 
2022年新年のご挨拶 基本をしっかり押さえて
中央執行委員長 中矢正晴
 

 新年おめでとうございます。
 新型コロナの感染が少し落ち着いた状況で迎える年明けですが、まだまだ油断はできません。これまでの政府の対応を見ていると、検査と保護、補償と一体での自粛、医療体制の構築といった国がやるべき感染症対策の基本をしっかり押さえていないために、被害を拡大した面があると思います。改めて、基本を押さえた対策を求めたいと思います。
 危機の時、変化が必要な時こそ、まずは基本をしっかり押さえ、筋道を立てて方向性を考えること。それをしないと結局、迷走して、事態を悪化させてしまうことにもなりかねません。
 仕事で言えば「根拠と目的」。何のために、どういう法令や事実にもとづいて業務を行うのかを明確にしておくことが大事です。
 国で言えば「憲法」。平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という基本原則は変えてはならないし、政治家や公務員が憲法を守り、憲法に従って仕事をすることは基本中の基本です。そうした基本抜きの「改憲議論」はとても危うい。
 労働組合は「要求と団結」です。組合員の声を聞いて要求を組織し、実現のためにみんなで一緒に活動して団結を強める。全司法も組織強化・拡大が最重要課題ですが、そうした基本を押さえて、手を抜かず真面目に活動し、職場の信頼を得ていくことが何より大事なのだと思います。
 「基本をしっかり押さえてとりくむ」、自戒を込めた新年の抱負として述べて、みなさんと一緒に全司法の運動と組織を前進させていきたいと思います。

 
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月経、更年期…、女性の健康について
そして、みんなに優しく、安心して働ける職場に
 

 女性の社会進出やジェンダー平等が課題になっているもとで、月経や更年期など女性の健康に対応する職場環境の整備・改善が社会的な問題になっています。
 裁判所は女性の比率が高く、女性が働きやすい職場だと言われてきましたが、こうした面での職場環境はどうでしょうか?
 妊娠・出産、子育て以外の「母性保護」(女性「性」への対応)はきちんとされているでしょうか?
 2022年、全司法は女性の健康の課題をきっかけに、みんなに優しく、安心して働ける職場づくりを考えていきたいと思います。
 その第1弾として、まずは正しい知識を持つために、今年の新年号は3人の医師のみなさんに月経や更年期の話をお聞きすることとしました。

まずはみんなで基礎知識を
舩山由有子先生にお聞きしました。

更年期障害とは?

舩山由有子さん
(坂総合病院医師、
リプロネットみやぎ)
 若い世代は脳下垂体からの刺激が少量でも卵巣がよく反応してたくさんの女性ホルモンを出しますが、歳を重ねると卵巣の働きが衰えて、脳下垂体からたくさん刺激しても卵巣の反応が悪くなり、女性ホルモンが出なくなります。このようなホルモンのアンバランスに体がついていけなくてつらい時期が、更年期です。
 更年期にエストロゲンが低下してくると、体にたくさんの変化が現れます。それが更年期の症状です。月経不順などの月経異常、のぼせやほてり、汗をかくなどの自律神経失調症状、頭が重い、不眠、不安、物忘れなどの精神神経症状、おりものがおかしい、外陰部がかゆい、痛い、尿失禁などの泌尿生殖器症状のほか、脂質異常や骨粗鬆症が進行するという変化もあります。
 つまり、エストロゲンの急激な減少に体がついていけず、神経の調節不良や心身の不調が起こりやすくなる状態になるのです。そのような状態は多かれ少なかれ生じますが、特に日常生活にまで影響を及ぼす場合を更年期障害とよび治療を必要としています。

月経とは?

 月経とは、一定期間で子宮内膜が剥がれ落ちて体外に出てくることだと思われていますが、厳密には、妊娠が成立しなかった月経周期の子宮内膜が剥がれ落ちて出てくることです。
 月経がはじまると、脳下垂体や卵巣から順序良くホルモンが出て、卵子が入った卵胞という袋が育ち、子宮の内膜が厚くなって排卵し、妊娠に備えるのですが、排卵から2週間待っても妊娠したという合図が来なければ、ホルモンが低下して子宮内膜が剥がれて月経が始まります。月経から排卵まで約2週間、排卵から次の月経まで約2週間、通常は1ヶ月の周期になります。
 このホルモンの変化に伴って、女性の体には様々な症状が出ます、例えば、月経期は様々な痛みや吐き気、排卵期には透明なおりものや痛み、少量の出血、排卵後は胸が張る、頭痛、むくみ、便秘、気持ちの落ち込み、イライラなどが出ます。月経前に症状が強く出る場合を月経前症候群、PMSといい、日常生活に支障が出て治療が必要になる場合があります。
 月経の時期は、骨盤内に血液が集まって重苦しいなど、痛み以外にも不調を感じやすくなっています。

しっかり理解し、気軽に話ができ、頼り合える職場環境づくりが重要

辛い時は、我慢しないことが大事です

 牧坂 生理が重くて月に一、二日は寝込んでしまい、学校や職場にも行けないという人から「産婦人科に行っても鎮痛剤を出すだけだったので、行かなくなった」という話を聞いたのですが、痛みへの対処や鎮痛剤について、どう考えれば良いのでしょうか?
 舩山 月経はそもそも個人差がありますし、ホルモン療法が得意な先生とそうではない先生がいるので、そういう対応になる場合もあります。
 「月のうち2日なので、薬を飲まなくてもいい」と考えるなら、ピルも副作用が全くないわけではないので、そういう考えもできますが、痛みが強いというのは重大な病気が隠れている可能性があるので検診を受けることをお奨めしますし、相談できるドクターがいると良いと思います。
 西岡 「職場に行けない」というのは生活に影響が出ている状態なので、治療された方が良いと思います。鎮痛薬でコントロールできるなら問題ありませんし、痛みが残るならピルをお奨めします。ピルは非常に効果があり、かなり改善されると思います。
 若い時には重大な病気がなくても、月経痛が強いと子宮内膜症になりやすいこともわかっていますので、最近はしっかり治療した方が良いと言われています。
 白石 ピルの使用について影響を懸念される方もありますが、安全性も確認されて、使用することが一般的になってきたので、ピルを処方してくれる先生を探すことも考えてはどうかと思います。
 生活する中で本人が「辛い」と感じるなら、それは月経困難症になります。当然、痛み止めを使っても良いですし、ピルの使用も良いと思います。辛いなら「これぐらいなら…」と思わず、我慢せずに産婦人科を受診してください。
 舩山 月経困難症以外に、結構な割合で月経前症候群(PМS)で悩んでいる方がいます。メンタルもやられる病気なので、休暇も取れればよいと思いますが、ピルで解決する可能性が高いです。飲むまでのハードルはあるかと思いますが、かなり改善したと言われる方が多いので、専門家に見てもらって有効な治療法にチャレンジすることで、人生が良い方に転換していくということも考えてもらえればと思います。

現代女性は月経と上手く付き合っていくことが必要

 岡野 年齢によって月経の辛さというのは変わるのですか?
 舩山 若い頃には大丈夫だったのに、40歳を超えたあたりから急に辛くなる人もいます。
 根本 今、ほとんどの職員が女性という職場にいるのですが、「今日は生理なのかな」と思う人が我慢して仕事をしている様子が見られる一方、生理休暇が取得されていないと感じます。休暇を取って休むことも重要だと思うのですが、薬を飲んだり、ピルを使っていれば大丈夫だということでしょうか?
 薬を使って麻痺させているように感じるのですがどうでしょう?
 白石 月経の場合、鎮痛剤で炎症を抑えているので「麻痺」とは少し違います。また、ピルは痛みの根幹から治療するというイメージが近いです。生理休暇は必要ですが、最優先は治療して休まなくてよい状況を作ることです。
 牧坂 「鎮痛剤を使いすぎると大丈夫かな」という心配もあるのですが。
 西岡 「痛ければ飲む」という考え方で良いと思います。月経の痛みに関してはずっと薬を飲むわけではないので、辛いタイミングで飲めば良いですし、痛みを我慢する方が悪影響が大きいことがわかっているので、特に制限は要らないと思います。
 また、日本ではピルに対してマイナスイメージを持たれている方が多く、自然な状態が一番で薬を使うのは悪いことだとか、月経を「悪いものを出してくれるデトックス」というイメージを持っている方が多いのですが、そもそも月経は、予定していない妊娠の準備をしては崩す、ということを体が繰り返しているのです。昔は多産だったので、こんなに多く月経を経験する必要がなかったのですが、子どもの数が少ない時代になって、月経を経験する回数が増えていますから、現代を生きている女性は上手く付き合っていくことが必要です。そのための手段の一つがピルだということです。
 舩山 ピルには月経の時期をコントロールできる効果もあります。重要な仕事を担当する時に月経に当たらないように調整することは、不安を取り除いたり、「当たっちゃった」というネガティブな感情が仕事に影響するのを避けることもできます。女性が積極的に自分の体に関する知識にたどり着けることが重要で、そうすることで上手くいく面もあるのではないでしょうか。

まずは管理職がしっかり理解することが重要

 岡野 職場環境改善の問題として、一緒に働く男性はどういうことを心がけると良いのでしょうか?
 白石 生理というのは非常に幅が広く、軽い人もいれば、重度の貧血になったり、痛みが強くて救急車で運ばれる人もいるなど、千差万別だと理解することが重要です。本当は学校教育でしっかり教えないといけないのですが、そうなっていないので、まずは管理する立場にある人が、しっかり理解しないといけないと思います。職場では、そこから変えていくのが効率的だと思います。
 牧坂 月経と切迫早産、流産との因果関係などについて、何か医学的にわかっていることがあれば教えてください。
 舩山 最近、子宮内膜症が増えてわかってきたことですが、子宮内膜症がある場合に切迫流早産を起こす危険性が高いということが言われています。「たかが生理痛、されど生理痛」で、「痛い」というのは身体からのシグナルなので、信頼できる産婦人科に相談するのが良いと思います。

「更年期」は職場の理解で大きく変わってくる

 根本 更年期障害の症状で「うつ」がありますが、更年期によるものか精神的な病気なのか、どちらかわからない場合、どうすれば良いでしょう?
 白石 火照りや動悸など他の症状が一緒にあるかどうか、また、例えば職場にいる時は辛いけれど家庭では大丈夫なら更年期は関係ないので、そうした症状が出る時の状況を聞いたり、ホルモン値をチェックしたり、そういうことで判断しています。産婦人科でも精神科でもどちらでも良いので、ためらわずに行って相談するのが良いと思います。
 牧坂 私たちは更年期障害に関する休暇制度を要求していますが、何かアドバイスはありますか?
 白石 生理だと期間がわかりやすいところ、更年期はずっと続くので制度上どうしていくのか難しいところかもしれませんが、辛い時に休めることは重要だと思います。医療者の立場からは治療していくことが重要だと思います。
 西岡 必要な時に休めることが重要です。人によっては、抑うつ症状が強いとか、疲労感が強くて、普通にできることが全然できなくなることがあります。そういう状態が月単位で続くことがあるので、職場の理解があるかどうかで大きく変わってきます。とりわけ、上司の理解が重要で、理解がある職場では休暇を使ったり、傷病手当を受けて働き続けることができますが、職場の理解がないと「怠けている」というふうに見えて、退職につながっていくことがあります。更年期に関する理解がない職場が4割を占め、それが理由で退職した人が1割弱いるというデータもあります。

相手の大変さを受け止められる職場にすること

 岡野 生理も更年期も、理解や知識が重要だということがわかりました。そもそも教育が大事だと思うのですが、職場で一緒に働く時にどうしたら変化に気がつけるのか、配慮の仕方はどうすれば良いのか教えてください。
 西岡 更年期の問題も月経の問題も、それ以外の病気も、育児や家庭に事情を抱えている人も、実は全部同じだと思います。一番大事なのは、上司の立場にある人たちが積極的に休むことです。それを見れば、他の人たちも様々な事情がある時に休みやすいし、みんなが休めば、休んだ時の穴埋めもみんなでやっていく、他の人からそれを言い出すのは大変なので、上司がきちんと休暇を活用することが重要だと思います。
 舩山 「心理的安全性」ということが言われるのですが、職場で支え合いながら相手の大変さを受け止められる職場、「言っても怒られない」というつながりが作られるだけで、男性も女性も相談しやすく、問題も解決しやすくなります。私は、それを休暇という形にしているのが生理休暇だと思っていますが、そういう話ができる職場にしていくことで問題が解決していくのではないかと思います。
 牧坂 男性にも更年期があると聞きました。女性も男性についての知識を持つ必要があると思っています。
 舩山 男性は、女性ほど劇的な変化がなくてわかりにくいですが、加齢とともに心身反応が出て「年のせいかな」と思っていたら、実は男性ホルモン(テストステロン)の減少が理由の場合があります。年齢も若年から高齢者まで様々です。情報がなくて、女性以上に理解してもらえないところがありますが、周囲の理解とサポートが重要なので、職場の状況を良くしておくことは大切ですね。

気軽に職場で話せるだけでも救われる人はいる

 根本 最近、低気圧の時に体調が悪い女性が増えている気がしますが、これも何か関係があるのですか?
 舩山 低気圧症候群という名前もついているようで、最近、増えているようです。身体が弱っている時になりやすく、自律神経が影響を受けますが、五苓散という漢方薬が結構効きますので私も処方しますし、市販でも売っています。
 岡野 私も最近、こういう問題に目が向いてきましたが、月経や更年期などについて男性でもわかる資料は何かありますか?
 舩山 私も参加しているリプロネットみやぎが、仙台に在住する学生さんたちと一緒に「月経を知ろう」というパンフレットを作りました。女性が読んでも参考になり、ホームぺージからダウンロードできますので、読んでみてください。
 牧坂 職場環境改善の観点から、最後に一言ずつお願いします。
 白石 月経、更年期はどちらもホルモンの動きによって身体が影響されるもので、こうした変動に人間の体は弱いのです。表れ方が人によって違いますが、辛いところをどう一緒に乗り切っていけるかが大事です。根性とか気合とかは関係なく、薬を使うことも必要だし、周りのケアを使って休むことも重要です。
 こうした「性」が絡むことはタブー視されがちですが、気軽に職場で話題にするだけで救われる人もいると思います。また、生理休暇などをきっかけに、職場で話題にするだけでも、かなり環境が違ってくると思います。
 西岡 「性」に関する問題で、日本に求められているのは2点だと思っています。1つは性教育です。知識を得ることが大事ですが、学校教育に組み込まれていないので、今の社会人はきちんと教育されていません。そこが解決しないと、職場で快適に働き、生活していくことにはならないので、職場環境のためにも性教育の充実は重要です。
 もう一つは「頼る」ことです。知識があっても我慢してしまうのは、「自分がここまでやらないといけない」「周りに頼れない」ということがあるのだと思います。普段からお互いに頼ることで、この問題が解決しやすいのではないかと思います。
 舩山 あるデパートで、社員にだけわかる形で、月経中の社員がわかる工夫をしているという話があります。そういうサインを出すことができると、周りも気を使うことができますし、職場の理解や相談するハードルも下がるのではないかと思います。サインを出す方も勇気がいるかもしれませんが、それによって良くなることがわかれば、いろんなことが進むのではないかと思います。みなさんの職場が良い職場になるといいなと思っています。


ご協力いただいた医師のみなさん

舩山由有子さん 坂総合病院産婦人科小児科診療部長
白石 知己さん 前橋協立病院産婦人科科長
西岡 利泰さん 勤医協札幌病院産婦人科科長

インタビュアー

牧坂 弘美さん 全司法本部女性対策部長
根本 厚子さん 国公労連女性協議長
岡野 健太さん 全司法青年協議会議長

 
 
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